核融合研究

 
      

1. 核融合反応とは(太陽でのエネルギー生成)

 

核融合は、太陽をはじめとする宇宙の星々が生み出すエネルギーの源です。 太陽が誕生したのは46億年前のことですが、今も約1.5億キロメートル先の地球を照らし続けています。 気の遠くなるような長い時間にわたって膨大なエネルギーを生み出し続ける太陽で起きている現象を、人類の手で生み出し、発電等に使用することを目指すのが、核融合エネルギーの研究開発です。
このため、「地上に太陽をつくる」研究とも言われています。

 

2. 核融合エネルギーの利点(エネルギー問題解決の切り札)

 

核融合エネルギーは、10のキーワードで挙げているように、「資源が海水中に豊富にある」「二酸化炭素を排出しない」といった特徴があり、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決するものと期待されています。 また、磁場閉じ込めによる核融合エネルギーの研究開発は、軍事用技術と原理が異なるため、安全保障上の制約が少ないという特徴もあります。このため、東西冷戦下の1985年に行われた米ソ首脳(レーガン=ゴルバチョフ)会談において、平和目的のための核融合研究を国際協力のもとで行うことが提唱され、ITER(イーター)計画が実施されることになりました。

 

3. 核融合エネルギー研究開発の段階(核融合の3つのマイルストーン)

 

核融合エネルギーの実現に向けては、研究開発の段階を大きく三段階に分けて、それぞれの目標に向けた研究開発を実施しています。
第一段階は科学的実現性の確立を目指す段階です。具体的には、核融合プラズマ生成に必要な加熱エネルギーより、そのプラズマで実際に核融合反応(DT反応)が起きたときに出るエネルギーが大きくなる状態(「臨界プラズマ条件」という。)の達成が課題です。
第二段階は科学的・技術的実現性の確立を目指す段階です。具体的には、核融合プラズマが加熱を止めても核融合エネルギーにより持続する状態(「自己点火条件」という。)の達成と核融合プラズマの長時間維持に道筋を付けることをはじめ、核融合実験炉の建設を通した炉工学技術の発展、エネルギー源である核融合中性子に耐えうる材料の開発、核融合エネルギーから熱を取り出す技術等、多くの達成すべき課題があります。現在取り組んでいる段階がこの段階です。
第三段階は技術的実証・経済的実現性の確立を目指す段階です。具体的には、実際に発電を行うとともに、その経済性の向上を目指して必要な課題に取り組みます。そのために、核融合原型炉DEMOの建設、運転等を行うことが検討されています。 これらの段階を経て、実用段階である商用炉を目指しています。

 

核融合エネルギーの段階的研究開発

 

4. 研究開発の現状(国内外で進行中)

 

科学的・技術的実現性の確立を目指す現在、日欧米露中韓印は国際条約であるITER協定を締約し、ITER計画を推進しています。また、日欧は同じく国際条約である、より広範な取組に関する協定(BA(ビーエー)協定)を締結して研究開発を実施しています。日本はITER計画における準ホスト国、BA活動のホスト国として主導的な役割を果たしており、ITER計画、BA活動ともにサイトでの建設や機器の製作が着実に進展しています。また、技術の多様性を確保する観点から、ヘリカル方式・レーザー方式や革新的概念の研究を並行して推進しています。

 

5. 核融合反応を起こす方法(主な3つの方式)

 

磁場閉じ込めの代表例として、トカマク方式ヘリカル方式、また、慣性閉じ込めの代表例として、レーザー方式の3つを紹介します。

 

(1)トカマク方式(磁場のかご+プラズマに電流を流し閉じ込める)

フランスにあるITERやQST那珂核融合研究所にあるJT-60SAで採用されている方式です。核融合反応を起こすためには燃料を加熱してプラズマにしますが、プラズマは分子が電離、つまりプラスの電荷を持つ陽イオンとマイナスの電荷を持つ電子に分かれて運動している状態にあります。電荷を持つ粒子は磁力線に沿って運動するという性質があるため、磁場を使ってプラズマを閉じ込め、更に加熱することで、超高温の核融合プラズマを生成するというのが磁場閉じ込め方式です。 トカマク方式では、Dの形をしたコイルを円状に並べ、コイルの中にドーナツ状の磁場を発生させます。さらに、ドーナツの中心にあるコイルでプラズマに誘導電流を流し、誘導電流によりドーナツの断面を回るような磁場を発生させます。これら2つの磁場の重ね合わせによりねじれた磁場を形成し、プラズマを閉じ込めます。ちなみに、誘導電流を半永久的に流すことは現実的に不可能であるため、プラズマを長時間閉じ込めるためには、加熱装置を使用して電流を流し続ける必要があります。

トカマクの概念図

 

(2)ヘリカル方式(ねじれたコイルを使い閉じ込める)

核融合科学研究所にある大型ヘリカル装置(LHD)等で採用されている方式です。トカマク方式と同様に、ドーナツ状のねじれた磁場でプラズマを閉じ込めますが、磁場を作るために、ヘリカルコイルというねじれたコイルを使用します。複雑な形状のコイルであるため製作の難易度が高い一方、運転時にはプラズマに電流を流す必要がないという特徴があります。 トカマク方式と比べると、長時間の運転を得意としますが、プラズマを閉じ込める性能に課題があり、研究が進められています。

(3)レーザー方式(強力なレーザーで瞬間的に反応を起こす)

大阪大学レーザー科学研究所にある激光XII号等で実験されています。強力なレーザーを、燃料を封じ込めたペレットに照射し、爆縮を起こして核融合反応を発生させます。爆縮とは、極めて強力なレーザーを10億分の1秒程度というごく瞬間的に燃料ペレットに当て、表面を爆発的に蒸発させ、その爆発的な圧力でペレットに封じられた燃料を瞬時に圧縮させるという現象です。この圧縮された燃料がレーザーにより瞬時に加熱されることで、超高温、超高圧となり、核融合反応が起こります。

核融合の主な閉じ込め方式について

 

 

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研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

(研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付)