研究領域名:がんの診断と治療

1.研究領域名:

がんの診断と治療

2.研究期間:

平成11年度~平成16年度

3.領域代表者:

中村 祐輔(東京大学医科学研究所・教授)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 がんの診断と治療に関する基礎的・基盤的な研究の推進を目的とする。診断については、それぞれの患者の「個性」を診断して最小限の副作用で最大限の効果が期待できる治療指針を提供することを目指す。治療については、がん化の分子機構やがん免疫の仕組みが明らかになってきていることなどを踏まえ、これまでの免疫療法・化学療法・放射線療法・分子標的治療・遺伝子治療の5分野の基礎研究をさらに発展させる。遺伝子治療については、ウイルスベクターや遺伝子導入法の開発などを重点的に推進する。また、がんの免疫療法や分子標的療法などについては、臨床応用の期待できる研究が報告されており、臨床研究へと展開できる仕組みを構築することも重要な課題である。これらの研究の成果は、個人個人にとって最適な治療を提供することのできるオーダーメイド診療の確立やこれまで治療不能であったがんに対する画期的な治療法の開発へとつながるものと期待される。

(2)研究成果の概要

 がん細胞に生じた遺伝子増幅を種々のゲノム・遺伝子解析手法を利用して調べた結果、抗がん薬耐性などを規定する「がんの個性診断」の基礎研究が進んだ。また、遺伝子発現情報を利用した抗がん剤感受性予測法なども成果が上がり、実用化を視野に入れた臨床研究を実施している。免疫分野では、抗原提示能の高い樹状細胞を誘導する研究などが進んだことや、それらを利用したがん免疫療法の基盤研究が急速に進展し、すでに臨床応用へ向けた展開が急速に進みつつある。がん治療のための分子標的研究に関しては、幅広い範囲での分子の同定が進みつつあり、これらを利用した治療法やこれらを標的とする治療薬の開発が行われている。新規抗がん剤の探索に関しても有望な物質が見いだされ、臨床試験に入っているものもある。遺伝子治療分野では細胞特異的に高発現する機能や細胞特異的に感染する機構を持つアデノウイルスベクターの改良が進みつつある。さらに、遺伝子の発現を抑える新しい技術なども開発されてきている。放射線治療についても、感受性を規定する遺伝子に関する研究が進み、それらの情報が放射線治療の効率を高める治療法への応用につながりつつある。

5.審査部会における所見

A(期待どおり研究が進展した)
 当該研究領域の課題である実用化への目標設定は我が国の一般的研究としては難しい面があるが、計画的に進められ期待した進展が認められた。基礎的な研究が着実に臨床へ結びつきつつあり、今後の発展が期待される。
 研究領域の目的に沿い計画的に進められ、臨床応用も視野に入れた当該領域は期待された成果を上げている。免疫治療の新しい試みが臨研究の第I相試験まで進展したことは特筆に値する。新しいワクチン療法の開発、アノイキスを誘導する薬剤の開発等さらなる進展が期待される。優れた研究成果は共同研究へ進展しており、当該研究領域のみならず関連学問領域への貢献も十分に寄与したと評価される。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --