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研究領域名:確率的情報処理への統計力学的アプローチ

1.研究領域名:

確率的情報処理への統計力学的アプローチ

2.研究期間:

平成14年度~平成17年度

3.領域代表者:

田中 和之(東北大学・大学院情報科学研究科・助教授)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 本特定領域研究は、平均場近似、モンテカルロ法、レプリカ法を中心とする統計力学的解析手法を統計学的立場において考案された確率的大規模情報処理システムの実用化に向けてのキーテクノロジーとして耐えうる形への理論的体系化を行うことを目的とする。計算機・インターネットの一般家庭への普及、ゲノム情報に代表されるデータの大規模化などいわゆる近年の情報革命に伴い、情報通信技術、画像処理技術、知識情報処理技術等を中心に近年確率的大規模情報処理を必要とする問題は急速に増加している。ただし、これらの技術の基本となる大自由度の統計モデルに関する理論の体系化は未だ十分とは言いがたく、多くの場合、発見法と試行錯誤に頼った問題解決・システム設計がなされている。このような現状に対し、本特定領域研究では物理学の研究を通して大自由度統計に関する計算技法を高度に発展させた統計力学を基礎として、学術的立場において大規模情報処理に関する理論的および技術的基盤を確立することを目標とするものであり、その成果が波及する研究分野は物理学における新分野開拓から情報関連産業における最新技術の実用化研究に至るまで極めて広範である。
 本研究の最終目的は以下の5点である。
 1) 情報通信技術、画像処理技術、知識情報処理技術の各種問題解決のための確率モデル化。
 2) 統計学、統計力学の理論体系における計算技法の導入。
 3) 確率的大規模情報処理アルゴリズムの構成理論を体系化。
 4) 情報産業への学術的貢献を目的とした物理学における新分野開拓の基盤整備。
 5) 啓蒙活動と人材育成を通しての社会への還元と技術の定着。

(2)研究成果の概要

 本特定領域は3研究項目から構成されている。各研究項目の主な研究成果は以下の通りである。

[研究項目A:確率的情報処理モデル基礎]符号理論、情報通信、最適化問題などにおいて、確率モデルの基本的な性質に立脚した形で研究計画を遂行した。更に、本特定領域の設定目的においては想定されていなかった量子誤り訂正符号にまで発展し、スピングラス理論の視点からその理論的性能限界の導出を行っている。

[研究項目B:確率的情報処理システム設計]確率的情報処理システムの設計法、性能評価法、および確率伝搬法、確率アルゴリズムに代表される実際的アルゴリズムの開発を中心に研究計画間で連携をとりながら当初の設定目的を達成した。その設定目的達成の過程を通して、レプリカ法の概念に基づく確率伝搬法の拡張とその動作原理の解明の提案と動作解明という形へと発展し、そこからの多くの研究テーマの創出がされた。

[研究項目C:問題解決のための確率モデル化]制御系、画像処理、移動体通信、集団学習等の具体的問題における新しい確率的手法の提案を中心に研究計画間で連携をとりながら当初の設定目的を達成した。特に、移動体通信におけるCDMA復調方式の性能評価に対する新方式は世界的な注目を浴び、多くの研究テーマの創出へとつながった。

これらの成果をとりまとめた体系化された確率的情報処理の教科書を
 臨時別冊・数理科学SGCライブラリ50「確率的情報処理と統計力学」―様々なアプローチとそのチュートリアル(サイエンス社、2006年9月刊行)
 という形で出版した。

5.審査部会における所見

A(期待どおり研究が進展した)
 情報学と統計物理学の一流の研究者の交流を通して、統計力学手法の情報処理への応用の理論体系の確立と新しい具体的展開が見られたことは高く評価できる。実応用に結びついた優れた研究成果が見られる点、若手研究者を中心とした組織により次世代の人材育成に大きく貢献した点、教科書などの執筆や企業との交流などを通して研究成果の普及に努めている点から、期待どおりの進展があったと判断した。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --