資料5 科学研究費補助金の不正使用等の防止

1 最近の科学研究費補助金の不正使用・不正受給の事例

不正使用の態様例

  • 預け金…架空の取引により大学に代金を支払わせ、業者に預け金として管理させること
  • カラ出張…実体を伴わない出張の旅費を大学に支払わせること。
  • カラ謝金…実体を伴わない作業の謝金を大学に支払わせること。

不正使用・不正受給の事例

  • 平成17年度に交付された科学研究費補助金において、実態を伴わない印刷物の発注を行い、架空請求により大学から業者に支払われた補助金を預け金として業者に管理させていた。
  • 平成10~11年度に交付された科学研究費補助金おいて、大量の消耗品を架空請求し、業者にその金額に相当する奨学寄附金を寄附するよう指示した。また、実態を伴わない謝金を水増ししてプール金として経理し他用途に使用したり、出張の日程変更による精算手続きを行わずに正規の旅費との差額分を受領していた。
  • 平成15~17年度に交付された科学研究費補助金において、同じ出張の旅費や郵送費を、科学研究費補助金と他の経費とで重複して請求したり、資料・書籍などの領収書の金額を改ざんし、補助金を不正に受領していた。
  • 平成15年度~平成16年度の科学研究費補助金について、留学生の学費や生活費等を支援するために、実体のないアルバイト費を不正に請求していた。
  • 平成15年度に交付された科学研究費補助金において、学内規程により原則として支払えないこととされていたビジネスクラス航空運賃を捻出するため、エコノミークラス航空運賃のとの差額分等について、消耗品を購入したように架空の請求書を作成するよう業者に命じ、これを大学に請求して不正に受領していた。また、私用目的で購入した書籍代や研究に直接関係のない物品の購入代金を立替払金として大学に請求していた。
  • 平成8年度から平成15年度にかけて、応募・受給資格がない研究者が科学研究費補助金の応募・交付申請を行い、不正に補助金を受給していた。

2 科学研究費補助金の不正使用防止のための各研究機関の義務

研究機関による補助金の管理

 研究機関による科研費の管理は、研究者・研究機関の双方の義務とされています。各研究機関においては、雇用契約、就業規則、個別契約等において、このことを定めなければなりません。

参照

研究機関向け「文科省使用ルール」
  • 2 研究者との関係に関する定め
    雇用契約、就業規則、勤務規則、個別契約等により、研究者が交付を受ける補助金(直接経費:補助事業の遂行に必要な経費及び研究成果の取りまとめに必要な経費、間接経費:補助事業の実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費)について、研究機関が次の事務を行うことを定めること。
  • 2-1  研究者に代わり、補助金(直接経費)を管理すること。
  • 2-2  研究者に代わり、補助金(直接経費・間接経費)に係る諸手続を行うこと。
  • 2-3  研究者が直接経費により購入した設備、備品又は図書(以下「設備等」という。)について、当該研究者からの寄付を受け入れるとともに、当該研究者が他の研究機関に所属することとなる場合には、その求めに応じて、これらを当該研究者に返還すること。
  • 2-4  研究者が交付を受けた間接経費について、当該研究者からの譲渡を受け入れ、これに関する事務を行うとともに、当該研究者が他の研究機関に所属することとなる場合には、直接経費の残額の30パーセントに相当する額の間接経費を当該研究者に返還すること。(間接経費の譲渡を受け入れないこととしている研究機関を除く。)
研究者向け「文科省使用ルール」

【研究機関による補助金の管理等】
 1-4  研究代表者及び研究分担者は、所属する取扱規程第2条に規定する研究機関(以下「研究機関」という。)に補助金の管理を行わせるとともに、この補助条件に定める諸手続を当該研究機関を通じて行わなければならない。研究代表者及び研究分担者が所属する研究機関を変更した場合も、同様とする。

科研費ハンドブック(研究者用)9頁

 補助金の管理や諸手続は、すべて研究機関が行うこととされています
 研究機関による管理を行う理由

  1. 研究者の負担を軽減するためです
  2. 意図せぬルール違反を防止するためです

研修会・説明会の開催

 各研究機関は、補助金の不正な使用を防止するため、研究者及び事務職員を対象として、研修会・説明会を積極的・定期的に実施しなければなりません。

参照

研究機関向け「文科省使用ルール」

【研修会・説明会の開催】
 4-5  補助金の不正な使用を防止するため、研究者及び事務職員を対象として、研修会・説明会を積極的・定期的に実施すること。

内部監査の実施

 各研究機関は、無作為に抽出した補助事業について、毎年「通常監査」及び「特別監査」を実施し、11月下旬の科研費の応募の際には、その実施状況及び結果を、文部科学省・日本学術振興会の双方に報告しなければなりません。

参照

研究機関向け「文科省使用ルール」

【無作為抽出により内部監査の実施】
 4-6  毎年無作為に抽出した補助事業(全体の概ね10パーセント以上が望ましい)について、監査を実施し、各年度の応募の際に、その実施状況及び結果について文部科学省に報告すること。
 なお、上記により実施する監査の一部(監査を実施する補助事業の概ね10パーセント以上が望ましい)については、書類上の調査に止まらず、実際の補助金使用状況や納品の状況等の事実関係の厳密な確認などを含めた徹底的なものとすること。

不正な使用に係る調査の実施

 補助金の不正な使用が明らかになった場合(不正な使用が行われた疑いがある場合を含む)には、速やかに調査を実施し、その結果を文部科学省・日本学術振興会に報告しなければなりません。

参照

研究機関向け「文科省使用ルール」

【不正な使用に係る調査の実施】
 4-7  補助金の不正な使用が明らかになった場合(不正な使用が行われた疑いのある場合を含む)には、速やかに調査を実施し、その結果を文部科学省に報告すること。

3 科研費の不正使用等に伴う科研費交付対象からの除外について

 科研費の不正な使用等が行われた研究の遂行に研究代表者・研究分担者等として加わった者が行う研究は、一定期間、科研費交付対象から除外されます。

  • 1 不正な使用等を行った研究者本人は、
  • 1-1 他用途使用を行っていない場合は、
    • 返還命令が行われた年度の翌年度から2年間、
    • 新規課題であると継続課題であるとを問わず、
    • 研究代表者にも研究分担者にもなることができない。
    (例)交付決定権者の承認を得ずに、研究代表者を交替した場合……2年
  • 1-2 他用途使用を行っていた場合は、
    • 返還命令が行われた年度の翌年度から程度に応じて2~5年間(具体的に何年にするかは別表の基準に基づき交付決定権者が決める)、
    • 新規課題であると継続課題であるとを問わず、
    • 研究代表者にも研究分担者にもなることができない。
    (例1)契約を偽装して研究機関の事務局の経理管理担当者をだまして科研費を支出させ、プールした場合(いわゆる「預け金」など)……4年
    (例2)科研費を遊興費に使用した場合……5年
     ※ 他府省を含め科研費以外の研究費で不正な使用等を行ったことにより、一定期間、当該研究費の交付対象から除外される研究者についても、平成18年4月以降、上記のとおり取扱っている(4「科研費以外の研究費において交付対象除外措置を受けた研究者の科研費交付対象からの除外について」参照)。

別表

科学研究費補助金の他の用途への使用の内容等 交付しない期間
1 補助事業に関連する科学研究の遂行に使用した場合 2年
2 1を除く、科学研究に関連する用途に使用した場合 3年
3 科学研究に関連しない用途に使用した場合 4年
4 虚偽の請求に基づく行為により現金を支出した場合 4年
5 1から4にかかわらず、個人の経済的利益を得るために使用した場合 5年

 なお、偽りその他不正の手段により科学研究費補助金の交付を受けた者に対しては、補助金の返還が命じられた年度の翌年度以降5年間、補助金を交付しないこととする。

  • 2 不正な使用等を行った研究者の共同研究者は、
    不正な使用等を行った研究者本人が他用途使用を行ったか否かに関わらず、
    • 返還命令が行われた年度の翌1年度の間、
    • 新規課題についてのみ
    • 研究代表者にも研究分担者にもなることができない。
      (例1)研究代表者が科研費の不正な使用等をしたが、自らは不正な使用等をしていない研究分担者
      (例2)研究分担者が科研費の不正な使用等をしたが、自らは不正な使用等をしていない研究代表者
       ※ ここでいう「共同研究者」とは研究代表者か研究分担者であって、研究への協力をする者は含まれない。
  • 3 他用途使用について共謀を行った研究者は、
    • 他用途使用を行った研究者本人が受けた処分と同一の期間、
    • 新規課題であると継続課題であるとを問わず、
    • 研究代表者にも研究分担者にもなることができない。
      (例)他用途使用を行った研究代表者と、他用途使用について共謀を行ったが、自らは他用途使用を行っていない研究者
       ※ 「共謀を行った研究者」は、研究代表者、研究分担者に限定されない。
  • 4 偽りその他不正の手段により交付を受けた研究者等は、
    • 返還命令が行われた年度の翌年度以降5年間、
    • 新規課題であると継続課題であるとを問わず、
    • 研究代表者にも研究分担者にもなることができない。
      (例)補助金受給資格がないにもかかわらず、事実と異なる肩書きや他人の氏名を用いて応募し、科研費を不正に受給した場合
       ※ 偽りその他不正の手段により交付を受けることを共謀した研究者もこれに含まれる。

4  科研費以外の競争的研究資金において交付対象除外措置を受けた研究者の科研費交付対象からの除外について

 科研費以外の競争的研究資金制度の研究費において不正な使用等を行い、一定期間当該研究費の交付対象から除外される研究者についても、「競争的研究資金の不合理な重複及び過度の集中の排除等に関する指針(注)」に従い、それと同じ期間、科研費の交付対象から除外されます。
 (注)平成17年9月9日 競争的研究資金に関する関係府省連絡会の申し合わせ

〔参考3〕競争的研究資金制度

  • (1) 科学研究費補助金
  • (2) 戦略的創造研究推進事業
  • (3) 科学技術振興調整費
  • (4) 先端計測分析技術・機器開発事業
  • (5) 革新技術開発研究事業
  • (6) 独創的シーズ展開事業
  • (7) 21世紀COEプログラム
  • (8) 地球観測システム構築推進プラン
  • (9) 原子力システム研究開発事業
  • (10) 重点地域研究開発推進プログラム
  • (11) 地域結集型研究開発プログラム等
  • (12) キーテクノロジー研究開発の推進
  • (13) 産学共同シーズイノベーション化事業
  • (14) 世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラム
  • (15) グローバルCOEプログラム
  • (16) 食品健康影響評価技術研究
  • (17) 戦略的情報通信研究開発推進制度
  • (18) 新たな通信・放送事業分野開拓のための先進的技術開発支援
  • (19) 民間基盤技術研究促進制度
  • (20) 消防防災科学技術研究開発制度
  • (21) 厚生労働科学研究費補助金
  • (22) 保健医療分野における基礎研究推進事業
  • (23) 新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業
  • (24) 生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業
  • (25) 先端技術を活用した農林水産研究高度化事業
  • (26) 産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業
  • (27) 産業技術研究助成事業
  • (28) 石油・天然ガス開発利用促進型事業
  • (29) 地域新生コンソーシアム研究開発事業
  • (30) 革新的実用原子力技術開発費補助金
  • (31) 運輸分野における基礎的研究推進制度
  • (32) 建設技術研究開発助成制度
  • (33) 環境技術開発等推進費
  • (34) 廃棄物処理等科学研究費補助金
  • (35) 地球環境研究総合推進費
  • (36) 地球温暖化対策技術開発事業

 (平成19年4月現在)

5 不適切な使用事例について

1.「総務省 民間団体等を対象とした補助金等に関する行政評価・監視に基づく勧告(第2次)」(平成18年8月16日勧告)

  1. 会議費でアルコール代を支出
  2. 研究の目的と異なる出張旅費の支出
  3. 旅費単価の誤りによる誤支給
  4. 領収書の購入物品名が不明確となっているもの
  5. 支出の証拠書類として不十分なもの

2.「財務省 財政制度等審議会」(平成18年10月20日)

  1. 研究成果公開促進費において、バックナンバー等在庫見積が過剰(在庫分の9割が結果的に不用)
  2. 学術的刊行物において調査対象の11件全てが、データベース作成では調査対象36件中33件が随意契約

3.「会計検査院 平成17年度決算検査報告」(平成18年11月10日公表)

  1. 実際の納品日は、補助事業の実施期間の前年度以前あるいは翌年度となっているが、補助事業の実施期間内に購入したとして購入代金を業者に支払っている例。
  2. 適正な納品検査が行われていないために、業者が保管している納品書(控)等の日付と大学の納品書の日付が30日を超えて乖離している。

〔参考4〕競争的研究資金の不合理な重複及び過度の集中の排除等に関する指針(抜粋)

(平成17年9月9日競争的研究資金に関する関係府省連絡会申し合わせ(平成18年11月14日改正)

1.趣旨

 第3期科学技術基本計画(平成18年3月閣議決定)において、政府研究開発投資の投資効果を最大限発揮させることが必要とされ、研究開発の効果的・効率的推進のため、研究費配分において、不合理な重複・過度の集中の排除の徹底、不正受給・不正使用への厳格な対処といった無駄の徹底排除が求められている。また、実験データの捏造等の研究者の倫理問題についても、科学技術の社会的信頼を獲得するために、国等は、ルールを作成し、科学技術を担う者がこうしたルールに則って活動していくよう促していくこととしている。
 これに関連して、総合科学技術会議では、公的研究費の不正使用等は、国民の信頼を裏切るものとして、平成18年8月に「公的研究費の不正使用等の防止に関する取組について(共通的な指針)」を決定し、各府省・関係機関に対して、機関経理の徹底及び研究機関の体制の整備など、この共通的な指針に則った取組を推進するよう求めている。
 また、研究上の不正に関しても、総合科学技術会議では、科学技術の発展に重大な悪影響を及ぼすものとして、平成18年2月に「研究上の不正に関する適切な対応について」を決定し、国による研究費の提供を行う府省及び機関は、不正が明らかになった場合の研究費の取扱について、あらかじめ明確にすることとしている。
 本指針は、これらの課題に対応するため、まず、競争的資金について、不合理な重複・過度の集中の排除、不正受給・不正使用及び研究論文等における研究上の不正行為に関するルールを申し合わせるものである。各府省は、この指針に基づき、所管する各制度の趣旨に則り、適切に対処するものとする。

