「特別支援教育」とは,障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち,幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善又は克服するため,適切な指導及び必要な支援を行うものである。
こうした特別支援教育を推進するため,特別支援学校の施設整備については,障害の重度・重複化,多様化等の動向を十分踏まえつつ,障害のある幼児児童生徒の一人一人の教育的ニーズに対応した指導・支援を考慮した施設環境づくりを基本とすることが重要である。
また,地域において特別支援教育を推進する体制を整備していく上で,特別支援学校が中核的な役割を果たすことができるような施設環境づくりを基本とすることが重要である。
一人一人の幼児児童生徒の障害の状態や特性,発達段階等に応じた指導内容・方法が十分に展開でき,個別又は多様な集団編成等による自立活動※等の学習指導やそれらを支援する様々な教育機器等の導入などを可能とする高機能かつ多機能な施設環境を確保することが重要である。
また,幼児に対する遊びを通した柔軟な指導,中・高等部の職業教育,及び重複障害のある幼児児童生徒の基本的生活習慣の指導への対応などを図るとともに,今後の学校教育や情報化の進展等に長期にわたり対応することのできるような柔軟な計画とすることが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:
入院生活等を伴う幼児児童生徒については,様々な生活体験を可能とする施設環境を整えることが重要である。
※自立活動:
障害に基づく種々の困難を改善・克服するために設けられている特別の指導領域であり,学校の教育活動全体を通じて行われる教育活動。例として,視覚障害者に対する白杖を使った歩行指導,聴覚障害者に対する音声や文字,手話などの多様なコミュニケーション手段を活用する指導,肢体不自由者に対する姿勢保持や移動の指導などがある。
幼児児童生徒の学習及び生活の場として,日照,採光,通風等に配慮した良好な環境を確保することが重要である。特に幼児児童生徒の障害の状態や特性等に配慮しつつ,その健康の保持増進に配慮した快適な空間とするとともに,十分な防災性,防犯性など安全性を備えた安心感のある施設環境を形成することが重要である。
また,幼児児童生徒がゆとりと潤いをもって学校生活を送ることができ,他者との関わりの中で豊かな人間性を育成することができるよう,生活の場として快適な居場所を計画することが重要である。
さらに,それぞれの地域の自然や文化性を生かした快適で豊かな施設環境を確保するとともに,省資源・省エネルギーや自然環境等に配慮することが重要である。
地域において特別支援教育を推進する体制を整備していく上で特別支援学校が中核的な役割を担うことに加え,地域の小・中学校等の障害のない幼児児童生徒との交流及び共同学習の場として施設環境を整備することが重要である。
また,障害者等の学習・相談等の場,障害のある幼児児童生徒への理解を深めるための場,地域住民の生涯にわたる学習の場,さらに,まちづくりの核として,地域と連携した施設環境を整備することが重要である。
その際,施設のバリアフリー化を図ること,地域の防災拠点としての役割を果たすこと,景観や町並みの形成にも貢献できる施設として計画することも重要である。
なお,病院等に併置する場合は,病院等にも開かれた施設として整備することが望ましい。
(1) 幼児児童生徒一人一人の障害の状態や特性,教育的ニーズを把握し,それらを踏まえた指導計画の実施に配慮した施設環境を計画することが重要である。
その際,一人一人のニーズに応じた指導目標や内容,方法等を示した「個別の指導計画」や,教育と福祉,医療,保健,労働等の関係機関との連携による乳幼児期から卒業後まで一貫した支援を行うための教育的支援の目標や内容等を盛り込んだ「個別の教育支援計画」の実施に配慮した計画とすることが重要である。
(2) 障害の重度・重複化等の動向や,複数の障害への対応状況を十分に考慮し,利用する幼児児童生徒にとって支障のない計画とすることが重要である。
その際,近年,自閉症等を併せ有する幼児児童生徒が増加していることにも配慮した計画とすることも重要である。
(1) 特別支援学校が地域の小・中学校等の要請に応じて支援などを行う地域の特別支援教育のセンター的機能を果たすため,地域や学校等の実情に応じて必要な施設環境を整備することが重要である。
(2) 地域の小・中学校等の教員への支援及び研修協力や,障害のある幼児児童生徒への指導・支援,特別支援教育等に関する相談・情報提供を行うほか,福祉,医療,保健,労働等の関係機関との連絡・調整を行うなど,各学校の実情に応じて弾力的に対応できるような施設環境を整備することが重要である。
(3) 特別支援学校において通級による指導※を行う場合は,地域の小・中学校に在籍する障害のある児童生徒の障害の状態や特性等を十分に踏まえつつ,通級する他校の児童生徒にとっての利便性等に配慮し,その利用に支障のない計画とすることが重要である。その際,地域の通級による指導の状況や整備計画等を踏まえつつ,各学校や地域の実情等に応じた計画とすることが重要である。
また,通級による指導を受ける児童生徒の保護者との連携や交流を促進することができる施設として計画することも重要である。
※通級による指導:
小・中学校の通常の学級に在籍している障害の軽い児童生徒が,ほとんどの授業を通常の学級で受けながら,障害の状態等に応じた特別の指導を特別な場(特定の小・中学校や公共施設等)で受ける指導形態。一部通級による指導の担当教員が特別の場に出向く場合や児童生徒が特別支援学校等に出向く形態等もある。
(1) 多様な学習内容・形態による活動を可能とする施設として計画することが重要である。その際,幼児児童生徒の主体的な活動を支援する工夫や幼児児童生徒の持てる能力を高め,豊かな学校生活を送ることができる空間として計画することも重要である。
また,多様な学習内容・形態に弾力的に対応するため,学習関係諸室相互の位置関係や幼児児童生徒の動線等を考慮した計画とすることが重要である。
(2) 幼児児童生徒の学習意欲を引き出し,最新の学習内容の習得や自立活動の実施ができるよう,それらに必要な教材,教育機器等の導入や,各種技術の進展に対応した計画とすることが重要である。
(3) 一斉指導による学習以外に,ティームティーチング(複数教員による協力的指導)による学習,個別学習,少人数指導による学習,グループ学習,複数学年による学習等の活動及び幼児児童生徒の学習の成果の発表などに対応するため,学習メディア等が活用できる多目的な空間や,多様なタイプの講義室,ゼミ室など学習空間を十分に計画することが重要である。
(4) 豊かな人間関係を築く観点から,部活動,児童・生徒会及び委員会の活動のための拠点を計画することが重要である。
(1) 幼児児童生徒の障害の状態や特性,発達状況等を考慮しつつ,個々の幼児児童生徒が自立を目指し,障害に基づく種々の困難を主体的に改善・克服するための自立活動に必要となる施設環境を計画することが重要である。
(2) 自立活動の指導は学校の教育活動全体を通じて行われるものであり,自立活動の時間に行われる指導内容を中心としつつ,各教科,道徳,特別活動及び総合的な学習の時間と密接に関連を図る必要があることから,自立活動関係諸室と普通教室,特別教室等との関係等を考慮した計画とすることが重要である。
(3) 「個別の指導計画」に基づいて個人又は小集団で指導を行うなど,効果的な指導を進めることができるよう弾力的な計画とすることが重要である。その際,幼児児童生徒の障害の重度・重複化,多様化を考慮し,これらの幼児児童生徒の実態に応じた弾力的な教育課程の編成に対応できるような計画とすることが重要である。
(1) 幼児児童生徒の主体的な活動及び学習を支え,高度情報通信ネットワーク社会にふさわしい学校環境をつくるとともに,障害に対する情報保障※としての環境を確保するよう計画することが重要である。
このため,情報支援機器を活用するなど,幼児児童生徒の障害の状態や特性等に配慮しつつ,校内の情報ネットワークの整備や情報機器の導入への対応について,適切な安全管理措置を取りつつ積極的に計画することが重要である。
※情報保障:
本指針において「情報保障」とは,「障害等により情報を入手することが困難な者に対して情報入手のための支援を行ったり,情報を発信することが困難な者に対して情報を発信するための支援を行ったりすること」とする。情報保障の手段としては,点字による表示や手話,ノートテイク,コミュニケーション支援機器や支援ソフトを活用して意思の伝達を行うなどの多様な形態がある。
(2) 情報を効果的に活用したり,生み出したりするためには,様々な情報を管理できる学習センター機能のために必要な空間を計画することが重要である。
(3) 教科としての「情報」だけでなく,他教科でも活用したり,日常的な学習活動や自立活動等を支援するために,普通教室や図書室,特別教室,自立活動関係諸室,専門教育関係教室,共通空間等にも様々な情報機器や情報ネットワークを計画することが重要である。
(4) 学校としての取組や学習活動の成果等について,外部へ情報発信できるよう計画することが重要である。
(5) 幼児児童生徒や保護者への情報伝達や,多様なカリキュラムの管理,幼児児童生徒からのレポート等の提出等,学校運営や施設管理,教員の教科研究や教材作成においても,情報機器や情報ネットワークを活用できる環境を計画することが重要である。
(1) 社会の変化や時代の進展,近年の障害者の就業状況等を踏まえつつ,地域や学校の実態,生徒の障害の状態や特性等を考慮し,適切な職業に関する各教科・科目等を履修するために必要な施設環境を計画することが重要である。
その際,一人一人の興味・関心等に対応し,目的意識を持って学習することができるよう,多様な進路の選択やそのための科目の選択履修を支援することができるよう計画することが重要である。
なお,社会参加,自立を図るための社会生活能力を育成するための施設を計画することが有効である。
(2) 変化する社会に柔軟に対応できる能力を身につけていくことが一層求められており,生徒が主体的に進路を選択してキャリアを形成していくために,就職を含む進路の相談やインターンシップ等,生徒に対するカウンセリングやガイダンス機能を充実させるために必要な空間を計画することが重要である。
(1) 外国語の指導,外国人教師や幼児児童生徒の受け入れ,日本の伝統文化や異文化理解等の学習活動への対応を考慮した計画とすることが重要である。
(2) 外国語会話学習や,コンピュータ支援による外国語学習,インターネットの活用等にも対応した計画とすることが望ましい。
(3) 国際文化の理解・交流のために,和室など日本の伝統的な空間を計画することも有効である。
(1) 多様な学習内容・形態に弾力的に対応するため,普通教室,特別教室等の関係や,一斉指導による学習のための空間とグループ学習・個別学習のための空間との関係,児童生徒の動線,学習空間の吸音・遮音性等を考慮し,計画することが重要である。
(2) 体験的な学習に対応するため,地域社会や自然環境等との連携に配慮して施設環境を計画することが重要である。
(1) 幼児児童生徒の学習のための場であるのみならず,生活の場として,ゆとりと潤いのある施設環境を計画することが重要である。
(2) 幼児児童生徒の障害の状態や特性,行動特性,動作領域,人体寸法を考慮するとともに,心理的な影響も含めて施設を計画することが重要である。
(3) 幼児児童生徒,教職員等の多様なコミュニケーションの場として,ラウンジ,談話コーナー等を計画することが望ましい。
(4) 多様な学習内容・形態に対応するとともに,障害の状態や特性に応じ,豊かな生活の場を構成することのできる机・いす・収納棚等の家具を各室と一体的に計画することが重要である。
(5) 生徒の心の拠りどころとなるようなシンボルツリーやモニュメント等を計画することも有効である。
(1) 幼児児童生徒の健康に配慮し,校内の快適性を確保するため,日照,採光,通風,換気,室温等に十分配慮した計画とすることが望ましい。
【病弱に対応した施設】:
病気の種類等に応じて日照,空気及び通風を得られることが望ましい。
(2) 幼児児童生徒の障害の状態や特性等に配慮しながらその心と体の健康を支えるため,保健衛生に配慮した計画とすることが重要である。特に,重度の障害のある幼児児童生徒に十分配慮した衛生的な環境を計画することが重要である。
(3) 建材,家具等は,快適性を高め,室内空気を汚染する化学物質の発生がない,又は少ない材料を採用することが重要である。
(4) 新築,改築,改修等を行った場合は,養生・乾燥期間を十分に確保し,室内空気を汚染する化学物質の濃度が基準値以下であることを確認させた上で建物等の引渡しを受け,供用を開始することが重要である。
(1) 地震発生時において,幼児児童生徒の人命を守るとともに,被災後の教育活動等の早期再開を可能とするため,施設や設備の損傷を最小限にとどめることなど,十分な耐震性能を持たせて計画することが重要である。
(2) 学校施設は,地震等の災害発生時には地域の障害者,高齢者等の災害時要援護者も含めた地域住民の応急的な避難場所としての役割も果たすことから,このために必要となる機能も計画することが重要である。
(1) 幼児児童生徒の安全確保を図るため,学校内にあるすべての施設・設備について,幼児児童生徒の多様な行動に対し十分な安全性を確保し,安心感のある計画とすることが重要である。
その際,事故の危険性を内包する箇所は特に安全性を重視した分かりやすい計画とすることが重要である。特に,情緒障害,自閉症又は注意欠陥多動性障害(以下「ADHD」という。)等の障害との重複に対応した施設とする場合は,パニックや多動・衝動性等に十分配慮し,各々にとって十分な安全性を確保した計画とすることが重要である。
(2) 地震,火災等の非常時において幼児児童生徒が安全かつ円滑に避難できるよう計画することが重要である。
(3) 事故を誘発するような明確な構造的な欠陥はもとより,幼児児童生徒が予測しにくい危険を十分に除去しておくことが重要である。
また,可動部材,特に機械制御のものは十分に安全性が確保されていることを確認することが重要である。
(4) 幼児児童生徒の多様な行動に対して,万が一事故が発生してもその被害が最小限となるよう,配慮した計画とすることが重要である。
(5) 外部からの来訪者を確認でき,不審者の侵入を抑止することのできる施設計画や,事故も含めた緊急事態発生時に活用できる通報システム等を各学校へ導入することが重要である。
(6) 敷地内や建物内及び外部からの見通しが確保され,死角となる場所がなくなるよう計画することや,特に不審者侵入の観点からはどの範囲を何によってどう守るかという領域性に留意した施設計画が重要である。
(7) 学校や地域の特性に応じた防犯対策及び事故防止対策を実施し,その安全性を確保した上で,地域住民等が利用・協力しやすい学校施設づくりを推進することが重要である。
(8) 既存施設の防犯対策及び事故防止対策についても,図面や現場等において点検・評価を行い,必要な予防措置を計画的に講じていくことが,関係者の意識を維持していく面からも重要である。
(9) 学校施設の防犯対策及び事故防止対策は,安全管理に関する運営体制等のソフト面での取組と一体的に実施することが重要である。その際,家庭や地域の関係機関・団体等と連携しながら取組を進めることが重要である。
(1) 障害のある幼児児童生徒及び教職員等が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるように,障害の状態や特性,ニーズに応じた計画とすることが重要である。なお,その際,スロープ,手すり,便所,出入口,エレベーター等の計画に配慮することが重要である。
(2) 学校の教育活動への地域の人材の受け入れなど様々な人々の学校教育への参加や,地域住民の生涯学習の場としての利用,地震等の災害発生時における地域住民の応急的な避難場所としての役割等を踏まえ,多様な地域住民が利用することを考慮した計画とすることが重要である。
(3) 既存学校施設のバリアフリー化についても,障害のある幼児児童生徒の状態や特性等を踏まえ,所管する学校施設に関する合理的な整備計画を策定し,計画的に推進することが重要である。
(4) 学校施設のバリアフリー化に当たっては,施設の運営・管理,人的支援等のサポート体制との連携等について考慮した計画とすることが重要である。
(1) 省エネルギー,資源の再利用,自然エネルギーの活用,自然環境等に配慮した施設づくりを行うことが重要である。
(2) 教育的効果も考慮し,施設・設備自体が環境教育の教材として活用されるよう計画することが望ましい。
教育相談室,保健室,適応指導教室等については,カウンセリングの機能を総合的に計画することが重要である。
(1) 特別支援学校施設の計画に当たっては,地域における特別支援教育の中核的な施設として,及び学校・家庭・地域と連携した生涯学習の基盤として,学校・家庭・地域等の参画により,総合的かつ長期的な視点から計画を行うことが重要である。
(2) 専門的知識・技術を持つ社会人や地域の様々な人材を受け入れ,学校の教育活動への地域の活力の導入・活用を促すための諸室についても計画することが重要である。
(3) 地域における特別支援教育の中核的な役割を踏まえ,他の文教施設等の整備状況等を勘案しつつ,必要に応じ,これらの施設との適切な役割分担や,各々の特有の機能の共有化,施設等の相互利用・共同利用等を通じ有機的な連携について計画することが望ましい。また,他の文教施設等との情報ネットワークを構築することも有効である。
(4) 地域に開かれた学校づくりの観点から,学校としての取組や学習活動の成果等について,保護者や地域住民など外部へ情報発信できるよう計画することが重要である。
(1) 幼児児童生徒や地域住民が有効に活用できる施設となるよう計画することが重要である。また,学校や地域の特性に応じた防犯対策を実施し安全性を確保した上で,必要に応じ,地域住民との共同利用のできる施設として計画することも重要である。
(2) 様々な利用者に配慮した,快適,健康,かつ安全で利用しやすい施設であるとともに,学校開放の運営と維持管理の行いやすい施設となるよう計画することが重要である。
(3) 障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒とが,各々の教育的ニーズに応じ,安全かつ円滑に交流及び共同学習を行うことができる施設となるよう計画することが重要である。
(1) 学校と地域社会との連携を深めていく上で,社会教育施設や福祉施設,医療施設等との複合化について計画する場合は,施設間の相互利用,共同利用等による学習・生活環境の高機能化及び多機能化に寄与すると同時に,学校施設における幼児児童生徒の学習と生活に支障のないよう計画することが重要である。
また,地域の防災拠点としての役割について計画する場合も,学校施設における幼児児童生徒の学習と生活に支障のないよう計画することが重要である。
(2) 多様な利用者を考慮し,防犯対策等の安全管理,バリアフリー等に配慮した計画とすることが重要である。
(3) 学習環境に悪影響を及ぼす施設との合築は避けることが重要である。また,学習環境の高機能化及び多機能化に寄与しない施設との合築についても慎重に対処することが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:
病院等の中に設置されている分校・分教室等の場合には,病院等に障害のある幼児児童生徒の教育等についての理解を得るとともに,十分な連携を保ちつつ計画的に環境を整備することが重要である。
(1) 地域内の特別支援学校や他の文教施設等の整備計画との整合
当該地域における中・長期の特別支援学校の整備計画や他の文教施設等の整備計画との整合性を図り,多様な学習活動の実施,安全性への配慮,地域との連携等を考慮し,総合的かつ長期的な視点から学校の運営面にも十分配慮した計画を策定することが重要である。
なお,病院等に併置する場合,又は他の文教施設等に分教室を設置する場合は,その整備計画との十分な連携を確保しながら当該学校施設の整備計画を策定することが重要である。
(2) 総合的な視野からの計画策定
施設の一部の増改築や改修の場合においても,学校施設整備の基本方針,新たな課題への対応を踏まえ,総合的かつ中・長期的な視点から,既存施設を長期間有効に活用するという視点に留意しつつ,施設全体の総合的な計画に基づいて計画することが重要である。
施設部分等により,予算科目,所管部課,整備時期等が異なる場合においても,相互に十分調整し,総合的に計画することが重要である。
(3) 幼児児童生徒数の動向等に応じた学校規模の適切な設定
学齢人口や障害のある幼児児童生徒の数の推移と将来動向,地域内の小学校及び中学校の特別支援学級※の在籍児童生徒数並びに通級による指導を受けている児童生徒数,特別支援学校高等部への進学の状況,特別支援学校の整備計画等から,現状及び将来の学校規模を的確に把握し,計画することが重要である。
特に,幼児児童生徒の数の将来動向を十分に考慮しつつ,柔軟性を持たせた施設計画とすることが重要である。
【病弱に対応した施設】:
入院期間の短期化,入退院の頻回化などによる年度途中での幼児児童生徒数の変動や,病弱・身体虚弱の特別支援学級から特別支援学校へ就学先の変更等が年度途中で行われるなどの状況等も考慮することが重要である。
※特別支援学級:
障害の比較的軽い児童生徒のために小・中学校に障害の種別ごとに設置することが可能な少人数の学級。
(1) 当該学校における設置構成等の編成に係る条件設定
現在及び将来において,当該学校における幼稚部,小学部,中学部及び高等部の各部の設置構成並びに教育課程の編成,高等部における学科等の種類及び専攻科の設置,他の学校との併置,分校又は分教室の設置,重複障害学級の設置,訪問教育※の実施等の有無にかかわる計画条件を検討し,確認することが重要である。
また,センター的機能として,通級による指導や,いわゆる「巡回による指導」※等の有無にかかわる計画条件を検討し,確認することも重要である。
※訪問教育:
障害のため特別支援学校等に通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対し,特別支援学校等の教員が家庭,児童福祉施設,医療機関等を訪問して行う教育。
※いわゆる「巡回による指導」:
障害のある児童生徒に対する指導及び支援の一つとして,小・中学校又は特別支援学校の教員が複数の学校を巡回訪問して指導を行う形態。
(2) 学級編制や教育課程等の編成に係る条件設定
(3) 運営方式の設定
3 施設機能の設定
(1) 障害の特性等の分析とその条件化
(2) 教育活動の内容分析とその条件化
(3) 教育相談・進路指導等に対応する施設機能の設定
教育相談・カウンセリング,生徒指導,進路指導等のために,運営方法及び人的体制等について十分分析・把握し,個人情報保護の観点から情報管理について十分配慮して,必要な施設機能を設定することが重要である。
また,個別相談に対応でき,プライバシーを守ることのできる小部屋を計画することが望ましい。
(4) センター的機能としての施設機能の設定
(5) 共通に利用する学習空間機能の設定
各部に共通する活動内容を把握し,利用頻度等に応じ各学年,各教科,各部等の間で共用する施設機能を設定することが重要である。特に,複数の障害に対応した施設とする場合は,相互利用を考慮しつつ,各々の利用にとって妨げとならないよう施設機能を設定することが重要である。
(6) 学習・生活支援機器等の活用とその条件設定
学習・生活を支援する各種教材・教具,各種日常生活学習機器,検査機器,補助用具・点訳システム等について,利用方法や機器等の設置形態,収納・管理その他の条件を将来動向も含めて分析・把握して,必要な施設機能を設定することが重要である。
(7) コンピュータ,視聴覚機器等の活用とその条件設定
(8) 学校生活の分析とその条件設定
(9) 寄宿舎生活の分析とその条件設定
利用する幼児児童生徒の障害の状態や特性,利用人数等に応じ,学習・生活の実態,日常生活自立への指導,管理体制,防災体制等について具体的に検討し,必要とする施設機能を設定することが重要である。
【病弱に対応した施設】:
病弱に対応した特別支援学校の寄宿舎では,病院での学習・生活に準じた配慮が必要となることに十分留意することが重要である。
(10)入院生活等の分析とその条件設定:【肢体不自由又は病弱に対応した施設】
(11) 教職員等施設の機能の設定
(12) 事務管理・運営のための施設機能の設定
(13) 地域における学習活動等に対応するための機能の設定
地域における学習需要を分析し,学校教育に支障を及ぼさないよう配慮しつつ,当該特別支援学校における学習機会や場の提供について,その内容及び方法を検討し,必要な施設機能を設定することが重要である。
(14) 地域の諸施設との有機的な連携
(15) 室構成の決定
(1) 企画,基本計画・設計,実施設計及び施工の各段階を明確に捉え,特に,企画及び基本計画・設計の各段階において十分な期間を確保し,当該特別支援学校施設への様々な要請に適切に対応しながら学校施設を計画することが重要である。その際,先進事例の視察,資料の収集,専門家の意見の聴取等を行うことも有効である。
(2) 企画から施工に至る整備の各段階において,各段階相互の内容的な連続性,整合性等を十分に確保することが重要である。
(3) 完成後には施設に係る評価を定期的に行い,今後の改修・改築等の計画に生かしていくことが重要である。
(4) 施設の整備を段階的に行う場合は,最終的な施設環境を想定した上で,それぞれの段階での学校運営への施設対応を検討し計画を策定することが重要である。
(1) 学校施設を常に教育の場として好ましい状態に維持するためには,日常の点検・補修及び定期的な維持修繕が必要であり,これらを行いやすい計画とすることが重要である。
(2) 建物構造体を堅固につくり,室区画や室仕上げは将来の学習内容・形態の変化に応じて変更可能とし,設備の交換・補修を容易にするなどにより,長期間建物を有効に使う計画とすることが重要である。
(3) 情報技術の進展をはじめとする将来のニーズや機能の変化を見込んで,改修整備をしやすい施設となるよう計画することも有効である。
(1) 学校施設を地域に密着した社会資本として有効に活用していくことが重要である。
(2) 学校施設を常に教育の場として好ましい状態に維持するとともに,その機能を発展させるためには,教職員,幼児児童生徒,保護者,地域住民等の学校関係者が対話し考えながら,持続的・計画的な維持修繕を行うとともに,施設機能を維持するための予防保全を行っていくことが重要である。
(3) 学校施設を有効活用するためには,学校施設の企画・計画,整備,維持管理を一体的に検討し,長期的,戦略的な視点から施設を建設・維持,活用する考え方(施設マネジメント)を導入することも有効である。
(4) 学校施設の整備に当たっては,建設・使用・解体に至るまでの総エネルギー使用量の削減,「もの」を大切にするという教育的な側面からも,改修整備による既存学校施設の再生を図る ことが重要である。
(5) 改修整備による既存学校施設の再生に当たっては,以下の視点を踏まえ進めていくことが重要である。
(1) 当該地方自治体や学校において実施しようとする特色ある学習内容・形態等に対応できるものにするとともに,地域と連携した学校運営が行われるよう,当該学校施設の整備における関係者である教職員,幼児児童生徒,保護者,地域住民等との間で,企画の段階から十分な意見交換の機会を設けて,理解と合意の形成に努めることが重要である。
その際,学校建築や情報システム等の専門家その他の学識経験者の協力を求めることも有効である。
(2) より効果的・効率的な施設運営を行うためには,施設の完成後においても継続的に施設使用者との情報交換等を行うことが重要である。
このことは,設計当初の施設機能が十分に活用され,利用実態の面から安全性を確保する上でも重要である。
(3) 学校開放を行う施設の利用内容・方法や管理方法,当該学校施設が周辺地域に及ぼす騒音・交通・塵埃等の影響,災害時の対応等について,事前から地域住民等と十分協議することが重要である。
(4) 外部資金等を活用する事業手法の場合には,当該事業の施工や維持管理において必要な施設水準を確保するため,発注者は,実施方針の公表や要求性能の提示に当たって,施設利用者等との間で十分に協議する機会を設けて相互理解と合意の形成に努めるとともに,その意向を要求性能等に可能な限り盛り込むことが重要である。
(1) 増改築や改修等の実施においては,その手順を十分検討し,適切な方法により,整備期間中の学校教育や部活動等に必要な環境を確保することが重要である。
(2) 整備期間中においては,適切な事故防止対策を講じるとともに,工事に伴う車両等の出入り,騒音,振動,塵埃等の発生により,幼児児童生徒の健康や安全及び学習や生活に支障の生じることのないように特に留意することが重要である。また,適切な仮校舎を確保することも有効である。
情緒障害,自閉症又はADHD等の障害を併せ有する幼児児童生徒が在籍している場合は,騒音,振動等の刺激によるパニックや多動・衝動性等に十分配慮することが重要である。
なお,他の文教施設等と併置する場合は,その施設の利用者等の安全にも支障を生じることのないよう十分配慮することが重要である。
【肢体不自由又は病弱に対応した施設】:
病院等に併置する場合は,その病院等の業務や他の入院中の患者等の生活や安全に支障が生じることのないように特に留意することが重要である。
大臣官房文教施設企画部
-- 登録:平成21年以前 --