植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系(町田 泰則)

研究領域名

植物メリステムと器官の発生を支える情報統御系

研究期間

平成19年度~平成24年度

領域代表者

町田 泰則(名古屋大学・大学院理学研究科・教授)

研究領域の概要

 最近の研究により、植物の発生過程には、転写因子、低分子RNA、新奇なペプチド性のリガンド、クロマチンの構造変換因子が重要な役割を果たしていることがわかってきた。また、葉形成から花形成への発生プログラムの切換えである「花成」を誘導する因子の遺伝子が解明され、誘導因子の実体と長距離輸送の新しいモデルが提案された。本得手領域研究では、このような情報・調整分子からなる植物発生における高度な制御系(統御系)を解明する。そのために、この分野で先端的な研究を進めている、若手を含む一線級の研究者を計画班員として、さらに、今後が期待される若手を公募研究班員として組織化し、連携をとりながら研究を行う。このような集中的な領域研究を実施することにより、この分野の次世代を養成しつつ、世界をリードする研究を推進する。

領域代表者からの報告

審査部会における所見

A+(研究領域の設定目的に照らして、期待以上の成果があった)

1.総合所見

 本研究領域は、植物発生の根幹であるメリステムの形成・維持と機能転換、ならびにメリステムからの器官形成を支配する制御系の解明を目的としたものである。世界に先駆けたフロリゲンの発見とその機能解明などを通じて、植物の発生、器官形成、成長等を司る制御系の基本概念を深めることにより、研究領域全体の力強い発展が認められ、設定目的に照らして期待以上の成果があったと評価できる。その実は、高い質と刮目する量の学術論文発表、特許申請、国際会議での招待講演、シンポジウム実施状況等において判断できる。
 若手研究者の育成に関して、当該領域の若手研究者を主力となるよう積極的に育成し、研究分野の継続性を担保することに成功したことは高く評価できる。

2.評価の着目点ごとの所見

(1)研究領域の設定目的の達成度

 「研究の発展段階の観点からみて成長期にあり、研究の一層の発展が期待される研究領域」としては、本研究領域発足時から、領域組織の研究者はそれぞれの植物科学分野において世界をリードするレベルにあり、有機的連携による骨太な新分野の創出が見込まれていた。実験結果の現象論的記載にとどまらず、論理性を基盤に研究を進展させた結果、植物発生を統御するメリステムの多くの知見が集積し、新たな分子機構も数多く解明された。さらに、「その領域の研究の発展が他の研究領域の研究の発展に大きな波及効果をもたらす等、学術研究における先導的または基盤的意義を有する研究領域」として、植物の発生、器官形成、成長を司る制御系の基本概念を明確に進展させた。
 また、本領域の研究期間内に、関連する研究者が3つの新たな新学術領域研究を立ち上げており、これも本領域が先導的な役割を果たした実績と言える。

(2)研究成果

 フロリゲンの新たな機能の発見、根端メリステムを規定するペプチド性因子、ならびに維管束細胞の分化と増殖のシグナル伝達に関連する多くの因子の同定とそれらの相互作用の解明、メリステムから器官発生におけるゲノム様態の解明など、当初の想定を越える発見を含む成果が導かれた。本研究領域からの800余編の論文発表は圧巻である。領域組織内の盛んな共同研究によって先導的な意義をもつ知見が積み重ねられ、それによって植物一般に通じる基盤概念が提唱された。

(3)研究組織

 個々の資質が高い植物科学研究者によって構成するだけでなく、当初より共同研究の促進を前提としたグループ構成及び研究者選択が功を奏した。研究領域内において高い頻度で質の高い連携研究が実施され、それは800余編の論文発表のうち、約25%が領域内の共同研究成果であることからも判断される。その結果、自発的な共同研究が数多く生まれたのみならず、予想外の研究成果が得られたことにつながっている。

(4)研究費の使用

 特に問題点はなかった。

(5)当該学問分野、関連学問分野への貢献度

 植物科学分野への貢献度は申し分ない。動物との比較研究を通じて生物共通のメカニズムを探求するなど、生物科学全体への波及効果が加えられると本研究領域の意義はさらに深まったと思われる。

(6)若手研究者育成への貢献度

 若手研究者の領域内共同研究への積極的参画等、次世代研究者の育成・成長に十分な配慮がなされており、この点への高い貢献が認められる。本研究領域の成果をもとに、新学術領域研究が新たに3領域発足したことは特筆すべきであり、若手研究者によるこの分野への貢献が持続的に生じるものと期待できる。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

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-- 登録:平成25年11月 --