南極地域観測第Ⅶ期計画 [4]

4.設営計画の概要
 第7期計画においては、特に、第51次観測から就航する後継船に照準を合わせ長期的展望にたった設営計画とした。重点的に実施する項目は、1)後継船就航に伴う輸送システムの整備、2)環境保全、3)自然エネルギーの活用、4)基地建物、車両、諸設備の維持・運用である。また、民間企業等へ設営の外部委託(アウトソーシング)を検討するとともに、南極の場を利用した設営工学的研究を進めるため、民間との共同研究も推進する。

4.1.「しらせ」後継船就航に伴う輸送システムの整備
 第51次観測から就航する後継船は、コンテナを使用した輸送が中心になる。また、ヘリコプターも現用のものよりも大型化する。この新たな輸送体制に向けて、基地のコンテナヤード、ヘリポート及び基地内輸送道路の整備等を第48次観測から第50次観測までに行う。また、氷上輸送のための新牽引車やコンテナ橇、コンテナ用フォークリスト、トラック等も新たに搬入する。
 一方、国内での輸送準備作業を行っている国立極地研究所は、平成21年度に現在の板橋地区から立川地区へ移転する。立川地区の新建物には、極地観測棟も建設される計画で、後継船によるコンテナ輸送に対応した国内準備作業が効率的に実施されることになる。
 また、第50次観測では、「しらせ」による通常の物資輸送ができない可能性が大きいため、第48次及び第49次観測で事前輸送を行い、第50次観測での輸送量を極力少なくする。

4.2.環境保全の推進
 南極条約環境保護議定書に基づき環境保全対策を推進する。第46次観測から開始した「昭和基地クリーンアップ4か年計画」を継続推進し、これまで輸送力の制約等から、昭和基地周辺の露岩上に残されている廃棄物についても、第49次観測までに持ち帰る。さらに、第43次観測から継続実施してきた燃料移送配管工事や金属タンクの設置を完成させ、油漏れによる環境汚染に対処する。これに関連して、機械・建築部門の大型部品等の露岩上での保管を極力少なくするため、大型倉庫を建設する。これにより、将来廃棄物が少なくなることが期待できる。また、内陸に残置した廃棄物や埋め立て廃棄物等についても撤去または封じ込め計画を立てる。

4.3.自然エネルギーの活用と省エネの推進
 輸送及び環境保全の観点から、昭和基地の化石燃料の使用量を低減するため、自然エネルギーの利用を進める。特に昭和基地で有望な風力発電機を増設し、既存のディーゼル発電機との連携運転を行うとともに、将来の大型風力発電機の導入準備を行う。また、ディーゼル発電機のコ・ジェネレーションの他に、照明や暖房機器などの省エネにも努める。

4.4.基地建物、車両、諸設備の維持
 昭和基地での観測及び生活を円滑に行うために必要な、基地建物、建設機械やトラック等の車両、発電・造水設備、通信、医療設備、環境保全施設を維持する。また、内陸基地の設備を維持するとともに、野外調査隊が使用する雪上車及び橇も維持・更新する。

4.5.情報通信システムの整備と活用
 情報通信は、これからの南極観測の新しい展開を支える重要な基盤技術である。「しらせ」後継船の就航を機に、国内-観測船-昭和基地間を一元的に結ぶ統合情報ネットワーク網を構築し、南極からの多様かつ大容量の情報発信に積極的に活用する。具体的には、導入後10年以上経過し、性能・機能面での劣化が否めない昭和基地内ネットワーク(昭和基地LAN)を後継船と同レベルのギガビットLANに高速化するとともに、最新の無線LAN技術を用いて観測船と昭和基地LANを、さらに、インテルサット衛星回線経由で国内の関係機関までシームレスにネットワーク接続する。これにより、観測データのリアルタイム伝送や観測の遠隔自動運用(テレサイエンス)などをはじめ、遠隔医療実験、基地設備や海氷状況の映像監視など、安全対策のための支援手段としても有効活用が期待される。


3.観測計画の概要へ 5.観測支援体制の充実へ

-- 登録:平成21年以前 --