国立大学等のキャンパス整備の在り方に関する検討会(第1回) 議事要旨

日時

平成24年8月7日(火曜日)15時30分から17時30分

場所

文部科学省 東館5階6会議室

議題

  1. 国立大学法人等のキャンパス整備の在り方に関する検討について
  2. 国立大学法人等のキャンパス整備の在り方について
  3. その他

出席者

委員

伊香賀委員、石黒委員、上野委員、小林委員(副主査)、澤野委員、田村委員、鶴崎委員、中西委員、西村委員、古山委員(主査)、山重委員、山田委員、齋藤特別協力者

文部科学省

清木文教施設企画部長、長坂技術参事官、山下計画課長、山﨑参事官(技術担当)、笠原計画課整備計画室長、堀田企画官、阿部補佐 他

議事要旨

<○:委員の発言>

・本検討会の主査・副主査を選定後、古山主査、小林副主査より挨拶。

(1)国立大学法人等のキャンパス整備の在り方に関する検討について

・事務局より資料1・2に基づき、本検討会の趣旨や検討範囲、検討の位置付け、論点例について説明。

(2)国立大学法人等のキャンパス整備の在り方について

・上野委員より資料3に基づき事例紹介「キャンパス整備と公共性」

○丸1公共性、丸2持続可能なキャンパス、丸3生きた実験室や研究室、をテーマに事例紹介。

○イエール大学は、広大なキャンパスを都市にように計画しており、キャンパスマスタープランにおいて、公的要素(土地利用・建物の形態・オープンスペース・歩行者動線・自動車道・駐車場・サイン・ライトアップ)のフレームワークを明記している。

○大学の中には、研究室や実験室等の特定の者が使用する空間と、オープンスペース等の公的空間があるが、これまで公的空間に対して十分な整備の投資が行われてこなかった。また、単体建物の設計指針はあるが、公的な空間には整備指針・指標がなかったのではないか。

○今後、公的な空間がキャンパスの基盤であるという考え方や、キャンパスを都市のように計画をするという考え方が重要になる。 

○持続可能なキャンパスのキーワードになるのは、大学経営、公共性を持ったミッション、環境である。環境は、いわゆるエコロジーだけではなく、人と人との交流の空間を含む大きな意味での環境が重要である。

○公的性格の高い空間から順に整備を行うことや、実験室や研究室等の特定の者が使用する空間については、一定レベルまで国費でやるとしても、それ以上の整備は外部資金で対応するという考え方もある。

○経営面から考えて、継続的に維持管理できる施設規模を考えなければいけない。

○2008年のG8大学サミットで採択された「札幌サステイナビリティ宣言」において、キャンパスは実験の場であると同時に教育の理想的な教材であり、大学はサステイナブル・キャンパス等の活動を通して次世代の社会づくりに貢献することができる、ことが提言されている。

○交通問題やCO2削減といった課題を解決しつつ、交流や出会いの場をつくった例や、キャンパスの全ての建物の屋上にソーラーパネルを設置している例など、キャンパスを生きた実験場としてサステイナビリティを目指した取組がある。

○大学のミッションを単純なキーワードで表し、それを旗に書いてキャンパス内に掲げておくだけでも、キャンパスで生活する人たちがミッションを共有し意識を高めることができる。

・鶴崎委員より資料4に基づき事例紹介「魅力あるキャンパス環境の実現に向けて」

○丸1キャンパス環境の魅力の多様性と評価の曖昧性、丸2多様なアクティビティーを支えるキャンパス環境、丸3魅力あるキャンパス環境の創出に向けて、をテーマに事例紹介。

○キャンパスの魅力について、一般的には鑑賞性、象徴性、伝統性等の美観的要素がある。また、学内の利用者としては機能的要素が重要であり、学外の利用者としては公共的要素が重要であり、大学経営層としては投資効果がどうであったかという経営的要素が重要である。最後に、それらをどのようにつくり上げたかという計画的要素があると考えられる。このようにキャンパスの魅力となる要素は多様である。

○学生、教員、職員、学外の利用者等のステークホルダーが評価をする場合、キャンパスの魅力となる要素に対する評価の観点や重みは異なる。

○キャンパスの魅力となる要素を評価する場合、定量的に評価することは難しく曖昧性というものがあるのではないか。

○キャンパス内では、当然のことながら、教育研究活動が行われている。学生がいろいろなところで自習やディスカッション、作業を行っている。アカデミックなアクティビティとしては、学会等が開催され、プレゼンテーションやディスカッションが行われる。秋になれば、学園祭等のイベントがある。キャンパスを実験の場として活用したり、地域の人がキャンパス内に入ってきて利用することもある。このようにキャンパスは多様なアクティビティを支えている。

○交流を仕組むということが計画論としてあってもよいのではないか。例えば、メイン動線の横にいろいろなたまりの場を設けたり、なぜかそこを通りたくなるようなコリドーがあるといった機能と魅力が兼ね備わった仕掛けがあるとよい。

○キャンパスの利用者は、学生から学外者まで多様な属性の人がおり、それぞれの間で交流があることをイメージし、キャンパスをつくることが重要である。

○アリゾナ大学では、キャンパス計画委員会に、学生や地域、隣接する都市の代表者等のステークホルダーに参加してもらいキャンパス計画をつくっている。

○クレムソン大学では、キャンパス計画の方針・目標を立てて、それをブレークダウンして具体的な案につなげている。その過程において、ユニバーシティレビューというものを行い、単なる意識調査ではなく、綿密な意識調査やディスカッションを行い、学内の意見をたくさん取り組むようにしている。

○キャンパス計画づくりの中で、コミュニティーの参画や自治体の計画と連携させていくことなど様々なかかわりがあれば、キャンパスの質が向上し、地域社会との交流も生まれてくるのではないか。

○地域への貢献や地域住民も利用できるオープンスペースの整備等を行うためには、エリアマネジメント的な視点を持ってキャンパスの整備を行うとよい。

・事務局より資料5に基づき、国立大学等のキャンパスの現状について説明。

○自分の大学の危機感を感じていることが重要であり、この危機感が次のステップへ展開する手掛かりとなる。危機感というのは、例えば、大学の外部空間が乏しいというハード的なことだけでなく、大学経営あるいは大学そのものの存在にかかわるようなソフト的なことと併せて考えていくことが必要である。

○キャンパスには公共的な空間があり、大学を地域の防災拠点としてほしいというニーズは高い。

○新潟大学では、危機管理計画をつくる際、最初に議論になったのが実際の災害対応において、何の機能を持つべきかということである。1番目が大学に関わる人の安全、2番目が地域住民の安全確保の支援、3番目が大学の事業継続、4番目に学術的な資料の保全、として危機対応活動における優先順位を定めた。

○危機というのは、軽犯罪等の割と日常的に起きやすいが全体に影響しないものと、地震等の災害のように発生確率は低いが全体に影響するものがある。この2つのことを踏まえてキャンパス計画を考えていく必要があるのではないか。

○ロシア、中国、韓国、台湾といった国々では、近年、キャンパス整備に投資を行い大学を魅力的にして、留学生を引き付けている。日本においてもグローバル人材の育成が言われている中、国際競争力という観点から危機感を持った方が良い。

○国内においても、私立大学の中には、学寮を国際化してキャンパスのグローバル化を図っているところがある。

○大学が地域貢献の一つとして生涯学習への対応が一層求められてくると思うが、子育て支援やバリアフリー等に配慮して、多様な人たちに対して開かれたキャンパスをつくるということも重要。

○中教審大学教育部会において、日本の学生は学習時間が足りないと言われている。その一因として、日本の大学には学生たちが学び合う場が少ない。アメリカの大学では、学生たちが学び合う、いわゆるラーニングコモンズというものが出来上がっている。

○もう一つの課題として、寮の問題がある。UCLAでは、キャンパス周辺の土地を購入して学寮を整備している。そうすると、学生は授業が終われば寮へ戻り、また、キャンパスへ行き、遅くまで開館している図書館で学ぶことができる空間ができている。学寮の中にも、ラーニングコモンズのような場ができており、お互いが学び合うことができる空間をつくっている。

○キャンパスを魅力的にしていく上で、学生たちが長い時間、大学の中に滞留して、学び合う場を空間的につくることが必要である。

○国際化という観点から、学寮の中で留学生と日本人学生が一緒に学び合うことができると、キャンパスが魅力的になる可能性がある。

○カレッジスポーツに力を入れることで、外部資金の調達と地域の核となることができる。UCLAでは、学生が使用していない夏休みの間、1か月ほどサッカー場をレアルマドリードに貸しており、期間中、毎日サッカー場で練習するので市民がたくさんキャンパスにやってくる。

○私立大学には、魅力的であろうとする強い動機がある。学生に来てもらうということを念頭に置いたとき、魅力的でなければ生き残れないというところがある。国立大学にはその動機が弱いと考えられる。

○学生にとって魅力的であるということが大切であり、学生の意見を聞くことは重要である。この検討会において魅力的なキャンパスにするための仕掛けを考えられるとよい。

○学生の意見を取り込む際には、学生が主体性をもって建設的に参画できる仕組みが必要であり、専門家がうまく主導・調整できるとよい。

○キャンパスの魅力を持続するためには、緑地の手入れや清掃等のメンテナンスができる人員体制や予算を伴わなければならない。

○大学キャンパスには大きなスペースがあり、再生可能エネルギーの利用などいろいろな可能性がある。それが周りの地域に対しての一定の貢献ができる拠点にもなり得る。

○アメリカの大学では、施設管理に多くのスタッフがおり、地域の雇用も生み出している。国立大学は、オープンスペースや建物自体の維持管理の仕組みがまだきちんとでき上がっていないのではないか。

○今までは、大学と地域の連携というと産学連携が中心であった。これからは、少子高齢化等のいろいろな行政課題がある中で、大学は地域にとって大きな資源であり、地域の課題解決につながるような連携をしていくことが重要である。

○連携を持続するためにはお互いにメリットがなければいけない。また、仕組みや交流するための場所というのも重要であり、様々な分野で連携していくためには、関係者や学生たちが集まって話し合うことができる場所がなければ連携による取組が具体的に進まない。

○まちづくりの観点から、単に地域のシンボルとしての存在だけでなく、大学を生かしたまちづくりを行いたいということで、千葉大学・東京大学・千葉市・柏市で一緒に街づくりのコンセプトをつくり、地域全体を地域の資源として活用できる街づくりを目指している。

○サステイナブルがより重視される中、大学は節電の取組等のサステイナブルな取組を地域社会に向けてうまく情報を発信することで、社会のモデルを示すことができる。あるいは、未来社会といったものを見せることができる。

○大学キャンパスは長期休暇中にどのように活用されているのか。長期休暇中の活用の仕方を考えることによって、大学に求められている新たな役割に対応できるのではないか。

○国立大学法人化以降、学部が自ら資金を調達し独自に建物を建設してしまうことも多い。こうした中で、大学キャンパス全体の統一性、アイデンティティーをどう確保していくかが問題となっている。

○これまでの学生寮は経済的援助の面が強く、家賃が低額なので、十分なメンテナンスができなかった。今、学生寮の経営が成り立つように大きく計画を見直しており、もう少し学生が大学に滞留できないか考えている。

○スペースや土地に関して、各部局にコスト意識を持って空間を使用してもらうため、維持管理のためのお金をチャージすることを検討中である。

○近年、重点的な投資・計画的な整備が進められて耐震化が推進される一方、キャンパス環境を維持するということがないがしろにされてきたところがある。

○UCLAの副学長級と寄附について話をした際、寄附が集まりにくい耐震補強は州の予算を重点的に使い、それ以外の整備は多様な財源により整備していると聞いた。キャンパス整備は、寄附をはじめ地域との連携等の多様な財源を活用した整備手法を考えていけるのではないか。

(3)その他

・事務局より資料6に基づき、今後のスケジュールについて説明。

お問合せ先

文教施設企画部計画課整備計画室

(文教施設企画部計画課整備計画室)

-- 登録:平成24年10月 --