2.(略)

3.不正経理及び不正受給への対応

 関係府省は、競争的研究資金の不正経理又は不正受給を行った研究者に対し、以下の措置を講ずるものとする。なお、独立行政法人が有する競争的研究資金については、同様の措置を講ずるよう主務省から当該法人に対して要請するものとする。

  • (1)不正経理を行った研究者及びそれに共謀した研究者に対し、当該競争的研究資金への応募資格を制限することのほか、他府省を含む他の競争的研究資金担当課に当該不正経理の概要(不正経理をした研究者名、制度名、所属機関、研究課題、予算額、研究年度、不正の内容等)を提供することにより、他府省を含む他の競争的研究資金担当課は、所管する競争的研究資金への応募を制限する場合がある旨、公募要領上明記する。
     この不正経理を行った研究者及びそれに共謀した研究者に対する応募の制限の期間は、不正の程度により、原則、補助金等を返還した年度の翌年度以降2から5年間とする。
  • (2)偽りその他不正の手段により競争的研究資金を受給した研究者及びそれに共謀した研究者に対し、当該競争的研究資金への応募資格を制限することのほか、他府省を含む他の競争的研究資金担当課に当該不正受給の概要(不正受給をした研究者名、制度名、所属機関、研究課題、予算額、研究年度、不正の内容等)を提供することにより、他府省を含む他の競争的研究資金担当課は、所管する競争的研究資金への応募を制限する場合がある旨、公募要領上明記する。
     この不正受給を行った研究者及びそれに共謀した研究者に対する応募の制限の期間は、原則、補助金等を返還した年度の翌年度以降5年間とする。

4.研究上の不正行為への対応

 関係府省は、競争的資金による研究論文・報告書等において、研究上の不正行為(捏造、改ざん、盗用)があったと認定された場合、以下の措置を講ずるものとする。なお、独立行政法人等が有する競争的資金については、同様の措置を講ずるよう主務省から当該法人に対して要請するものとする。

  • (1)当該競争的資金について、不正行為の悪質性等を考慮しつつ、全部又は一部の返還を求めることができることとし、その旨を競争的資金の公募要領上明記する。
  • (2)不正行為に関与した者については、当該競争的資金への応募資格を制限することのほか、他府省を含む他の競争的資金担当課に当該研究不正の概要(研究機関等における調査結果の概要、不正行為に関与した者の氏名、所属機関、研究課題、予算額、研究年度、講じられた措置の内容等)を提供することにより、他の競争的資金への応募についても制限する場合があるとし、その旨を競争的資金の公募要領上明記する。
     これらの応募の制限の期間は、不正行為の程度等により、原則、不正があったと認定された年度の翌年度以降2から10年間とする。
  • (3)不正行為に関与したとまでは認定されなかったものの、当該論文・報告書等の責任者としての注意義務を怠ったこと等により、一定の責任があるとされた者については、上記(2)と同様とし、その旨を公募要領上明記する。
     この応募の制限の期間は、責任の程度等により、原則、不正行為があったと認定された年度の翌年度以降1から3年間とする。

5.その他

  • (2)上記の「研究上の不正行為への対応」の取組みは、公募要領の改正等の所要の手続きを経た上で、平成18年11月以降公募を行うものから、順次実施することとする。
     なお、平成18年度の公募分については、本指針の趣旨に従い、可能な範囲で対応する。
  • (3)不正経理及び不正受給により応募資格を制限された研究者の情報については、内閣府が一元的に管理する。
(別紙)競争的研究資金に関する関係府省連絡会名簿

 内閣府政策統括官(科学技術政策担当)付参事官
 総務省情報通信政策局技術政策課長
 文部科学省科学技術・学術政策局調査調整課長
 厚生労働省大臣官房厚生科学課長
 農林水産省農林水産技術会議事務局先端産業技術研究課長
 経済産業省産業技術環境局産業技術政策課長
 国土交通省大臣官房技術調査課長
 環境省総合環境政策局総務課環境研究技術室長

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成21年以前 --