研究領域名:DNA/RNAの機能化を目指した化学的新展開

1.研究領域名:

DNA/RNAの機能化を目指した化学的新展開

2.研究期間:

平成13年度~平成16年度

3.領域代表者:

小宮山 真(東京大学先端科学技術研究センター・教授)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 昨今の核酸化学の進展は極めて目覚しく、DNAやRNAの会合体や複合体の分子構造が次々と明らかにされ、それに基づいて、特異的諸特性が分子レベルで理解出来るようになってきております。化学的アプローチで得られた研究成果の中には生命科学に革新をもたらしたものも多く、天然に存在する核酸だけを対象としていた第1世代からの脱却を促し、これとは一味も二味も違う第2世代生命科学への道を切り開きました。
 一方、このような趨勢の中で、我々は、“核酸には、生命科学以外にも別の使い方もありうるのではないか?”と考えました。すなわち、核酸を化学の立場で見てみると、特異な立体構造、化学的性質、動的特性、特徴的な会合特性、ならびに、タンパクとの特異的相互作用をはじめとするさまざまな特筆すべき諸特性を持っております。言うまでもなく、これらの特性は、次世代材料として期待される分子機能材料の素材として必須の要因であります。また同時に、他の物質ではとても真似の出来ない核酸独特のものであります。したがって、材料素材としての核酸の特性を十分に使いこなす術さえ手に入れれば、これまでには全く例のないような新規な高機能分子材料が構築できるはずです。私どもは、このような考えにたって“核酸を新たな機能材料の素材として活用する”ことを主眼とする本重点領域研究「DNA/RNAの機能化を目指した化学的新展開」を提案し、幸いにも採択していただきました。

(2)研究成果の概要

 本重点領域研究が発足した段階では、核酸に関する分子情報の大半は、遺伝子としての核酸に焦点を合わせたものであり、核酸材料を構築するのに必要な分子情報は極めて不十分でありました。そこで、本特定領域研究では、関係の諸先生方の貴重なご助言もあり、実用材料の開発だけを急ぐのではなく、むしろ、核酸分子材料化学の構築のために必要な基礎的知見を確立して将来の飛躍的発展のための礎を築くことを主たるテーマといたしました。特に重点を置いたのは、(1)望みどおりの化学構造を持つ核酸素材を調製する手法の開発 と(2)目的機能を発現する核酸集合体の分子設計と構築法の確立 であります。参加された研究者の皆様の努力と周囲の方々の暖かい励ましにより、これらの両面において大きな成果を上げることが出来ました。特に重要な成果は、(1)天然核酸を望みの位置で切断して所定断片を調製する方法をほぼ確立できたこと、(2)核酸骨格中の所定位置に様々な機能性官能基を導入する方法が開発できたこと、(3)核酸骨格を通しての電気、イオン、ならびにエネルギーの移動に関して、物理化学的な基礎を確立できたこと、ならびに(4)核酸の2重らせんならびに3重らせんの形成を外部刺激で可逆的に制御することに成功したことであります。近い将来に、このプロジェクトにおける基礎研究の成果に基づいて、核酸の特性を十二分に発揮した機能分子材料が誕生することを確信しております。

5.審査部会における所見

A(期待どおり研究が進展した)
 核酸を基盤とした機能性材料を構築するとの目標のもと、構造の揃った核酸素材の大量合成やDNAフィルムを用いたEL素子及び核酸の会合制御による新機能の開発に成功するなど、優れた成果が得られている。今後、応用面への展開が期待される。班間の共同研究にまでは到達しておらず、特定領域研究としての協力関係を生かした成果は得られていないなどの問題点もあるが、総合的には期待どおりに研究が進展したと判断した。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --