研究課題名:ホットスポットの起源

1.研究課題名:

ホットスポットの起源

2.研究期間:

平成12年度~平成16年度

3.研究代表者:

高橋 栄一(東京工業大学大学院理工学研究科・教授)

4.研究代表者からの報告

(1)研究課題の目的及び意義

 プレート生成場である中央海嶺、プレートが地球深部に沈み込むサブダクション帯、地球深部に根を持つゆえに表層部のプレート運動に左右されないホットスポットはプレートテクトニクス理論の3本の柱である。中央海嶺、サブダクション帯に比較すると、ホットスポット研究は立ち後れ、ホットスポットの起源(地球深部のいかなる場所から、どのような仕組みで上昇流が始まり、いかなる物質がマグマを生成するか)とその地球ダイナミクス全体に果たす役割は依然として謎に包まれていた。研究が困難な最大の理由は、ホットスポットの元になるマントル上昇流(プルーム)の究極の出発点が現代の超高圧実験技術をもってしても到達が難しいマントル最深部(深さ2900km)にあるためである。ホットスポット研究の困難なもう一つの理由は、火山からマントルプルームの化学組成や温度を正確に推定するマグマ学の研究手法と、地震学および高温高圧実験に基づいて地球深部におけるプルームダイナミクスを考察する地球深部物質科学の研究手法の綜合が不可欠なことである。本研究では、火山調査、岩石地球化学、高温高圧実験、地震学の手法を駆使してホットスポットの起源を地球全体のスケールで解明することを目的とする。

(2)研究成果の概要

 我々は、地球上最大のハワイホットスポットの詳細な地質調査を自ら行ない、岩石学・地球化学研究に基づいてハワイプルームのマグマ生成モデルを確立した。これまで高温のマントル上昇流(マントルプルーム)がハワイ火山を作ると考えられてきたが、我々の研究結果、ハワイを始めとする巨大ホットスポットではマントルプルームにより多量のエクロジャイト(沈み込んだかつての海洋地殻)が浮上してマグマを生じていることが明らかになった。一方、核マントル境界に達する超高圧実験の手法を開発しマントル全体にわたる物質科学モデルの構築に成功し、D"層がポストペロフスカイト相からできていることを発見した。さらに、全地球地震トモグラフィーを用いて地球上の42の主要ホットスポット下のマントルプルーム構造を世界に先駆けて解明した。また散乱波による下部マントル速度構造の研究を通じて、沈み込んだかつての海洋地殻の存在形態をマッピングすることに世界で始めて成功した。これらを総合して、我々は本特別推進研究からホットスポットとそれを駆動するマントルプルームの動的な姿の解明に成功した。

5.審査部会における所見

A+(期待以上の研究の進展があった)
 本研究では観測、データ解析、室内実験という研究手法を総合し、多くの優れた成果が得られた。特にマントルプルームにおけるエクロジャイトの役割を明らかにしたこと、D"層がポストペロフスカイト相からなることを発見したことなどは、国際的な研究をリードする革新的な貢献として高く評価する。また、高温高圧実験、レーザービームのスポット解析の技術は他分野へ大きな波及効果を持つ。以上の観点から、期待以上の研究の進展があったと判断した。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --