「大学知的財産本部整備事業」事後評価結果報告書 3評価結果 1.総論:文部科学省
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「大学知的財産本部整備事業」事後評価結果報告書 3評価結果 1.総論

(1)知的財産の創出・管理・活用の基盤整備について

1.体制の整備について

 本事業により、短期間に事業の対象となったすべての大学等において、副学長等をトップに据えた知的財産本部を整備するとともに、リエゾン活動を推進する部署、知的財産を管理・活用する部署、成果の実用化を目指す部署を設置するなど、知的財産の創出・管理・活用までをワンストップ・サービスで行う知的財産の機関一元管理を原則とした全学的・横断的な基盤体制が構築された。
 特に、国立大学においては、平成16年度から法人化され、各大学等において研究センター等の改組が柔軟に行うことができるようになり、それまで産学連携活動を担っていた共同研究センター、インキュベーション施設等、高度の専門的職業能力を持つ創造的な人材の育成を担っていたベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)や研究協力を担当していた事務組織を再構築し、知的財産本部と一本化するなど組織の効率的な運用を図るため、実態に応じたさらなる組織の体制整備の構築が進められた。(注1)
 これらの取組により、大学等における産学官連携と知的財産管理機能が集約され、産業界からみた窓口の明確化が一層図られた。平成17年9月、文部科学省から公表された「平成16年度民間企業の研究活動に関する調査報告」によると、企業から見た国立大学の法人化による主な変化として、

  1. 産学官連携に組織的に対応するようになった。
  2. 共同研究や委託研究を行いやすくなった。
  3. 知的財産権に関する取決めが明確になった。

などが上位を占め、組織や制度面の改善等について、高い評価を受けた。(注2)
 また、平成17年度から本事業の一環として、知的財産本部を核として大学内の研究リソースを結集し、組織的に産学官連携を推進するための総合的な体制である「スーパー産学官連携本部」を本事業の実施機関43件の中から6件を選定した。これらの選定機関においては、海外主要大学と伍した産学官連携体制の構築や組織的な共同研究の推進、積極的な民間資金の獲得等が行われた。
 選定機関の取組として、東京大学では、全学的視点に立った新たな共同研究のための計画プログラム「Proprius21」の体制構築のために機能強化を図った。大阪大学では、企業との組織連携を積極的に進め、大学が企業と密接に協働する「共同研究講座制度」を制定し、共同・受託研究金額を倍増させるなど企業からの関心を高めている。九州大学では、企業の研究開発ニーズを研究室単位でなく、大学組織全体が責任を持つ形で受け止め、複数の研究開発ニーズを融合する「組織対応型連携」という大型共同研究システムを開発した。
 さらに、平成19年度には、大学等の国際的な産学官連携活動の強化に対応するため、本事業の実施機関43件の中から17件を選定し、国際知財人材の育成・確保、海外における基本特許の戦略的な取得、海外企業からの受託研究、共同研究の拡大等に対応するための整備が行われ、さらなる国際的な産学官連携の推進体制が再構築されつつある。
 選定機関の取組として、立命館大学では、国際法務への対応など専門性の高い業務に関するノウハウの導入のため海外の著名な専門家を含む国際産学官連携アドバイザリー・ボードを組織し、海外における商慣習等の実務知識に関するアドバイスを日常的に受けられる体制を整備した。

  • (注1)参照:2.各機関に対する事後評価
  • (注2)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料1】、【資料2】

2.学内組織・学外機関(TLO、自治体、産業団体等)との連携について

 本事業の実施機関においては、知的財産本部の職員が研究室等を訪問し、研究シーズの収集を行うとともに、各部局等との定期的な情報交換会等により、産学連携啓発活動を行っている。
 また、知的財産本部長が実施機関の研究部門の委員会の委員長や委員を兼任することにより、研究戦略の策定に産学官連携の意向を反映している例も見られる。また、既存の委員会だけではなく、研究部門等の関連部局から選出された委員で構成される新たな議論の場を設け、各部局の意見把握と全学への産学官連携の意識の伝達を円滑に進めている例もある。
 学外機関との連携状況については、例えば、知的財産本部と承認TLOとの関係についてみると、大学内部に関連組織を置くもの、契約関係によって外部委託する形態、さらに、外部の承認TLOに出資関係を持つ形態など個々の事情に応じた多様な連携が図られている。(注3)
 平成16年度以前は、それまで国立大学は法人格を有していなかったため、大学の外部に置かれていた承認TLOを活用したり、内部に関連組織を置いて技術移転業務を行っていたが、平成16年度に国立大学が法人化された以降は、群馬大学、東京医科歯科大学、奈良先端科学技術大学院大学などが、国立大学法人内部にTLOを設置し、承認TLOの認定を受けたように、既存の組織にとらわれることなく、承認TLOとの連携強化や一本化など、技術移転機能が最適に発揮できるような体制の再構築が進みつつある。
 また、東京工業大学と山梨大学は、外部の承認TLOであった財団法人理工学振興会や株式会社山梨ティー・エル・オーからTLO業務を移管することにより内部化し、承認TLOの認定を受けた。
 さらに、神戸大学は、内部自治の柔軟性が確保された新しい形態として神戸大学支援合同会社を、大学の知的資産を活用した産学連携推進、知的財産業務・技術移転業務を効率的に促進するための組織として、新会社法の合同会社(LLC:Limited Liability Company)として、大学関係者有志の出資による大学発ベンチャーとして設立し、承認TLOの認定を受けた。
 実施機関と当該地域の自治体との連携も盛んに行われ、自治体が仲介役となり、地域の企業との共同研究等が行われていることに加え、近年では、当該地域以外の自治体との連携も見られる。
 選定機関の取組として、慶應義塾大学では、独立行政法人中小企業基盤整備機構、神奈川県、藤沢市との協働によって「慶應藤沢イノベーションビレッジ」を設立・運営し、大学が所有する技術シーズ等を活用した大学発ベンチャー創出支援を行っている。

  • (注3)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料3】、【資料4】

3.外部人材、教職員等人材の活用状況について

 大学等における知的財産活動に携わる人材の状況は、民間企業、技術移転機関等から知的財産業務等の経験のある人材を外部から採用するとともに、弁理士、弁護士などの外部専門家の積極的な活用がなされている。知的財産活動に携わる人材は年々増加しており、平成15年度の約1,300人から平成19年度に約2,100人と約1.7倍の伸びとなっている。(注4)
 大学等においては、知的財産業務等の専門的知識を持った外部人材を中心に、教職員等を対象とした学内向け知的財産セミナーの開催、オン・ザ・ジョブ・トレーニング(以下「OJT」という。)による研修会や勉強会の実施、初任者職員向け知的財産教育の実施などを通じて、教職員の知的財産に関するスキルや目利き能力の向上を図るとともに、手引書の作成・配付などによる学内教職員への知的財産に関する知識の普及啓発といった様々な活動を展開している。
 さらに、高い専門性を持つポストドクターや大学院生をリサーチアシスタントとして雇用し、先行技術調査を中心に知的財産関連の知識や検索スキルの習得の支援や、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という。)の「産業技術フェローシップ事業」に基づく「NEDOフェロー」の受入れとカリキュラムに基づいた育成を通じて、若手人材の育成に取り組んでいる。
 例えば、北海道大学では、知的財産業務に関心のある大学院生やポストドクターに先行技術調査を委託する「知的財産リサーチャー制度」を活用し、若手の知的財産に関する啓発を行っている。長期的にみると、知的財産リサーチャーの大学院生やポストドクターが研究する際に、重複研究の無駄を少なくすることができるので、長期的なコストダウンにつながっている。岩手大学では、岩手県内の自治体から職員を共同研究員として受入れ、OJTにより技術移転等の実施マネジメント業務等の習得を行い、各々の出身自治体に戻った後は大学での研究成果や学内外の人的ネットワークをいかし、地域産学官連携の中心人物として活躍している。山口大学では、学生がインストラクターとして特許関連業務を行う「知財インストラクター制度」を確立し、知的財産に関する啓発活動や知的財産教育による若手人材の育成を行っている。九州工業大学では、技術移転を促進する目的で、独自に成功報酬のみのボランティア会員による「技術移転アソシエートネットワーク」を組織し、活動を行っている。
 しかしながら、本事業の実施機関において、知的財産活動に専任する人材のうち、企業経験者等外部から知的財産本部に係る業務に従事するために雇用し、又は派遣された外部人材は、依然として約8割を占めており、内部人材の育成・確保が進んでいない状況にある。(注5)また、外部人材の人件費の約7割は本事業の委託費により措置されている。立命館大学をはじめとする一部の大学で産学官連携・知的財産業務を支える事務系組織の充実を図るなどの取組もあるが、全体としては、将来を見通した内部人材の計画的な育成・確保の取組を進めることが重要となっている。(注6)
 産学官連携活動や知的財産活動が高度化・多様化していく中で、蓄積されたノウハウを着実に継承していくためには、専門人材とりわけ若手人材の育成が急務となっている。
 また、優れた研究成果を埋没させることなく、実用化に向けた取組や研究費制度へのつなぎの促進を図るコーディネーターの育成や、大学発ベンチャー育成のためのインキュベーション・マネージャーの育成も併せて図っていく必要がある。

  • (注4)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料5】
  • (注5)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料5】
  • (注6)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料6】

4.知的財産の効果的な活用方策について

 産学官連携の体制整備や各種ポリシーの制定により、共同研究等の件数が著しく増加し、それに伴い特許出願件数や特許保有件数が増加している。特許出願件数の増加に伴い、それに係る費用も増加している。そのため、大学等においては、特許関連経費の急速な膨張を抑制するため、特許出願前において新規性、応用性、企業の関心度等を独自に調査し、実用化の可能性が高い発明に絞って特許として出願するケースが増加しており、大学等における特許出願の方針は「量」から「質」へ移行していると考えられる。(注7)
 選定機関の取組として、東京医科歯科大学では、研究者が複数企業との共同研究を行う際に、研究内容の重複防止を図るとともに、研究戦略を決定するために、研究者に当該研究分野の特許マップを作成し、研究内容の位置付けを提示している。横浜国立大学では、案件ごとに発明を一貫してハンドリングする「案件チーム」が行う技術・市場調査に基づいて、機関継承、国内外出願、審査請求等を原則として決裁により迅速に行い、個々の案件を同一担当者が一貫して推進する仕組みを構築した。東京理科大学では、特定分野に配置している特許・技術スタッフにより、全出願案件の先行技術調査を行い、調査結果、技術俯瞰図等を教員に提供し、知的財産の創出や研究活動の方向付けなどに活用している。名古屋工業大学では、大学独自の発明について、独自のコア出願方式を運用し、大学独自の優れた発明の早期出願と出願経費低減のために、弁理士に業務委託することなく大学自らの手で出願を行っている。豊橋技術科学大学では、特許出願後20か月目に公開直後のアクセス状況をチェックして営業活動につなげ、30か月目に技術移転活動の報告を受け、事業化や外部資金導入の可能性のないものについては、審査請求前に本人に返却する方針を取り、経費を抑えている。
 また、特許出願、保有状態に関する情報を整理し、一元的に把握するためにも、多くの実施機関において、発明届けから出願、権利維持まで特許管理ソフトを導入して効率的な管理を行っている。

  • (注7)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料7】、【資料8】

(2)体制整備による効果・成果について

1.大学知的財産本部整備事業実施機関の実績・成果について

 ほとんどの実施機関で、産学官連携ポリシー、知的財産ポリシー、利益相反ポリシー、職務発明規程、発明補償規程等の基本的な学内規程が策定された。併せて、共同研究・受託研究取扱規則等の産学官連携ルール(営業秘密、共同研究による知的財産の帰属等)や契約書の雛形などが制定・整備され、大学等のホームページ等を通じて積極的に外部に公開されている。(注8)
 このような、各種ポリシーの整備により、企業と大学等の協議結果を踏まえた柔軟性を持った共同・受託研究契約の締結や、起業する研究者の求めに応じた権利の移転や実施権の設定を可能とする柔軟な対応ができるようになった。また、共同研究・受託研究取扱規則や契約書の雛形を英語版で作成し公開することにより、海外との産学官連携にも積極的に活動している大学も多く見られる。
 しかし、研究マテリアルの移転条件や移転手続きを定めた研究ライセンスの使用の円滑化に関するポリシー、臨床研究に特化した利益相反ポリシー、企業との共同研究における学生等の守秘義務に関する規程の策定状況の取組は進んでいないため、早急に取り組むことが求められる。(注9)
 なお、九州大学では、成果有体物の管理システムを確立するとともに、全国のモデルケースとして「有体物管理センター」を設立するなど研究成果の有体物の管理等に関して、組織整備を行ったなどの取組が見られる。
 また、平成19年度において、実施機関の知的財産活動に携わる人材の人件費の財源のほぼ半分は本事業の委託費において確保され、949人が実施機関に雇用されている。その一方で、実施機関においても外部人材の必要性から運営費交付金により875人を雇用するなど自発的に人材の確保を行っている。(注10)
 本事業の実施機関において、事業開始年度に計画目標値を立て、平成19年度の全機関の目標値の総計と実績値の総計を比較すると、特許出願件数、知的財産活用実績、共同研究受入実績及び受託研究実績については、実績値が目標値を上回り、特に共同研究受入実績については、目標値を3割以上超えて達成している。
 しかしながら、発明届出件数、特許取得件数及び大学発ベンチャー創出件数に関しては、実績値が目標値を下回り、なかでも特許取得件数及び大学発ベンチャー創出件数においてはそれぞれ目標値の2割、3割程度の目標達成率となっている。(注11)
 本事業の実施機関と非実施機関を比較すると、「大学等の研究成果を社会還元するための知的財産戦略・産学官連携システムに関する総合評価報告書」(平成19年12月文部科学省)によれば、実施機関において、総額及び1件当たりの共同研究受入額を除いた共同研究件数、特許出願件数、特許権利化件数、特許実施件数、特許実施料収入、大学発ベンチャー設立数の各項目に関して増加量や増加率が非実施機関を上回っていると分析され、政府の方針に基づき投資事業として実施された本事業の効果が現れているといえる。
 また、本事業をモデル事業としての観点からみると、実施機関における体制整備が非実施機関を先導して大学等全体における知的財産活動を活性化している。文部科学省の「産学連携等実施状況調査(平成19年度実績)」によれば、企業等と大学等との共同研究や受託研究が着実に増加し、民間企業等との共同研究は16,000件を突破するとともに、大学等からの国内外の特許出願件数、特許取得件数、特許実施件数が増加するなど、産学官連携や大学等における知的財産活動は着実に拡大してきている。(注12)
 法人化前の平成15年度と比較すると、共同研究の件数は約1.8倍、受託研究の件数は約1.3倍となるとともに、特定の研究成果等を求めることなく教育・研究の奨励を目的とする民間企業等からの寄付金による収入も約1.4倍となっている。また、国内外の特許出願件数は約4.0倍、特許実施件数は約23.7倍となっており、大学等発ベンチャーの累積設立件数も1,500件を超えている。さらに、知的財産の管理システムを導入するなど戦略的に発明から技術移転まで連携した取組を推進する体制が構築され、大学等の特許権のライセンス収入も平成15年度に比べ増加しており、収入を上げている大学等の数は32機関から109機関へ急増している。(注13)
 しかし、国立大学等における共同研究1件当たりの受入額実績をみると、平成14年度に比べ、ほとんど増加していない。また、大学等における国内民間企業からの受託研究の受入額をみると平成19年度において、全体の受入額の7.2パーセントと低い水準にある。さらに、外国企業との共同研究実績及び受託研究実績をみると、全体の件数及び金額における割合は高くても1パーセント程度である。(注14)

  • (注8)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料9】
  • (注9)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料10】
  • (注10)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料5】
  • (注11)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料11】
  • (注12)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料12】、【資料19】
  • (注13)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料13】、【資料14】、【資料15】、【資料16】
  • (注14)参照:参考資料2.大学等における産学官連携活動に関する資料【資料17】、【資料18】、【資料19】

2.大学等における教育・研究力の向上について

 大学等においては、教職員や研究者を対象とした知的財産活動説明会等の産学官連携に関する啓発活動に加え、知的財産管理を学ぶ学生を対象とするインターシップの実施、学生を対象とした知的財産本部の職員や弁理士などによる知的財産関係の講義等を実施しており、教職員だけでなく、学生の知的財産意識の向上にも努めている。
 選定機関の取組として、東海大学では、全学部の学生を対象に正規カリキュラムとして知的財産副専攻を開設し、また、附属幼稚園から附属高等学校で創造性教育と結びつけた知的財産教育を実施した。
 また、企業等と大学等が、共同研究において開発された技術が、応用分野、他分野の研究で活用されるなど、本事業が大学等自体の教育・研究力の向上に寄与しているといえる。
 選定機関の取組として、金沢大学では、企業との共同研究等から、ナノサイズの分子を数百万倍に拡大した画像を従来の約6,000倍のスピードで撮影が可能となる技術を開発し、人体内のたんぱく質やDNAの動画が観察できるようになり、ライフサイエンスやナノテクノロジーの分野で技術の活用が期待されている。
 さらに、積極的に産学官連携活動を行った教職員に対する表彰制度を設けたり、選定機関の研究教員の昇級要件に発明を加えるなどして研究論文等と同様に教職員の評価項目の一つとしたりするなど、実施機関の多くで知的財産活動に対するインセンティブを高め、教育研究の充実に努めている。
 選定機関の取組として、東京農工大学では、外部資金のうち一定額以上の一般管理費・間接経費が確保されているものについて、これを取得した教職員又は研究室に対し、獲得金額に応じて産官学連携奨励費を大学運営資金から支給している。奈良先端科学技術大学院大学では、TLO部に所属している技術移転マネージャーへの報酬を出来高払いとしている。

3.他大学等への成果の普及や情報発信について

 実施機関では、知的財産に関する研修会等を開催し、他大学等に広く参加を呼びかけ、知的財産戦略や産学官連携強化の方策について大学等が蓄積している成果・ノウハウを講演やパネルディスカッションを通じて普及活動を行っている。
 選定機関の取組として、岩手大学では、「いわて5大学知的資産活用検討会議」を設置し、大学において本事業で得られた体制構築のノウハウを、会議を構成するその他の大学の産学官連携体制整備に反映させるため、人材育成、組織作り、ルール整備、人的ネットワーク等の面での支援に取り組んでいる。東北大学と徳島大学では、臨床研究と利益相反マネジメントに関してセミナーを開催し、臨床研究における利益相反マネジメントの重要性と今後の在り方について周知を図った。山口大学では、『知財教本』の出版や研究ノートの開発・普及により、他大学に対して蓄積したノウハウの普及を行った。
 また、実施機関が特定のテーマに絞って調査研究を行い、その報告書を各大学等に配付するなど、積極的に成果の普及を行っている。(注15)
 以上のような実施機関における活動が、非実施機関における体制や学内ルールの整備を先導するとともに、大学等全体の発明届出件数、特許出願件数、共同研究実施件数、ライセンス件数等の増加の基盤になっていることから、本事業が担っているモデル事業としての役割を十分に果たしたと分析することができる。
 さらに、企業等が容易に各大学等の研究成果を閲覧できるように、各大学等においてシーズ集を作成しHP上に公開している。また国際的な産学官連携を重点的に行っている大学等に関しては、国外企業向けとして英文シーズ集を作成したり、共同研究等の雛形や、各種規程の英文版を作成したりするなど、国際的な情報発信機能の強化にも努めている。

  • (注15)参照:参考資料4.「大学知的財産本部整備事業」21世紀型産学官連携手法の構築に係るモデルプログラム報告書一覧

(3)体制整備後における改善点や問題点の分析状況について

 知的財産本部における費用の大部分を占めているのは人件費であり、その主たる要因は大学等において知的財産活動に専任する人材の約8割が外部人材である点である。産学官連携活動の組織を短期的に整備することを主眼と置いた場合は、学外から企業OB等の外部人材を雇用することは効率的ではある。
 しかし、大学等における産学官連携活動を継続的かつ自立的に進めて行くには、内部専任人材の飛躍的な増強が必要である。各大学等における知財人材の育成・確保のためには、知的財産本部の経済基盤の確立・強化が肝要であり、各大学等において中長期的な財政戦略を確立していく一方で、既に育成されつつある若手知財人材に多様なキャリアパスを提示していくことも重要である。
 また、知的財産の創出・管理・活用の組織的な体制整備や各種ポリシーの策定により、大学等における知的財産活動が活性化されたことに比例して、特許出願経費等の特許関連経費も増加している。
 体制整備後は、ともすれば「質」より「量」の方に重きが置かれ、特許出願経費の増加に知的財産本部の財政基盤が追いついていないケースが多々見受けられていた。このような特許出願経費の増加を抑制するためにも、出願する段階で実用化の可能性や特許として保有することの意義も含めて特許出願を精査し、「量」から「質」へ方向転換する必要がある。
 さらに、事業終了年度の平成19年度には、運営費交付金や間接経費等による大学等の自己財源の割合が5割を超えるなど、自立に向けた体制整備の取組が見られるものの、依然として本事業による財源が約4割を占める状況であり、本事業終了後の大学等における自立的な体制整備に向けた取組が求められる。
 例えば、山梨大学では、科学研究費補助金等の競争的資金の間接経費から75パーセントを知的財産活動経費として確保したといった取組が見られた。
 平成19年度より、国際的な産学官連携体制の整備を行い、各大学等においても知的財産本部の職員を海外の法律事務所や海外大学のTLO等に派遣して、OJTによる研修を行っている。しかし、大学等において国際産学官連携を進めていくための規程の整備が不十分であったり、海外における国際フォーラムの開催などを行っている大学等も少数であるため、今後はこのような海外への情報発信機能の強化や国際的な知財人材、国際法務機能の強化が必要である。
 また、地域においても人材・設備・知的財産などの大学のポテンシャルを有効にいかす仕組みの強化が必要であり、特に地域振興やまちづくりの観点から考えると、学内において医工連携、農商工連携、文理融合等の異分野融合の産学官連携を進めて行く必要もあり、今後このような産学官連携に対応できるような組織の整備が必要である。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)

-- 登録:平成21年以前 --