関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構 中間評価結果

大学名

関西大学

研究分野

経済政策

拠点名

ソシオネットワーク戦略研究機構

学長の氏名

楠見 晴重

拠点代表者

鵜飼 康東 ソシオネットワーク戦略研究機構長

共同研究拠点の整備状況等の概要

(共同研究拠点の目的)
本拠点ソシオネットワーク戦略研究機構(英文名称Research Institute for Socionetwork Strategies: 略称RISS)の目的は、高度な情報通信技術を活用したネットワーク戦略の総合的政策研究を行い、日本を含む世界が直面している社会的課題の解決のための学術的基盤を形成することである。

(当該共同研究拠点における成果)
第1に、世界的金融危機に対処するために、金融政策ユニットは、RISS Webアンケートに基づく個票データを分析し、英文査読誌に4編が採択され、合計の論文引用数は1年間で20に達した。主要な発見は、地域別に預金引出行動に顕著な差違が存在することを発見したことである。
第2に、日本における国民年金保険料未納者の増加に対処するために、社会福祉政策ユニットは、RISS Webアンケートに基づく個票データを分析し、4編の論文を公刊した。主要な発見は、既存研究が国民年金保険料未納者のなかに保険料猶予者を含んでいるという誤りを発見したことである。すなわち、個人所得が低下したからといって保険料未納者が増加するとは限らない。
第3に、地域財政危機に対処するために、政策基盤ユニットは、経済学者、心理学者およびコンピュータ科学者が協力して、経済実験に基づく公共施設選択ツールをモデル化し、2編の論文を公刊した。そのうち、1編の英語論文は査読誌「公共選択の研究」に採択された。
第4に、全国の研究機関に研究テーマを公募して、審査のうえ、2つの研究ユニットを採択した。前者は、日本の規制緩和の是非を判断するために、ゲーム理論による経済的規制の理論的分析を行う。後者は、拡大する地域間所得格差に対処するために、税制・社会保障シミュレーションを行う。
第5に、金融政策ユニットにおいて、既存の経済モデルに基づく実証分析を行う研究者を公募して、審査のうえ、名古屋市立大学と東洋大学の若手研究者を採択した。金融機関の取締役会に占める外部取締役賞与比率などの指標が日本企業のガバナンスに及ぼす影響を欧米の仮説に基づき、分析し、英語論文と日本語論文を公刊した。主要な発見は、銀行派遣取締役には欧米の仮説が統計学的に有意ではないことである。
学術的基盤の形成としては、RISS機構長と副機構長を監修者とする「BASIC公共政策学」叢書全15巻(ミネルヴァ書房)の刊行が平成21年11月より開始されたことがあげられる。また、日本心理学会機関誌「心理学ワールド」(平成21年10月)と、総合研究大学院大学機関誌「総研大ジャーナル」(平成22年3月)は、RISSの小特集を2頁立てで行った。このように、当共同研究拠点は、経済学、政治学、心理学、コンピュータ科学にまたがる強大な学術的基盤を形成しつつある。
研究者コミュニティからの意見の反映状況は良好である。すなわち、日本経済政策学会は、RISSデータから新しい理論を構築することを意図して、荒山裕行会長が経済政策特別講義を実施した。その結果、ミシガン大学社会調査研究所との共催による社会福祉理論国際会議が平成22年12月に開催されることとなった。さらに、日本金融学会は、筒井義郎会長をRISS運営委員として平成22年度より参加させた。
また、大阪大学社会経済研究所附属行動経済学研究センターと連携して、郵送アンケート調査とWebアンケート調査の接合を自動的に行う作業を開始した。

「特色ある共同研究拠点の整備の推進事業」事業委員会による評価

(総合評価)
計画は概ね順調に実施されているが、目的達成に向け、助言等を踏まえた適切な取組が必要と判断される。

(コメント)
当初の計画に沿って、指定研究ユニット、公募研究ユニットによるウェブアンケートの実施と分析、データの公開などの計画が概ね順調に実施され、多領域の研究者による学際的な研究が実施されている。
共同研究拠点の運営については、当該機構に専任の事務職員や支援職員を配置するなど、充実した支援体制が整備されていることは評価できる。しかし、拠点の各ユニットにおける公募研究課題を広く公募する点については改善が図られているが、応募件数の増加に向けた更なる取組が必要である。
また、共同利用・共同研究の促進に向けた取組として、ウェブサイトや公開講座、海外の大学での討論会等により成果の発信が実施されている。
今後は、各研究ユニットにおける共同研究によるデータの蓄積への対応や、共同研究者の負担の軽減のための工夫など、共同研究拠点としての長期的視野に立った安定的な運営に向けた改善を図ることにより、目的達成に向けた適切な取組が期待される。

 

お問合せ先

研究振興局学術機関課

機構調整・共同利用係
電話番号:03-5253-4111(内線4299)

-- 登録:平成22年08月 --