4.第59次南極地域観測隊越冬隊の現況(平成30年6月~9月)

1.気象・海氷状況

6月

上旬及び下旬に発達した低気圧が接近し、4回のブリザードが認められた。そのうち1日から3日にかけてのブリザードは59次隊としては初のA級と認定された。この影響により西オングル島から西側の海域は開放水面となった。オングル海峡の氷厚及び積雪量を観測するための調査ルートを見晴らし岩から東方向へ設置した。いずれのポイントも60cm以上の氷厚があり今後の成長が期待される。

7月

上旬及び中旬は定期的に低気圧が接近した。この影響によりA級ブリザードが1回、B級ブリザードが1回、C級ブリザードが2回の計4回のブリザードが認められた。ブリザードによる海氷の流出は認められなかった。オングル海峡氷厚調査では、6月に実施した調査よりも確実にその厚さを増しており、1年氷帯のいずれの調査点でも70cm以上に成長した。

8月

上旬及び中旬は高圧部に覆われたため、晴れた日が多く月間日照時間は平年よりも多かった。下旬は低気圧の接近により、C級ブリザードが1回、B級ブリザードが1回の計2回のブリザードが認められた。ブリザードによる海氷の流出は認められなかった。オングル海峡氷厚調査では、海峡中央部の薄いところでも80cm以上、東オングル島寄りの1年氷帯では100cm以上に氷厚が増していた。

9月

周期的な低気圧の接近により、好天と荒天の日が交互に訪れた。この荒天でA級ブリザードが2回、B級ブリザードが1回、C級ブリザードが1回の計5回のブリザードが認められた。低気圧の影響による海氷の流出は認められなかった。オングル海峡での氷厚調査では更に氷厚が増し、海峡中央部の薄いところで86cm、両岸近くでは1mを越える氷厚があった。

2.基地活動

6月

極夜に入り、極成層圏雲を見る機会が多くなってきた。隊員は屋外での活動がほとんど出来ない中、それぞれの業務をこなすとともに生活面でも楽しみを見つけて過ごした。好天が多かった5月とは異なり、荒天による外出制限として外出注意令を4回、外出禁止令を2回発令した。極夜明けの野外活動に向けた屋内学習として「事故事例研究」をほぼ毎週実施した。

7月

13日に1か月半振りに太陽が昇り、照らされた海氷やオングル島の風景の明るさに、隊員の表情は明るくなったように感じられた。月後半の北方ルート工作により31日にはとっつき岬から大陸のS17までのルート整備が終了した。大陸へのルートが整備されたことにより8月からの内陸旅行に備え、車両訓練やルート工作訓練、セルフレスキュー訓練などの実地訓練が盛んに行なわれた。荒天による外出注意令は2回、外出禁止令を1回発令した。

8月

S16地点にある橇の掘り起こしや燃料ドラムの移動、とっつき岬での大型雪上車の整備などを実施した。上旬及び中旬は穏やかな天気が多かったため、これらの作業は予定通り捗ったが、下旬には雪や吹雪となる荒天が続いたため、作業の中断もしくは延期を余儀なくされた。荒天による外出注意令を3回発令した。

9月

陽の当たる時間が一日の半分を超え、日に焼けた隊員が目に付き始めた。月全体を通して周期的に天気が変わり、荒天の日が多い月であった。その合間をぬって南方へのルート工作が活発に行なわれた。中継点旅行隊が13日、14日に昭和基地を中継地点に向けて出発した。荒天による外出注意令を5回、外出禁止は2回発令した。荒天後には観測施設や建物等の点検を行ない、主要建物近辺の除雪を行なった。


3.観測

6月

大型大気レーダーの専用発電機(1号機)が30日、ブリザードの影響により停止したため、観測が一時停止したが、その他の期間はデータを取得している。他の観測項目は各観測部門とも順調に継続された。19日~20日にかけてはVLBI観測が実施された。

7月

ブリザードにより、大型大気レーダーの専用発電機の排気管雪詰まりによる観測停止が発生した。HFレーダーのエレメント及び支線切れが発生したが、観測には大きな影響はなかった。その他の継続観測は順調に実施された。

8月

下旬にあったブリザードの影響もなく、継続観測は順調にデータを取得している。今月から本格化した内陸旅行の準備も順調に進んでいる。

9月

ブリザードによる大型大気レーダー専用発電機が停止したため欠測が生じたほか、観測には大きな支障はないものの、第2HFレーダーのアンテナエレメントが破損した。その他の継続観測は順調に行なっている。また南方ルートの一部を設定したことに伴い、向岩、オングルガルデン、左島近傍に地圏のGPSを設置した他、内陸のS19にもGPSを設置した。

4.設営作業

6月

基地の維持に努めた。A級ブリザードによる積雪のため積極的に除雪を行った。

7月

引き続き基地の維持に努めた。積極的に除雪を行うと共に、除雪した雪を利用して基地内のルート整備を行った。

8月

内陸旅行用に燃料の移送を実施し、とっつき岬又はS16への燃料デポが完了した。一方で荒天時には多くの積雪やドリフトがもたらされたため、除雪作業を行い、基地の維持に努めた。

9月

基地の維持に努めた。15日には荒金ダムに設置されている循環水ポンプが故障したため、ポンプの掘り出しや配管の入れ替え作業などを行なった。またブリザード後の除雪も積極的に行なった。


5.その他

 6月21日のミッドウィンター(冬至)に合わせ、南極及びその周辺にある各国基地とグリーティングカードを交換した。昭和基地でも実行委員会を中心に21日~24日にかけてミッドウィンター祭を開催した。8月18日には家族懇談会があり、TV会議システムを使って隊員の家族にこちらの様子を伝えたり、家族の質問に隊員が答えるなど、懇談会は和やかな雰囲気で終了した。9月8日には誕生会を兼ねて15日に出発する中継拠点旅行隊の壮行会を開催した。
昭和基地と国内の小中学校等をテレビ会議システムで結ぶ「南極教室」は、6~9月にかけて合計11回行った。8月にはイベント対応の南極中継として極地研一般公開を1回、南極北極科学館ライブトークを3回行い、多くの隊員が出演した。Facetimeを利用した南極中継も実施している。その他、極地研ホームページや雑誌への各種原稿提供を行った。
なお、この間の隊員の傷病者数は延べ109人で、内訳は皮膚科36人、整形外科31人、内科18人、歯科8人、耳鼻咽喉科5人、その他5人であったが、いずれも軽症であった。

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