研究課題名:複雑媒体中の衝撃波現象の解明と学際応用

1.研究課題名:

複雑媒体中の衝撃波現象の解明と学際応用

2.研究期間:

平成12年度~平成16年度

3.研究代表者:

井小萩 利明(東北大学流体科学研究所・教授)

4.研究代表者からの報告

(1)研究課題の目的及び意義

 従来、衝撃波現象の解明は高速空気力学の視点から行われ、主として単相媒体を研究対象とし、基礎の空気力学、高速飛行の支援を目標にした。現在、衝撃波および衝撃波類似現象の多様な発現が認知され、また、衝撃波医療など衝撃波現象を援用する様々の有用技術が社会に貢献している。本研究課題は、各種複雑組成の媒体、化学反応や相変化あるいは熱的非平衡を伴う媒体、複雑境界を過ぎる衝撃波現象を対象に、最近、高度に発達したスーパーコンピューターによる精緻な数値シミュレーション法およびレーザー光の導入を中心とする光計測および短時間計測に支援された計測技術を活用し、複雑媒体中での衝撃波現象を定量的に解明することを目指している。また、その成果を工学、理学、医学を横断する学際分野さらに産業に応用し、世界の衝撃波拠点の確立を目標に活動している。衝撃波は人為的ばかりではなく、自然界の非線形波動にも普遍的に起こり、衝撃波類似の現象をも含め、これらを体系的に明らかにし、応用をも目指した多様な研究分野を横断する新しい衝撃波学際研究の枠組みを構築する。

(2)研究成果の概要

 本研究を通じて、衝撃波は高速流れに特化された現象との従来の常識を覆し、衝撃波は非線形波動に現れる普遍的現象でその類似現象を含め広い学際領域を横断的に現れることを示し、新しい衝撃波研究体系を確立している。実験、計測法では、縦型無隔膜衝撃波管、極微小爆薬の水中爆発など新しい実験法を導入し、さらに位相変位ホログラフィー干渉計など先端画像計測、数値シミュレーションとコンピューター援用画像処理を画期的に発展させている。その成果を土台に、衝撃波反射形態に現れる粘性効果、各種形状物体周りの非定常抗力、負の抗力発生など従来の知見を見直している。水中衝撃波の挙動、スーパーキャビテーション、三次元デトネーション波遷移など、複雑媒体中の衝撃波現象を体系的に明らかにしている。レーザー誘起水ジェットを用いる中脳大動脈部位の脳血栓血行再建術、水ジェットメスを用い血管を温存する軟組織切開術、レーザーアブレージョンを用いる薬剤注入法など、衝撃波医療に飛躍的発展を導いている。また、地球物理応用では、火山の爆発的噴火やマグマ微細化の機序解明、噴火被害予測などに新しい知見をもたらし、巨大隕石衝突に伴う生物種大量絶滅機序、衝撃波照射での有孔虫の生存率研究、海底堆積層の積層序列逆転現象などを解明し、衝撃波学際研究に新しい展開を導いている。

5.審査部会における所見

A(期待どおり研究が進展した)
 複雑媒体中の衝撃波に関して、多様な研究が行われた。特に衝撃波の応用および、地球科学、医学を含めた学際的な研究において成果が得られた。さらに国際学会を設立し、新しい学術雑誌を刊行したことは拠点形成として高く評価する。大学からの支援も本研究にとって有益であった。一方、成果公表については必ずしも十分とは言えない。この特別推進研究(COE)で形成された拠点が今後順調に発展することを期待したい。

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研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --