13-2.第61次南極地域観測計画の概要(素案)

平成31年度の第61次南極地域観測隊の観測計画(以下「第61次計画」という)は、「南極地域観測第9期6か年計画(以下「第9期計画」という)」(平成27年11月9日決定)の第四年次の計画である。第9期計画では、地球システムにおける現在と過去の南極サブシステムの変動、サブシステム内の相互作用の解明及び南極域の変動と地球システム変動との関係を明らかにすることを目的に、第9期重点研究観測メインテーマ「南極から迫る地球システム変動」が決定され、本メインテーマを推進するため、サブテーマ1「南極大気精密観測から探る全球大気システム」、サブテーマ2「氷床・海氷縁辺域の総合観測から迫る大気‐氷床‐海洋の相互作用」、サブテーマ3「地球システム変動の解明を目指す南極古環境復元」の3つのサブテーマが設定された。これらのサブテーマのもとに、分野横断的な研究観測を展開する。特に、サブテーマ2において、これまでのリュツォ・ホルム湾とその沿岸域、及びケープダンレー沖での海洋観測を継続するとともに、国際連携の下、トッテン氷河沖において海洋観測を機動的に実施する。また基本観測については、極域を観測の場とした地球環境観測の推進、データの取得・公開・利用などを通じて、「GEOSS新10年実施計画」に貢献する。
第61次では南極観測船「しらせ」による往路・復路での海洋観測に加え、別働隊として東京海洋大学練習船「海鷹丸」も加えた船上観測や南極航空網を利用した野外調査等を計画する。

1.観測計画

○基本観測は、第Ⅸ期計画のとおり定常観測とモニタリング観測に区分して実施する。定常観測については、担当機関による観測計画を継続して実施する。特に、気象観測等の一部の定常観測は、第60次で完成する基本観測棟に移転し、観測を継続する。
モニタリング観測は、第Ⅸ期計画を機に再編した以下の五つの分野の観測を実施する。
 (1)宙空圏変動のモニタリング、(2)気水圏変動のモニタリング、(3)地圏変動のモニタリング、(4)生態系変動のモニタリング、(5)地球観測衛星データによる環境変動のモニタリング

○研究観測は、重点研究観測、一般研究観測及び萌芽研究観測の三つのカテゴリーに区分した観測から構成される。
・重点研究観測は、「南極から迫る地球システム変動」の第四年次の計画として、全球的視野を有し、社会的要請に応える総合的な研究観測を実施する。本メインテーマを推進するため設定された、サブテーマ1「南極大気精密観測から探る全球大気システム」、サブテーマ2「氷床・海氷縁辺域の総合観測から迫る大気‐氷床‐海洋の相互作用」、サブテーマ3「地球システム変動の解明を目指す南極古環境復元」のもと計画を立案した。サブテーマ1においては、南極昭和基地大型大気レーダー(PANSY)のフルシステムでの観測を中心として観測を継続し、極域大気が地球システムに与える影響の解明を目指す。サブテーマ2では、棚氷融解、海氷や氷河・氷床変動の実態等に関して生態系も含めた解明を目指し、リュツォ・ホルム湾及びケープダンレー沖での海氷域での海洋観測等を継続実施する。更に、急速に融解や縮小が進んでいると考えられているトッテン氷河の沖合における調査を国際連携により実施する。サブテーマ3では、国内において、59次隊及び60次隊での調査結果に基づき、過去80万年を越える古いアイスコア採取のための深層掘削点を選定するとともに、深層ドリルの開発を実施する。また、東南極氷床変動の復元を目指して、リュツォ・ホルム湾において、海底堆積物採取を行う。
・一般及び萌芽研究観測は、公募によってすでに採択された計画のなかから、実行可能な計画を選択して実施する。特に、重点研究観測メインテーマ及びサブテーマと関連の深い観測項目については、積極的に連携し重点研究観測メインテーマの推進を強化する。また、セールロンダーネ山地方面において、宙空圏、地圏、生物圏に亘る複合観測オペレーションを実施する。

○公開利用研究については、公募のうえ、実行可能性の高い計画を実施する。継続的国内外共同観測については、関係機関と国立極地研究所との協定等に基づき、委託課題として実施する。

2.設営計画

第61次計画においては、昭和基地整備計画に基づき発電機の更新に向けた準備を開始するとともに、発電機更新を見据えた電気設備の点検・更新を継続実施する。太陽光発電パネルの更新や埋立廃棄物の処理など、観測活動に起因する環境負荷の軽減に取り組む。更に、あすか基地の残置廃棄物撤去に向けた調査に着手する。また、今後の内陸での観測・調査活動、特にドームふじ基地周辺のアイスコア採取に向けた整備も実施する。そのために、燃料・車両・重機等の大型物資、観測機材、設備資材等を可能な限り輸送する。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課