有機分子触媒による未来型分子変換(寺田 眞浩)

研究領域名

有機分子触媒による未来型分子変換

研究期間

平成23年度~平成27年度

領域代表者

寺田 眞浩(東北大学・大学院理学研究科・教授)

研究領域の概要

 本領域研究は、地球の資源と環境に可能な限り配慮した持続可能な「モノづくり」の科学を発展させることを目的とする。そのために、近年、新たな触媒として大きな注目を集めている「有機分子触媒」に焦点をあて、有機分子触媒の設計開発および有機分子触媒を用いた優れた合成プロセスの開発を推し進めることにより、「モノづくり」の新たな未来像を創出する。具体的には、有機合成化学者の実験的アプローチによる触媒開発と理論化学者による触媒現象の解明とを密接な連携のもとで実施し、有機分子触媒の合理的設計を行うとともに、基質/触媒間の相互作用と活性化の本質を理解し、新手法に基づく分子変換反応の開発へと結び付ける。これら有機分子触媒と触媒反応系を駆使することで、有用物質の実践的な合成プロセスとして真に優れた分子変換を実現する。 

領域代表者からの報告

審査部会における所見

A (研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる)

1.総合所見

 本研究領域は、世界における日本の触媒化学の優位性が極めて重要で、これを発展・深化させることが喫緊の課題と捉え、論理的に触媒合成の開発指導原理を明確にしようとする精力的な領域である。領域内のみならず、協力企業との共同研究が実施され、成果が着実に出ていることからも、本領域は当初の目的に照らして、順調に進展していると判断できる。今後は有機分子触媒を大きな観点で捉え、有機分子触媒でなければ成し得ない反応を開発すべく研究を推進し、新たな展開につなげることを期待する。

2.評価の着目点ごとの所見

(1)研究の進展状況

 各研究者が開発した種々の優れた有機触媒により、個々の成果は十分出ている。研究組織内の連携は機能的に進められており、企業との多くの共同研究を積極的に実施することによって、実用化が見込める研究成果を得ている点も高く評価できる。
 「多様な研究者による新たな視点や手法による共同研究等の推進により、当該研究領域の新たな展開を目指すもの」としてのこれまでの進展は順調と考えられるが、今後は斬新なアイデアでの研究推進、理論的な触媒化学の発展を期待する。

(2)研究成果

 計画研究間のみならず、企業との共同研究も実施されており成果が着実に現れている。計算化学を用いて、触媒の機構の理論的な研究が大きく進展し、新たな触媒開発指導原理につながる知見が見出されており、将来の展開が期待できる。若手研究者の育成にも注力し、若手を含めて多くの受賞、また雑誌のカバーページを飾るような論文の成果が得られている。本研究領域の成果は産業界からの期待も大きく、影響力もある。

(3)研究組織

 研究組織は、日本のトップクラスの研究者により構成されており、研究項目内外での多くの共同研究に加え、協力企業と共同研究も多数行われているが、新しい学術領域の創出には、領域全体で共通課題意識を持って本分野ならではの基礎概念創出に向けて努力することが必要と考えられる。

(4)研究費の使用

特に問題点はなかった。

(5)今後の研究領域の推進方策

 多様な研究者による個別研究の集まりとならないよう、領域全体を統一する概念を明確にする必要がある。触媒の開発指導原理を論理的に構築し、世界に先駆けた概念による新触媒の開発が重要である。領域名にもある「未来型分子変換」に見合う成果につながるよう、既存の反応の制御に留まらず、有機分子触媒でなければ成し得ない反応を開発すべく共同研究や新視点・手法の開発を望みたい。

(6)各計画研究の継続に係る審査の必要性・経費の適切性

 各計画研究において順調に成果があがっており、今後の研究計画・方法も意欲的かつ妥当であることから、継続に係る審査の必要はない。研究経費も適切に計上されており、問題はない。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

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-- 登録:平成25年11月 --