第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画

平成18年4月18日
文部科学省

 平成18年3月28日に閣議決定された第3期科学技術基本計画(以下「第3期基本計画」という。)では、国立大学法人、大学共同利用機関法人、独立行政法人国立高等専門学校機構(以下「国立大学等」という。)の施設の整備について、国は「卓越した研究拠点、人材育成機能を重視した基盤的施設について、老朽施設の再生を最優先として整備する観点から、第3期基本計画期間中の5年間に緊急に整備すべき施設を盛り込んだ施設整備計画を策定し、計画的な整備を支援する」こととしている。
 平成13年に策定した「国立大学等施設緊急整備5か年計画」(以下「前5か年計画」という。)において、優先的に取り組んできた狭隘解消整備等の実施により、教育研究環境が充実し、教育研究の進展、先端技術を取得した研究者の養成、新技術の開発などにおいて一定の効果が現れてきている。しかしながら、国立大学等施設の現状は、老朽化した施設が増加し、次世代をリードする研究者など優れた人材の養成や創造的・先端的な研究開発の場の確保が困難になりつつある。
 国立大学等の施設は、世界一流の優れた人材の養成と創造的・先端的な研究開発を推進するための拠点であり、科学技術創造立国を目指す我が国にとって不可欠な基盤であることから、このような施設の状況を踏まえ、文部科学省では、第3期基本計画期間中における「第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画」(以下「本計画」という。)を策定し、国立大学等施設の重点的・計画的整備を支援する。


1. 計画期間
   本計画の期間は、第3期基本計画期間(平成18年度から5年間)とする。


2. 基本方針
   前5か年計画により、優先的に取り組んできた施設の狭隘解消は計画どおり整備されたものの、老朽施設の改善は計画の半分程度にとどまり、その後の経年による老朽改善需要とあいまって、老朽施設は増加した。また、平成13年度以降新たに設置された大学院への対応、若手研究者の教育研究活動への対応、新たな診断・診療方法の開発や医療人に対する研修・実習への対応など新たな教育研究ニーズも発生している。
 このため、本計画においては老朽施設の再生を最重要課題とした上で、併せて、新たな教育研究ニーズによる施設の狭隘化の解消を図り、人材養成機能を重視した基盤的施設及び卓越した研究拠点(以下「教育研究基盤施設」という。)の再生を図る。
 また、大学附属病院については、先端医療の先駆的役割などを果たすことができるよう、引き続き計画的に整備を図る。

(1)  人材養成機能を重視した基盤的施設
   人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国にとっては、世界一流の優れた人材の養成が不可欠であり、そのための基盤となる施設の整備・充実が不可欠である。このため、国際的に通用する高度な人材養成機能の中核である大学院について、大学院教育の実質化等の教育内容・方法の改革・改善に伴うニーズに対応するとともに、各高等教育機関等に求められる多様で質の高い教育を実施するために、個性・特色ある教育内容・方法が展開できる教育環境の充実を図る。
 また、優れた若手研究者等が、自立して研究できる環境の整備や生活面の環境整備を図る。

(2)  卓越した研究拠点
   我が国が世界に貢献し、国際的な責任を果たしていくためには、卓越した研究拠点に国内外の優秀な研究者や学生を集め、世界水準の学術研究を推進していく必要があり、施設の整備はそれにふさわしい魅力ある研究環境を整える上で不可欠となっている。このため、優れた教育研究機能を持つ世界水準の独創的・先端的な学術研究の拠点を形成するための整備を図る。更に、国立大学等が地域の知の拠点として機能し、地方公共団体、民間企業との共同研究など社会等との連携協力を推進するとともに、国家的・社会的課題への対応などでプロジェクト的に実施される他大学や公的研究機関との共同研究等の連携協力を推進する研究環境の整備を図る。

(3)  大学附属病院
   国立大学附属病院は、一般の医療機関と異なり、高度先進医療や医学系人材養成など卒前卒後の臨床教育の場であるとともに、先端医療の先駆的役割を果たす場であり、近年の医学の進歩に伴う医療の専門化、高度化への対応が不可欠である。また、地域における中核的医療機関としての機能も果たしており、災害時においては医療の拠点としての役割が求められることから、施設の耐震性等安全性の確保を図る必要性が極めて大きい。このため、一層社会貢献できる病院として再生するため、前5か年計画により進められた再開発整備に引き続き、着実に計画的な整備を図る。


3. 整備内容
   国立大学等において必要な整備面積は平成17年度末において約1,000万平方メートルに達しており、このうち、各国立大学等における教育研究の活性化や現下の厳しい財政状況等を踏まえ、緊急に整備すべき対象を明確化し、重点的・計画的整備を図る観点から、次のような施設を整備の対象とする。

(1)  教育研究基盤施設の再生
   教育研究基盤施設の再生に向け、老朽再生整備及び狭隘解消整備を行う。
併せて、安全・安心な教育研究環境を確保するため、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」の一部改正を踏まえ耐震改修整備を図る。
1 老朽再生整備(約400万平方メートル)
   教育研究基盤施設の整備充実を図るため、老朽施設の再生に当たっては、教育研究上著しい支障がある施設に関し、次の要件を総合的に勘案しつつ整備を図る。
1 耐震性が著しく劣るものであること。
2 基幹設備の不備など著しい機能上の問題を改善することにより、優れた教育研究成果が期待されるものであること。

2 狭隘解消整備(約80万平方メートル)
   新たに設置された大学院、若手研究者のスペース確保等、新たな教育研究ニーズへの対応については、既存施設の有効活用等によりスペースの確保を図ることを基本とし、このような施設マネジメントによる対応が困難で、真にやむを得ないものについては新増築による整備を図る。

(2)  大学附属病院の再生(約60万平方メートル)
   大学附属病院は、先端医療の先駆的役割などを果たすため再開発整備を進めているところであり、引き続き、一層社会貢献することができるよう、着実に計画的な整備を図る。

(3)  上記(1)及び(2)の整備を行うための所要経費については、具体的な整備対象施設を特定せず、これまでの実績に基づき試算すると、現時点で最大約1兆2,000億円と推計される。
 なお、現下の厳しい財政状況を踏まえ、国立大学等においては、これらを実施するための自助努力による新たな財源確保の可能性について積極的に検討するとともに、文部科学省においては、そのための支援を行い、事業の円滑な実施に最大限の努力を払うこととする。


4. 具体的実施方針
   前5か年計画において、施設の効率的な利用や弾力的・流動的に使用可能なスペースの確保が図られた。このことから本計画の実施に当たっては、文部科学省による支援を基本としつつ、国立大学等が取り組む施設マネジメントや新たな整備手法による整備等のシステム改革を一層推進するため、以下の方針により行う。

(1)  国立大学等は、前5か年計画における成果も踏まえ、全学的視点に立った施設運営・維持管理やスペースの弾力的・流動的な活用等の施設マネジメントを一層推進する。また、前5か年計画において取り組んできた寄附・自己収入による整備など、国立大学等の自助努力に基づいた新たな整備手法による施設整備を引き続き推進するとともに、地域再生・都市再生を推進する等の観点から、産業界・地方公共団体との連携協力による施設整備を進める。
 なお、事業の実施に当たっては、国立大学等の公共性に鑑み、政府全体の公共工事コスト縮減対策を踏まえ、コスト縮減の取組や適正な執行を行う。

(2)  文部科学省は、(1)で述べたような、国立大学等における施設マネジメントや新たな整備手法による施設整備等の取組をさらに促進するために、必要な制度の見直しを行うとともに情報提供に努める。

(3)  個々の施設整備に当たっては、国立大学等からの意見を聴取しつつ、当該施設の現況や利用状況の点検等を含む適切な調査・評価を行い、それらの結果に基づき実施事業を厳選する。その際、これらの国立大学等における施設マネジメントや新たな整備手法による整備などのシステム改革への取組等を積極的に評価する。

(4)  毎年度の予算編成に当たっては、政府全体として財政構造改革に取り組んでいかなければならない厳しい財政事情であることを踏まえ、施設整備に係る投資の効果を最大限発揮させることとして、必要な経費の確保を図っていくものとする。


(文教施設企画部計画課整備計画室)

 

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