慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センター 事後評価結果

大学名    

慶應義塾大学

研究分野

経済統計学、応用経済学

拠点名

パネルデータ設計・解析センター

学長の氏名

清家 篤

拠点代表者

樋口 美雄(商学部教授)

1.共同研究拠点の概要

[共同研究拠点の目的]
慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センターは、多数の研究者や研究機関の参加を得て、(1)主体行動や市場機能、所得分配に関わる理論仮説に基づき、同一の家計や企業の行動、経済状況の変化を長期にわたり追跡調査した信頼に足るパネルデータを設計構築し、これに基づき実証研究を行なうと同時に、(2)国内外の研究者に収集したデータを公開し、研究会やシンポジウムを通じて成果を発信し、(3)セミナーの開催等による講義や演習を通じ利用者を積極的に開拓し、質・量両面で実証経済学の発展に貢献できるよう先導的共同研究拠点の構築を目指す。

[共同研究拠点における成果及び目的の達成状況]
(1)については、年に1度、家計に関する調査「日本家計パネル調査(JHPS)」が実施され、その結果が家計パネルデータとして貸出され数多くの実証研究の成果を得た。また、企業に関するデータは、日本政策金融公庫総合研究所より「新規開業パネル調査」データとして、一般貸出および調査票の提供を寄託されている。この「新規開業パネル調査」を寄託公開することで、データの構築および企業パネルの分析調査を進めた。さらに、小中学生のいる世帯の親子を対象とした「日本子どもパネル調査(JCPS)」を、JHPS等に付帯させることにより、世帯の家計情報を、子どもの認知能力、非認知能力と連結させた。
(2)については、共同研究拠点における実査された調査データを基にした研究成果の報告として、様々なセミナーや研究会(計11回)やワークショップ(計5回)、シンポジウム(計6回)が開催された。詳しい研究会・シンポジウムの題目については、本拠点のホームページで逐次報告してきた。学内外の研究者を対象とした学術的内容のものだけではなく、学生や市民等を対象とした内容もあり、幅広い客体に向けて、研究成果を発信している。
(3)については、「パネルデータ解析セミナー」を年に2回、4日間、連日4時間半にわたり実施した。分析手法の解説ならびにその実習を組み合わせた集中講義の形式は効率的で、特に時間が取れない社会人を中心に好評を博し、多くの参加者が初日から最終日まで受講した。なお、パネルセミナーの総参加人数は371名となっている。本セミナーでは、パネルデータ(加工済みのもの)のみならず、テキストブック、演習実施用のプログラム等を提供しており、自習もできるように工夫している。セミナー終了後は講義内容以外の実証分析に関する質問を受け付けるなど、活発な議論が交わされた。

2.評価結果

(評価区分)
S:設定された目的は十分達成された。

(評価コメント)
長期にわたるパネルデータの蓄積をもとに、従来の日本では利用できなかった幅広い領域において実証分析に基づく研究基盤が構築され、その利用を進めることによって大きな成果が生まれつつあることから、当初の目的は十分達成されたと評価できる。
具体的には、「家計パネル調査」や「こどもパネル調査」といったパネルデータが着実に整備されるとともに、調査結果が国際比較データの一部として利用されるなどの国際展開に係る成果を挙げている。また、パネルデータ解析セミナーやシンポジウム等の開催、ウェブサイトを通じた情報発信により積極的な利用者の開拓が図られたほか、大規模な家計パネル調査の実施、公開、分析を通じた政策形成における貢献が認められる。加えて、経済学のみならず、教育学や社会学等幅広い分野の研究者の参画により、異分野融合による新たな学問領域の創成も期待できる。
今後は、研究プロジェクトの一層の国際化や外部研究者との積極的な交流、社会に対する基礎データの提供を一層推進することにより、共同利用・共同研究拠点として蓄積された研究成果やその機能を有効に活用し、当該分野の中核機関としての活動が継続されることを期待したい。

お問合せ先

研究振興局学術機関課

機構調整・共同利用係
電話番号:03-5253-4111(内線4085)

-- 登録:平成25年03月 --