研究課題名:前近代日本史料の構造と情報資源化の研究

1.研究課題名:

前近代日本史料の構造と情報資源化の研究

2.研究期間:

平成12年度~平成16年度

3.研究代表者:

石上 英一(東京大学史料編さん所・教授)

4.研究代表者からの報告

(1)研究課題の目的及び意義

  1. 史料解析への情報学的方法の導入を前提とし、前近代日本の通時的・全国的な史料遺産の立体的脈絡を情報資源化により復原する方法の研究を行い、史料遺産情報を全国的・国際的に発信する双方向的ネットワークの形成により、21世紀の歴史史料遺産の研究・集積と発信のための「前近代日本の史料遺産プロジェクト」(JapanMemoryProject: JMP)研究拠点を確立する。
  2. 東京大学史料編纂所に集積されている歴史情報を補充しながら、合理的・大量デジタル情報化の方法を研究する。開発される史料画像・史料集版面画像・フルテキスト・索引語・目録などからなる前近代日本の史料遺産プロジェクトDBシステム(JMPDB)は、先導的モデルとしてのネットワーク上の仮想史料編纂研究空間として実現される。
  3. 大量の史料デジタルコンテンツの蓄積から、史料自体に内在する脈絡を、歴史を構成する極大から極小にいたる事件の中から生まれた史料脈絡、過去の様々な個人の痕跡として構成される脈絡、それらを伝える物としての史料体の脈絡という3次元に立体化するための情報資源分析手法を研究する。
  4. 研究の実現基盤として、双方向的・国際的な前近代史料共同研究を組織する。
  5. 研究拠点形成研究の成果をもとに、日本前近代史料の情報資源化の研究拠点を史料編纂所に設置する方策を推進する。

(2)研究成果の概要

 史料編纂所に前近代日本史料歴史情報研究拠点を設けるために、情報資源蓄積・発信方法を研究し、統合型データベースシステムを開発し、外国所在前近代日本関係史料調査や歴史語彙情報化研究により国際的な前近代日本研究との連携の基盤を構築した。研究成果報告書『前近代日本史料の構造と情報資源化の研究』を制作した。

  1. 5回の公開研究会により歴史情報研究拠点に関する期待と意見を把握し、6回の国際研究集会により日本前近代史料の国際的利用環境の構築についての研究動向・意見を理解することに努めた。平成16年12月第6回国際研究集会「東アジア史料研究編纂機関国際学術会議」は、中国・韓国の史料研究編纂機関との持続的交流を実現する第一歩となった。報告書『アジア史料の情報資源化と国際的利用』(平成16年12月)を刊行した。
  2. 大日本史料総合DB・近世編年DB・電子くずし字字典・応答型翻訳支援システム・欧文日本古代史料解題辞典等を開発し、史料編纂所の既存各種DBとあわせて計30のDBを統合した統合データベースシステムを開発した。国文学研究資料館を中心とする古典籍史料横断検索システムに参加し、所蔵史料目録・古文書目録・古文書全文等DBのZ39.50/DublinCore版を開発した。史料稿本、謄写本、写本、維新史料稿本MF等のデジタル化を行い、既存DBのデータ増強も推進し史料コンテンツの大量生成を行った。

5.審査部会における所見

A(期待どおり研究が進展した)
 膨大な史料のデータベース構築においては、当初の目的をおおむね達成したといえ、当該分野にもたらす学問的利益は高く評価される。データベースの構造化や、国際的情報共有の実現という点では必ずしも満足する結果を導き得なかったが、韓国・中国・ロシアとの学術交流に努力がはらわれ、着実な前進がみられた。本研究は、組織の特性を生かした研究であり、史料の情報集積拠点としての基盤が築かれ、将来の継続的展開が期待できる点は喜ばしい。

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研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --