イノベーション実現のための財源多様化検討会(第6回)議事録

1.日時

平成28年3月18日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省  東館  15F特別会議室

3.議題

1.各大学の取組状況等について
2.その他

4.出席者

委員

橋本座長、上山委員、菅委員、大山北海道大学研究推進部長(川端委員代理)、進藤委員、武田委員、安藤委員、木村委員、佐藤大阪大学財務部長(小川委員代理)、上野山委員、遠藤委員、渡辺委員、田中委員、須藤委員、吉村委員

文部科学省

坂本産業連携・地域支援課長、山下大学技術移転推進室長、西島大学技術移転推進室長補佐、小河大学技術移転推進室専門官、濵大学技術移転推進室企画調査係長

5.議事録

【橋本座長】    定刻を過ぎましたので、ただいまから、イノベーション実現のための財源多様化検討会の第6回を開催いたします。6回目があると知らなかったのですが、第6回もありまして……。
  本日は、どうも御出席いただきましてありがとうございます。
  本日は川端委員の代理で、北海道大学研究推進部部長の大山様、小川委員の代理で、大阪大学財務部部長の佐藤様においでいただいております。なお、岡島委員は御欠席です。
  では、配付資料の確認をお願いいたします。西島補佐からお願いします。

【西島室長補佐】    資料の確認をいたします。まず、本日の議事次第が1枚ございます。続きまして、資料1-1、吉村委員によります「産学官連携による共同研究の強化に向けて」、それから、資料1-2、日本経済団体連合会様の「産学官連携による共同研究の強化に向けて」、それから、資料2、横のスライドになっております各大学の取組状況についてでございます。それと、参考資料としまして、12月28日に出しました「本格的な産学連携による共同研究の拡大に向けた費用負担等の在り方について」の本検討会の報告書でございます。以上でございます。御確認ください。

【橋本座長】    よろしいですか。では、進めさせていただきます。
  本日の流れですが、昨年末に取りまとめました報告書を受けて、経団連は早速ばちっとしたものを書いていただいたみたいで、それを御説明いただきます。その上で、各大学もばちっと進めていただけると信じておりますので、その状況を御報告いただきます。その上で、事務局から戦略的産学連携経費の検討状況について簡単に説明いただきます。じっくりと議論をしたいということであります。どうぞよろしくお願いいたします。
  では、最初に経団連から、吉村委員、お願いいたします。

【吉村委員】    経団連の吉村でございます。今、橋本座長からお話がございましたとおり、2月16日付で産学官連携による共同研究の強化に向けてということで、資料の1-2で配っていただいたものを対外公表させていただいております。それでもう一つ資料の1-1です。私の名前で配らせていただいているものがありますが、基本的にはこの提言のサマリーをパワーポイントで御紹介するものであります。プラス一つぐらい提言に書いていない紙も一つ付けてみましたので、そういう意味で私の名前で出させていただいております。それで、簡単にパワーポイントの資料を使って、提言の内容メインで御説明をしたいと思っております。
  では、ページをめくっていただいて、基本認識のところを御覧いただきたいと思います。昨今、第4次産業化革命と言われているようなグローバルな構造変革の下で、我が国の企業が既存の事業領域を超えた新しい領域、ここでは革新領域と書いていますが、そういったところにおける競争力の強化が急務になっております。そのためには、基礎・応用及び人文・理工系などの幅広いリソースを持つ大学あるいは研究開発法人とのオープンイノベーションを加速する必要があるということでございます。他方、我が国の大学あるいは研究開発法人のマネジメント体制につきましては、こうした形のオープンイノベーションを行うには残念ながら十分とは言えないところがあると見ております。
  そこで、今回改めて産学官連携による共同研究の強化に向けて、大学・研究開発法人に改革してほしいと思っている内容、あるいは政府それから産業界に必要な取組といったものを提言させていただいたという次第でございます。
  3ページを御覧いただきたいと思います。こちらは言わずもがなですが、本年1月の安倍首相の施政方針演説であります。御存じのとおり、新しい科学技術基本計画の最大のテーマはオープンイノベーションであること、それから研究開発法人には世界中から超一流の研究者を集めて、大学は経営を革新して積極的な産学連携など攻めの経営を促すといったことが書かれております。経団連としても、こうした安倍政権の方針と同じ考えで、主体的にオープンイノベーションを加速する思いが強いことを最初に申し上げておきたいと思っております。
  その上で、4ページ目を御覧いただきたいと思います。ここでは、産学間連携の現状を記しております。御存じのとおり、我が国の産学官連携は総じて低調ということかと思います。例えば、産学官連携による研究成果の事業化率、16%にとどまっています等々いろいろ書かせていただいています。例の共同研究の金額規模、平均231万円といったデータも出ているということであります。ここでの検討会の議論は金額の話が結構出ました。我々としては、産学官連携の重要な役割の一つである研究成果の社会実装の実現という点を意識して、それは重要だと提言では強調しております。
  5ページ目を御覧いただきたいと思います。ここでは、我々なりに将来に向けた産学官連携のあるべき姿のイメージ図を書いております。今後は、企業と大学研究開発法人が将来のビジョンを共有して、基礎研究・応用研究、それから人文系・理工系を問わずリソースを結集させてイノベーションを加速すると、そういった本格的な共同研究が重要だということです。そして、その実現に向けては、企業との間で「組織」対「組織」の共同研究ができるように、大学や研究開発法人の改革もお願いしたいということでございます。
  それで、この提言をつくるに当たって、経団連では独自にアンケートも実は実施しております。その調査の範囲では9割を超える企業が、今申し上げたような本格的な共同研究に期待していることが手元には明らかになっております。それから、個別技術の研究開発に加えて、将来の基幹技術の開発あるいは新しい基幹産業の創出に資するような研究開発を一緒にやりたいという声は、業種を特に限らず、いろいろな業種の方から集まっていることは手元のデータとしても思っております。
  そのような中、6ページを御覧いただきたいと思います。ここでは、大学・研究開発法人に求めたい事項の全体像を簡単に示しております。本格的な共同研究を実行するためには、産学官で資金、知、人材、これが好循環することが不可欠です。これらの3点について、上半分が速やかな対応をお願いしたいところ、それから下半分は共同研究成果の最大化に向けて中長期的な視点で改革を進めていただきたいといったことに整理をして、表の形で示しております。これは具体的には、企業ニーズを捉えた研究開発プロジェクトを企画して提案するような機能、それからそのプロジェクトを効率的に推進する管理機能、それから研究成果を生かすための知的財産マネジメントの機能、こういったものの強化などを挙げています。中長期的には、大学や研究開発法人が、政府の運営費交付金などに依存し過ぎないような財源の多様化を図っていただいて、将来に向けた投資を自ら行うような体質に転換していただくということ、そして、それらを下支えするための意識改革も進めていただきたいことを述べております。
  7ページ目を御覧いただきたいと思います。ここでは、速やかな対応をお願いしたい点の中で、最も重要な点のイメージ図を書いております。まず、大学や研究開発法人は、トップのリーダーシップに基づく本部・マネジメント機能の強化を通じて、大型の産学官連携をけん引できるような体制を構築していただきたいということでございます。地方の大学でも、学内に限らず地域のリソースを束ねて、地域の産業や資産を結びつけたようなローカルイノベーションの拠点をすることもあると思います。そういったときのマネジメント力の強化は同じように必要だと思います。
  8ページ目、ここだけは提言に書いていない話です。そういう意味では私案と書いてみました。要は、その「組織」対「組織」などいろいろ申し上げているわけですが、イメージ図は、要は例えば、共同研究に関わる情報や権限が、自然に本部機能に集約されるシステムを実現するようなルール整備を考えたらどうかというイメージで書いてあります。企業と大学の窓口を本部機能の方に絞ってしまって、研究室の間で直接的な共同研究案件の組成を原則的に禁止してみる、こういったルールを例えばやってみて、その代わりに本部機能は共同研究を拡大するというコミットメントをもって、様々な支援をしていくというようなシステムでございます。
  提言には書いていないですし、これはあまねくどこの大学でも入れてくださいと言うつもりはないです。「組織」対「組織」で本部機能がしっかりと機能を発揮していくための一つの考え方として、このようなものも考えてみたらどうかということであります。ここで、このあとこの仕組みについていい、悪いという議論をしたいというつもりではありません。一つの考え方として、御提示してみたいと思って示してみたものでございます。
  それで、9ページ目を御覧いただきたいと思います。ここでは政府の求められる点について述べています。政府においては、産学官連携に積極的に取り組む大学・研究開発法人を高く評価をして、運営費交付金などの様々な面で優遇をするインセンティブシステムを設計していただきたいということを記しています。あとは、現在検討が進んでいる指定国立大学、卓越大学院などそういったところにおいても、本格的な共同研究の拡大を重視した制度設計を行っていただきたいということを書いています。
  10ページ目は、産業界あるいは経団連の取組を示しております。我が国の大学・研究開発法人が、これまでルールを申し上げてきたような欧米に匹敵するような組織的な体制を構築していただけたあかつきには、産業界は大学・研究開発法人に対する投資、それから人材の交流、こういったものを積極的に拡大する意思がありますということを明確に示しています。具体的な表現として、この下に提言本文が引いてありますが、全部は読み上げませんが、枠で囲ってあったとおりの文章を述べております。大学改革、研究開発法人改革に大いに期待することと、それから改革を進めていただくと同時に、産業界もそれを認識しながら今後の本格的な産学官連携の強化に踏み出していきたいというメッセージを書かせていただいたつもりでございます。
  雑ぱくですが、以上でございます。

【橋本座長】    ありがとうございました。大変きちんと必要性等々まとめていただきました。特に、よくここまで書いていただいたと私は本心、思っているのですが、10ページ目の最後の1行です。「教育・研究の基盤強化も見越した積極的な投資(費用負担)を進める」とここまで経団連が書かれるということは、これは実は経団連はすごく大変な組織で、こういう文章を入れるのは物すごく大変な作業です。同友会の文書とは違って、経団連の文書は非常に重いです、参加企業の。ですので、最後の1行は、実は大変なことだと思っております。ここまで経済界として前向きのあれを示していただいているということです。大学側としては、是非この機運を使っていただくことは物すごく重要です。これも状況によってはすぐまた消えてしまうかも分からないと思いますが、今は大変盛り上がっているときです。今非常に盛り上がっているときなので、この機会を是非うまく使っていただきたいというのがこの委員会のやってきた、私主査として仰せつかった中においては非常に強く思うところであります。
  では、産業界の方から御説明いただきましたので、次は各大学の取組状況です。
  まずは、川端委員代理の大山様からお願いいたします。

【大山部長(川端委員代理)】    本日、北海道大学は経営協議会の開催日でございまして、申し訳ございません。川端は欠席でございますので、私の方で代わりに御説明させていただきます。
  資料は、文科省のフォーマットに従って2ページ分ございます。まず、前段の御説明を申し上げます。これをやったのは、川端理事が3年前に着任して担当するようになってからいろいろ進んでおります。その前は、北大は非常に図体が大きいですので、共同研究の契約の権限というのは部局が担当する形で、余り本部で把握することはなかったわけです。産学連携本部というものがあって、そこで契約書のひな形みたいなのをつくり、部局にお任せのような形でしたので、先ほど経団連様の文書の中にあったようなもとの形というものがあったかと思います。
  そこを共同研究の大型化、それから本部のマネジメントを入れるということで、そこの一番上に書いています組織型の共同研究の体制整備です。一つは、従来の産学連携本部の機能を強化するため、産学・地域協働推進機構という方法で衣替えをするとともに、ミッションを変えたことが一つでございます。中にFMI推進本部とございます。フード・アンド・メディカル・イノベーション推進本部ということで、COIを担当する部署も一緒にこの機構の中に入れております。同時につくりましたのが、産業創出分野あるいは産業創出講座、産業創出部門と言われるものでございます。これは置く場所によって講座や分野や部門など名称が変わりますが、本部できちんとマネジメントをする。それから、イコールパートナーシップによって、知財ポリシーを決めるというような産業創出分野という制度をつくりました。原則、これで言うと、共同研究契約の中で人を雇用できるような大型のものを扱うということでつくり出した制度でございます。現在これで規模の小さいものもございますが、大体主なものは800万、900万規模のものが6件まで契約が行われております。
  そのようなことから2番目にございますが、共同研究の大型化に向けたアクションプランです。北大の場合、第3期の中期計画の中に、そこにあるような企業と対等の立場で研究を行うイコールパートナーシップに基づいた産業創出、ここは部門になっていますが、これを開設ということで産学協働研究を推進することを中期計画上でうたっております。
  3番目、大学の中での連携、融合した共同研究の実施でございます。産学・地域協働推進機構とは別の組織で、大学力強化推進本部というものをつくっております。この中にオープンイノベーションステーションという仕掛けを用意しております。大学の中にある産学協働の大型のプロジェクトというのは幾つかあります。これの横の橋渡しをするようなプラットフォームをつくることを構想いたしました。現在医療・創薬科学あるいは食科学などのプラットフォームを置いて、そこの横の連携をつくる。これはまだ立ち上げたばかりなのでまだ本格的に動いているわけではありませんし、なかなか動き出すまでに時間がかかると思います。できれば、創薬・医療科学についての企業様とのやり取りをこのワンストップでやって、学内でパイプラインを通してやるような仕掛けができないかということで考えているものでございます。
  それから、学内における産学連携活動の位置付けの向上でございます。まず、部局のインセンティブです。総長裁量経費の部局への配分を資源の再配分という格好で、北大は今年度から開始をしております。そのときの指標が結構何十とあります。その中の一つに、先ほど申し上げた産業創出分野等の組織型共同研究の実施状況を指標資料の一つにしています。そういううまくいっているところは、余計に予算を配分する仕掛けを既に用意しております。それから、個人向けのインセンティブとしましては、北大は教員の年俸制を取り入れました。その年俸制の際の、業績評価の評価項目の一つに、共同研究、受託研究の受入状況を用意いたしております。
  次のページにまいりまして、費用負担の考え方でございます。2番目にございます共同研究の契約支援や体制の整備でございます。先ほど申し上げたように、大型の組織型の共同研究については、産学・地域協働推進機構に一本化ということで、こちらで全部一元化して扱う形になっております。そうしたところで扱う大型の、産業創出分野の契約の中で、できれば28年度に費用負担の考え方を新たな考え方でやるようなモデルケースをつくれないかと今考えているところでございます。北大としての考え方は、そこの真ん中にございます。必要な経費は、基本的の直接経費に計上する方向で経費を精査することと思っております。現時点で一般的なルールは少し後回しにして、具体的な相手様の企業が出たときに、その中で個別のケースをいろいろお話をしていくことでやった方がいいのではないかということでございます。そうしますと、規程の見直しについては、交渉の進み具合によって必要に応じて改訂、制定することがあり得るかと思います。
  また戻りまして、一番上です。費用の「見える化」に関しては、既にオープンスペースに対するスペースチャージの設定や光熱水料の受益者負担は、これは既に実施済みという形になっております。
  そのほかに書いておりますが、そのスペースマネジメントの確立や費用負担の在り方、コスト意識の確立、財務上の見通しの構築を、学内的な意識の啓発をやっていかなければいけないと同時に、モデルケースになるような相手様の企業ですね。これは実は、次世代大学力強化推進会議という経営協議会とは別に、半数以上が学外の方で構成される諮問会議があります。委員の方が大型の共同研究を既にやられている企業様の役員の方が結構入っていらっしゃいます。その会議を既にやりまして、そこで本検討会の報告書と北大の考え方を御説明申し上げて、これからこのような考え方でやりたいと申し上げて、これからいろいろな交渉を図っていこうと思っております。
  全体を通してスケジュールを見ますと、結構実施済みと入っております。基盤整備はかなり進んでいると思います。ただ、正直申し上げて、事務側で用意したときにはもう少し控えめだったのですが、川端理事に上げましたらこのような形になりました。川端理事の目から見るとこのように見えるということでございます。
  以上でございます。

【橋本座長】    ありがとうございます。
  では、進藤委員、お願いします。

【進藤委員】    東北大学の進藤でございます。初めに、私きょう10分、15分早めに中座しますのでおわび申し上げておきます。
  東北大学は、各大学の事例も参考にさせていただいて、いろいろ同様のことを書いたのですが、多いのでポイントを中心にかいつまんで御紹介いたします。
  まず、共同研究の大型化のページです。「組織」対「組織」の上二つは、組織的連携や共同研究講座をやっていますということなのでいいとして、二つ目のところにありますように27年1月から産学連携の改善のためのプロジェクトチームという部局横断でつくっておりました。その下にあるように、27年4月に、一つ目の中間報告を考慮して産学連携機構という産学連携に関係の深い部局、それから特別組織のようなものを発展的に糾合するような機構を作りまして、そこに企画室を置いておきました。
  今回のこの間接経費の見直しを含めた大型産学連携の話につきましても、その次の枠の3ポツにありますとおり、27年の12月から明示的に検討を開始しまして、先週の3月14日がその2回目でした。そのチームでは大体イメージとしてはいいという感じになりつつあります。
  その具体的な中身ですが、大学間・専門分野うんぬんの枠の、三つ目のところにあります。これは産学連携とは直結しないのですが、本学全体で学術連携や経済・社会的課題に応える戦略的研究で、非常に学際的なものを大学として選んで学際研究重点拠点という形で、大学として認識して推していくという形にしようと。
  先ほど吉村委員がおっしゃったように、いろいろな人がばらばら研究や連携をやっていて、大学としてもどれを本当に推していいかまず分からないので、大学として推していくべきものをまずは選ぼうということです。現在それの内部的な選定作業をちょうど今やっているところでございます。この中には必ずしも産学連携を要しないものもあると認識していますが、産学連携を要するものに対して、先ほど議論してきた間接経費やいろいろな産学連携の改善パッケージを当てはめていくことができるのではないかと思っております。特に基本的なことですが、産学連携機構のコーディネーターのようなものが、それぞれのところに張り付くことによって、先ほどの窓口ばらばらではなくて、本部としても認識ができるような形にしていきたいと考えております。
  ページをめくっていただきまして、費用負担うんぬんのところです。これは飛ばし飛ばしになりますが、まず、三つ目の箱の、規程の見直しのポツのところにありますが、本学の場合、共同研究の間接経費率は基本は10%という実は内規があります。更に踏み込んで間接経費率が10%を超えて共同研究を実施することも可能となっています。つまり、実際に共同研究する部局と企業様との間で、もっと要ることが合意された場合に、例えば20%となったときには増えた10%は本部と部局で協議して学内配分率を定めますという規程をつくって、必要であればもっと間接経費を頂くことも成立するようにしています。既に年間に4件から10件ぐらいの事例もあります。ただ、これはどちらかというと、その研究をされている先生と企業の間で、えいやっという感じで決めている部分があります。ここで議論していた本当に必要なものをきちんと積算してという意味ではまだ少し違うわけです。
  ここの仕組みを部分的に活用しまして、先ほど申し上げた主要な学際連携拠点の産学連携部分については、個別の積み上げ方式できちんと計算をしていくことをモデル的にやっていこうかと考えております。それが間接経費の算定方法の、一つ目のポツでございます。五つ目のポツにありますが、先ほど申し上げた間接経費率10%を超える場合があり得ることについては、既に想定されているのですが、3月に規程を改定して明示的にそういう共同研究契約を締結できる形にして盛り上げていこうと考えております。右側にありますが、ここに具体の大型案件を特定して、そのプロモーションの一環として導入することになる可能性が高いというのは、今正に申し上げた個別の事例を選んで、それに合わせて積算をして関連の企業様と御相談していくと考えています。現状学内で議論したときには、そのためのコーディネーターは圧倒的に人的に質量が不足しています。これが交渉によって認められていけば、きちんと整備ができて体制が整うというようなことを多分いろいろ御相談していくのではないかと考えております。
  以下、まだまだできていない部分も幾つかあります。このページの、一つ目の枠の二つ目にあります原価計算等の更なる「見える化」に資するための管理会計システムの構築は必要だという認識があります。ただし、まだ、今のようなモデル的なことをやってからということで、この先に検討しようと考えております。それから、下の二つ、教員の人件費の考え方あるいは専門的な管理費についても、今の事例をいろいろやりながら考えていきたいと思っております。
  ざっくりした説明になりましたが、本学は以上でございます。

【橋本座長】    では、続きまして、武田委員、お願いします。

【武田委員】    それでは、東京大学の武田がお話させていただきます。東京大学の書いてあることの行が少ないので、熱が下がっているのではないかと思われるかもしれません。それぞれの文言は極めて重要なものでございます。皆さん御存じのように、五神総長が去年の4月からなられまして、2番目にあります「東京大学ビジョン2020」というものが去年の秋に出されました。その中でアクションプランがあるのですが、その中で社会連携、産学連携のところが強く押し出していらっしゃいます。その中で幾つか改革をしておりまして、それが実を結んでいるところがございます。
  一番初めの、特に「組織」対「組織」による共同研究に向けた学内の体制整備状況です。これは正に積極的に今やろうとしております。どれをやると今申し上げられないのですが、それの反映したものが東京大学では産学連携本部というものがございます。産学協創推進本部に名称を変更、もう少し拡大するという意味でございます。それで、それを象徴するように事務組織が1部1課から1部2課になりまして、大いに進めると。連携本部長と部長が別だったのですが、本部長が兼務しないようになりましたので、そこも増えています。しかもここには書いてありませんが、本部長が大学執行役というものになります。それは言っていいのか分かりませんが、4月1日付でそうなりますので、それだけそこに力を入れる、特に「組織」対「組織」のところに力を入れるということでございます。
  その2番目もその中でビジョンの中に工程表をつくっておりまして、上の組織の変更も含めてやっております。来年度からは進捗管理について産学連携本部を中心にして行います。
  それから、3番目の大学間・専門間・異分間、こういった共同研究に関しましては、これも今までも表面的にはありました。学内部局間連携による異分野間連携共同研究を実施しやすい体制の強化、組織をつくるというよりは、それがやりたいものがすぐできるような体制にするということでございます。その一つの例が、東京大学が理工系プラス文科系があるわけですが、科学技術に例えば日本の文化的なものが加わったことによって、新分野が発展することが求められていると思います。それが日本らしい貢献になるし、経済界にも重要です。ですから、例えばアートが入ったテクノロジーをやりたいということでそれがやりやすい体制にしておりまして、実際に応募を開始しております。来年度から実行するという体制になっております。それから、その次はそれの一つの例です。産学の共同研究を形成する試みとしまして、一つは筑波の研究所群、一つはTIAというつくばイノベーションアリーナに東京大学が入ることがございました。それは昨年末に入ることになったのですが、それはつくばの組織とそれは産総研、NIMS、KEK、筑波大ですが、そちらとともに産官学の共同研究の幅を広げるということで、その間口を広げてつくば-柏-本郷イノベーションコリドーという言い方をしておりますが、そこで開始をしております。
  たまたまそこのところ真ん中に柏でございますが、私が今所属しております新領域創成科学研究科というものは、そもそも東京大学が全ての学部から人を出してつくった組織でございます。そういう意味では異分野間、専門分野間の共同研究をする上で、最も適するところであることから、まずはそこから取っかかりでやりなさいということで、それは全学に広げていくための工夫をしているところでございます。
  その次に学内のお話です。東京大学TLO、これは100%東大の出身の特許を扱うようなところです。東京大学が持つ知的財産を共同研究のその人たちが、そこのスタッフが共同研究の営業活動をするということです。ここから大型共同研究に発展する道をつくっております。
  それから、そのほかです。これを実施するために産学連携のアドバイザリーボードミーティング、そういったものをやっております。それから、我々が一番気にしておりますのは、産官学の共同研究をやったときの利益相反マネジメント体制、知的財産ですね。そういったことを必ず言われますので、先ほどの産学連携本部が拡張するのもその辺を考慮した積極的な取組であるとお考えいただいて結構でございます。
  裏はそれを含めて実際費用負担の考え方、割と淡白に書いております。中身の特に一番下の方の人件費相当額の直接経費への計上の方向性を検討しておりますし、費用の「見える化」という意味はやっております。これまた、実はこれも総長のイニシアティブで各学部の経費というか費用を全て出してしまいまして、それを基に評価し合ってやるということ、費用の「見える化」をもう学内では行っております。それを考慮して、ここで議論になったような、どのように共同研究の費用をどうやって使っているかということ、建物も含めて研究費の整備などどのように使われているかを確実に「見える化」して、議論に乗れるようにすることをしている次第でございます。
  以上です。

【橋本座長】    ありがとうございました。
  では、安藤委員、お願いいたします。

【安藤委員】    東京工大の取組を御説明します。東大さんと違って少し書き過ぎましたので、この資料は後で見ていただくことにしてポイントだけ申します。
  「組織」対「組織」という観点では、ちょうど東京工大は4月から研究、教育全て組織が変わります。その中で実は産学連携というのは、いろいろな大きな書き物では社会貢献に含まれているようです。今までは研究の一部としてやっていましたが、大学の執行部に直接つながった企画立案のところに、この産学連携の意見なり、こういうことを動かすという意思が情報共有できるような場所に、産学連携の本部というか機能を持たせようということです。これについては、4月から始まる組織改革より少し遅れる格好ですが、今構想を練っているところです。早々にこれをつくらなくてはいけないと思っています。
  第5次の基本計画の5年で1.5倍というものが、ちょうど数だけでいいますと、当局で2030年までトップ10のリサーチユニバーシティに入るのにちょうど率としてはいいです。5年で共同研究を1.5倍に増やすのは非常にチャレンジングです。それを続けていくと、2030年には外部資金のうち、計算だけで行くと4割ぐらいになるはずです。世界のトップの大学は大体そういう比率です。そうしますと、今少し持ち出しでやっている共同研究はとても耐えきれなくなります。
  ですから、そういう意味で費用の見直しを、増やす方向だけではないですがやっています。例えば、URAの配置などは、前回私がここで発表したときに、間接経費などからも全然そういうものに入っていない費用がかかっていると言いました。そういうものも共同研究にほぼ比例して領域を配置するつもりです。そうすると、計算の定義が違ってきてしまうと思っています。それから、組織、組織という意味では、東京工大だけではないでしょうが、個人のプレイが多かったです。これは今文部科学省さんが進めている産学共創プラットフォームや橋渡し機能をちょうどいいきっかけですので、組織と組織あるいは異分野協働という形を強力に進めていこうと思って体制をつくっています。
  そこで今一番欠けていると思って、我々がまず進めていますのは、むしろ学内のリサーチマップ、これを完全にしないとベンチャーキャピタルとお付き合いするときもお話していて、そこが実は一番欠けている気がします。外ばかり見ているだけではなくて、学内の我々は1,100人の先生がいますが、そのリサーチマップを今一生懸命つくっているところです。
  それから、この表の下から二つ目の学内における産学連携活動の位置付け等というところの3番目です。先ほど言いましたように、この産学連携を一生懸命やる分野と、我々リベラルアーツあるいは基礎分野などそこの方にも、間接経費という言い方がいいかどうか分かりませんが、それで稼いだ余力が回るようなシステムにしないと東京工大は特に理工系ですのでかたわになってしまうという気がしています。そこは非常に重要なポイントなので、先ほど経団連さんの書いていただいたことは非常に有り難いと思っていました。
  次のページに書いてある項目の中の費用の「見える化」です。以前の議論はそのままではできないと思っていますのは、教員のノウハウやそういう形が、例えば審査員になっていれば分かりやすい、特許になっていれば分かりやすい、それから時間を使えば分かりやすいです。実際には、運営費交付金の何倍ものお金を使っている方もエフォート率は少ししか書いていないわけです。その場合には、ずっと積み上げてきたノウハウやアイデア、そのものは「見える化」しようといってもできないと今私は思っています。ですから、これをきちんとそういう形で逆に評価するような時間やものを買った値段ではなくて、その意味の「見える化」をしないといけないという気がします。
  それから、間接経費の算定方法や何かのところでは、特に海外との共同研究を増やすのも一つ重要なポイントです。この間文部科学省さんがやられたワークショップでも、国際本部という話が出てきました。共同研究の定義が大分違う場合があります。例えば、日本の場合にはアイデアを出して、例えばですが図面ができてそれをつくって、それでいいものができるかどうかの保証までするかどうかということで、金額は実は一桁ぐらい違います。それで、海外のところとの契約書には、そこまでを含めて幾らという金額をサインさせられる場合がたくさんあります。ただ、日本の場合には、どちらかというと、例えばですが極端な例で言いますと、施策まで含めてこちらでやるからアイデアだけを出してくださいと。その費用で共同研究というと、先ほどの230万という話になってしまいます。一つそこに保証という問題、例えばですがなぜA、Bという特性が出るかが入ってきますと、当然ですが一桁上がります。ですから、研究所とお付き合いする場合と、企業のビジネスをされる営業の部分の方と結ぶ契約書は、正直言いまして一桁違います。ですから、そこも含めて、ただ今大学は共同研究の金額で評価されます。活動が低いと言われてしまう時代です。そこは我々も少し、日本の大学は全てそうですが不利を今負っているので、どちらがいいか選ぶのももちろん重要なことですが、そこの「見える化」もしなくてはいけないと思っています。
  それから、教員の人件費は、前にお話したように、日本の文化で教員の人件費を外のお金を乗せるのはすぐにやろうと思ってもなかなかできません。この間何とか相当あるいは将来に向かってのお金などという言葉を使いましたが、はっきり言いますと、人件費を乗せるのは相当制度的、心象的に難しいのではないかと思っています。あとは最近いろいろありますオープンイノベーションや何かをするための場所が、東京工大はなかなか場所柄も厳しくて苦労しているところです。
  以上です。

【橋本座長】    続きまして、名古屋大学の木村委員、お願いいたします。

【木村委員】    12月28日の報告書で終わったかと思っておりましたが、その後の取組です。私どもはこの検討会の結果については、全て役員会でフィードバックしておりまして、それを受けまして以降の取組を申し上げます。
  まず、共同研究の大型化の「組織」対「組織」です。実務的にはそこにございますように、学術研究・産学官連携推進本部というのが中心となって担当する運営支援組織です。これは学部でも本部事務局でもない独立した組織で、もともとこれが平成26年から存在しておりました。ここを中心に本格的産学協同研究を推進するためのタスクフォースを設置し、検討を開始したところでございます。
  これは本年2月に開催をしました。そこで、その次の大型化に向けたアクションプラン等の策定を行っております。現在予定としましては、計画は第1から第3フェーズまであります。スケジュール感でいうと、民間企業の方からするとスピード感がと思われるかもしれませんが、大体28年4月以降、新年度です。国立大学法人でいうと、第3期の中期計画期間が開始するのに併せて進めていきます。
  それから、余り時間もございませんので少し飛ばします。裏面の方に学内のおける産学連携活動の位置付け等の向上がございます。これも先ほどの、東京大学の五神先生の事例がございましたが、本学も昨年4月に松尾清一総長が「NU  MIRAI2020」というアクションプランを策定しました。松尾総長自身が従前の産連本部長をされておりましたので、このアクションプランの中には産学連携をすることがはっきりと明示されております。今回この検討会を受けまして、産学連携活動の位置付けの向上に向けて、学内に位置付けを明確にするための取組を本年度中に推進をしていきます。
  それから、費用負担の考え方です。費用の「見える化」は、ここでのずっと御議論の結果、必要なものは出すことを念頭におきまして、きちんと精査に着手したところでございます。特に、URAの人たちがいろいろな活動をするときに、それが複数のプロジェクトを持っていると、そのプロジェクトごとに共通的に発生する費用は、間接費の配付ということで何らかの配付基準に基づいてそれぞれの産学共同研究にコストを配布していくことになります。一方で、直接経費等につきましては、どういう経費がかかるのかという積算はきちんとできると思います。それに付随する費用については、従前のとおり間接経費ということで、積算をしていく形で進めています。
  それから、規程の見直しです。現行の共同研究に加えて、本格的産学共同研究に関する規程を新たに設けたいと考えています。名古屋大学の場合も、大型の数千万円を超える大型のものもあれば、200万円以下の小さいものもあります。ただ、金額が小さいからといって、それ全部排除してしまうと産学連携をやろうというやる気をそいでしまう。ディスカレッジしてしまうので、それはそれとして今回ここで御議論いただきましたような大型のものについては別枠の規程を新設したいと。あわせて、間接経費、直接経費についても、学内の余り産学連携に縁のない研究されている方の間接経費のイメージは、競争的資金に付随する間接経費とお考えになりがちです。そうではないということも、新たにここで、規定で明示していきたいと考えております。
  それから間接経費の算定方法は、依然私どもはRAとのお話を提案させていただきました。それに加えて、共同研究の内容に応じてアワーレート方式以外の積算方式も考えております。特に、製薬会社との共同研究の中では、一部アカデミア主導の臨床治験があります。そういうところはまた別の考え方があるようなので、それはそれに適用するように柔軟に対応したいと考えています。
  それから、教員の人件費の考え方です。こういう大型の共同研究は成果やアウトプットにコミットするわけです。その成果を生み出すのに必要な工数がある程度想定されて、それに基づいて人件費を算定したいと。例えば、ある共同研究の成果を出すのに、100時間必要だとするならば100時間をセットさせていただいて、それを120時間かかるのか、80時間でできるのかというのは、アウトプットがあればそういうところで調整できるのではないかと考えています。
  それから、学生の人件費については、現行リサーチャーとしてRAの規程がございます。それをベースに共同研究用に修正したものを適用していきたいと考えています。本学の場合、産連本部にいるURAは企業の実務経験がある方が複数いらっしゃいます。そういった方たちに頑張っていただいて大型化に着手を進めております。
  以上です。

【橋本座長】    ありがとうございます。
  では続きまして、佐藤様、お願いします。

【佐藤部長(小川委員代理)】    最後になりました大阪大学の佐藤と申します。よろしくお願いいたします。
  大阪大学の報告書を受けてからの取組といたしましては、正直申しますと、まだこれからというのが実態でございます。共同研究の大型化に関しましては、「組織」対「組織」の学内の体制整備の状況ですが、ようやく産学連携室及び財務室のメンバーで構成されるワーキンググループを立ち上げたところでございます。今後来週に第1回を開催予定ですが、学内外の意見聴取や課題整理等を実施する予定としております。共同研究の大型化に向けて、大学の産学連携活動に対する組織的関与を今以上に更に拡大するための方策を検討する予定でございます。スケジュール感ですが、こちらで書かせていただいたのは平成28年の夏頃を目途にと、これは飽くまでワーキンググループとしての検討結果を取りまとめる予定でございます。なぜ夏なのかというと、本学といたしましては29年度から新制度の導入を目指しておりまして、それに間に合わせるためには学内の調整、学外の調整、学内手続等のことを勘案し夏頃を目途にまとめるように努力する予定でございます。
  続きまして、アクションプラン等です。こちらも今後大型化を促進するためのプランをワーキンググループで検討する予定でございます。本学の現状を書かせていただいておりますが、「組織」対「組織」により共同研究を行う共同研究講座や協働研究所がそれぞれ35、7、合計42、今現在動いております。これを更に増やしていく方向で考えております。
  異分野間等における連携・融合した共同研究等の実施につきましても、今現在も行っておりますが、更なる増加の促進方法等について検討する予定でございます。位置付けに関しましても、まずは教員の意識向上を促す方法等を検討する予定でございます。
  この共同研究の大型化に関しましては、今回の報告書を受けてソフト的な検討等をこれから行います。本学の目下一番の課題は、この大型の共同研究を受け入れるだけのスペースがないというハード的な問題が一番大きなネックとなっている状況でございます。
  続きまして、費用負担の考え方です。この費用の「見える化」につきまして間接経費に係るという表現になっていますが、実は間接経費だけではなくて「等」が抜けておりまして、直接経費等も含めまして、その定義や原価計算方式などについて検討する予定でございます。
  契約支援や経理・財務体制の整備につきましても、今現在本学の産学連携本部の知的財産部において、共同研究等の知的財産に関する契約状況等につきましては、全てチェックしております。今後はそれをどんどん広げていって関与を深めてきちんとバックアップしようと考えております。
  規程の見直しにつきましても、間接経費等の算定方法に関する検討結果に応じて所要の改正を行う予定としております。以下、説明は省略させていただきますが、基本はワーキンググループで全て検討して、それを学内に持ち上げて29年度までに取りまとめるという予定でございます。
  雑ぱくですが以上です。

【橋本座長】    ありがとうございました。一通り御説明いただいて、こうやって並べてみると大変しっかり進んでいるところとそうでもないところとはっきりと分かれて……。特に、名古屋大学さんはすごいですね。きちんと報告というか、ここでの検討をしっかり受けた上で、体制づくりでやっていただいているということで大変期待しております。後から、そこは特に産業界側からのいろいろな意見も頂きたいと思います。
  その前に、事務局から戦略的産学連携経費(仮称)となっていますが、その検討状況について説明いただきたいと思います。お願いします。

【西島室長補佐】    この本検討会におきまして、これまでの経緯、報告書の中において今後の産学連携活動の発展に向けた将来の投資、あるいはそうした活動に伴うリスクの補完、あるいは本部機能の強化といったことのための経費として、戦略的産学連携経費という形で仮称として報告書に書かせていただきました。そうした議論がなされてまいりました。
  そして、この戦略的産学連携経費につきましては、その趣旨から会計年度やあるいは中期目標のまたがりに関係なく、大学の中長期的な戦略のもとで活用できることが求められております。現在そうしたことに向けての産業界、あるいは公認会計士協会などからヒアリングなどを行うなどして、そうして戦略的産学連携経費の制度といいますか、実現をできるように進めているところでございます。検討は行っているところでございますが、具体的には、会計基準を今後どのようにして変えていくかどうか、あるいは税制上の問題、特に税については企業側としても経費、つまり損金として算入できるようにすることによって企業側にも出しやすいような形になれるように、そうした損金算入になれるような形にするための仕組みで、現在大学あるいは産業界の現場の実情などを聞きながらそうした課題の整備を行っているところでございます。できるだけ、早期のうちに結論を出せるような形で進めている、これが現状でございます。
  以上でございます。

【橋本座長】    ありがとうございました。以上で説明を終わりますので、これから残った時間で自由討議をさせていただきたいと思います。特に、費用負担の在り方、せっかく5回をかけていろいろ大学側と産業界とで議論して報告書が出て、かつ産業界側でそれを受けてまた産業界側からも出していただいたので、最初に述べましたように大型の産学連携を行う、大型、すなわち「組織」対「組織」の骨太の産学連携を行うというそういう方向で皆の意識が一致したわけです。この機会にどんと進める必要があると思います。ですので、各大学の取組状況等々に関して是非とも御意見を、特に産業界からの御意見を頂いて、その上で大学側がそれに対する参考にして進めていただく、あるいはそれに対する違った考え方等もあれば、意見交換していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
  いつも厳しい渡辺委員から、是非お願いします。

【渡辺委員】    各大学からの現状報告を聞きまして、まず感想から述べます。本格的な産学連携活動をやるために体制を整えようとしているということはよく分かります。一番大事なことは、231万の平均規模にしか達成していないということは、体制がそれぐらいしか受けられないような状況で大型のものを受け取る体制ができていないということです。だからこそ、これは学長、総長直下の活動として、どこが問題があって受けられないのかというような観点で、体制を変えていく、受けられるようにつくっていくには、部局だけでどうにもならないということです。そういう意味では、各大学、少なくともきょう御出席の各大学は全てそういう基本の立場、スタンスを理解して組織的にやろうとしているということで動き始めつつあると、そのように感じています。
  ただ、残念なことに、東工大の安藤先生がおっしゃるように、第5期の計画は5年で今の1.5倍にするということです。これは大学の中から見ると確かに大変なのでしょうが、外側から見るとそれぐらいできないなら一体何をやっているという話になります。海外との比較、あるいはきょう出てきた経団連からの期待度合いから見ると、それぐらい必死でやらないとやっていることにはならない。社会の期待はむしろそれぐらい大きい、あるいは少なくともそこまではやってくださいということです。
  ただし、体制を変えていくということだから大変な作業になることはよく分かります。大変だろうと思います。僕が企業にいてリストラを何回か経験していますが、大変な思いをしました。しかし、大変な思いをして乗り越えた瞬間に、何か晴れ晴れとした気持ちになって、従業員や関係者たちが本当にやってよかったというような気持ちになります。これで何か未来が開けたというようなそのような感じになる。だから、産学連携を大学の、特に国立大学に根付かせるのは全くそれと似たようなことで、当事者としては大変なことだろうと思います。
  それで、言いたいのですが、5年間で1.5倍にするとなると、もうきょうの時点で何月何日までにここを完了して、その次は1年後のここまでやってという最低限それぐらいの日程表が出てこないと、5年間かけてどこまで行くのか、2年でここまで行きましょうと言っているのは大体2年で終わることはまずないです。企業の私の活動ですと、それでは大体計画は未達に終わるります。だからこそ、最低限日程計画を持っていないと、もう日程計画がなければやらないと宣言しているのと多分同じような結果になるのではないかと心配します。
  それから、きょう組織を準備していることについては大いに安心はしました。一番知りたいところは、それでこの28年度は何件案件が増えるのかといって、今からもうすぐに案件の数字を追いかけていかないとお互いにそれこそ見えません。先生方に対して誠に申し訳ない口のきき方になると思いますが、頑張りますと言うだけだとお互いに進んでいるのか、進んでいないのか、どこに問題があるのかという解剖をしないといけないという意思表示も起こってこないわけです。
  ですから、日程計画とそれから数字で評価できる、一番は何件あるいは年間に増えた産学連携の金額が幾ら、あるいは経団連の方が明確に宣言しているように間接経費を取って構いませんと、出す用意はありますと。間接経費がどれだけ年間当たり増加してきたのか、これは多分大学側からいうと、皆さんが喜んでいただけると、大学側がそれだけ増えるのだったら、皆で全学協力してこの活動をしていこうというような形になる可能性がある大事な指標だと思います。
  ですから、件数や契約金額の増加や、あるいはそれに伴って今回のこの会議で決めた間接経費を収入として取ってもかまわないです。産業界は出す用意はありますと言っている、それが現実的にどれくらい増えていったのか。それがもう今からずっとリアルタイムで追いかけられるような、そういう仕組みをつくっていただきたい。お互いに見えるようにすれば信頼関係ができるのではないかと思います。

【橋本座長】    ありがとうございます。
  私もそこまで渡辺委員が言ってくれるとは思わなかったのですが、それぐらいこうやって先ほど申し上げた経団連がここまで書いたことは、これぐらい重いということです。ただ単にやりますと言っただけではなくて、書く以上本当に責任を持って書いていただいていることの、その意気込みというか、その重さを今の発言で大分私自身も強く感じたわけです。
  さらに、産業界側でも結構ですし、あるいはアカデミア側からでも結構です。それから菅委員、上山委員……。
  はい、田中委員、どうぞ。

【田中委員】    我が社の実例で少しお話をさせていただきたいと思います。経団連さんから2月にメッセージが出ました。実は、私どもは2年前に本格的産学連携をもっと増やさなければいけないと社内的に本当に決断いたしまして、CTOイノベーションファンドというものをつくりました。これは大型用に用意するファンドで、そういったものを御用意しました。単に大きなものをつくると、大体小さいものを減らしてつくることになってしまうことが多いのですが、それを防ぐために以前から事業会社で持っている共同研究には一切手を付けずに、私どものホールディングスが持っている枠の中でつくると。ですから、これまでの小型には一切手を付けずに、別枠で大型を御用意させていただいたという状況がございます。2年間でこのぐらいの規模にしようではないかと数十件の目標を置いて取り組みまして、実質その数を増やしました。
  でも、残念ながらほとんど増えたのは海外です。国内で取れきれないのです。御用意をしても取ってくださるところがないというのが実情でして、そこをうまく早く取れる形を取っていただきたいと思います。そのためには、渡辺委員もおっしゃったように、スケジュールを持って進めることが非常に重要なことで、私どもも2年という枠を決めて増やしたと。2年間でそこまで持っていくと、計画がないといきませんので、そういったものを大学の方々にも計画を置いて進めていただければと思います。
  以上です。

【橋本座長】    菅委員、どうぞ。

【菅委員】    本当に渡辺委員と田中委員のおっしゃるとおりで、まさしく大学を変えていかないといけない部分だと思います。私は産業にも関わっているのでそういうことはよく分かります。目標を立てて、それに向かっていって、上方修正するなり、下方修正するなりというのは、非常に重要なモチベーションになっているというのはよく出てきます。

【橋本座長】    最近総額3,000億円の会社になりました。ちなみに十何%持っています。

【菅委員】    ありがとうございます。話を戻します。吉村委員の私案は、私は実はもうほぼ同じことを考えています。若干違うところがあって、それを少し議論させていただけたらと思います。
  この図だと本部機能はこれまた研究室に矢印が向いているのですが、これはむしろ僕は逆ではないかと思います。研究室側は直接産学連携のものには関与していかないと、むしろ逆にそこから人が出て行ってその人が関与する。それは本部直轄の箱の中で、これは産学連携に特化した形でするなど、そういう形にして秘密保持も守りながら産学連携を推進していかないと、いつまでたっても同じような産学連携の形から脱却できないと思います。なので、各大学はもしこういう大型のことをやるのなら、それは研究室を切り離す。完璧に一つ箱をつくってその中で本当に密に産業の方と、それから研究室から出てきたアイデアの人とが連携して、そこを間接経費でしっかりとサポートするというビジョンを大学側がしっかりと持つ必要があるのでないかと思います。そうしないと、産業の方々が安心してオープンイノベーション等、わけの分からないことでぐじゃぐじゃにされるのは非常に心配だと思いますので、その点を非常にきっちりと決めるのが重要だと思います。ですので、矢印的にいうと、逆と思っていて研究室は直接しない。むしろ研究室は本部機能に人を出していく。そこを間接経費でサポートするなり、直接経費でもちろん人もサポートする。そこは本当に産学連携に特化するという、要は先生の研究の手伝いをしないということになると思います。そういう形ではいかがでしょうか。ちょっと議論していただければと思います。

【橋本座長】    産業界もそれは大賛成に決まっているので、こちら側が大学側が菅さんの意見はいつも何かそのとおりですが、なかなかそれを大学に入れるとなると大変な問題があります。組織間連携というのは、正にそうしないとどうやってインセンティブを与えるのかと考えたときに物すごく難しいです。口で「組織」対「組織」と言うのは言えるけれども、ではどれを実際の制度というか、それを制度でもあるし、あるいは実際の案件をそこで増やして産業界が求めるようなそういう体制でできるようにするためにはかなり大変なことを大学ではしなければいけない。今の極端な、極端というか理想的というか、それが菅委員の言われたことだと思いますが、いかがですか。きょう言われっぱなしになるとまずいと思いますので、大学側からどうぞ。
  武田委員、いかがですか。

【武田委員】    菅委員のおっしゃることは確かですし、先ほどの田中さんがおっしゃった海外企業しかないというのはもっともだと思います。それで渡辺委員が前におっしゃっていたことも通じるのですが、そういう意味では、ポスドクタイプの人だったら今のようなことができるだろうと思います。
  ただし、それは追求すべきものなのですが、我々は特に思っているのは博士課程に行った学生が一番の戦力です。東京大学、ほかも皆そうだと思います。結局彼らがそこで育たないと日本のこれからに対しては、大学レベルの工学系の学術もそうですが、それと産学共同研究にも役に立たないということです。
  ポスドクは外国人がなることが多いです。外国人もいいのですが、そこのところをドクターのところで産官学が今まで以上にやりやすい仕組みというのが、もう一つ先ほどのポスドクに加えて必要です。我々はそこのところで産官学と交流する仕組みをつくりたいと。今までのような工学系と言えど、ある意味では大学に残るための研究のようなものが多かったと思います。風向きは随分変わってきましたので、是非そこのところで教育も含めて海外の経験もあったりして、知的財産のこともよく分かったような、それでいてベンチャーマインドを持っているようなドクターの学生を育てるような、それでそこに我々は積極的に頑張りたいと思っています。そこに投資して、そういう人材を育てるのだったら出してやろうと思うような仕組みを一つはつくりたいと。今菅先生がおっしゃったようなポスドクタイプというのもありますが、それと並立でやれたらと思っています。
  以上です。

【渡辺委員】    よろしいですか。

【橋本座長】    どうぞ。

【渡辺委員】    武田先生がおっしゃるようなことはある程度は理解できますというか、想像がつきます。だから、正面から今の社会的な規範を超えることなく、こういう準備をしていくことになると相当時間がかかると、それはそうだろうと思います。だけど、一方では急がなければならないというときに民間人はどうするかというと、何か別の方法がないかと、あるいは長期的にはその準備を整えつつ短期的にできることは何かあるだろうと考えるのがビジネスマンの発想の、行動の癖というか、やり方です。そうでないと時間競争に負けてしまいます。
  例えば、適当な例かどうか分かりませんが、子育ての問題が日本中の社会で、特に都市圏で問題になっています。保育所の問題です。私は横浜に住んでいるのですが、女性市長、林市長が横浜で当選したら、あっという間に横浜は保育所問題が片付いてしまったのです。これはこうやればいいではないですかと。ちょっと臨時の校舎というか家を建てて、そこを保育所にしてしまって、あっという間に2年間で解決してしまったのです。待機児童をゼロにしてしまったと。それまで30年かけて日本中で誰も手がつけられなかったのを、やれるところからやってみましょうと言ったら、林市長は2年で解決してしまって、今東京というか安倍首相も何とかしなければならないというので、ここ1~2週間緊急の課題でやると言い出しています。だから、工夫をすると結構できることがあると思います。
  ですから、武田先生がおっしゃるように、本来はこう行くべきだと、それはそれで時間をかけてじっくりつくっていくと。ただし、やれるところからどんどん手を打っていく。先ほど二つの大学からスペースがないので困っていますと、それはそうだと思います。特に都会の中にある大学はスペースの問題は当然あると思います。民間人の発想だと、ではどこかで借りればいいのではないかと、あるいは共同研究のパートナーから、土地と建物を貸してくれないかとそこでやっていて、本格的に5年後にはここを拡張するからと。
  だから、やろうと思えばいっぱい知恵を出せるし、そのことが正にリストラに火を付けるということではないかと私は思います。だから、足元にやれることがあると。これは短期間だから少々無理でもたった3年我慢すればいいというようなことだったら、皆さんこれに価値を感じる人なら同意してくれると僕は思います。

【橋本座長】    いかがですか、どちらでも。菅さん、どうぞ。

【菅委員】    武田先生のコメントに対してですが、今日本の大学の、博士の学生さんは学位審査に縛られていると思います。1本論文を出さないといけないなど。例えばこういう箱に入った人は、そういう学位審査から少し違う視点でできる、要は大学の中での工夫で、恐らくそういう人は、インダストリーの人たちはむしろウエルカムかもしれない。別に博士という学位を持っていることがインダストリーの人たちにとって重要ではなくて、その学位が非常に役に立ったと結果としてそこにあることが非常に重要だと思います。
  だから、我々大学の先生の、頭の中で余りにも学部の決まり、専攻の決まりにすごく深く縛られて、それはほぼ自縛というか自分たちでかけている呪いなので、それを緩めるなど何かそういうことは、私は大学で総長が話し合って決めていけばいいと思います。それが規制緩和の一つではないかと思います。別に博士の学生はここに入れない、修士の学生でも構わないと思います。それがその産業のためにやる研究として位置付けられて皆が認知することがとても重要ではないかと私は思っています。

【橋本座長】    坂本課長、どうぞ。どうしてもしゃべりたくなるみたいで……。

【坂本課長】    すいません。先ほど菅先生のおっしゃったことを十分に理解しているか自信はないのですが、私は本質的に重要なところだと思っています。先ほどの各大学からの御発表にも一部触れていただいていますが、産学共創プラットフォームという新しい我々が今立ち上げようとしている制度です。非共創領域で産学の共同研究をもっと成長させるというこのシステムは、正に研究室から解き放った本部主導でシステムをつくることは必然的に起こってくるということを我々は想定をしています。そういうことを誘導したいと思っているわけです。これは我々の産学共創プラットフォームを待つまでもなく、はっきりともう幾つか大学さんでそういうものをつくられていたらと思います。
  例えば、木村先生、すいません。名大の未来創造機構ですか、あれは大型の産学共同研究をモビリティなど幾つかの柱を立てて、そこに部局を超えて研究者、それから学生を引っ張り出してきて教育研究を産学協働で行うと、そのために本部直轄でつくった仕組みですよね。はっきり言うとそういうものはできつつあります。明大さんができるのだから、東大さんができないはわけはないと思っている。どういう事情違いがあるか分かりませんが、そこの工夫のやり方というのは、はっきり言うといっぱいあると思います。それを是非我々は文科省として後押しをしたい。
  もう一つだけ言わせてください。今週の月曜日に、うちがやっているEDGEプログラムというアントレプレナー教育のシンポジウムで、コマツの野路会長が経済同友会で議論されていることを熱く語っていただきました。今正に議論していただいている間接経費の問題、あるいは人件費の計上の問題、これをやることは大学の何を変えるか。それは日本の大学ほど若手に冷たいところはないと、はっきりと野路会長がおっしゃって、若手をいきいきとさせるためにもっと民間企業は、産業界は大学に投資をすべきだとおっしゃいました。これはアメリカやドイツの、民間の研究費の規模を見れば、はっきり言うと野路会長は2,000億と言っていましたが、今受託研究含めて800から900ぐらいと思います。それはもう倍増以上できる、しなければいけない。それを産業界から望んでいるが、受皿を是非つくってくれということで物すごく熱く語られていました。ここで議論されていることはそれだと思います。いかに財政基盤をもっと強化して若手がいきいきとできるか、そのために大学の先生方是非頑張っていただきたいと、私はそのシンポジウムでも申し上げましたが、今ここで申し上げたいと思います。

【橋本座長】    総合科学技術イノベーション会議の議員になっておられますが、4月から常勤議員になって特に大学改革やそういうのをメインに引っ張る……。どうぞ。

【上山委員】    前置きが長過ぎました。僕はアカデミアのことも当然ながら関わっているので、この組織が動かすのが本当に大変な組織だということは実感を持ってよく分かります。幸か不幸か、例えば産連本部など既に形があるわけです。組織があって、そこに人が張り付いていて、今までやり方があるわけです。これを変えるということは、恐らく本当に大変なことだと思います。見ていてそこに関わる人は火だるまにならないといけないです。リーダーシップを出さないといけないと思います。きょうの御発表を聞いていると、これはどこが責任を持って、どこが旗を振って、誰がやっているのか余り見えない。進藤さんは、いつまで東北大学にいるのかなど、その辺はもうこの人がどの顔がどう見えてこの人は学内で……。

【橋本座長】    だんだん似てきましたね。

【上山委員】    すいません。学内でも多分間違いなく批判の対象になるわけです。これをやろうとすると、規程を変えないといけないし、計算の方法も変えないといけないし、スピード感を持ってという話が出て、それは正にそのとおりですが、大学ほど実はスピード感を語ると嫌がられるところはないので、それはもうある程度旗を振ってやらないといけないと思います。
  例えば、大阪大学でもここの中にある、僕は見ていてこのワーキンググループを立ち上げる、これは小川さんがやられるのですか。全部にワーキンググループです。これはワーキンググループの責任で、これは全部かかっているのですさまじい、実は全部やったらもう批判の対象です。これをやる人は覚悟がいるだろう、小川さんはやるのかと思いながら聞いていました。
  個別の人のリーダーシップが相当問われるだろうと思います。恐らく多分学長の人たちは意識を持っているのでしょうが、それを下ろしたときにどこがやるのか、誰がやるのかとなかなか見えにくくて、これは学内の中で相当議論しないといけません。例えばそれが学内で批判の対象になると、それは自分はいろいろなことを考えます。その中で自分は果たしてどういうプロモーションに関わっていくのか、学内のコンセンサスがどれくらい得られるのかといろいろな心配事が発生すると思います。それを超えてもやる人というのは一体どこにいるだろうかという感じがして、その辺は個別の大学の中で濃淡があると感じましたというのが私の印象です。

【橋本座長】    産業界の方、今のお話を聞いてはあっと思われましたでしょう。産業界では多分それはトップが言えばトップの責任で全部動くということだと思います。大学はなかなかそうなっていないです。
  田中委員、どうぞ。

【田中委員】    この会でいろいろとそういうお話を伺って、大学はそういうところと思ったのですが、だからこそ産業界をうまく使っていただきたいと思います。皆さんが変えようと思う同じ方向を我々は向いていますので、是非自信を持って学内で変えるとおっしゃっていただければ、後ろに何億と金を持った企業が付いているというように自信を持ってやっていただけたらと思います。
  以上です。

【橋本座長】    すばらしい発言です。上野山さん、是非後押しの発言をお願いします。

【上野山委員】    繰り返し議論されていますが、結局企業側としては、コミットメントがあるかないかだけです。だから、海外の方が期待が大きいのは、もう御存じのとおりコミットメントがあるから、それにかけてやっているだけであります。今回の御報告の中に書きにくいのかもしれませんが、今の大学の体制でどうやってコミットメントのようなことを表すかがポイントかという気がします。
  かつ、参考になるか分かりませんが、今の大学の先生方でコミットメントするのは難しいかもしれません。フラウンホーファーの研究所は、60ぐらいありますが、各研究所の所長がフラウンホーファーの所属と同時に大学の先生も兼ねているのだと思います。だから、大学の中の研究テーマをよく御存じで、共同研究テーマをつくられています。例えばそういうふうに大型プロの研究テーマなどを提案していけば企業の人はつくるテーマですので、かなりコミットメントをしたようなテーマを大学側が提案できるのではないかという気がしましたので付け加えます。
  以上です。

【橋本座長】    須藤委員、どうぞ。

【須藤委員】    私もいろいろな先生とふだんからお話をしていて、何となく発言しづらくなってきています。きょう実は午前中経団連に行って吉村さんともお話して、本部長ともお話して、この会議にどうやって出ようかという話もしました。先ほど説明のあったこの経団連から出ているところで、前提条件が相当入っています。ここをこうやって変えてくれたらこうします、その前提条件をもう1回きちんと確認してきてほしいと本部長から言われています。
  ただ、きょうの回答の中に入っています、かなりの部分が。多分大学としてはそこのところを頭に置いてこういうことを書かれていると思います。ただし、この資料は飽くまでも多分文部科学省に向かって書いているのではないかという気がします。産業界に向かってもう1回書き直してもらうと、経団連の我々がやっている委員会でそれを吉村委員から出してくれると思います。また、COCNとしても関連の企業に大学がこう言っていますと説明できます。それをしないと産業界は次の一歩は出せないので、まず大前提としてこれを産業界に向かって今の状態を書いていただきたいと思います。
  それを書くときに私が不満なのは、申し訳ないのですが、何となく一般的に書いてあるので、我々がこの大学に何を頼もうと余り浮かんでこないです。例えば、ある分野などこういうテーマでうちはやりたいのでやりませんかと提言が入っていると、今はやりのAIというのでも何でもいいです。これで大きな研究をやりたいというのを聞くと、例えば名古屋大学にこの前行ったときも特色あることをやっているのはよく分かるのですが、こういうところにしっかり書いてもらって、関連する企業全部に示してもらえると集まるのかと思います。
  一つはもう少しこういう具体的に大型の研究をうちの大学はやりたいというのを出していただけるといいかと思います。それから、もう一つはこれは話題で出ていましたが、既存の何を壊すのかというのが入っていると分かりやすいです。こうするというのはあるのですが、既存の何々を壊してこうすると、それがあると我々もイメージがつくりやすいです。今までこのような取組でやっていて小さなことしかできなかったので、それをやめてこうしますという、壊すところも入れてもらうと分かりやすい気がします。この2点を是非この中に入れていただきたいと思います。
  せっかくこれを議論してきたので何度も言っていますが、何とか実現しなければいけないというのは皆そう思っていると思います。きのうCOCNで各大臣集めて大きな会議をやりました。その中でも「組織」対「組織」と大臣も発言されているし、我々も言っている。「組織」対「組織」で大学を変えて、産官連携をやらなければいけないと思います。皆そうなので、どうしたら次の一歩を踏み出せるかというところを何かつくらないとまずいという気がしています。是非これを具体的に書いていただいて、そうしたら我々は自分たちの組織に対してそれをもう1回出そうと思いますので、よろしくお願いします。

【橋本座長】    いかがですか、ほかに。
  はい、上山委員。

【上山委員】    これはずっといろいろなことを勉強してきて思うのは、日本の大学の会計制度をきちんとやらなければいけないという気持ちはどんどん強くなっています。今後本当に勉強しなければ、僕自身も勉強して、方法を考えないといけないと思うのは、大学の会計に新しいシステムを入れるのはどういうやり方があるのか、あとはそういうことをやる大学はどこが出てくるだろうかとずっと考えています。
  もし、全部の大学とは言わないですが、そういうことの難しさと克服すべき課題とあるいは参照すべき外国の事例等も含めて、勉強しようという大学がありましたら、是非私のこの参加するところのCSTIのところと一緒にやっていただければと思います。そこから始めないと、言葉がうまくつながらないという感じが非常に強くしています。これは恐らく専門家の御意見を聞いてやらなければいけないと思います。そういう手立てがどこにあるか一緒に探していきませんかというのが私の提案でございます。

【橋本座長】    今、先ほどから出ているように、長期的にしっかりとやっていく話と、短期的にまずはドライブをかけて動きましょうと、この二つの話がありますね。もうそれは頭の中で整理しながら聞いていただいていると思います。今、両方必要だと私は思います。がっちりとしたものをどうしてもつくり上げないとこれはいけないので、これはある程度時間をかけてしっかりと議論をする。それとあわせて、この契機にどんと前に出ると、そうすることによって皆本気度も上がってくると、二つのアプローチがあると思います。それを意識しながら議論してほしいところです。
  遠藤委員、どうぞ。

【遠藤委員】    私も、大学の皆さんとの、共同研究の窓口みたいなところでやっています。最近大学の先生から新しい次世代の産学連携の研究会のようなものを立ち上げるので入ってくださいという話がございました。あとは個別の共同研究のところでも、大きなもので今までよりも大きな1,000万円、2,000万円で准教授の先生や助教の方をアサインするので、そういう新しい形をやりませんかという話も来ているということです。至近でこういう話は結構増えてきていますので、大学の先生方の中でも、大学の中も変わりつつあるし、我々もやり方を変えていかなければいけないなと非常に感じております。
  今橋本先生からもありましたように、早めにやらなければいけないことというのは確かに……。とにかく、何か形をつくってしまうと、モデルケースをつくってこういう形でやっていくという、出てから何かあったところで考えるのもありという感じも非常にします。そこら辺も一緒にやらせていただければ非常に有り難いと感想を持っています。
  それと長期的なところで、大きくなることは件数が減ってきます。ということはニーズといいますか、各大学さんはやれることを全方位ではとてもそのようなことはできるはずはないと思います。どういうニーズとのマッチングをしていくかということを将来的に考えていかなければいけないのかということ、その中で一つ大学ごとの特色を持ってプラットフォームをつくっていくというのは一つのやり方なのかと非常に思います。ですから、この大学ならこういうことができるという形もこれは一つの案、私の私案にはなりますが、そのような形でまたいろいろな場で意見交換させていただきながら、我々の意見も聞いていただきながらやっていければいいと非常に思っております。
  以上です。

【橋本座長】    ありがとうございます。
  渡辺委員、手が挙がっていましたが、いいですか。

【渡辺委員】    話がいろいろ飛びまして……。

【橋本座長】    いいですよ。

【渡辺委員】    先ほど言いましたように、足元でできるところを探して火を付けるというのは非常に大事なことです。それによって、いよいよ企業側も大学側も産学連携は大事だと社会が認識してくれるようになると。誰かが火付け役、少々やけどをするかもしれないけれども、でも誰かがやらなければ仕方がないから自分がやろうというような人が出てくれば動き出すと思います。既存のルールの中で全員協力して皆で仲良くやりましょうというと、体制変換は難しいです。間違いなく時間がかかるし、時間がかかれば皆に飽きられるし。せっかく今回これだけ大学側と産業界側がやるべきだと、ある意味で方向性としては完全に意見一致しているわけですから、そこで汗をかく人が出てこないともったいな過ぎると思います。

【橋本座長】    一番きちんと準備していただいたところに私には見えた、名古屋大学木村委員、どうですか。

【木村委員】    先ほど坂本課長からもCOIの話がありましたが、既存の学部や部局の研究室ではなくて、そういう未来社会創造機構という仕組みをつくって、そこに物理的に集まれる場所をつくれたことが非常に大きかったと思います。そういうものをつくるときに、学内できちんと議論をして、産学連携の在り方やそれがうまくワークするための仕組みをずっと議論してきたと思います。そのときにこういうのをやるからといきなり企業にお声かけをしたわけではありません。大型ではなかったにしても、もともと共同研究でお付き合いのあったところが、こういうことをやることに御理解を頂いたのが非常に大きかったと思っています。
  それから、あと未来社会創造機構はそういうCOIのプロジェクトにもなっていましたので、大変後押しをできたということでこれが成功例として産学協働研究をやることについての異議や理解がそれに直接関わっていない人にも目に見えたと思います。特に、象徴的な建物がありましたので、そういうことも非常に大きかったと思います。さらに、共同研究の在り方についてもそういう場に集まって、特に複数のプロジェクトを同じ建物の中で走らせているので、お互いを見ながらやっていると、それもまた大きな刺激になるというそういう点があったと思います。
  なお、今後の課題としては、そういうものが非常に特殊なものではないということを、皆さんに理解していただくことが必要です。そのためには今COIの取りまとめをしているところがもっと広く学内に展開していくような動きをしていくのがもう一つあると思います。
  それとあと、ここでの議論はイノベーション実現のための財源多様化でお金の話が出てきます。これは先ほど大学の会計が重要だということを上山委員からも御指摘がありました。一つは共同研究をやったときのコストの考え方の一番大きな違いは、大学は基本的にコストセンターであってプロヒットセンターではないです。こういう成果を上げるため、例えば売上げを上げるためにこれだけのリソースを使って経費が発生しますとそういう仕組みがなかなか産業界の人とすり合わせがしにくいのではないかと考えています。例えばこの場で何回か前の検討会で申し上げましたが、アメリカの大学のPLに相当するものを見ると、教育に対して幾ら稼いだ、研究で幾ら稼いだとはっきり出てきます。例えばそういうような形で、対外的に社会に対して、大学の教育研究に対するアクティビティがこれだけの価値を生むことを見えるような会計の仕組みは、学内の研究者にとっても大きな意識を変える一つのきっかけになると思います。
  それからあと、須藤委員からありましたように、確かにこの資料は具体的に大学の特徴、強みをかけているように質問がなかったので、大型化とかそういうように書きましたが、例えばこれで具体的に大学のどういう点で勝負ができるのかは、これからもう既にやっているところもありますので、明示化していくことができると思います。大きかったのは産学連携の経験が豊富な先生がいて、その方がこの産連本部の本部長にいたことです。いきなり本部長になったわけではなくて、まず学内の委員会の委員になって、副本部長になってとそういう経緯がありました。ある意味では、個人に依存した運営ではなくて、組織として次の責任者がどういう人なのかということを育成できたのもよかった点だと思います。多分に意図してやったことではない部分もございます。運がよかったという部分もあるかと思います。参考になればということです。

【橋本座長】    ありがとうございます。今のお話に出ましたように、先ほど須藤委員が言われたように、これは文科省からリクエストしたので、きょうのために書いてくれたわけです。経団連でこのためにわざわざ、きょうのこの会議のために午前中会合開いていただいて、どういうことを大学側に言うかとそこまで真剣に考えてくれているわけです。是非これを先ほど須藤委員が言われたように、余り変えると面倒くさいのでこのフォーマットにプラス具体的などういう分野でやりたいみたいなものを入れて、しかもそれを産業界側に、せっかくなので一番影響力のある経団連に投げていただいて、経団連の委員会で大学はこういうことを言っているけれども誰か興味はあるかと、こういうのをやってくれる可能性があるみたいです。それをもしできればすごいことだと思うので、ということを是非最後に宿題でお願いしようかと今私は思っています。

【須藤委員】    すいません。会合を開いたわけではないです。

【橋本座長】    ミーティングですね。ミーティングをやっていただいた……。

【須藤委員】    別の仕事で行ったついでに議論しました。

【橋本座長】    いいです、実際ミーティングをやったのは事実ですから。なので、というように頭の中で思いながらやっていたのですが、まずい、こういう方がいいのではないかと御意見がありましたら忌憚なくどうぞ。
  進藤委員、いかがですか。

【進藤委員】    先ほどもいろいろ話がありましたが、「本部中心に案件を整理していく」という御指摘に関することでいうと、私どもが今やろうとしている「拠点の選別」自体によってある程度はできるのではないかと思っています。実は今日の議論はどちらかと言うとお金の話が中心でしたが、私としてはそれに加えて、実際にPLをやるであろう教員等も含めて、社会実装に対する意識をしっかり持ってもらう意味で選別することが非常に大事とまずは思っています。その上で、そのために必要な試算をきちんと詰めれば、実際にこれだけかかるという話に自然と結びつくのかと。そこが実は結構大事という思いでやっているということが私どもの感じです。
  実際には、私どもは全学的にあまねくというと大変なので、先ほども申し上げたように、産学連携関係に機構をつくってという、どちらかというと考え方が近い人たちが集まって、整理をしていく作戦で進めています。そういう意味でも積算自体はできるのではないかと思っています。スケジュールの点、それから今みたいに具体的なトピックを決めてきちんとやるべしという点は重々受け止めましたので、きょうの御指摘に併せてまた考えていきたいと思っています。今正に並行的に案件の選別作業をやっているので、そういったものをやろうと思います。
  お話の中で、物すごく大きなプロジェクト、一つか二つみたいな議論にしていくのか、大学としても幾つも芽があって、その中で産業界と御相談しながら選んでいくというような形で育てていくのかでも形が違うと思います。実際にその事例を持って、御相談のときにいろいろ御指摘いただきながら検討を進めていくということかと思っています。
  最後に、こんなことを言うのも恐縮なのですが、田中委員がおっしゃったイノベーションファンドのように、この「体制をつくる部分を別建てで資金手当を支給する」みたいなことはすごくいい話だと実は思っております。学内ではよくあるのですが、企業の方が総額は変わらないよと言ってあとは適当に直接経費と間接経費と分けてくれというと、研究者と本部で何となく緊張関係が生じてしまいます。これに対して、体制整備のところはしっかり俺たち産業界は考えてやるということを、例えば「組織」対「組織」の連携のところで、産業界の方と本学との間である程度議論ができて、ということがしっかり担保されてくるとまた話も進むのではないかと感じました。
  以上でございます。

【橋本座長】    安藤委員、いかがですか。

【安藤委員】    意外だったのは……。

【橋本座長】    マイクを。

【安藤委員】    御趣旨というか、我々がやらなくてはいけないことをすごく突きつけられた気持ちはしました。COCNのいろいろな提言の中にも、Whatというのが割と早い段階で出てくるのは、どのように我々は受け止めていいかというのは、実は議論したことはあります。そこに出てくるテーマは大体多くの教員、個人レベルでも考えていることですし、あと我々国から出てくる大きなお金も大体そちらの方向ですし、そのテーマ自身は特段新しいものではないです。
  ただ、それをどうやるかというしかもそのスピード感というのは非常に大学にとって重要なことだと理解しなくてはいけない点です。Whatという話をすると、我々はいつも問題になるのはWhatというのは教員、Whatが正にばらばらあるのが大学であるわけです。そこのところをまとめ上げるのはむしろ皆がそういういろいろな方向を向いているものをどうやってまとめ上げるかというのは本部機能で、少しやらなくてはいけないという気持ちは持っています。
  ただ、大学の先生全部が何を一番考えて動かなくてはいけないかというのをいつも我々は本気で議論しています。東京工大は単科大学ですから、一番身が軽いです。我々が一番エースと思っている先生にバックキャスティングなどという言葉を言うと、一喝されました。20年間こんなものは何に使われるか分からなかった、だけど今考えてみるとすごい幸運が重なって意外な展開が起きてもう今断るほどあれして、それは東京工大で一番元気のいい先生です。そういう状況もあります。ですから、そこを横目で見ながらですが、そういう先生たちにもWhatをこちらから提示していくのかどうかというのは非常に微妙です。ただし、それは外に対してはそれがないとお金も出せないし見えてこないというのは非常によく分かるので、我々の組織改革はそこの点に対して今正にやっています。ただし、1,000人がやっているものに対して、これに対してはこういうふうな大学の姿勢が出せるというのは今メニューをつくっています。ただ先ほど言ったようにそれはいつまでかというのは明確ではなかったのですが、我々実は今年の4月に組織が動きます。それで先ほど言った企画立案本部というのは基本的にはあと1年かけてやる予定になっています。それは前倒しになると思いますが、そこで産学連携というのが社会貢献という話と研究というところのどこに置くかが今大激論しています。学長に非常に近いところに置きますが、そうするとWhatのうちどれをうちの大学でやるかはお話ができるのではないかと思います。そんな状況です。

【橋本座長】    須藤委員、どうぞ。

【須藤委員】    ありがとうございました。実はその辺を見越して言ったのですが、恐らく今日いらっしゃっている大学は多分どのテーマでも全部できると思います。でも、大学の中の先生の性格や人柄などいろいろあって、技術的には多分どこの大学に頼んでも同じ成果が出ると思いますが、ここの大学は、この先生は産業界とやりたがっているから比較的うまくすぐできてしまうというのを出してほしいです。例えば東京大学に頼めば全部できるのは分かっているのですが、この分野の先生は産業界など向いていないところもあると思うので、それを明確にしてくれて一番近道ですというのがあれば、我々はそこに大きな投資をすると早く結果が出る、というのがあるので、その辺が一番知りたいと思って発言しました。

【安藤委員】    坂本さんがいつも書かれている産学共創プラットフォームの絵にもあります。最後のページにあります。世の中のそういう課題を受け止められるという姿勢と同時に、我々は大学の教員のことをよく知って、これは多分世の中は気がついていないものを提案するのはすごく重要だと感じています。だから、そこのところを併せた組織の力を養わなければいけないという気はしています。

【橋本座長】    それはもう正に産業界がそれを一番望んでいるところですよね。大山さんと佐藤さん、発言まだなので、もし……。いかがですか。

【大山部長(川端委員代理)】    今大学の中で何ができるのかというお話がありました。実は北大としてはかなり売りたいものがあるわけで、共同研究をやる場合には、こちらもそれなりのコストをかけなければいけないので、大学としてはこれを売りたいというのが実はあると思います。ただ、今はもう具体的に話が進行しているものは表に出せないので、なかなか微妙なリストになるかという懸念はあるかと思います。

【橋本座長】    佐藤さん、いかがですか。

【佐藤部長(小川委員代理)】   
  大阪大学のPRというわけではないのですが、以前のこの検討会でも本学の小川から発言があったかと思います。大阪大学はインダストリー・オン・キャンパスということを掲げております。先ほど御説明した企業と大学とで作る研究講座として、共同研究講座というものを立ち上げておりまして、今現在35動いています。こちらは実は2年から10年の設置期間という長いタームで共同研究に専念する組織を設置しております。そういう体制もできております。更にこの共同研究講座をもう少し大きくしたものということで、協働研究所というものも設置しております。受皿としては、大阪大学は従前からそういったものを、体制を敷いて行っているということをPRさせていただきたいと思います。
  以上です。

【橋本座長】    はい。

【菅委員】    先ほどエースの先生に尋ねたというのはあるのですが、例えば私に産学連携をやれと東大が言っても僕はやりませんと言います。それはやりたかったらできるので、そうではない人たちが箱の中に入っていって産学連携に積極的になるのが、とても日本のボトムアップという意味では非常に重要ではないかと思います。
  話が戻って申し訳ないのですが、学位の問題がいつも大学は大きくのしかかっていて、私はMITでドクターを取っているのですが、MITは実は論文を1本も出さなくても学位を取れます。それは先生の責任でもって、コミッティーの責任でもって、こいつはPHDに相当するだけの実力があると判断すれば論文が出ているかどうかはどうでもいいという判断です。そこのレベルの違いを是正しながら産学連携を進める箱をつくるしかないと思います。
  要はアメリカの大学とやりやすいのは多分先生たちはそんなことは気にしていないです。産業に対してすごい貢献ができる仕事ができれば、これはPHDに相当すると多分認知しているからだと思います。そこは大学全体として理解すると、そういう方向もこの産学連携を進めていく上では重要ときょう物すごく思いました。

【橋本座長】    どうぞ。

【渡辺委員】    二つお話させてください。一つは先生がおっしゃったように、日本の大学の価値観が余りにも多様性がないというか、単純化し過ぎていると。例えば、博士課程に入った学生さんは相当の努力をして3年間でというか、27歳で学位を取ろうとすると。その価値観はエレベーター式の中学から高校に進んで、高校から大学学部4年終わって、次の2年終わって、次は3年と、これが何か社会の成功事例というような単純な価値観が余りにも強すぎると。
  例えば、欧米の博士学位を取るような人たちは年齢を気にしている人はほとんど会ったことはないです。ある程度一生懸命やって充実した仕事成果が出て、それをまとめて学位が取れたと。ああよかったと35歳ぐらいでパーティをやるから呼ばれるなど。そういうことで年齢を気にしている文化は、多分東アジアの独特の文化というか、日本がつくった文化かもしれません。だから、特殊だという印象は持っています。だから、別に3年で学位を取って、どこかの先生のポストを探してそこについていくというのは、全然悪いことではないと思います。全員それで頑張るべきだというのは、やり過ぎだと思います。
  少なくとも産業界から見ているとそれはそれでいいのですが、産業界のために自分は何か仕事をしてみたいというようなことも社会から見たら非常に立派な人生の方針であろうと私は思います。なぜ日本の大学がそういう価値観を、多様性を認めないのかとそういう人たちを冷遇するというか、損をするといいますか、それだけ社会全体から見ると、決して得なことではないと思います。こういう基本的な考え方があったものだから、日本では産学連携のことが進まなかった、体制づくり、準備が全然進んでいないということだろうと思います。
  これは、追いつけ、追い越せをするために大量の技術者、科学者をつくるためにはまず先生を大量につくって、先生をたくさんつくればこの国は傾斜生産みたいなもので、あとはついてくるだろうというのが明治時代にありました。その明治時代の基本的な考え方がここに来たのですが、今先生ポストがそれほどなくなってきて、ドクターになったら産業界で活躍するあるいは政策をつくるドクターとして官の世界で頑張るなど、そういうようにドクターに対する需要が多様化してきているだろうと思います。
  ところが、優秀な先生を養成していく、多人数のドクターの学生を採って、その中から3分の1だけチョイスすると。その3分の2のもうメジャーのナンバーになっているのにもかかわらず、そちらの方の対策は考えていないというのが、今の大学の、ドクターコースのあれではないでしょうか。ですから、ポスドクということが起こるし、企業から見ると先生に特殊な専門家として訓練された人は企業ではなかなか適応できないという不適合問題も起こっているような気がします。
  長くなってすいません。もう一つはURAという言葉があちこち出てきたのですが、私はそういう意味でドクター課程の学生の、就職先の需要の多様化という意味で、このURAが非常に大事だろうと思っています。今いろいろな組織改革をやられている中で、この人たちがどうやって育ってくるのかは、特別に時間を設けて聞きたいくらいに私は強い関心を持っています。
  産業界でも、大学でも研究のコーディネーター、シーズとニーズをうまくマッチングをするお見合い役、これは日本は絶対的に不足しています。誰もこの人材を育てないとイノベーションが起こらないことを考えていないです。だけど、我々基本計画や何とかつくると、もう科学技術基本計画5回つくって、20年前第1次のところからもこういうイノベーション・コーディネーターというか、リーサーチ・アドミニストレイターというか、こういう人材が足りないと。あるいはPMといいますか、プログラム・マネージャー、同じような概念の人材だと思いますが、足りないと。日本に圧倒的に足りないと言い続けているけれども、誰も手を打てない。
  だから、この産学連携の活動の中で、このURAがそういう人たちに近いところ、あるいは研究の営業マンと言ってもいいでしょうか。研究ディレクターと言ってもいいでしょうか。僕は多分リサーチャーよりもう一ランク上の難しい複合的な能力のいる人たちですから、だからリサーチャーを育てるよりももっと難しいのを大学が引き受けてくれないと、社会でこの人材を大量生産するところはどこにもないです。この社会において一度も手を付けたことがないです。だから、日本はアメリカに産業で勝つことはないでしょうと私は思っています。

【橋本座長】    まず、URAに関しては、実はその重要性は非常に分かっています。それで全く手を付けていないわけではなくて、いろいろ動いています。ただ目に見える形までなかなかきていないということがあります。文科省でいうとこの課がその担当課でして、そのための予算も取ったりいろいろやったり……。私も産業競争力会議の中でその話の重要性をして、それで去年かおととし、それを大分政策の中に落とし込むことまでやっているのですが、まだまだ不足しているので、そこは十分にあれだと思います。ただここでの議論とは別です。
  ドクターの話に関しては全くおっしゃるとおりです。ただ、最もドクターの価値を尊重しないのは霞ヶ関だとよく……。ここに後ろの方に東大の医学部を出てある某省にてコピーをしている人がいますけれども。その話も常々出るのですが、なかなかいかないと。でも今回の議論で産業界がこれだけドクターを必要としていると、そのためにはこういう人材をこういうような仕組みでということまで明確に今までより随分進んで、ただ単に大学で育てた人であまった人は会社で引き取ってくださいという話とは全く別の議論が今できていると思います。そういう意味では、今渡辺委員が言われたことは、非常に受け止めながら大学側も考えていると思います。
  まずは今、これで終わりますが、まとめとしては、私も予想していた以上に、産業界が今回の議論を受けて大学に対して期待してかつその準備もしていると。金銭的な準備もしていることを明確に言っていただいて、かつ明確に言われただけではなく最初に述べましたが、この報告書の中にこれを書いているというのは大きいです。経団連がこういう報告書の中に書くというのは裏付けないと決して書かないので、それだけ一歩も二歩も進んでくれたことは大学の方で認識していただけたと思いますので、是非きょうのこれをもってまた大学の方の体制をしっかりとしていただくとともに、これは文科省でしていただくことになると思います。
  先ほども言ったように、これを文科省向けではなくて経団連向けに考えていただく。これは文科省が指導するというよりも、各大学がそのように考えて本気でやるところが、文科省が指導してやるのではなくて各大学がそうやって言ってくれているわけですから、本当にやる気があるところは各大学か経団連に持っていけばいいのではないでしょうか。
  窓口は誰でしょうか。吉村さん?  吉村さんが窓口だそうですから、吉村さんに出していただけるとそれがいいものであれば、きちんと経団連の中で、ですか?  吉村さん。

【須藤委員】    前提条件をもう1回。

【橋本座長】    あ、そう、前提条件。

【須藤委員】    それに対して、具体的に書いていただけると、我々としては助かるのですが。

【橋本座長】    吉村さん、どうぞ。

【吉村委員】    おっしゃるとおりです。いずれにしても、我々もこの件でいろいろな企業さんとも直接お話をしたりはしています。機運はある、期待もあるということで、こういう時期はなかなか余りないのではないかと。それぞれにお互い勝手な軌道を回っていたところが、今は惑星直列みたいな状況になっているかもしれない。

【橋本座長】    一瞬。

【吉村委員】    一瞬かもしれない。ただこの時期を逃す手はないと思います。そういう意味では産学官は本気で取り組んでいると思っております。そのままメッセージを受け止めていただいて、正に先生がおっしゃったとおり、やる気が、意欲と能力と何とかなるところは是非産業界に積極的にアプローチしていただけると大変有り難いと思っております。よろしくお願いします。

【橋本座長】    どうもありがとうございます。ということで時間になりました。最後に、坂本さん。

【坂本課長】    行政側のアクションだけ述べます。先ほど須藤委員からお話がありましたこの議論を受けました産学パートナーシップの進化、エボリューションが「見える化」されることが必要だというところについては、これは我々はっきりとフォローさせていただきたいと思います。是非大学さんにも御協力いただきたいと思いますが、それが1点。これは数値的なものを我々が追い続けるということは行政同士行います。
  もう一つは、先ほどこのペーパーに具体的なつくり込みたい大型案件を書き込んで経団連にお渡ししたい、これは是非我々もやっていただきたい、お手伝いしたいと思います。それに加えて、我々はシステマティックにやりたいと思っていまして、イノベーション・ジャパンという8月の大型イベントがあるのは御存じかと思います。そこで、今までは大学のシーズ、あるいは研究所のシーズを見本市という形で、産業界でアピールしていましたが、これから大学のシステムをアピールするという特別の展示をこれから始めようと思っています。これはとりあえず今20大学程度、これから募集をかけますので、そこに是非企業の方々、例えばCTOクラスの方々に来ていただきたい。これから経団連さんやCOCNさんに御相談しますので、そういった場もつくるということで御紹介したいと思います。
  以上です。

【橋本座長】    以上で終わりますが、山下室長、よろしいですか。

【山下室長】    はい。

【橋本座長】    これで終わりです、でいいですか。

【山下室長】    また、引き続きフォローアップをやっていきます。しつこくやります。

【橋本座長】    また、引き続きやる?

【山下室長】    もう実現できたというところまで、我々はこの報告書を抱えて走っていきますので、今後ともよろしくお願いします。

【橋本座長】    では、以上でどうもありがとうございました。

――  了  ――



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-- 登録:平成28年05月 --