研究領域名:深海掘削および先端海底探査技術を駆使した海洋底ダイナミックスの研究

1.研究領域名:

深海掘削および先端海底探査技術を駆使した海洋底ダイナミックスの研究

2.研究期間:

平成11年度~平成16年度

3.領域代表者:

徳山 英一(東京大学海洋研究所・教授)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 地球は固体地球圏、大気・海洋圏、生物圏、電離・磁気圏の4つのサブシステムから構成されている。これらのサブシステムの相互作用(ダイナミックス)によって、地球システムが変動し、その結果として地球の進化が起こり、さらに未来の地球の姿が決定される。地球システムのダイナミックスを駆動しているのは、地球内部および外部からの熱と物質の輸送である。
 深海底は、地球内部とくにマントルからの熱と物質の放出過程を支配している。また、海洋は種々の物質の貯蔵庫であり、地球表層での物質の循環に深く関連している。地球内部のダイナミックスは地球表層の環境変遷と多様な時空のスケールで関連している。深海底には過去1億5千万年の地球システム変動の記録が地層に残されており、その記録の解読は地球システム科学の発展のために極めて重要である。
 深海底研究の推進のためには、海底を掘削して直接試料(コア)を採集し、その年代や諸特性を分析し、また掘削孔を用いた地殻の諸性質の測定(孔内計測)、さらに孔内長期観測ステーションによって地球内部の変動を観測することが必要となる。本研究の目的は国際深海掘削計画(OceanDrillingProgram、ODP)への参加をはじめとした先端技術を駆使した研究計画を実施し、その結果に基づき海洋底から見た地球システムのダイナミックスと進化(海洋底ダイナミックスと称する)を研究することを目的としている。

(2)研究成果の概要

 本領域研究の中核となる具体的な活動は、研究船白鳳丸・淡青丸、および他船舶による関連研究航海の実施と研究、掘削提案の作成、ジョイデスレゾリューションによる掘削航海の実施と研究、成果のまとめ、から構成されている。
 本領域と関連してわが国から提案されたODP掘削プロポーザル数は23である。また、平成11年から平成16年度に行われた主な関連研究航海の数は47、さらに平成11(4月以降)-15年度9月末日までにODP掘削航海が26航海(第185節から210節)行なわれ、計7名の共同首席研究員、54名の研究者が乗船して活発な研究活動を行った
 本領域研究の成果は下記の通りである。

1)メタンハイドレートの形成・解離・濃集プロセスで、一つのシナリオが得られた。また、炭素サイクルの中で地球表層の天然炭素貯蔵庫であるメタンハイドレートの大量解離と、異常温暖地球/生物大量絶滅の関係を支持する多くの事実が得られた。

2)地球深部の熱的揺らぎにより発生するマントルプルーム型海台火成活動と、異常温暖地球/生物大量絶滅の因果関係を支持する多くの事実が得られた。

3)十万年単位から千年単位の環境変動が地球規模で存在することが確認された。また、変動の原因が地球外からの熱的、力学的インパクトによるものと考えられる事実が得られた。

4)海洋プレートの形成と沈み込み/プレート間衝突と、地球表層変動の関連が明らかとなった。また、南海トラフの沈み込み様式&付加体中の間隙水移動メカニズムが明らかとなった。さらに、地震発生帯のイメージングがある程度可能となった。

5)地震観測ネットワークと持続的観測体制が構築された。

6)地層内バクテリア生態系と地球表層物質循環で新たな進展が見られた。

5.審査部会における所見

A(期待どおり研究が進展した)
 本研究領域は、国際的なリーダーシップを取り、ODPにおいて重要な役割を果たした。個々の研究においても、メタンハイドレートに関する新たなシナリオを得るなど、優れた成果が見られる。ただし、領域内の連携は弱く、また成果公表の努力は必ずしも十分とは言えない。今後は本研究領域で得られた成果について、さらなる公表に努めることが望ましい。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --