研究課題名:21世紀初頭の投票行動の全国的・時系列的調査研究

1.研究課題名:

21世紀初頭の投票行動の全国的・時系列的調査研究

2.研究期間:

平成13年度~平成17年度

3.研究代表者:

池田 謙一(東京大学大学院人文社会系研究科・教授)

4.研究代表者からの報告

(1)研究課題の目的及び意義

 投票行動は政治参加・社会参加のもっとも基本的な手段であり、世論の動態のダイナミックスをとらえる主要な1指標である。本プロジェクト「JES3(Japanese Election Study 3)」は、この指標を中心に、日本人の政治行動・政治意識に関わるデータを平成13~17年の間の9度にわたり、全て全国パネル調査として取得することを目標にした。平成13年度、平成15年度には参議院選挙の事前・事後の各2調査、平成15年度および平成17年度には解散を受けた衆議院選挙の事前・事後の各2調査を実施し、さらに平成14年度に関しては、統一地方選挙の事前調査を実施した。こうして平成13年小泉政権誕生時から平成17年の同一政権による2度目の衆議院選挙までの4度の国政選挙全てを通じて、政権の変容と、それが有権者の投票行動に及ぼす効果を緻密にとらえるという目的を達成した。データは同一人物に対する継続調査であるために、衆院に関しては新制度のもとでの有権者の適応行動が追跡可能となり、またそれに対応した政党の行動を研究する上でも基本データを提供するものとなっている。さらに、国政レベルと地方選挙レベルでの有権者の行動の対応を検討するという目的も果たした。これと同時に、政治行動・政治意識に関連した新しい研究テーマに関わる複数のデータを取得している。全データは公開されるので、当該研究参加者を越えて、実証的な政治行動・政治意識研究において本研究が果たす意義は大きい。

(2)研究成果の概要

 本調査の内容は、時系列的に継続して測定された諸指標を多数含むと同時に、時事的項目、争点項目も充実させており、それによって多くの成果が上がっている。
 まず、過去の代表的な選挙調査、なかんずくJES2との継続項目によって、1980年代からの日本人の政治への関わり方の変容をとらえることが可能となっている。さらに、小泉政権下での全ての国政選挙をとらえることによって、この政権の変化について選挙を焦点とした網羅的な分析が可能となっている。そして統一地方選挙に関してもデータ取得したことで、同一有権者が異なる政治のレベルにおいて異なる投票行動を取るのかどうか、制度の効果の分析が可能となっている。
 また平成16年度には国際比較政治体制プロジェクト(CSES2)のデータ取得の責を果たした。このプロジェクトは世界規模の比較調査で、マクロ=マイクロの政治システム相互連関を政治行動において体系的に検討することを可能にしている。この部分のデータは既に他の世界32の国政選挙データとともに公開されている。
 JES3調査ではさらに、社会・政治参加や政治制度への信頼感、政治的寛容性、インターネット・マスメディアなどのメディア接触データも獲得した。このことは投票行動を越えて、広く政治参加や社会的貢献に関わる人々の政治的・社会心理的な構造の分析を可能にした。
 これらを受けて、多数の論文が既に日英両語で公表されている。
 データは最終的に日本語版と英語版で全て公開する。

5.審査部会における所見

A(期待どおり研究が進展した)
 データ構築、その分析など、ほぼ期待された研究成果を挙げている。データの公開は準備段階にあり、その国際的活用に向けての努力は評価できる。今後は、海外での日本研究、国際比較研究が一層活発化するよう、海外向けにデータ公開の周知、出来るだけ容易なアクセスの確保に留意されることを期待する。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --