先端加速器LHCが切り拓くテラスケールの素粒子物理学~真空と時空への新たな挑戦(浅井 祥仁)

研究領域名

先端加速器LHCが切り拓くテラスケールの素粒子物理学~真空と時空への新たな挑戦

研究期間

平成23年度~平成27年度

領域代表者

浅井 祥仁(東京大学・大学院理学系研究科・教授)

研究領域の概要

 先端加速器LHCでヒッグス粒子を発見し、「真空」が持つ豊かな構造や質量の起源を解明する。また超対称性や余剰次元の発見から、宇宙の暗黒物質の正体を解明し、「時空」構造の解明をすすめる。これらの成果は、自発的対称性の破れによる相転移が現在の多様な宇宙の起源であることを実証するものである。また我々の感覚に直接結びついた「時空」の理解に革命的な変革をもたらす。
 本申請領域は、これまで粒子やその相互作用が主な研究対象であった素粒子研究を大きく広げ、従来入れ物であった「時空」や「真空」を探る新たな研究領域を形成する。確実な成果が期待されるLHCでのテラスケール物理成果を核に、エネルギーフロンティア実験の鍵となる加速器・検出器技術の開発や、宇宙、時空、超弦理論などの研究を展開する。

領域代表者からの報告

審査部会における所見

A+(研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる)

1.総合所見

 本研究領域は、ヒッグス粒子や超対称性粒子などの確実な発見とその発見を機に、素粒子・時空・真空の新しい融合領域の生成を目指しており、歴史的な成果であるヒッグス粒子の発見は期待以上の進展と言える。本研究領域の若手研究者を中心とした日本のグループが、大規模実験の中で重要な役割を果たしていることも評価できる。今後も領域として研究を進め、2015年からの14TeVでの実験によるヒッグス粒子の精密測定、さらには超対称性粒子発見を目指してほしい。

2.評価の着目点ごとの所見

(1)研究の進展状況

 本研究領域は、綿密に計画された研究を推進することで着実に成果に繋げており、大きな目標の1つであったヒッグス粒子が質量126GeVに発見され、スピンパリティー(0+)が確定された成果は期待以上の進展と言える。2015年からの14TeVでの実験による超対称性粒子発見を期待する。また、ヒッグス粒子の精密測定により、標準ゲージ模型の破れの糸口を発見することも期待したい。
 この実験的成果を踏まえて、素粒子・時空・真空 新しい融合領域の創成という目標に向けてさらに研究が展開されると思われる。前人未踏のエネルギー領域での物理の探求は常に新しい研究領域の開拓の可能性を秘めている。
 ヒッグス粒子の発見は、素粒子物理学だけでなく、宇宙物理学をはじめとする他分野へ大きな波及効果があり、真空の構造や時空の解明を通して基礎となる自然観の変革へと波及する。
 また、ヒッグスの発見以外の最高エネルギーでの物理が及ぼす他分野への影響も今後大きくなると期待できる。この実験達成のために開発された半導体検出器技術、高速データ収集技術、超伝導技術は、産業・工業への波及効果が期待される。

(2)研究成果

 大きな目標の1つであったヒッグス粒子の発見という成果は大きい。また、その性質も順次明らかにされつつあり、結果の公表も行われている。今後、標準理論を超える超対称性粒子の発見等を期待する。一方で、全体として非常に大きなプロジェクトであるが、その中で日本人研究者のビジビリティを示していただきたい。

(3)研究組織

 国際的に活躍する若手研究者の育成は着実に進んでおり、評価できる。一方で、公募研究の数が少ない。新興・融合領域創成のためには、計画研究を補完しうる公募研究の参画が求められる。また、理論項目との連携が不足しているため、今後、研究項目A05と研究項目Bのグループのより一層の連携・融合が進むことを期待したい。

(4)研究費の使用

特に問題点はなかった。

(5)今後の研究領域の推進方策

 総括班による良好なマネジメントの下、ヒッグス粒子の発見をはじめとして、特に研究項目Aのグループでは研究が大変順調に進んでいる。今後は理論項目との連携を深めるとともに、公募研究の参画により融合研究がより一層進展することを期待する。

(6)各計画研究の継続に係る審査の必要性・経費の適切性

 各計画研究については順調に成果をあげており、継続に係る審査の必要性はない。また、研究経費の使途についても妥当である。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

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-- 登録:平成25年11月 --