3-3.第58次南極地域観測隊越冬隊の現況(平成29年2月~4月)

1.気象・海氷状況

2月

1日から3日にかけて吹雪となったほか、17日夕刻より18日朝まで強風となった以外は、月全体を通して比較的風の弱い好天が続いた。海氷状況は、オングル海峡側の開放水面が1月からさらに広がり、見晴らし岩前まで水面が見える状態になった。オングル海峡はとっつき岬付近まで開放水面が広がっているとみられる。北の浦は依然として厚い海氷におおわれているが、西の瀬戸から南の瀬戸に至るまで開放水面が広がる状況になっており、今後の推移に注意が必要な状況となっている。

3月

岩島と見晴らし岩を結ぶ線の東側まで接近した開放水面は、北の瀬戸にむけ西側に広がる状況がみられた。西の浦方面の海氷は、おんどり島からめんどり島、わかどり島を結ぶ位置の西側まで開放水面となった。気象状況としては、25日および28日に20m/s前後の平均風速となり、外出注意令を発令した以外は好天が続いた。ブリザードはなかった。

4月

月をとおして曇りがちの日が多かったが、積雪は比較的少なく、基地内の除雪に多くの労力を必要とする状況ではなかった。強風の日においても視程が悪化する時間が限られたため、外出注意令の発令は3回に留まり、全体的に平穏な気象条件であったと思われる。オングル海峡の開放水面は、下旬に一時薄氷におおわれたが、その後の強風により再度、オングル海峡の大陸側が開放水面となった。西の瀬戸の開放水面は、おんどり島、めんどり島の西側まで広がる状況に変化は見られなかった。衛星画像によれば、リュツォ・ホルム湾内の海氷が下旬以降広範囲に湾外に流出する様子が確認された。オングル諸島南方の海域では、スカーレン氷河に至る海域の海氷が沿岸まで流出している。

2.基地活動

2月

2月1日に越冬交代式を行い、第57次越冬隊から昭和基地の管理・運営を引き継いだ。午前中より強風であったため交代式は管理棟食堂において実施した。同日夕刻より外出注意令を発令したが、2日から吹雪となり、3日朝に注意令解除とした。このブリザードの影響により57次隊越冬隊の「しらせ」帰投は3日となった。今月は全般的に好天が続き、夏期間の作業は順調に進捗した。15日に「しらせ」最終便により残留していた57次隊員、58次隊員全員が「しらせ」に帰投した。20日に越冬成立式、福島隊員慰霊祭を執り行い、正式に越冬生活に入った。21日よりオーロラ光学観測の一部を開始した。25日に防火訓練、を開催した。28日に全体会議を行い、3月以後の計画等について隊員間の周知を図った。

3月

月をとおして比較的好天に恵まれ、野外行動および屋外作業ともに順調に進んだ。3月に入って、隊員の越冬生活も軌道に乗りつつある。上旬は、野外講習として東オングル島内を一周し危険個所の周知および安全確保の訓練を実施した。中旬は越冬に向けて各棟屋を隊長および設営主任が巡回し、燃料の保管状況、医薬品等の分散保管状況、建屋内の安全管理状況などの点検を実施した。下旬より、年間を通じた野外行動計画をまとめ、想定される今後の海氷状況の変化を考慮して、スケジュール調整とともにガソリン等燃料の消費量を見積もり、計画に反映するよう検討を行った。

4月

夜間に比べ昼間が短くなり、オーロラ観測等の夜間の観測の比重が大きくなるとともに、屋外作業から屋内作業に移行をしている。外気温低下にしたがい、各棟屋の温度管理に配慮しながら、観測設営作業を実施している。基地付近での野外行動訓練および安全講習等を通じて、隊員の野外行動の技術向上を図るとともに、極夜期前に実施予定の野外行動の計画について、海氷状況並びに国内の準備状況等の情報をまとめ、検討を行った。


3.観測

2月

2月より越冬期間の観測活動を開始し、宙空部門のオーロラ光学観測の一部を20日から開始した。重点研究観測の大型大気レーダー観測は、フルシステムによる対流圏、成層圏及び中間圏の観測を継続し、28日の国際共同キャンペーン観測終了まで観測停止時間が最小限となるように運用を行なった。

3月

観測・設営・生活関連を含め月間29件の野外行動を実施し、順調に経過した。極夜期間の観測に向けて、電力需要の調査を前月に引き続き実施し、大電力を消費するとみられる機器を使用する際には電力消費の特徴を制御担当隊員が可能な限り把握できるように調査を実施した。

4月

基地観測は全般的に順調に進んでいる。オーロラ観測等夜間の観測もほぼ計画どおり実施している。野外観測行動は、海氷が比較的安定している基地近辺の北の浦および西オングル島に限定して観測を実施した。

4.設営作業

2月

23日に作業工作棟前から見晴らし岩橇置き場までの海氷上ルート工作を実施した。生物部門の野外行動として西オングル大池の湖沼調査および北の浦におけるアザラシ調査のためのルート工作を実施した。野外調査を開始したことにともない、スノーモービル等で使用するガソリンの必要量について、年間を通した利用計画を策定し、野外調査を計画的に実施することができるよう作業部会を設けることとした。無人航空機による積雪調査、コンテナヤードの現状記録等を実施した。

3月

野外行動については、ガソリンの消費を抑制する手段として、スノーモービル運搬橇の導入を検討している。隊員には、野外行動訓練および国内から送られる衛星画像をもとに昭和基地周辺の現況および過去の隊次における海氷状況等に関する理解を深めるよう検討会を実施した。

4月

海氷状況を確認しながら野外行動を実施しているが、月を通して海氷状況を注視しており、新規ルート工作を控え、基地近傍での観測行動および訓練を実施している。下旬には、観測に関係する国内の研究代表者および南極観測センターと連携し、極夜明け以後の野外行動および基地運営について、テレビ会議による打合せを実施した。

5.その他

 「しらせ」乗員による作業支援が2月13日まで実施されたため、夏期隊員宿舎に滞在する57次越冬隊および58次夏隊員総勢30名が13日まで夏作業をおこない、同日の帰艦便により「しらせ」に帰投した。15日の最終便で57次越冬隊員3名および58次夏隊員4名が「しらせ」最終便により帰投し、越冬隊員33名による活動を開始した。以後、日曜を原則として休日日課とし、各生活係についても順調に活動を開始した。
3月に入り、極夜期前にできるだけの屋外作業を優先して実施しているが、2月までの忙しい夏期間と違い、休日を挟む生活が定着したため、隊員の生活面では輪番の予定も組みやすくなり基地生活が安定してきている。生活係による活動も1か月間の計画に従って活動をおこない、概ね順調である。 
 4月内は日出から日入までの時間が短くなるに従い、生活リズムおよび気温変化への対応に注意しながら、生活全般に配慮している。下旬より南極大学を開始し、毎週月曜に隊員2名による講義を行なっている。南極安全講習、南極医療講習、消火訓練等を実施し、緊急時対応について訓練ならびに講習を実施することにより、隊員相互の連携を確認するようにしている。極夜期に向けて基地の電力需要の変化を精査しながら、観測および電源管理運用の作業を実施している。衛星回線の帯域利用状況を確認しながら、簡易版南極教室を実施するとともに、テレビ電話の試験運用を行った。


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