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融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓(加藤 隆史)

研究領域名

融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓

研究期間

平成22年度~26年度

領域代表者

加藤 隆史(東京大学・大学院工学系研究科・教授)

研究領域の概要

 来るべき新時代に備える低環境負荷・省エネルギー型の新しい材料構築のための学問を創成することが本領域の目的である。ここで手本とするのは、有機分子を巧みに使う自然界における物づくりの姿であり、特に、バイオミネラリゼーションに焦点をあてる。そこでは、有機分子が無機物質の形成を制御して常温常圧の条件において優れた精緻な構造かつ高機能を有する材料が、骨・歯・貝殻真珠層などとして作られている。本領域では、従来交流の乏しかった有機材料化学、無機材料化学、物理学、生物学の分野の研究者の積極的な融合により新しい材料学を生み出し、人間と自然の調和する融合材料を創成する。さらに、この新材料学により、生物の作り出せない動的新機能を発現する無機と有機の融合材料を、分子制御プロセスにより構築する。

領域代表者からの報告

1.研究領域の目的及び意義

 本研究領域では、自然と調和して永続的に発展可能、かつ快適な「材料調和社会」の実現に向けて、省エネルギー・省資源・低環境負荷性、かつ高機能な材料の創製とそのための材料構築学の創成を目的とした。自然界における生物の“ものづくり”の姿を手本とし、有機分子や無機物質を、巧みに組み合わせて融合させることにより新しい材料の創製にアプローチした。生物が、歯・骨・真珠・甲殻などの硬い組織をつくるプロセスであるバイオミネラリゼーションでは、生体有機分子が、無機結晶化を精密に制御する「分子制御」により、常温常圧の温和な条件において人工材料をもしのぐ優れた精緻な構造の材料が作られている。このようなプロセスやそこで起きている現象・構造を深く理解し、生物がつくる材料に匹敵し、環境負荷が低い自然調和性に優れた材料の構築を目指した。さらに、我が国が世界をリードする最新の超分子化学・分子集合体化学・高分子化学により作られる最先端の人工系素材を機能性無機物質と融合させることにより、生物が作り出すものを超える新材料の創製を進めた。本研究領域では、有機化学、高分子化学、無機化学、物理学、生物学、工学などの諸分野の学問的融合を推進し、新しい材料構築学の創成に取り組んだ。本研究領域で得られた成果は、材料科学の学問的な発展に繋がるだけでなく、環境調和性の高い新材料による環境・エネルギー・医療分野の基盤技術を社会に提供すると考えられる。

2.研究の進展状況及び成果の概要

 本研究領域においては、3つの研究項目、すなわち、分子制御による融合マテリアルの創製(A01)、融合マテリアルの構造構築(A02)、融合マテリアルの機能開拓(A03)が、分子制御技術開発・構造構築・機能化の一連の流れを有しながら連携して研究を推進することにより材料および学問の融合を進めた。A01においては、分子制御プロセス活用の基盤技術として、透明で強度に優れる自然調和型コンポジットや高輝度発光性融合マテリアルの合成法などが開発された。A02においては、温度応答型人工骨のための基盤技術、液晶やDNAを利用した微粒子の配列および構造構築方法などが開発された。A03においては、融合機能を持つバイオメディカル機能材料、エネルギー機能材料、光機能・電子機能材料、動的分離機能材料などが得られた。さらに、バイオミネラルの形成・構造と物性の相関に関する理論的理解、精密機能性高分子合成のためのバイオミネラル融合触媒、磁場や温度にオンデマンドに応答する融合リポソーム等の多くの共同研究成果が得られた。これらの成果は、国際シンポジウム、国内公開シンポジウム、領域のホームページやニューズレターにより、広く公表した。さらにアウトリーチ活動を通じた国民との科学・技術対話も積極的に行い、研究期間内に合計190件以上の体験教室や出前授業などを行った。これらには、一般・小中高生など、合計13,000名以上の参加があった。

審査部会における所見

A+ (研究領域の設定目的に照らして、期待以上の成果があった)

1.総合所見

 本研究領域は、自然界における生物の“ものづくり”に倣い、低環境負荷型の新しい材料構築学を創成することを目的としている。領域代表者の強力なリーダーシップの下、従来は十分な交流のなかった異分野の研究者が真の協力体制を築いたことで、材料創製から構造構築、機能開拓に至る一連の流れの中で多数の共同研究が進展し、極めて多くの優れた研究成果が得られた。これにより、従来の有機-無機複合材料の概念を越える「融合マテリアル」が数多く創製されただけでなく、反応機構・原理に対する基礎的な理解が深まり、新しい材料構築学の創成に成功している。多数の論文発表や受賞実績、関連分野の学会等におけるシンポジウムの開催などからも、本研究領域が関連分野に与えた影響は明らかである。また、戦略的な領域マネジメントによって、若手研究者の育成、国際連携、アウトリーチ活動が強力に推進されたことも評価に値する。総合して、本研究領域の設定目的に照らして、期待以上の成果があったと判断できる。

2.評価の着目点ごとの所見

(1)研究領域の設定目的の達成度

 無機化学、有機化学、高分子化学、計算科学、生物工学などの多分野の研究者を結集することで、従来にない組合せからなる「融合マテリアル」を数多く創製し、その機能開拓ならびに機構・原理解明を推進し、新しい材料構築学の創成に成功している。研究推進時に生じた問題として東日本大震災における被災があったが、総括班による支援機能が十二分に機能し、適切な対応が取られた。また、中間評価結果の所見において指摘を受けた事項については、全てにおいて真摯に対応がなされた。戦略的な領域マネジメントの結果、材料創製から構造構築、機能開拓に至る流れと、計画研究と公募研究の有機的な連携が縦横に組み合わさって数多くの共同研究が進展し、期待を上回る優れた研究成果が多数得られた。「既存の学問分野の枠に収まらない新興・融合領域の創成等を目指すもの」並びに「多様な研究者による新たな視点や手法による共同研究等の推進により、当該研究領域の新たな展開を目指すもの」のいずれの領域設定目的に照らしても、期待以上の成果があったと認められる。

(2)研究成果

 研究項目A01の材料創製、研究項目A02の構造構築、研究項目A03の機能開拓のいずれの項目においても、質・量ともに申し分のない研究成果が得られている。とりわけ、研究項目A03の共同研究成果として、実用を展望できる新機能材料が多数創製されており、今後の発展ならびに周辺分野への波及効果が期待される。また、研究成果は多数の原著論文(約970報)、総説(約260報)、著書等において発表されている他、11回に及ぶ公開シンポジウムが開催されており、成果の公表・普及に対する多大な努力が認められる。さらに、アウトリーチ活動として体験化学教室や訪問授業などが行われ、参加者数が合計13,000名を超えたことは賞賛に値する。

(3)研究組織

 研究項目A01の材料創製から研究項目A02の構造構築、研究項目A03の機能開拓に至る一連の流れを総括班が統括することで、効果的に研究が進められる体制がとられた。トピックス会議の立ち上げや、シーズとニーズのテーマ整理といった総括班の積極的な取組みによって、研究領域内の連携が進み、計画研究と公募研究の調和のとれた研究組織が構築された。また、国際的に著名な研究者を国際アドバイザーとして多数回招聘し、助言を受けるとともに国際連携を図ったことは、本研究領域の国際的な情報発信、国際展開の点から有意義な活動として評価できる。

(4)研究費の使用

 特に問題点はなかった。

(5)当該学問分野、関連学問分野への貢献度

 既存の無機化学、有機化学、高分子化学、計算科学、生物工学などの多様な分野を結び付ける形で新しい材料構築学が創成された。関連学問分野に与えたインパクトの大きさは、権威ある学術雑誌上での論文発表件数や受賞実績、関連分野の学会等におけるシンポジウムの開催等からも明らかである。

(6)若手研究者育成への貢献度

 若手研究者育成に対する取組として11回の若手スクールが開催され、延べ570名以上の学生・若手研究者が参加した。このような取組への参加者の中から19名の学生が博士後期課程に進学しているほか、多くの若手研究者が就職・昇進を果たしている。また、学生・博士研究員の受賞が222件を数えるなど、若手研究者の適切な育成と成長が認められる。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成28年02月 --