産学連携によるグローバル人材育成推進会議(第4回)議事録

1.日時

平成23年3月10日(木曜日)

2.場所

中央合同庁舎7号館(金融庁)9階 共用会議室-1

3.出席者

(座長)河田悌一座長

(委員)市村泰男,岸本治,土居丈朗,谷内正太郎,涌井洋治の各委員

(事務局)磯田高等教育局長,小松大臣官房審議官,義本高等教育企画課長,松尾学生・留学生課長,氷見谷国際企画室長,茂里高等教育局視学官 外

4.議事

 事務局から,産学連携によるグローバル人材育成の在り方について,資料1,資料2-1及び資料2-2に基づき説明が行なわれた後,以下のとおり意見交換が行われた。

【谷内委員】今説明いただいた内容はそれぞれ大変結構な内容だと私は思っていますけれども,これは構想の見直しを行った結果出てきたものか,それともそもそもこの構想の中にこういうアイデアがあって,そもそも予定されていたものなのか,お聞かせください。

【氷見谷国際企画室長】予算の関係から申し上げますと,もともとこの国際化拠点整備事業の中では企業との連携のための部分については計上されておりませんでしたので,今回こういった形で見直しが行われた関係で,企業との連携についても支援が可能になったというところもあります。各大学において,例えば筑波大学の日本・北アフリカ学術連携ネットワークなどにつきましては,これはもともと筑波大学がネットワークを形成していただくということで準備されていたところですが,今回のこの見直しの結果,また,この会議での議論を踏まえまして,各大学が現在まで構想しているものがリストになっているということです。しかし,これもまだ実は一部でありまして,今後この事業が続く限り,さらに取り組んでいきたいということで引き続きこれらの取組以外についても,ここにまだ構想段階でなかなか書きにくいものもありますし,2カ月間という短期間の中で各大学が検討準備を進めてきたものですので,それら以外についても今各大学で引き続き検討していただき,準備を進めていただいているというものもあります。

【河田座長】本来あった案と,それから今回追加された取組について,数のバランスはどのような状況でしょうか。

【氷見谷国際企画室長】数のバランスとしましては,今回こういった形で積極的に見直しを行ったものの方が数的には多いと考えております。

【土居委員】私も基本的にこういう見直しの取組がさらに成果を上げられることにつながることを期待しております。今後こういう形で国からの支援を受けて予算をいただいて大学がそれぞれ取り組んでいくということになると,おそらく大学でどういう成果が上がったのかについて,きちんと大学側からも説明責任を問われることになるだろうと思います。もちろん予算の編成過程で矢面に立つのは文部科学省ですけれども,実際予算を執行しているのは大学ですので,その大学がこういう予算をいただいたおかげでこういうことができました,こういう成果があがりましたというものが大学側からきちんと説明できるようにすることを是非とも各大学に認識してもらう必要があるのではないかと思います。

【涌井委員】土居委員と全く同じ意見ですけれども,私も役人を長くやっていましたから,要するに予算を獲得するために色々な案をつくってくるわけです。しかし,そのフォローアップでは,会計検査院の検査段階で実際にはほとんど動いていなかったとか,当初の意図が全然達成できていないとか,コストベネフィットが非常に悪いとかというケースが多いです。ですから,色々なことを各大学が自主的に考えてきたことは非常に結構ですけれども,そのフォローアップだけは絶対行っていただきたいと思います。各大学は予算を配分するために色々なペーパーワークをしてくると思いますけれども,それだけでは全く意味がないので,これは文部科学省に是非お願いしたいと思います。

【岸本委員】広報活動を強化することは非常に大事だと思います。資料1の1ページにあるように,海外メディアへの広報強化を図るとありますけれども,実際にメディアが取り上げるとなると,いくら内容が良くても地道なことはなかなか取り上げられずに,耳目を引くようなことになっていくと思いますけれども,このあたりはどう進めていくのか,説明いただければと思います。

【氷見谷国際企画室長】海外メディアにつきましては,今お話いただきましたとおり,なかなか目を引くものがないと効果的に結びつかないところもありますが,そういったイベント的なものも積極的に情報発信をし,このようなイベント的な取組を行っていくということも検討していただいております。ただ,日頃からの付き合いも非常に重要ですので,海外メディアや海外機関との日頃の連携も深めていくことも併せて行っていくということで話を伺っております。

【市村委員】定量面のイメージが少し欠けているのではないかなという感じがいたします。といいますのは,この後少し時間をいただいて,定量面の考え方を整理したものを発表させていただきますけれども,このグローバル30の整備事業にしましても,これから説明があります戦略につきましても,我が国のグローバル人材の育成に関して,どの程度の定量的なイメージでゴールを目指しているのかがはっきりしないと,予算の話も先ほどありましたけれども,きちんとした戦略の絵が描かけないのではないかという気がしております。

 特にグローバル30という現実走っている事業について,どれだけの人材を育成していくかということです。事業の骨子そのものには30万人の留学生を受け入れて,30万人の日本人学生を海外に輩出するということはありますけれども,具体的に我が国のグローバル人材をどの程度確保し,将来グローバル時代に向かっていくのかというイメージが明確に出されないと,この結果としてどれだけの人材が生まれてくるのかというイメージが沸かないと思います。したがいまして,その辺についての議論はもう少し必要ではないかという気がしております。

【河田座長】参考資料についてですが,机上資料1で市村委員がお書きになった「グローバル時代における人材需要」という論考を拝読いたしましたところ,戦略と実際の数字が具体的に示されています。今日は定量的な,すなわち数字が乏しいという分析結果が出たということですが,その辺はいかがでしょうか。

【氷見谷国際企画室長】数字の面につきましては,例えば外国人の学生の受け入れ,これらの13大学だけですと,平成25年までに3万人を受け入れ,また平成32年(2020年)までに5万人を受け入れるという目標があります。こちらの資料には記載がなかったわけですけれども,そういった形での定量的な数値目標により,受け入れという部分については予定をさせていただいているところです。

【義本高等教育企画課長】このグローバル30の事業につきましては,留学生の受け入れを拡大することがありますけれども,今日お示ししましたように,あくまでも何をやるかという事柄だけですので,例えば英語コースでどれだけの学生が受講しているか,あるいは留学生も含めて就職関係についてどれだけの成果があるかを含めまして,考えなければいけない視点だと思っています。また,そういうことも含めて13の大学の会合においても話をしておりますけれども,今日の話も踏まえましてその辺を今後しっかりと取り組んでいきたいと思っているところです。さらに,予算は獲得するだけではなくて,執行面や,フォローアップにつきましても,いわゆる事業仕分けも含めまして,厳しい目をいただいておりますので,成果をしっかり上げていくべく発信する努力をしていきたいと思っております。

【河田座長】是非そういう意見が出たことを組み入れながら案をつくっていただきたいと思います。今日,傍聴者の中にもグローバル30に選定された13大学の方もいらっしゃると思いますので,このような意見が出ているということをきちっと理解をしながらお帰りいただきたいと思います。

 資料1の3ページに教育資源の共有化ということで,3つ目にWEB出願システムの例(名古屋大学)がありますが,こういう仕組みは非常に大変で,お金がかかると言っておられたので,是非,こういうものは13大学が共通で使用すれば良いし,その際には取りまとめる大学に補助をするなど,そこはお考えになられたら良いと思います。それから,海外事務所等の他大学への開放ということで,私は中国について研究しておりますけれども,中国の大学へ行くと必ず「うちの大学に貴大学の事務所を出しませんか」と勧誘されます。中国は,それぞれ独立採算ですので,それぞれの大学で勧誘を行っております。そうすると,中国のことを存じない日本の大学関係者が中国へ行かれると,先方がそのように言ってくれているのであれば,と,その口車に乗せられて中国に事務所を出そうということになります。中国の1つの大学に,日本から複数の大学の事務所があるという状況になってしまいますので,特に中国では共同で事務所を設けて,共通で使うようにすると経済的かつ利便性ある利用が可能になるのではないかと思います。

【河田座長】それでは,資料3について何かご質問はありますか。

 大学にいた者としては,是非この資料3の89ページに記載のあるように,新卒者の採用,広報等をこのような形で遅らせていただくということが一番ありがたいと思います。そして,学生もそれによって就職に気を取られることなく,勉強ができるし,海外にも行けるという,まさに物理的な枠組みになると思います

【土居委員】河田座長が今おっしゃいました点について,私も全く同感なのですが,ただ民間の経済活動について大学側がどこまで拘束力を持てるかについてなかなか悩ましい問題がありまして,経団連は以前よりは前向きに採用時期についての再考をしていただいているとはいえ,経団連に加入していない企業,外資,それからベンチャー企業は決してこの方針に従うかどうかわからないという問題を抱えていると思います。むしろその点からすると,私は是非ここは強調しておいた方が良いのではないかと思いますのは,学生が不本意に早期に就職活動に関わらなければならない状況に置かれることをいかになくすかとであると思います。むしろ,進んでインターンシップや企業の活動に学生の身分として関わりたいと思っている学生も中にはいるので,就職活動時期を遅らせることによっていうことにより制限されてしまうというのもなかなか難しいところなので,むしろ不本意に採用や就職活動に関わらされるということがないような取組に力点を置いた方がより本格的な新卒者に対する配慮になるのではないかと思います。

【松尾学生・留学生課長】1点だけ,現在の就職の採用活動について,政府,それから大学と経済界との間の様々な動きについて簡単に紹介させていただきたいと思います。市村委員におかれましては,日本貿易会で昨年から色々な動きをしていただきまして本当に感謝を申し上げたいと思います。今,土居委員からお話がありましたように,外資系企業などは,経団連に加入していないところもあります。そのようなことから,昨年の11月に私どもが中小企業を含めて懇話会を立ち上げまして,経団連以外ともそういったディスカッションをできるような形をとっております。したがいまして,採用活動も経団連以外の団体等を含めて,働きかけていきたいと思っております。

 インターンシップにつきましても,今は3年次が中心ですけれども,もっと早い時期から参加できるような形にして,採用選考活動とある程度切り離されたということをうまく明示する形でお話をさせていただいており,また経団連でも留学生については帰国後の採用時期と合わない点についてはきちんと配慮するとのことです。ただし,そういった方針を守る企業,守らない企業があるかと思いますが,やはり拘束はなかなかできないので,国民運動ということではないのですが,そういった活動を通じてしっかりとムーブメントとして後ろに続くような形や学業をしっかり行ってもらうような形にしたいということで,対応しているところですので,報告だけさせていただきました。

【河田座長】資料2-2については,これまで3回の議論が反映された形で加筆が入り,かなり充実したものになったと思いますけれども,これに加えて,市村委員から本日の机上資料1にありますとおり,「グローバル時代における人材需要」という論考が,近く雑誌に発表されるということですので,これにつきましても市村委員から説明いただきまして,その上で議論にしたいと思います。市村委員よろしくお願いいたします。

【市村委員】説明させていただきます。

 グローバル時代における人材需要というテーマで書かせていただきましたけれども,これは先般2月24日に開催された第3回目の会議の際に白石委員と伊藤委員からグローバル人材の育成の課題について定量的な目標値についてどのように考えているかという発言がありました。つまり,日本全体の底上げを考えているのか,または,いわゆるエリート教育的な数量目標を持ってやっているのかという質問がありました。その時に,私としてはやはり国家として,定量的なイメージを持ったグローバル人材の育成を考えるべきではないだろうかという観点に立ちまして,試算といいますか,イメージを出してみたということです。このことについて簡単に説明させていただきます。

 ご承知のとおり,日本の労働人口は6,000万人強あるわけですが,昨年の5月に野村総研が政府の新成長戦略について提言書を出しております。この提言書を読みますと,日本のグローバル人材は約1%と言われております。ということは,すなわち60万人くらいがグローバル人材ということになるかと思います。それは先進国と比べますと,最も低い数値であるとその提言書では報告しておりますが,では我が国が将来グローバル時代を迎えて世界の先進国と肩を並べるレベルで,どれくらいのグローバル人材を育成しなければいけないのかについて検証してみたいということからこの文章を書いたという経緯です。

 その前に,人材戦略をどのように考えたら良いかについて私の考えを書いてみました。これから20年間で日本の労働人口が大幅に減少していきます。また,日本経済におきましても産業構造が大きく変化するという状況の中で,国家として将来に向けた人材戦略,特に産業別の労働人口をどのように考えていけば良いのか,また,ポートフォリオ戦略的なものを考えていかなければ,方向性を見失うリスクがあるのではないかと考えたものですから,それをベースに色々なことを考えてみました。特に諸外国ですが,それぞれ将来の国家人材戦略を既に明確にしております。例えばアメリカですが,アメリカはグローバル及びイノベーションをキーワードとする将来の国家戦略です。特にコスモポリタンという表現で,グローバル人材とアントレプレナー,起業家を育成することに注力し,他の人材については世界の最適地から調達するということで国家戦略を打ち立てるとはっきり表明しています。一方,ヨーロッパですが,ヨーロッパは日本と非常に構造が似ていまして,経済成長が鈍化しているといいますか,停滞していると言え,日本よりも大変な状況であります。かつ,少子高齢化という問題も同時に抱えております。ただ,日本と違うことは,ヨーロッパは移民を受け入れていますので,この辺が違いますけれども,いずれにしても構造的には日本と似ているという状況の中で,ヨーロッパは人材のポートフォリオ戦略を明確にしております。これは,いわゆる人材タイプを明確にして,その割合に基づいて国の教育制度,社会制度を構築していこうという考え方であります。これはちょうど2000年にEU加盟国がリスボン戦略ということで合意しているという有名な話です。一方,アジアですが,アジアの大国の中国はいわゆるマニュファクチュアリング及びエンジニアリングということで,新興国が当然歩んできた道のりを今一生懸命取り組み,いわゆるプロフェッショナルを育成していこうというのが中国の戦略です。インドも同様で,インドの場合はIT戦略と医療産業のプロフェッショナルを育成していこうということです。韓国は97年のアジア通貨危機以降,国家の維持拡大成長戦略を保持していくためには外へ進出しようということで,グローバル人材戦略を明確にして,10万人の養成プロジェクトを立ち上げたということです。

 一方,我が国ですが,昨年の7月の新成長戦略における国家戦略の中で人材戦略が掲げられています。今,茂里視学官から説明がありましたグローバル人材の育成と高度人材の受け入れの拡大ということで,戦略を公表し,これから具体的な話を詰めていくというのが,本会議が取りまとめる我が国の人材戦略ということですが,この背景になっている海外留学30万人あるいは外国人学生受け入れ30万人というのが具体的に数字として出ていますが,この裏づけがどういうものであったかについてよく存じていません。ただ結果として,私がこれから申し上げる試算とかなり近い数値でありました。

 それでは,我が国の目指すべき人材戦略はどうあるべきなのかという中で,私が考えましたことは,もちろんこれは私見ですので,皆さんからの意見があるかとは思いますが,日本の社会構造あるいは経済構造等を考えて将来の成長を考えた時には,やはりヨーロッパに近い考え方にならざるを得ないのではないかと考えます。先進国としての扱い,ただ米国とは違うという中で日本の人材戦略はヨーロッパ型になるであろうと思います。またそうでなければならないのではないかと考えた次第です。

 それで,先ほど申し上げましたけれども,リスボン戦略とはどういうものかをこの本文では説明しております。このリスボン戦略は,いわゆる人材のポートフォリオをタイプに分けてその割合を決めていったということです。もちろんこれはすべての業種を組み入れたものではありませんが,国家の成長を考えた時の牽引力となる人材タイプを中心に考えています。したがって,比率の低い,就業労働人口の中で割合の低いところは割愛させていただいています。その中で7つの分類ということで,1つはグローバル人材,2つ目はアップルワーカー,つまりIT関係です。それからプロフェッショナルズ,これは金融とか,法務とか,医者といった,いわゆるライセンスを持った人たちの集団です。そして,ホワイトカラー,製造事業,サービスワーカー,最後に起業家,つまりアントレプレナーという7つのカテゴリに分けてタイプ別の人材を明記しております。

 こういう中で日本とEUの現状と,EUがリスボン戦略で決めたポートフォリオの割合との関係はどうなっているかをまとめておりますが,EUのリスボン戦略で求められる割合を記載しましたけれども,いわゆるコスモポリタン,グローバル人材は5%を目標とするとしています。ただEUの現状は現在2%,日本は1%ということです。この5%という数値をどう捉えるかということでありますが,いずれにしましても現在の日本の労働人口6,000万人,6,300万人とも言われますが,この5%ということになりますと,日本にとってグローバル人材はやはり最低でも目標300万人から315万人くらいのレベルで育成していかなければならないということになるかと思います。現状においては,文部科学省及び関係大学が中心となって現在取り組んでおりますグローバル30というプロジェクトで,留学生の30万人受け入れという計画あるいは30万人の留学生を送り出すという中で,実際に30大学という当初の計画から大学数は今13大学でありますし,受け入れ留学生の数も30万人の約半分の14万人強という状況です。これをこのまま続けていって良いものかどうかという問題も当然ありますし,日本側の受け入れの体制として何を整備する必要があるかについても色々と考えていかなければいけないとは思いますけれども,そこは今ちょうど議論していますので,それとは別に,数量的に何万人のグローバル人材をこれからどういう計画を立てて育成していくか,そして,その計画の実現可能性について検証をしていかなければならないということを今回申し上げたかったわけです。

 そこで,簡単に試算したものがお手元にあります机上資料1の最後のページの4番目に我が国におけるグローバル人材の需要ということでまとめてありますけれども,労働人口の5%ということで315万人のグローバル人材の育成が必要ではないかと申し上げております。その中で現状は1%で63万人ですので,252万人が不足していると仮定しています。ただし,企業あるいは大学等でコスモポリタンのタイプのレベルには達していませんが,それなりのレベルで教育を受けた人,あるいはもう少し企業などで教育をしたらそのレベルになれるといういわゆる予備軍,潜在的なコスモポリタンのタイプがいるであろうと仮定します。これが全くの試算で恐縮でありますけれども,業種によってそのパーセンテージは大きく違うであろうということから,これは勝手な想像ですが,数字を出すための予備群として私の計算では129万人から130万人くらいがいるだろうと考えます。これはプロフェッショナル,特にライセンス等を持つ方の教育水準が高く,あるいは海外との接し方などが非常に多いと考えますので,全労働人口に占める割合は少ないのですが,その中の20%程度はコスモポリタンのレベルに入るであろうということで20%としています。ホワイトカラーはそこまでは高くならないだろうと考えました。そういう計算をしまして129万人という数値を出したということであります。こういう考え方にしたがって計算しますと,63万人に129万人を足しますと,200万人弱,192万人という単純計算ですが,こういう数字になります。そうすると,315万人のグローバル人材を必要とする日本にとって,これからどれくらいのスピードで,どれくらいの人数を例えば5年間と仮定して育成する必要があるのかという答えが出てくるわけですが,5年で割りますと年間約24万人のグローバル人材を育てていかなければいけないというわけです。一方,既存のグローバル人材と予備群の人材も引退していきますので,この引退していくパーセンテージを3%と仮定すると,そこでやはり4万人くらい減っていくわけです。したがって,24万人のグローバル人材を新しく育成するのと同時に4万人が減りますからその分も埋めなくてはいけないということで,やはり28万人くらい,大雑把に言って30万人というのが日本にとって必要なグローバル人材の毎年の育成していかなければならない人数だということになります。これが偶然であるのか,結果的にはもともと計算されていたのか存じませんが,今の新成長戦略における留学生等の計画の30万人とかなり近い数字になったということです。

 そうなりますと30万人を本当に,このグローバル30で育成していかないと,この300万人の育成体制は構築できないということになるのではないかということですので,この戦略を本当に実現可能なものにしていかなければならないということが私の申し上げたいことの結論になります。報告は以上です。

【河田座長】市村委員,ありがとうございました。戦略の問題と具体的な数値を決めてそれに近づけていくことが必要だというのがお話のエッセンスで,非常に重要な指摘をいただいたと思います。それでは,今から,委員の皆様から今の市村委員の報告も含めまして,資料2-2の戦略案について自由に意見を出していただければと思います。土居委員,いかがですか。今の市村委員のご報告も含めまして,発言いただければと思います。

【土居委員】大変示唆深いお話で,むしろ先ほどお話になられた時の数値的な目標を掲げるということについて,非常にイメージを与えていただいたと思っております。それこそ,先ほどの話に戻ってしまうかもしれませんが,資料1のところで英語コースを設けるということについて,もちろん大学が単に英語で教える科目を増やすというだけの話ではなく,どういう科目を英語で教えるかということまでを,ある程度予定してプランを出しているということですから,そうすると,例えばそれが経営学の科目を英語で教えているのか,それとも工学の科目を英語で教えているのかということで,おのずから,どのタイプの人材を供給しようとしているかが決まってくるというところがありますので,単に英語のコースをつくったという話にとどまらないで,英語のコースを設けたことで,どういうタイプの人材をそれぞれの大学が送り出すつもりであるのかということまで,今市村委員から報告いただいた話を含めまして意識が根づいていけば良いと思った次第です。

 それから1点だけ質問させていただきたいのですが,コスモポリタンタイプの人材ということで,私もそういう人材が求められているこのリスボン戦略で5%と言っている数字には非常に直観的ではありますけれども,妥当な水準なのではないかと思っていますが,これをどのように,特に大学は学部,ないしは研究科で分かれているものですから,卒業,又は修了した学生がどのようなタイプのコスモポリタンの人材になれるといいましょうか,なることが期待されるといいますでしょうか。何か市村委員にイメージが一,二例で結構ですのでありましたら教えていただきたいと思います。

【市村委員】これは色々文献を読んで探したんのですけれども,具体的にはっきりとした考え方というのはありません。ただし,EUのリスボン戦略ではっきりしていることは,EUはもう数十カ国の集まりです。したがって,加盟国のどの国へ行っても仕事ができる人という位置づけになっています。コスモポリタンと言われている人がそれぞれ,医学やエンジニアなど,得意分野を持っています。つまり,ここでいうアップルワーカーから下の層の中で,EUの中で活躍したい人のレイヤーがコスモポリタンと言っているわけです。よって,コスモポリタンという専門性を持ったレイヤーというわけではないという位置づけです。その割合がどの程度の割合で構成されているかについては存じません。

【土居委員】非常に端的なご説明ありがとうございます。そうすると,極端に言えば各学部で5%くらいのコスモポリタン人材が必要ということでしょうか。

【市村委員】そういった考え方でも良いと思います。

【土居委員】グローバル対応の人材を供給できていれば,おのずとこういう5%の水準に近づけるような教育態勢になると理解するということですね。

【市村委員】そうでしょう。

【土居委員】ありがとうございました。

【市村委員】これから海外に出ていく,あるいは海外の人を受け入れる割合が一律5%とは思いませんけれども,そういう考え方で割り振っていくと良いのではないかと思います。

【谷内委員】私は以前から申し上げているのですが,コスモポリタンという表現に抵抗を感じています。市村委員から報告のありました机上資料1の2ページに書いてあるコスモポリタンについて,これはEUの定義によるものでしょうけれども,例えば国際経験,外国語能力,ダイバーシティマネジメント能力を持つという人間で,かつEUの中で例えばデンマーク人であっても医療関係で専門性を持っていて,この人はドイツに行こうが,フランスに行こうがやっていけるというタイプの人のことを言っているのだとすると,そういう人間を育成することは大変結構ですけれども,それがそのまま日本に持ってきて,コスモポリタンが必要であると言われますと,それだけで抵抗を感じてしまします。具体的に言いますと,国際経験を持つ外国語能力といいますと,もっと若い例えば中学生,あるいは小学生,高校生ぐらいの段階で,そういう経験を持って日本に来た人間は結構いじめの対象になったり,要するに日本文化の中でずっと育ってきたマジョリティーの人間からは排除されたり,あるいは今申し上げたような形でいじめを受けるという場合がありますので,そこのところをよく考えておかないといけないと思います。大学で今こういうコスモポリタン的な人を育てるということで大いに英語で授業を受けなさい,外に行きなさいと言って,まさに無国籍的なコスモポリタンを養成するということになってしまうと,この人は実際いかに大会社であろうとも,入った場合にそのまま文化的に受け入れられるのかという問題は,これは日本社会の構造的なものとしてあるように思います。そこのところを考えないと,大いにコスモポリタン的な人をどんどん育成するということについて,私は危険性が伴うと思います。特にメンタルな問題も同時に考えていかないと,きちんと機能していかないのではないかという感じがします。極端なことを言っているかもしれませんけれども,多分そういうことでないとおっしゃると思いますので,説明いただければと思います。

【市村委員】これは,リスボン戦略ではコスモポリタンという表現だったのですが,あえてそれをグローバル人材と読みかえたわけです。ですからヨーロッパと違うというのは私も承知の上で考えています。ただ,要は日本にとってグローバル人材というのがこの程度のEUでいうコスモポリタン的な役割という感覚で5%くらいではないかという意味合いです。ですから,コスモポリタンを養成しようということではないわけです。

【涌井委員】このグローバル時代における人材需要について,ミクロの面からお話したいのですけれども,要するにグローバル,ビジネスといってもあらゆるビジネスがあります。その中で多分ここで言っているのは,どの分野でも世界へ出ていって,十分に対抗できる人物という定義くらいしかできないのかなと思います。例えば会計のことを考えましょう。国際会計基準(IFRS)が日本でも間もなく適用されるようになります。そうしますとIFRSを理解している者をまず国内で養成しなくてはいけません。基本的にほとんどは理解していません。日本の監査法人もまだ知識が足りません。他方,それを行うためには例えば我が社ですと,もうIFRSを外国の部門では導入しています。相手と対等に渡り合うことのできる者でないといけません。実際には,ほとんど毎日のようにテレビ会談を行っていますけれども,それができる者でなければ,基本的には外国でなく,国内にいたとしても対応できません。例えば,法務のメンバーは,我が社では120カ国とビジネスをしていますから国によって全部法律制度が違います。一人で120カ国の法律を理解することはできません。そうすると,国ごとに弁護士事務所を雇って,そことのやり取りを通じて最終的に東京でそれを管理するというような手段が必要になります。それも分野ごとになります。それから,我が社では医薬を扱っています。医薬は基本的に治験というのはほとんどアメリカで行われています。だから,博士課程や修士課程を修了した者を採用していますが,それは皆アメリカで現に活動しているわけです。したがって,会社の中でもあらゆる分野がありますから,その中ですべての国においてグローバルに通じるということではないと思います。ただ少なくとも基本的な知識を国内で持っている人でなければ国外へ出られないとは思います。言葉についていえば,我が社では博士を持つ者は外国へ行っている者も多いものですから良いですけれども,入社してからMBAを取ったという者もいますけれども,そうでない者でも現に直接海外へ送り出して,知識のある者はそれでも良いとは思います。要するに,結局個々の能力という面もあると思います。そういう者が活躍してきますし,ジュネーブでは我が社は900人くらいの海外本社ですから,そこでもほとんどの外国人と対等に渡り合っていくという面が必要ですので,抽象的にグローバル人材という整理ではなかなか簡単に理解できないと思います。要するに,ミクロの観点から見た場合の話です。その中で総論として,そのような人材をどのようにして育成していけば良いのかということになります。そのためにもちろん英語はある程度できることも基本です。ただ,本当はそれ以上に知識のない人は基本的に厳しいと思います。勉強しない人で,能力を身に付けようとしない人は難しいということを申し上げておきたいと思います。

【岸本委員】違う点からの質問ですけれども,この戦略案で,いくつか実際に具体的方策ついてかなり細かく書かれているのですが,それを考えますと,ステークホルダーに対してこれをどのようにきちんと伝えて納得を得ていくのかなということについて非常に知りたいと思います。それは広報であると思うのですけれども,文部科学省から一番メッセージを伝えやすい相手は教育の関係の方だと思います。その一方で,この戦略では普段あまりコンタクトを持たない企業,または子供の教育となると,親御さんにどのように伝えるかということになると,そのあたりの対応について考えられているところを聞かせていただければと思います。

【義本高等教育企画課長】1つはこういう形で戦略をまとめさせていただきましたら,文部科学省から主に大学や教育機関に対して,あるいはそれを受ける学生に対して周知するという形でのケースが多いのですけれども,今回は国と大学と企業という産学連携によるということです。文部科学省関係の報告としては異例ではありますけれども,企業を主体にして企業に対しては果たしていただきたい役割を今回明確にさせていただいたということが1つです。それから大学については,これはまだ工夫する余地があると思っております。大学が主体的にどういう形で取り組んでいただきたいかについては話がありますけれども,さらに大学に在学する学生に対しては何を期待しているのかということです。例えば,海外に出ていくとか,いろいろな体験をする中において,たくましさとかあるいはタフさのような素養です。これは第2回の会議においても話があったかと記憶していますけれども,そういうことをしっかり身につけていただきたいということです。それが適切に評価され,社会人になり,あるいは自立した職業人として活躍するということを新しい姿として打ち出していきたいということが1つです。ただ,岸本委員から話がありましたように,それをどのように効果的に発信していくのかということについては,このペーパーだけではまだまだ不十分であると思いますし,それはやはり具体的にどのように肉づけしていくのか,政策のレベルで,あるいはグローバル30という事業のレベルでさらに工夫していかないといけないと思っておりますし,それは1つの課題だと考えています。

【河田座長】市村委員から出ました数字,日本における養成するグローバル人材が28万人ということですけれども,今日本には国立大学が86大学ありまして,学生が約62万5千人おります。公立が95大学あり,大体四捨五入して14万人の学生がいます。私立大学が597大学あって四捨五入して212万人です。合わせますと288万から289万人くらいの数字です。大学は4年制ですから,1学年あたり70万人くらいです。だから,70万の学生の中から毎年28万人のグローバル人材としての学生を育成していくことは数字的には非常に大変で,難しいところがあるのではないかなとは思います。けれども,実際にこういう形で数字を出していただいたということ,それからこういう戦略を持って,我々は国としても文部科学省としても取り組んでいかないと,他国との競争力が失われてしまいます。ですから,そういうことが必要であるということを非常に教えられたと私は思っております。

 それでは資料2-2に基づきまして,この会議の最終的な報告を出すということですので,これにつきまして,最後にご意見,ご指摘などをいただければと思います。

 座長の私が先に申し上げるのも申し訳ないのですけれども,読ませていただいて非常に良くできていると思いました。ですが,例えば2ページの基本方針の上のところで,「教育界と産業界両者」が協力していくと記載があります。けれども,その下を見ると「本推進会議は産学官の連携による」と官が入って,いわゆる国が入るわけですから両者だけでなく,国も入れた三位一体でグローバル人材を育成しないといけないことになります。したがって,両者ではなく「三者」という記載にしていただかなければいけないと思います。

 それから,特に重要な指摘であると思いましたのは,10ページあたりで初等中等教育と高等教育の連携を推進するとありますが,この連携が必要であると思います。やはり大学に入ってから身に付けられることは限られているわけです。人間性の問題もそうですし,やはり大学に入学するまでに小中,あるいは高校の段階で国際化,あるいはそういうことを考えていただかなければならないと思います。私の事務所のすぐ近くに小学校があります。小規模だけれども非常に良い小学校であるという評判です。児童を見ていても優秀だなあという感じを受けております。その小学校で卒業生が「展覧会」をしており,一般の人に公開されているとのことですので,昼休みに見せていただいたことがあります。その時に6年生の将来の夢についての掲示があり,卒業したら自分はどんな人間になりたいかというものがありました。全校の生徒が308名,6年生は2クラスで52名ということですけれども,それを見て愕然としました。何を愕然としたかと言いますと,将来なりたい職業についてです。その幾つかピックアップしますと,サッカーの審判,バスケットの選手,ファッションデザイナー,漫画家,劇団四季の主役,イルカのトレーナー,女優,それからディズニーランドのキャスト,ゲームソフトの開発者,獣医,司法試験に合格する,社会の進展のために働きたいなどです。我々の世代と違う何かが抜けている感じがしました。例えば,父親の職業を継ぐとか,野球の選手になりたいとかというような類のものです。それともう1つ,外国に行きたい,海外で活躍したい,宇宙旅行したいといったものが全然ないです。この非常に良い学校を悪く言っているわけでは全くないのですけれども,やはり海外に出たいとか,未知の外国で仕事をしたいとかということを私が見た限り,この52名の児童がほとんど誰も書いていませんでした。このことについて愕然としました。やはり小学校からそういう海外を志向する教育をしていただかないと,大学に入ってからではなかなか難しいのではないかという感想を得ましたので,是非,初等中等教育段階で,そういう連携の取組を項目の中に入れていただきたいと思います。それからもう1つ私が学長をしていた時に感じたことは,JETプログラムというものがあります。Japan Exchange and Teaching Programという,日本名では外国語青年招致事業というものです。40歳未満の外国人を日本の小中高校で,あるいは県庁などの国際交流課で働くのですけれども,それは1987年からはじまって,2006年の段階では44カ国その年だけで5,508人を採用して,各地で小学校や中学校,高等学校で英語の授業をしています。これは日本にとって,あるいは日本の教育にとって,有効な事業であると思います。若いアメリカ人の先生に英語を教えてもらって,自分は海外に行きたいとか,そういう意識が出てくるかと思います。以上,座長でありながら,長々と意見を申しましたが,委員の方からも意見を伺えればと思います。

【岸本委員】今のお話で,実は少し違う印象を持ったのですけれども,バスケットボールの選手やサッカーの審判というのは日本の実業団リーグではなくて,アメリカのNBLでないかと思います。サッカーは多分ワールドカップだと思います。そういうグローバルな環境がごくごく当たり前に自分の周りにある世界に子どもは住んでいると思います。もしそうだとしたら,その子どもたちが本当にそこに飛び込んでいけるような世界に行けるような支援,そういう子どもたちをエンカレッジすることがとても大事ではないかと思いました。

【涌井委員】この戦略案は良くまとまった案だと思います。ただ,あくまでもこれはペーパーワークであると思います。この戦略を具体的に政策化し,実行していかなくては何の意味もないと思います。これから具体化していく方が実は大変なのですけれども,それを是非とも行っていただきたいということです。それから,少し文章のことで,趣味の問題なのですけれども,読んでいて気になったことは,1ページの上から7行目に「時代の流れとともに変化する社会に合わせ,教育自体も成熟したものとする」とあります。これが社会変化に合わせて今の教育が成熟していないかといいますと,文部科学省の予算を見ていましても,むしろ戦前からの古いものがずっと残っていて,成熟しきってしまっています。大学の世界というのは,昔からのそういうものが残っています。だから,これはむしろ変化に合わせて大学も変わって進歩していくとか,新しい展開をするとかという言い回しにしていただければと思います。

【谷内委員】河田座長がおっしゃられたことは非常に良くわかります。この戦略についての広報を適切に行っていかないといけないと思います。大学ではグローバル人材育成を大いにやっていただき,企業サイドも応援しますということは大変結構なのですけれども,今,河田座長がおっしゃったように,やはり初等中等教育のところからそういうグローバル人材,それは小学生,中学生がすぐに理解ができるかどうかは別問題として,何かそういうものに自分はならなくてはいけない,あるいは,そうなることを社会全体が要求しているということを肌で感じられるような広報といいますか,そういうものを知らしめることはすごく必要ではないかと思います。小学校や中学校で海外から勉強して帰ってきた海外教育子女の人たちは特別の私立の小学校や中学校に入学する場合は別ですけれども,普通の公立の学校へ行きますと,たいていはいじめられたり,異質なものとして取り扱われたりすることが多いです。今まさに英語の教育が低年齢から始まっていますから,大分変わっているとは思うのですけれども,例えば英語の先生が英語をぺらぺらに話せる子どもをいじめるということは事実としてあると思います。だから,そういう点も変えていかなければ,大学に行ってから大いにグローバル人材になりなさいということでは,多分うまくいかないと思いますので,社会全体がやはりこういう人材が必要なのだということがわかるように広報していく必要があるのではないかと痛感するところです。

【土居委員】2点ほどありますけれども,それ以外は基本的に今の案で結構だと思っております。1点目は前回も少し申し上げたことではありますが,3ページから4ページにかけての大学の役割の中で,国際的な通用性を確保し,魅力ある教育を提供するということで,これを最初に掲げるということには賛成ですが,やはり魅力ある教育を提供するためには学術研究と教育を両立させるという発想をきちんと明示していただく必要があると思います。これは2つの意味で重要だと思っていまして,前回も申し上げましたけれども,1つ目はやはり高いレベルの研究をしている大学に留学したいという海外の留学生に対して,日本の大学でハイレベルの研究をしているということだから,アメリカの大学ではなく,日本の大学に留学しようと思うようなモチベーションは特に大学院では根強くありますので,単に教育のコンテンツだけをレベルアップすれば良いという話ではないということです。やはり学術研究と教育を両立させて車の両輪のような形で魅力ある教育を提供できるようにするということをできれば明示的に書いていただきたいと思います。もう1つは,これは大学の内部事情ということかもしれませんが,教員が本腰を入れて教育をしたいと思うことは,もちろん熱意はあるわけですが,やはり研究をする時間も確保していただかないと教育にも力が入れられないというメンタリティーが大学の教員にはありますので,研究の時間を確保できるから教育にも今まで以上に熱を入れて欲しいということには賛同を得やすいと思います。

 それからもう1点は,先ほど河田座長からご指摘のありました10ページの入学者選抜試験のところです。初等中等教育との連携については,すぐには実現しないかもしれませんが,是非とも視野に入れて改善して欲しいということを申し上げたいと思います。10ページの大学入学者選抜試験の改善については,ここの書きぶりはどちらかというと日本国内で国際バカロレア認定コースの認定を受けているコースで高校を卒業した,ないしは留学経験者に対しての配慮というところに重きを置かれた表現になっているのですけれども,やはり初等中等教育に対する大学側からのメッセージは日本国内の受験生に対して大学がどういう入学試験を行うかということで相当強いメッセージを発していると思います。ですから,入学者選抜試験で,急には無理ですけれども,国際的な,例えばフランスのバカロレアや,アメリカのSATなど,別に英語で行うという意味ではないのですが,単純な筆記試験だけではなくて,もう少し国際的な大学の入学試験を意識しながら,日本でも学習指導要領には従いつつも,国際的な大学入学者選抜試験と近い体裁の入学試験を導入することを通じて,単に試験は日本語で試験しているかもしれないけれども,大学に入ってくるということはこういう能力を試されているということは,言語だけが違うけれども,アメリカやフランスといった優れた試験制度を持っている国の体制と遜色ない体制で日本も大学の入学者を選抜していますというレベルに近づけることができるのではないかと思います。そういう意味では,日本国内の入学者選抜ということに対しても改善する方向を意識したような内容が含まれていると思います。修文案は思いつかないのですけれども,そういう意図があるというところについて,少なくともそういう意見を発した委員がいたということについてメンションしておきたいと思います。

【岸本委員】基本的にこの戦略案に賛成です。先ほど申し上げました企業の理解をどのように得るかといった広報についての点が必要かと思います。また,1点細かいところですけれども,初等中等教育のところの英語の教員についてです。英語が本当に教育できるのかという,レベルの向上は絶対必要ではないかと思います。

 それからもう1点ありまして,今これだけ色々な企業がグローバル化だと言って走り始めると,多分英語ができる人間は次々と企業側に採用されていくだろうと思いますので,今後は英語の先生になる人のパイプラインをどう確保していくかというまた別の課題が出てくるのではないかと感じました。

【市村委員】私もこの戦略でよろしいかと思いますけれども,1つ付け加えるとすれば,留学生の受け入れをして,数を増やしていかなければいけないという目標もあるのですが,現在の国の政策はその人たちにまた母国へ戻って活躍してもらうことが前提になっていると思います。だから,やはり日本の将来を考えた時に優秀な人材は日本で勉強した後,日本で確保するという考えもあって良いのではないかと思います。といいますのも,やはり若い働く優秀な人材が減っていく傾向にあるわけですから,ましてや今後ますますグローバル企業は留学生の中から優秀な人材を採用していこうという傾向が出てきているわけですから,その辺をある程度視野に入れた戦略も必要ではないかと思います。それは,例えば日本語教育も本当は英語で行えば良いのですが,日本に来て日本で働くということになれば社会生活はまだまだ日本語で対応しなければいけないわけですから,そういう人たちを日本に来て仕事をしやすくするような環境づくりという観点では,日本語をやはりある程度教える支援といいますか,そういう仕組みも必要ではないかという気がいたします。その点が書かれていませんので,留学生を受け入れるだけではなくて,それを日本のために働いてもらうというところまで踏み込んでも良いのではないかという気がいたします。

【河田座長】本日も活発なご意見をいただきまして,ありがたく思っております。12月から始まりましたこの会議ですけれども,これまで2つの問題について議論を重ねてまいりました。1つは,国際化拠点整備事業(グローバル30)の抜本的な見直しということであります。これにつきましては,特に第1回の会議で議論した後,今日説明がありましたように各大学でそれぞれ協力して具体的な検討を行っていただいております。それがいかにうまく,涌井委員からご指摘がありましたように,きちんと空念仏に終わらないような形で,各取組が実施されているかどうかのアフターケアをきちんとすることが,税金を投入されたことに対する各大学の責任であろうと思っております。

 それから,2つめ目の問題としまして,産学官連携によるグローバル人材の育成ということで,今回はまさに大蔵省,財務省で日本の国家予算をまとめてこられた涌井委員,あるいは日本の外交政策に深く携わってこられた谷内委員にも参加していただき,かつ,グローバル企業のソニーの岸本委員,それから日本貿易会の市村委員,また教育界からは海外経験の長い土居委員からも貴重な指摘をいただきました。そういった方々にご参加いただき,まさに産学官の三者連携のもとでの議論が非常に煮詰まったのではないかと思っております。これからネットワーク化や産業界との連携,それを国がどう支援するのか,教育資源の共有化も非常に大切だと思います。そういうことに積極的に取り組もうという姿勢が見られはじめているということですので,これらの取組による事業の成果が一層期待されるのではないかと思っております。

 大学,企業,国が実際にどういうことを取り組んでいけば良いのかという具体的な法案,方策,施策をご検討いただきましたし,今日さらに市村委員から数値に基づいた戦略を立て,それをきちんと数値目標を定めて行っていくということの大切さも教えていただきました。しかし,やはり大事なことはスピード感を持って取り組んでいかねばならないということです。

 したがいまして,戦略の概ねの方向性が見えてきたと思いますので,今後事務局と私に一任いただきまして文面などを検討させていただきたいと思います。そして,その修正した戦略案につきましては,後日,委員の皆様にお送りいたしまして確認していただきたいと存じます。この4回にわたる会議の非常に実り豊かで活発な,特に今日はお休みですけれども,伊藤委員,白石委員,ローソン社長の新浪委員にも入っていただいて,いい議論ができたと思います。本当にありがたく思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 最後に事務局から,今日は磯田高等教育局長も出席されておりますので,一言ご挨拶をいただけますでしょうか。

【磯田高等教育局長】集中的にたくさんの論点につきましてご議論いただきまして,誠にありがとうございます。この課題につきましては,私どもの鈴木寛副大臣が産業界の方々とも意見交換をするということで準備が進んでおりますし,また官邸におきましても,高い立場から全省の関係者が集まりまして議論を進めていくことになっております。いずれにしましても,さまざまな議論の中心的な論点を今回整理いただき,かつ我々がそれを施策にしていかなければならないと感じていましたので,しっかりそれぞれの検討の場にもちまして,対応してまいりたいと思いますのでよろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました。

【河田座長】それでは,事務局から今後のスケジュールについて,説明をお願いします。

【茂里高等教育局視学官】スピード感を持って進めるようにというお話もありましたので,速やかに修正させていただいた上で,委員の皆様にご確認いただきまして最終的なレポート,戦略として頂戴したいと思っております。

【河田座長】それでは本日これで終わらせていただきます。お忙しい中,委員の皆様におかれましては,どうもありがとうございました。

 

―― 了 ――

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