研究課題名:オーラル・メソッドによる政策の基礎研究

1.研究課題名:

オーラル・メソッドによる政策の基礎研究

2.研究期間:

平成12年度~平成16年度

3.研究代表者:

伊藤 隆(政策研究大学院大学政策研究科・リサーチフェロー)

4.研究代表者からの報告

(1)研究課題の目的及び意義

 「オーラル・メソッドによる政策研究」の目的は、戦後日本の歴史において重要な役割を担った人々、即ち政治家、官僚、経済人、労働運動指導者、ジャーナリストなどを対象としてインタヴューを行い、その証言記録の集積と解析を通じて、政策研究を立体的に把握しようとするものである。オーラルヒストリーの手法によって集められた政策情報を広く公開することにより、社会全体がより多くの政策情報を共有することとなり、政策過程の一層の透明性が確保されるとともに、政策に関するより深い理解を促す一助ともなろう。また、このような研究のプロセスと成果は、学術研究と政策実務の交差する新たな知的アリーナを提供することも出来る筈である。具体的な研究活動は、(1)インタヴュー・データの蓄積、(2)方法としてのオーラルヒストリーの確立、(3)政策研究への利用、(4)データ管理体制の整備といった作業課題に沿って展開させ、もって政策研究の基盤構築に貢献しようとするものである。

(2)研究成果の概要

 戦後日本の歴史において重要な役割を担った約180名の人々を対象として、延べ1,000回余りのインタヴューを行い、貴重な証言記録を集積した。インタヴュー対象者の職責も内閣総理大臣を含む政治家、行政官僚、外交官、自衛隊幹部、司法関係者、経済人、労働運動指導者、ジャーナリストなど多岐にわたる。政策テーマとして、沖縄問題、行政改革、都市計画行政、捕鯨問題、冷戦問題、日本のPKO経験、日米関係、石炭産業、国鉄民営化、雇用機会均等法、日本企業の海外進出などを取り上げ、これらインタヴュー記録に基づく冊子を約100冊刊行した。なかでも、インタヴューの対象とすることが難しかった外務官僚のインタヴュー記録を冊子化できたことは特筆すべきであろう。さらに、オーラルヒストリーという方法を、理論、実践の両面から検討すべく、インタヴューを様々な分野で実践している社会学者、ノンフィクション作家、ジャーナリストなどを招いて方法論研究会を開催し、研究集会、国際シンポジウムでの議論を通じて、方法としてのオーラルヒストリーを多角的に検討し、その可能性と課題を明確にすることができた。また、同時に証言データの解析を行い、ケーススタディーというアプローチも視野に入れながら、これを政策研究に援用する方法の検討を進めた。インタヴューの音声記録、活字記録の作成から修正を経てのテキストの確定、さらに公表可能な部分についての冊子化による公表など一連の作業を標準パターンとして確立した。

5.審査部会における所見

B(期待したほどではなかったが一応の進展があった)
 政治外交上の多くの重要人物に長時間のインタビューを行い、オーラル・ヒストリーのデータを記録し、資料として残した実績は大きく、この点で所期の目的は達成されたと言える。但しオーラル・ヒストリーの方法論については、インタビューの性質上の制約はあっただろうが、必ずしも明確でなかった。収集された資料に対しての体系的分析および資料を応用した政策分析は今後の研究に委ねられることになるため、収録テープの保管および資料公開方法について創意工夫が望まれる。

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研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --