小学校施設整備指針 第6章 屋外計画

第1  基本的事項
1  教育的環境の向上
(1)  安全性や防犯性の確保に十分留意して各施設部分を計画し,設計することが重要である。
(2)  屋外における活動内容及び学年段階に応じた児童の人体寸法,動作寸法,行動特性等との適合に配慮して各施設部分を計画し,設計することが重要である。
(3)  現存する森,池,樹木等や自然の傾斜,段差等を有効に活用するよう各施設部分を計画し,設計することが望ましい。
(4)  校舎の屋上,壁面,テラス,ベランダなどについて緑化することが,環境を考慮した施設づくりという観点からも有効である。

2  総合的な計画
(1)  各施設部分・空間等は,相互の調和や全体的な景観に配慮し,全体としてまとまりのある連続した空間として計画し,設計することが重要である。
(2)  関係する建物部分との連絡に留意し,かつ,建物部分との景観上の調和を図るなど学校施設全体としてまとまりのある空間として計画することが重要である。
(3)  文化的な環境づくりのために,舗装面の装飾やモニュメントの設置等を計画することも有効である。
(4)  環境に配慮した学校施設としての取り組みとして,太陽光を利用したモニュメント,風力発電装置,雨水浸透トレンチ等の設置についても総合的に計画することも有効である。

3  地域社会への貢献
(1)  周辺の町並み,景観,雰囲気等と調和し,かつ,地域社会の核としてふさわしい印象を与えるよう計画することが重要である。
(2)  学校開放などの地域との連携については,学校教育に支障を生じさせることなく,地域住民等が円滑に利用することができるよう計画することが望ましい。

第2  屋外運動施設
1  共通事項
(1)  運動の種類,利用形態等に応じ,必要な機能を確保するよう計画することが重要である。
(2)  学校開放時の利用も考慮し,クラブハウス,運動器具庫,水栓等の配置,便所,更衣室等の附属施設との連絡等に留意して計画することが重要である。また,必要に応じ,周辺住民等への影響に配慮しつつ夜間照明等の設備についても計画することが望ましい。
(3)  必要に応じ,日除けのための施設を適当な通風の得られる位置に設けることが望ましい。

2  屋外運動場
(1)  各種運動等の実施に必要な面積,形状等を確保することが重要である。
(2)  構造及び仕様は,表面を平滑にし,適度な弾力性を備え,適度の保水性と良好な排水性を確保するよう計画し,設計することが重要である。
(3)  表層部分の材質は,維持管理の方法,ほこりの発生防止等に十分留意しつつ,運動の内容に最も適した種類を選定することが重要である。
 芝生を用いる場合には,気候・土壌条件,維持管理方法等を考慮し計画することが重要である。
(4)  固定施設等は,児童の発達段階,利用状況等に応じ,必要な種類,数等を検討し,十分な安全性及び耐久性を備えた仕様のものを選定することが重要である。
(5)  固定施設等については定期的に安全点検を行い,破損箇所の補修を行う等日常的な維持管理を行うことが重要である。
(6)  固定施設等は,十分な動作空間を確保し,陸上運動やゲーム,ボール運動などの実施に支障とならないよう周辺部等にまとめて配置することが重要である。

3  低学年用屋外運動場
(1)  必要な面積,形状等を備えた低学年専用の運動場を計画することが望ましい。
(2)  低学年児童の学習・生活領域に近接させて計画することが望ましい。
(3)  運動場の各部は,十分な安全性を確保するよう留意して計画することが重要である。
(4)  芝生を用いる場合には,気候・土壌条件,維持管理方法等を考慮し計画することが重要である。
(5)  固定施設等は,児童の発達段階,利用状況等に応じ,十分安全であるとともに,運動技能の向上につながるよう計画することが望ましい。
(6)  揺れ,回転,滑降等を伴う固定施設等の設置については,安全性確保の観点から慎重に対処することが望ましい。

4  屋外プール
(1)  水槽部分は,利用内容等を考慮し,長さ及び幅を適切に設定し,必要な水面積を確保することが重要である。
(2)  水深については,適正な深さで,急激に変化しないよう計画し,見やすい位置に水深を表示することが重要である。また,低学年児童の利用,児童の安全性,地域住民の利用等を考慮し,水深の可変も有効である。
(3)  低学年児童が楽しく遊ぶことができるような形状等を工夫したプールを計画することも有効である。
(4)  水槽及び附属施設の各部の材質は,耐食性に十分留意して計画することが重要である。特に,水槽の材質は,安全かつ衛生的であるとともに,維持管理のしやすいものとすることが重要である。
(5)  適切な浄化装置を設置することが重要である。排水孔には吸引事故防止のための防護措置を講ずることが重要である。
(6)  プールサイドは,十分な広さを確保するとともに,滑りにくい仕上げとすることが重要である。
(7)  附属施設は,利用状況等に応じた適切な面積を確保し,見学者の動線の設定に留意しつつ,児童等が利用しやすいよう配置することが重要である。
(8)  必要に応じ,安全管理,救急処置等のための施設を計画することが望ましい。
(9)  周囲に,遮へい板,囲障壁等の施設を設けることが重要である。また,防犯設備の設置も有効である。
(10)  利用期間の延長や見学者等のため,プールに上屋を設けることも有効である。特に,寒冷地や屋上型の水泳プールについては,保温効果をあげる観点からも有効である。

第3  屋外教育環境施設
1  共通事項
(1)  生活,理科,総合的な学習の時間等の学習活動における利用内容,利用方法等に応じ,効果的に活用することのできる機能を備えるよう施設種類,施設内容等を適切に計画することが重要である。
(2)  児童数,利用状況等を考慮して必要な面積その他の規模を確保し,適切な設備の種類,数等を計画することが重要である。

2  屋外運動広場
(1)  児童の興味と関心をひくような種類の施設,設備等を計画することが重要である。
(2)  学年段階に応じた児童の体力,運動内容等を考慮し,運動技能の向上に資するような施設規模,設備の形状,寸法等を計画することが重要である。
(3)  施設の形状,設備の機能及び形状等は,児童の運動能力等を考慮し,十分安全に計画することが重要である。

3  屋外集会施設
(1)  地域との連携,交流の場としての活用を含め,各施設の利用目的等に応じ,ステージ,観客席,炊さん設備,食事のための施設など必要な設備・施設を計画することが重要である。
(2)  語らい,憩い,交流等の場は,ベンチ等の配置,植栽,意匠等を工夫してふさわしい雰囲気に計画することが重要である。

4  屋外学習施設
(1)  観察,実習等のための適切な植物,魚,動物等を選択し,組み合わせて計画することが重要である。
(2)  水生植物,水生動物等の観察を行うことのできるような小川,池等を設ける場合は,適切な水深等とし,水質の保全に留意して計画することが重要である。
(3)  敷地内に地域の自然を確保した生物の生息空間(ビオトープ)を計画することも有効である。

第4  緑地
1  共通事項
(1)  植栽のもつ機能を積極的かつ効果的に学校施設に取り入れることが望ましい。
(2)  維持管理の方法を十分検討しつつ,樹木の成長等の状況を十分予測し,長期的な展望のもとに緑化計画を策定することが重要である。
(3)  土地的条件,気候的条件や樹木等の特性を考慮しつつ適切な植物材料を選定することが重要である。
(4)  明るい雰囲気を作り出し,学校への愛着や思い出につながり,地域の人々が誇りや愛着をもつことのできるよう計画することが望ましい。
(5)  校地内に十分な緑化の空間を確保することのできない場合などにおいては,安全性に十分留意しつつ,建物の外周部,屋上等を緑化に活用することも有効である。

2  樹木
(1)  樹高の高い樹木をまとまりをもたせて校地周辺部,校舎周囲等に配植することも有効である。
(2)  郷土産のものを中心に,四季の変化,生態,生理等を観察することのできるような樹種を選定することが望ましい。
(3)  樹木の配植は,目的とする機能を有効に発揮することができるよう樹種,機能等に応じ間隔,配列等を設定し,校舎内や敷地周囲等からの見通しを妨げない計画とすることが重要である。
(4)  校地周辺部への樹木の配植は,周辺地域等へ支障を及ぼすことのないよう配慮しつつ,周辺地域の景観と調和し,良好な景観の構成に貢献するとともに,学校のもつ象徴的な役割を表現することができるよう計画することが望ましい。
(5)  校舎等の建物周囲への樹木の配植は,室内の採光,通風等に支障を生じることのないよう計画することが重要である。
(6)  樹形,配植する空間の規模との釣合等に留意しつつ,1本又は数本の樹木を前庭部,建物周囲,校庭等にポイント的に配列することも有効である。

3  植え込み
(1)  低木による植え込みを,前庭部,校舎等の建物周囲,法面部,沿道部等に計画することも有効である。
(2)  植え込みを計画する場合は,維持管理や防犯上死角の原因とならないことに十分留意しつつ,目的,場所等に応じた適切な樹種を選定し,ある程度の密度をもって配植することが望ましい。
(3)  樹高の高い樹木と組み合わせる場合には,植え込みに日照障害を生ずることのないよう留意して計画することが重要である。

4  芝生
(1)  芝生のもつ効用を,維持管理及び植栽場所に十分留意しつつ,効果的に活用することも有効である。
(2)  使用目的及び使用場所に適した種類の芝を選定することが重要である。
(3)  樹木等と併用する場合は,芝に日照障害を生じることのないよう留意して計画することが重要である。

5  花壇
(1)  設置位置は,日当りがよく,目につきやすく,かつ,管理に容易な場所とすることが望ましい。
(2)  栽培する草花等の種類は,開花の時期及び期間,管理の難易等を十分検討し,適切なものを選定することが望ましい。
(3)  形状等については,複雑な形状及び過度の広さとすることは避け,周囲をレンガ,ブロック等で縁どり,適当な規模に区画することが望ましい。
(4)  花壇とは別に,花壇面積に応じた十分な苗場を用意しておくことが望ましい。

6  生け垣
(1)  潤いのある親しみやすい環境を構成する上で,侵入防止,目かくし,防じん,防音等遮へいの必要な部分に生け垣を計画することも有効である。
(2)  生け垣を計画する場合は,場所及び目的に応じ,生け垣の種類や使用する樹木等を選定し,防犯上も考慮し計画することが重要である。また,景観構成上も有効となるよう配植することが望ましい。
(3)  校地周辺部に計画する場合は,目的とする機能の確保に留意しつつ,変化をもたせ,厚みを感じるよう計画することが望ましい。
(4)  校地内の施設の境界に計画する場合は,目的とする機能の確保に留意しつつ,区画する施設その他の背景と調和し,かつ,校地内の良好な景観を構成するよう樹種,配植等を計画することが望ましい。

第5  その他の屋外施設
1  門
(1)  通行部分の幅は,児童の通行量が最大となる時間帯の通行密度を勘案して十分確保することが重要である。
(2)  門廻りの囲障等の仕様,配置等に留意しつつ,必要に応じ,門扉を境界線より後退させて配置することが望ましい。
(3)  門扉を設ける場合には,安全に開閉することができるよう計画するとともに,心理的な圧迫感を与えることのないよう意匠に配慮することが重要である。
(4)  学校が地域の中で果たす象徴的役割を表現することのできるような象徴性・文化性に配慮した意匠とすることが望ましい。
(5)  不審者の侵入防止や犯罪防止等の観点から,死角とならない場所に配置し,門の施錠管理を適確なものとすることが重要である。また,防犯カメラや赤外線センサー,インターホン等の防犯設備を,必要に応じ門の周辺に設置することも有効である。
(6)  見通しのきかない位置に門を設けざるを得ない場合は,門の施錠や開閉による来訪者の出入管理に特に留意することが重要である。その際,障害者や高齢者の利用に支障が生じないよう配慮することが望ましい。
(7)  外部からの来訪者を確実に確認できるよう,来訪の際は必ず受付場所へ立ち寄る旨の表示を門等に掲げることが重要である。また,誘導のための案内図やサインを必要に応じ門の周辺に計画することも有効である。

2  囲障等
(1)  囲障は,地域状況に応じ防犯にも留意しつつ,周辺環境に調和し,開放的で親しみを感じられるよう計画することが望ましい。
(2)  囲障を計画する際,特に防犯の面からは,周囲からの見通しを妨げるものは避け,視線が通り死角を作らないものとすることが重要である。また,隣接建物等から不審者の侵入が心配される状況では,囲障について十分な高さや形状を確保することが望ましい。
(3)  防犯カメラや赤外線センサー等の防犯設備を,必要に応じ囲障の周辺に設置することも有効である。
(4)  生け垣とする場合には,維持管理や周辺への影響について十分検討し,適切に樹種を選択し,配列することが重要である。
(5)  運動場と校舎等の建物との位置関係,運動場周辺の住宅,道路等の状況等に応じ,防球ネット,フェンス等を計画することが望ましい。
(6)  囲障,防球ネット,フェンス等については,十分な耐用性や地震時の安全性を確保するよう設計することが重要である。

3  駐車場,自転車等駐車場
(1)  必要最小限の自動車や自転車等の駐車及び円滑かつ安全な出入りに必要な面積,形状等を計画することが重要である。
(2)  出入りに伴う騒音,排気ガス等が学校教育活動や周辺に影響を及ぼすことのないよう計画することが重要である。
(3)  不審者の侵入防止や犯罪防止等の観点から,死角とならない場所に配置し,来訪者を適確に確認できる構造とすることが重要である。

前のページへ 次のページへ


 

-- 登録:平成21年以前 --