南極地域観測事業

第52次南極地域観測隊越冬隊の現況(2月~3月)

1.気象・海氷状況

 2月:月前半は風の弱い穏やかな晴天が続き、月半ば以降は風雪の強い状態が2~3日毎に周期的に訪れた。ブリザードにはならなかったものの、16日、17日には2月として観測史上歴代第3位となる強風を観測した。52次隊としての初のブリザードは19日に成立したA級であった。
 3月:中旬は周期的に天気が変化したが、上旬及び下旬は好天が持続し、月合計日照時間は3月としては歴代2位の多さを記録するなど、総じて穏やかな天候となった。
 基地回りの積雪状況の監視を5日に実施したが、電離層観測小屋から迷子沢にかけては昨年9月と変わらないくらいの積雪量である。基地主要部の道路近辺は除雪により走行に問題はないが、天測点下や第一居住棟と気象棟の間には除雪による雪だまりやドリフトが発達しつつある。
 海氷状態について、基地下の北の浦では氷厚が4m以上あり安定している。とっつき岬ルートでは昨年と同じ位置にタイドクラックがあるが、概ね1m以上の氷厚がある。ラングホブデルートは工作地点で氷厚約70cmであり、沿岸方面の順調な海氷の発達が見受けられる。その他周辺域に関して、目視できる範囲内には開放水面、ウォータースカイなどは見られない。

2.基地活動:

 越冬交代後、引き続き自然エネルギー棟の建設作業、大型大気レーダー施設工事等夏作業中心に作業を行った。3月は本格的な冬を迎えるための準備作業等を開始し、穏やかな天候にも助けられ、各隊員が精力的に実施した。また、海氷安全講習、南極安全講習を行い、野外活動時における各人の適応力の向上に努めた。3月23日には第2回目の防災訓練を、52次隊としては初の本格消火訓練として実施した。TV会議システムを利用した南極授業についても、国内の小中学校を中心に交信を開始し、52次隊の活動を紹介している。

3.観測:

 3月1日からはオーロラ光学観測が始まり、同25日には大型大気レーダーによる初の大気観測が実施されるなど、基地での観測はおおむね順調に経過している。また東日本大震災に関連する地震波・重力異常の観測のため、地震計室・重力計室近辺への立ち入りを当面禁止している。

4.設営:

 夏期間の残作業に加え、廃棄物等の持ち帰り準備、旅行用橇の掘り出し、装輪車の整備・格納、装軌車の整備、定期健康診断、食事・心理アンケート等を実施した。3月に入って燃料移送の際の漏油、居住棟温水配管の凍結、スノーモービルのトラブルが発生した。適宜対応の後、重篤なトラブルを避けることができたが、設営のみならず隊全体として、慎重な行動を再確認した。各部門とも現在順調に推移している。

5.その他:

 3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に際し一時家族と連絡がつかなくなった隊員もいたが、その後全員の家族の無事を知り、胸をなで下ろした。3月25日には東日本大震災で被災された方々に対するメッセージを送付した。また、誕生会やスポーツ大会、お互いの業務を理解するための職場訪問など、生活係の活動が本格化し、基地生活に彩りを添えている。

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研究開発局海洋地球課

-- 登録:平成24年02月 --