産学連携によるグローバル人材育成推進会議(第2回)議事録

1.日時

平成23年1月20日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.出席者

(座長)河田悌一座長
(委員)市村泰男,岸本治,白石隆,土居丈朗,新浪剛史,谷内正太郎,涌井洋治の各委員
(事務局)加藤大臣官房審議官,小松大臣官房審議官,義本高等教育企画課長,藤原大学振興課長,松尾学生・留学生課長,氷見谷国際企画室長,茂里高等教育局視学官 外

 4.議事

(1)事務局から,平成23年度の大学の国際化関係事業について,資料1に基づき説明があり,以下の意見交換が行われた。

【岸本委員】

 今お聞きした限りでは,海外に学生を送って国際化していくとか,または海外の学生を日本に受け入れて,そこで学んでいただくといった施策がとても充実してきたと思います。その一方で,例えば秋田の国際教養大学に行かせていただいたことがありますが,その際に,学生の方が本当に能動的に,自分が国際化し,勉強していくといった日本の大学の中での国際化がすごく進んでいると思いました。そういった,送り出すだけではなく,その学生に対する動機づけや,海外で学ぶことを実現するための学生のモチベーションをどう上げるかということについて,どのように考えていますか。

【氷見谷国際企画室長】

その点につきましては,事業レベルの話をまずさせていただきますと,例えば7,000人の短期の派遣プログラム,受け入れプログラムにつきましても平成23年度予算案に盛り込ませていただいておりますが,単にプログラムで海外に学生が行くだけではなく,どのような学生を養成したいのかという大学全体のカリキュラムの中できちんと位置づけた上で,学生のモチベーションを高めることが必要であり,そういったモデルとなるようなプログラムを採択させていただきたいと考えております。またそういった形で挑戦していただくというところでこの事業をぜひ使っていただきたいということで,お願いをさせていただいておるところでございます。

 また,それらの枠組みをそれぞれの個別の事業だけではなく,そういったモチベーションの向上を考える上で,キャリアステップというものがきちんと明確に提示される必要があろうかというふうに思っております。そういった点につきまして,産業界の方々と一緒になって連携して考えていくような場というものが必要になってくるというふうに思っておりますが,そういった場合につきまして,私どもとしましても産業界または大学とも連携させていただきまして,そういった場を是非ともつくっていきたい,また議論もしていきたいと思っており,この場がそういった場になろうかと思いますし,この場で出されたものを実際に大学または産業界にも実施していただくというような形で取り組みを是非行っていただきたいと思っております。

 本日お配りさせていただきました参考資料5で,経団連で昨年末にまとめられたサンライズ・レポートにおきましても,41ページでございますが,グローバル30につきまして,または外国人受け入れ促進のプロジェクトというような形で,産業界からもご提案をいただいておるところでございます。そういった中でも,きちんと産官学でそういったグローバルの人材の育成について検討していこうと,また具体のプログラムに取り込んでいこうという提案もいただいておるところでございますので,そういったものを一緒になって取り組んでいくということが非常に重要かというふうに思っております。

【河田座長】

やはり大学がそれぞれ戦略を立てて,きちんとタイムスケジュールを決め,そして最終的にこういう学生を養成し社会に送り出すということをきちんと計画しているところに予算をつける必要があると思います。そのときにやはり産業界とのジョイント,協力がいかに形成し構築できるかということが大事だと考えています。

【市村委員】

 今日いただきました高等教育の予算関係(資料1)の6ページのところでございますけれども,学生の双方向交流の推進というのがございますね。この予算の金額的なイメージはわかるのですが,具体的な受け入れあるいは派遣についての細かい内容については,現状どうなっておりますでしょうか。

【氷見谷国際企画室長】

 この資料の6ページに342億円と大きく書いてございまして,その後に特に双方向交流で今回新規で要求をさせていただきましたショートビジット・ショートステイにつきましては,それぞれ学生一人に対しまして1カ月8万円を支援させていただきますので,最大で3カ月24万円ということになると思いますが,日本に来ていただく学生,または外国へ派遣される学生に対して支援します。

 ただ,それは学生個人に支援するわけでございますけれども,その学生がそれぞれ応募をしてくるというのではなく,その学生を受け入れるプログラムまたは派遣するプログラム,さらには双方向で交流するプログラムを大学できちんとつくっていただきまして,それに応じて派遣される学生に対して支援するといったことを考えさせていただいております。

 これは派遣をする,または受け入れる際にきちんと大学側が教育プログラムをつくり,先ほど申し上げましたとおり,全体のカリキュラムの中で取り組んでいく必要があろうということから,考えさせていただいておるというところでございます。

 また,これに合わせまして,例えば日本に来る学生につきましては宿舎の問題もございますので,宿舎を借り上げる際には,他の事業でございますけれども,宿舎借り上げの費用というものも8万円から10万円という金額でございますが,合わせて処置させていただくというような形で,できる限りさまざまな制度を組み合わせていただいて,学生の双方向の交流というものを推進のほうをさせていただければと思っておるところでございます。

【市村委員】

 この質問をした背景は,今日ここへ来る前に東京大学の国際交流コーディネートの方が日本貿易会に来られまして,そこでこの7,000人の派遣,あるいは東京大学は学部生1万5,000人を1年生から4年生,どのタイミングでもいいから海外に行かせて勉強させたいという話がありました。海外に行くということが目的のようですけれども,これを行うに当たって具体的な仕組みを考えたいということで協力の要請がありました。

 いずれにしても学生を海外へ送り出して,それをどういう形で受け入れるか,また宿舎の問題につきましてもそれで良いのですけれども,問題は,企業にどういう形で受け入れをしてもらうかとか,本当のインターンシップみたいなことで企業の中で研修をさせるのか,あるいは海外に行って日本の進出企業を個別に訪問するのかとか,いろいろあると思います。この辺のアイデアについてはまだまだ模索中であるということをおっしゃっているわけですね。

 これはもちろん我々としては協力するつもりではいるのですが,問題はこの予算の執行という観点から時期的に間に合うのでしょうか。これから体制を整備していくに当たって,平成23年度予算ということから気になったもので質問させていただきました。

【氷見谷国際企画室長】

 平成23年度予算でございますが,一番学生さんが移動する機会が多いのは今年の夏のサマープログラム,来年の春休みのウインターのプログラムの2つだと思います。当然,学期間に移動される学生も相当数いらっしゃると思いますけれども,それに合わせた形で,できればサマープログラムに向けて現在検討を既に幾つもの大学が始められているというふうに伺っておりますので,そういった検討を経て,サマープログラムに間に合うような形で,私どもとしましてはこの事業の公募でございますとか具体の事業を進めさせていただきたいと思っております。

 また,今ご指摘いただきましたように,どういった形で現地における協力関係をつくっていくのかというようなところにつきましても,現地での受け入れについて,例えば外務省がどういったことができるのかというような大きな枠組みや,私どもが支援させていただく大きな枠組みについては,今,関係省庁とも議論をさせていただいているところでございまして,そういった情報をなるべく早く大学にも提供させていただきたいと思っております。

【市村委員】

 いずれにしても,ショートステイとはいえビザの問題とか,いろいろ出てくると思いますので,それらも含めてよろしくお願いしたいということでございます。

【涌井委員】

 平成23年度予算でこのようなコンセプトで予算が認められて大変よかったと思います。この考え方は非常に良いのですけれども,これはあくまでも抽象的なコンセプトです。これを具体的にどうするかということがポイントだと思います。ただ,これは各大学からそれぞれ知恵を出してもらって,色々なプログラムを考えると同時に,他方,行政としてはこういう枠組をつくったわけですから,案をつくり実行する大学と文部科学省がよくそれをフィードバックしながら進めていただきたいなと思います。

 各大学が同時に,あるいは共有化する必要もあります。文部科学省が中心的になって,各大学でばらばらでやるよりも共有化したほうがはるかにいいに決まっているわけであり,それも大きな目玉にしているわけですから,文部科学省でその部分は主導権を握って行っていただきたい。これから具体的なものがどういうものが出てくるかということは楽しみにしておりますけれども,それをまた定期的に報告していただけたらと思います。

【河田座長】

 私は6年間,大学の学長をしていたのですが,文部科学省の予算をGP(グッド・プラクティス)という名称で,どのようなユニークな取組や教育を行うのかとか,COEでどういう特徴的な研究をするのかということばかりを考えていました。ですから,それぞれの大学で,そのような取組を立案する能力,競争的資金を獲得する努力と能力が少しずつ上がってきたと感じておりますので,文部科学省の方できちんと説明会を開いて説明していただけたら各大学は戦略と戦術を立ててやると思います。多くの大学が海外に学生を派遣しておりますし,協定校とか姉妹校がありますので,それはあまり心配ないかと思いますが,この事業がずっと続くかどうかが問題であり,単年度,単発の事業で終わってしまうと具合が悪いと思っております。

【新浪委員】

 この予算を見ると,今の学生は恵まれていると思います。私は大学の頃スタンフォードに行くためにTOEFLを受けて,自分で勉強して自分で行こうと1年弱取り組んで行ってきたのですけれども,当時は大変な競争の中で行ってきたと思います。このような手取り足取り的な取組が本当に良いのだろうかということが,現状のグローバルの競争の中において,まさにこのグローバル人材育成推進会議の中で,主体性がない人たちに主体性を持たせるということは,本来であれば非常に矛盾するような感じがします。前に踏み出すことがないから自分で行こうとしないわけで,こういうものを用意するということが本当にグローバルに強い人材を生み出せるのかどうか大変悩ましいと思い,これは一体どうして起こったかと悩んでいたわけです。

 そこで,私はもともと三菱商事というところにいたのですが,いわゆる経団連並びに同友会の大手企業が出口,つまり就職の際に採用内容の中にこういう外国での経験であるとか,そういったものが採用基準になれば,学生もこれだけ就職が厳しい中で何を企業として求めているのかがわかると思います。企業というのはもうボーダーレスになってきており,そうなってくると,優秀な人材を採るという意味では,日本から採る必要はなくなってきています。つまり,企業はもうお金がグローバルですから,それに基づいて資本主義の中でやっていかざるを得ないわけです。

 そうすると,シンガポールを中心にアジアの企業と戦う上で,日本人をあえて採って,長きにわたって育てるということはなかなか難しくなってくる中で,やはり厳しいと思います。例えば今TOEFLは,私の時代ですと大体600点いかないと英語を勉強したとは言えませんでした。それプラスほかでどういう経験をしたのかが重要です。私は3カ月でも大変重要な経験だと思いますし,それは欧米に限りません。それをリクワイアメントにすることで,例えば私のいた会社でリクワイアメントすると学生はそちらの方向に行くのではないかと思います。つまり,いわゆる就職のところの経済界の協力といいますか,そういうものが大変重要ではないかと思うわけです。

 それと,もう1つあるのは,海外,つまりアメリカに留学が少なくなったことがおかしいという話がありますが,私がハーバード大学にいた時,フランス,ドイツへの留学は非常に少なかったです。日本は経済成長している時は,学ぶものがあったから結構アメリカに行きました。でも,今,中国やインドが行くことは当然で,経済成長の最中の時に日本人も随分行っていたので,その辺はアップルツーアップルに見ていかなければいけないと思うわけです。

 やはりどちらかといいますと,日本の大学のレベルを国際化するということは大変良いことで,この国際化ということが非常にこの意見の取りまとめ(骨子案)(資料2)でよく表されていると思うことは,主体性や多様性をどう享受し,それを理解するということ,また多様性を理解するということは自分が違わなくてはならない。こういった意味で,特に大学の授業の中でリベラルアーツが非常に弱くなってしまって,日本人というと何ができるのかというか,やはり日本人のアイデンティティだとか,そういったものが非常に失われてしまった中で,何かあまり変わらないことがそもそも考えなくてはいけないことであります。また,それとともにコミュニケーション能力という,これはグローバルの中で行っていく上で英語,もしくは中国語なのかもしれませんが,そういうものは大変重要であります。

 それともう1つ申し上げたいのは,大学ランキングで東京大学22位とありましたが,本当に東京大学は22位かといいますと,世界的にこれだけノーベル賞をとっていて,京都大学もそうですけれども,もっとミクロに見ていかなければ間違える議論をしてしまうのではないかなと思います。外国人を増やせば点数が上がるから,それで良い大学なのか。そういった意味で,寄って立つところの議論をしっかりとミクロに見ていかないと,間違った人材を養成するのではないかと思います。

 今既に行っていることが実は良いことなのかもしれないのですけれども,変なクライテリアによって曲げられてしまうのではないかと思います。私は東京大学には,非常に優秀な人が多く,まだまだノーベル賞を出せるのではないかと思いますし,逆にここで変えることによってノーベル賞が出なくなってしまうのではと思います。それと,リベラルアーツの部分とエンジニアという部分もあって,サイエンスや原子力も大変良いものを持っており,そういった意味で,何か議論が荒くなってしまうと,今せっかく良いところへ進んでいるところを妨げてしまうことは大変問題があるのではないかという感じがします。

 いずれにしろ非常に恵まれた時代に,場を与えられないとやらないという状況に問題があるのではないかという根っこは長期に解決しなくてはいけないと思います。短期には,こういった取組を行うことで,その成果をきちんと見ていくという意味では,就職する時きにきちんとそういったものをクライテリアの中に入れて企業も見ていくということが大変重要ではないかと思いました。

【白石委員】

 資料1の6ページについて伺いたいのですけれども,少し議論が,学部の学生(アンダーグラデュエート)の話と大学院生の話とがミックスアップしているようなので,ターゲットがどちらなのか説明しておいていただいた方ほうが良いのではないかかと思います。例えばキャンパス・アジアというのは,これはアンダーグラデュエートですね。

【氷見谷国際企画室長】

 これはアンダーグラデュエートも対象になりますし,日中韓それぞれの主張も通ずるところもあって,大学院レベルでのプログラムも,交流のためのパイロットプログラムという側面が必要でございますので,それぞれのレベルでプログラムを採択していきたいと考えております。

【白石委員】

 それであればますます,アンダーグラデュエートとグラデュエートで随分ターゲットが違ってくるわけですね。例えばここで言うショートビジットの日本人学生の海外留学の推進というのは,これは基本的にアンダーグラデュエートだろうと私は想定しますけれども,そういうものと,もっと長期に,例えば特にサイエンスだとかエンジニアリングの人が外国に留学してPhDであるとかポスドクとかというのは,これは随分違う話なので,そこのところの政策の基本的な狙いというものをはっきりさせていただいたほうが,議論がもう少し整理されるのではないかという気がいたしました。

【氷見谷国際企画室長】

 双方向のショートステイ・ショートビジットにつきましては,今,白石委員からご指摘いただきましたように,基本的にはこのような形でアンダーグラデュエートの中から海外に行きます。できれば大学院レベルでダブル・ディグリーという長い期間で行っていただくということを,私どもとしては想定のほうをさせていただいているというところです。

 ただ,この事業の中では,既に大学院レベルだけれども,まだ海外に行っていない方というのは現実にいらっしゃるところがございますので,そういった方をどこまで見るかというのは,議論として今後あろうかと思っております。

 また,大学院以上の方につきましては,そのほかの,例えば学術振興会等のプログラムというのもございますので,そういったものも政策的に組み合わせていきながら対応していくということになろうかと思っております。

【土居委員】

 今,学部の学生の短期留学の話がありましたけれども,私の専門は財政ですけれども,私の学生は幸いなことに毎年,毎期,1人以上は留学をしています。1年卒業を遅らせて行くという学生もいますし,外国で履修してきた単位を認定してもらう形でそのまま所定の年数で卒業するという学生もいます。

 そのときに見て思ったのは,我が国の新卒者の企業の採用が非常に景況に影響を受けやすいと思います。これは文部科学省だけでは済まない問題だと思いますけれども,そういう性質が色濃いものですから,学部2年目に留学して日本でもまた2年間通学して,海外で1年過ごしている分1年延長して,計5年間学びたいという学生がいますが,今年就職しておかないと来年はどうも採用が減らされそうであるとか,ないしは今年はとりあえず見送って来年ひょっとしたら景気が良くなっているかもしれないとか,そういう点が影響する側面も私はかなりあると理解しています。

 そういう意味で言うと,確かに留学を促進するということは重要ですけれども,願わくは,企業の採用の側もあまり景況によって新卒者を増やしたり減らしたりするということがないようにお願いしたいというところは正直あります。

 そうすると,卒業のタイミングを遅らせようが,遅らせまいが,さほど学生の就職には影響はないということだとすると,留学する時間に費やせると思います。

 おそらく,こういう景況に左右されやすい時期というのも,日本の経済の長い歴史から見ると,後から振り返ると,この10年や15年だけだったということになるのかもしれませんけれども,ただ,昨今の5年,10年はかなり卒業年によって大きく採用の状況が左右されてしまっていたということがありましたので,少し私のほうから申し上げさせていただきました。

【河田座長】

 予算についてはこのような方向で決まったということ,そして,これをいかにうまく産業界とも連携あるいは協力しながら行っていくことを戦略的に実施することを各大学に考えていただくということを各大学に伝えて理解してもらうことが大事かと思います。特に海外から来られる学生諸君については,やはり日本の企業に非常に興味を持ち,かつ魅力を感じ来られる学生がたくさんいるわけですから,日本の各大学もいかに日本の企業との結びつき,協力の事業を行い産学連携を強くするということに力を入れながらプログラムをつくるかということを是非とも考えていただきたいと思います。

 

(2)事務局から,産学連携によるグローバル人材育成推進に関する当面の考え方について,資料2に基づき説明があり,以下の意見交換が行われた。

【河田座長】

 前回の会議(平成22年12月8日開催)の際に,グローバル30の選定大学13大学のうちの3大学が来られて,いろいろな問題点を述べられました。それから,それぞれの委員の方々から出た意見については大体資料2に書いてございます。それらを,1.大学としてすべきこと,さらに,2.企業にしていただきたいこと,そして,3.国としてはどうするのかということの3点にまとめていただきましたので,この骨子案をもとにしながら委員のご意見をいただきたいと思います。

【白石委員】

1つ,なかなか難しいということはわかった上で質問しますけれども,このグローバル人材の育成ということが仮に成功したと言えるためには,客観的に見て,どういう結果が出たら成功したと考えるのか,そこのところをどういうふうに考えておられるのでしょうか。つまり,後に評価する時に,定性的な評価ではいけないわけで,やはり定量的な評価ができるようなものにしておかないと,どのくらい目的が達成されたのかということが判断できないので,そこのところをどう考えているのか説明していただけますか。

【茂里高等教育局視学官】

 なかなか難しい点ですが,今あるデータとしまして,参考資料1,2をご用意させていただきましたけれども,日本人留学生の数の推移や外国人留学生の数の推移があります。ただし,その推移をデータとしてお示しした上で,基本的に数が伸びていく形で右肩上がりになっていけば良いのかという議論もあります。

 先ほど新浪委員からご発言がありました難しい問題としまして,現実の問題を明らかにしないで進めない大きな問題がありますので,評価の方法については宿題とさせていただきたいと思います。事業を展開する上で,やはり目的があり,目標を明確化するということも書いてございますので,そのノルマをどう達成したかということは個々に整理していかなくてはいけないと思います。

 ただ,マクロの問題として,全体的に本当にグローバル人材が増え,グローバルになったのかということは,正直言って,今議論している最中でございまして,先生方のご意見もいただきながら,その整理をさせていただければと思います。

【白石委員】

 一言申し上げておきますと,留学生の数が増えたからってグローバル人材が増えたということにはなりません。ですから,そこをかなりきちんとデザインしておかないと,後になって,訳がわからないということになりますので,是非そこをよく考えていただければと思います。

【谷内委員】

 6ページに書いてある産学官の連携は非常に大事だということはそのとおりだと思いますが,このプラットフォームというのはどのように考えているのか教えて下さい。このことはとても大事であると思っていまして,グローバル人材がどれだけ育ってきているかということは,基本的には企業の中でどれだけグローバルに活躍している人間の数が増えてきているかということである思います。やはり就職を考えると,ほとんどの学生は企業に就職されるわけで,公務員になる学生ももちろんいますけれども,大部分はやはり企業であると思います。

 だから,企業がどれだけグローバル化に役立つと思う人材を採用していくのかということにつきまして,予算面で色々と手当てすることも良いですけれども,その場合に企業の側の感触を踏まえながら組んでいく必要があると思います。

 最近は新聞でもよく出ていますけれども,就職活動を3年の秋から実態として行っているということは,学生との関係では,やはり専門の教育に身を入れるということを非常に阻害していると思いますし,それから海外で留学するということを非常に躊躇させていると思います。

 そのことは企業サイドから見てもあまり良い話ではないので,そこは企業側でどう対応するのかということは,ある程度統一してもらう必要があるのではないかと思います。それはまさに産官学のプラットフォームで企業サイドがどういうことを態度として示されるかによって随分変わってくるのではないかと思います。是非そういう視点からも考えていただきたいと思います。

 それから,公務員になろうという学生も結構いるのですが,公務員というのは何を基準に採用しているのかということです。今までみたいに,成績重視で選ぶということではどうもなくなってきているようで,そのこと自体は人物考査を重視しているということで良いことであると思うのですけれども,グローバル人材を公務員サイドも求めているのかどうかということです。こういうことも大いにこのプラットフォームで議論していただく必要があるのではないかと思います。

 もう1つ,新浪委員がおっしゃった議論に関して,自分で行うという気概を持って,色々な苦労も克服して,道を開いていかれたということでしたが,あまりパターナリスティックに学生の面倒を見るというのはいいことかとどうかということは,とても大事な問題提起なので,この点についても予算との関係上もよく考える必要があるのではないかと思います。

 そういうガッツがあるけれども,例えば経済的に苦しい学生を何かの形で助ける方法について検討する必要があります。それからすべての条件が揃ったので,それなら海外でも行くかというようなタイプの学生をあえて育てる必要はあるのかという問題もあります。これまた難しい問題だと思いますけれども,その点について私は非常に重要な問題提起だと思い,同感します。

【白石委員】

 その問題について,基本的に私も同感ですけれども,同時に,私はアメリカに15年ほど住んでおりましたので,その時に痛感したことは,やはり豊かな国の学生を考える時には,自分の国のお金で来たらどうですかという感覚は,例えばアメリカの大学には相当強くあります。それは優秀な人で,お金を出してでも来て欲しいという人に対してはお金を出しますけど,そうでない人の場合には,自分の国のお金で来なさいという感じはありますので,ある規模のファンドというのはやはり必要だろうと思いますので,申し上げておきます。

【新浪委員】

 産業界なり,採用する側がそういうリクワイアメントを必要とするということであれば,学生も機を見て敏であることが最も学生に必要であるかと思います。そうなると,特に出口(就職)のところをしっかりすることによって,行かなければいけないというプレッシャーを与えていくということは,社会の仕組みとして必要なのかなと思います。その時に行きたいけれどもお金がない学生に対してどのような支援ができるか考える必要があると思います。

 非常に日本というのはデジタルな国で,みんなが海外進出するとなると,突然のように海外に行き始めて,TPPみたいな騒ぎになってくるわけですけれども,そういう意味で,私は自分の会社で今3分の1の新入社員をアジア人から採っているのですが,これは実は日本人のために採用していて,多様化する荒波の中で,日本人としても少し頑張ろうという意味で実は行っています。日本人は捨てたものでないということはわかっていますけれども,実は産業界の方が,特に輸出企業を中心に海外へ進出してしまうのではないかと思います。私が言いたいことは,産と国ということを考えた際に,本当にイコールなのかと思ってしまいます。

 そのくらいの時代になっているという時代感覚がないと,ニアリーイコールかもしれませんが,日本は人材しかないのだからという考えは良いのですが,海外から採れることと比較した時に,国内の覇気のない内向きである人材というよりも,もちろん,そういう人たちばかりではないのですが,覇気のある,まさに自分で行こうとした人たちは採りたいが,そうでない人は要らないから,海外から採ってしまえば良いのではないかというような,いわゆる国益というものと企業というものがすごく離れてきた中で,産と学が本当に一緒になれるのかどうかというところまで考えていかないと,とても難しい時代になってきていると思います。企業は一緒に行えば良いよという,そのMITI主導型の産業政策があった時代と大きく離れてしまっていて,特に米国系企業というと,例えばある企業は,もともとアメリカの企業であったが,本社は全然違うところにあるという多国籍の企業になっていくように,日本の企業も海外に出ていこうということはそういうところを最終的に目指すようなことになってしまうのではないかと思います。

 だから,先ほど産業界がそういうエグジットのところをきちんと行えば良いという話を申し上げましたけれども,産業界と国の意思が本当にイコールなのか,イコールではなくなっているのではないかということを前提に考える必要があります。

 そういう中で,一方でこういう仕組みをつくりながら,いわゆる危機感というものをもっと学生に与えていかなければいけません。そういった意味で外国人を大学に受け入れていくことは大変良いことで,ただ,ミクロ的に見ると,外国人は外国人同士で生活したり,日本人は日本人同士で生活したりする。大学が外国人を受け入れて,国がそれに対して予算をつけて,その中身を詳細にわたってスコア化することは非常に難しいと思います。しかし,仕組みとして,単に予算を配分するのではなく,例えば外国人と日本人の寮を一緒にさせるというような,具体的な仕組みを,大学サイドがアピールした上で予算を配分する方が良いので,こちらから枠をつくるのではなくて,どうやって企業と交わるかということが大切で,そこがないと,実際には私が大学生を採用するに当たっては,結構離れてしまっている感じがします。一緒に取り組む仕組みということがすごく重要で,かつNPOやNGOのような大変元気のある人たちもいますので,そういったものを活用するということは,大学サイドがプランを練って,ボトムアップ的に仕上げていくことが大変重要ではないかと思いました。

【河田座長】

 今,中教審では拠点化ということで,例えば練習船,農業,農園,臨海実験場を共同で使用するという方法などがありますが,その中でやはり留学生宿舎を共同で使い,そこには外国人も日本人も住めるようにすることも行っています。遅々ではありますけれども,そういうところは割りと進んできてはいると思いますが,まだまだ要求等にはなかなか応じられない事態になっています。

【涌井委員】

 私の会社で人事の採用している者の話を聞きますと,留学生や留学した学生も多々おりますけれども,留学した学生を採ったからといって必ずしも優秀というわけではありません。やはり個々に見た上で,優秀な者は,採用後に例えばほとんど外国人であるジュネーブの海外事務所に派遣します。そこで要するに,外国に留学していなくても国内で優秀な者は,海外へ行っても現にあっという間に伸びていきます。国際的にも,ジュネーブの役員は16人のうち14人は外国人ですから,そこでも対応できます。だから,留学したかどうかということが問題ではないということは正しいと思います。実績として見てもそうだったからです。

 そういう観点からすると,現状と課題の基本認識が全く私には理解できない気がします。例えば「世界情勢が大きく変化している中,日本は変化に対応できずに,斜陽国への転落の道をたどっている」という記事が新聞を見ていると多いようですが,本当にそうであり,皆そのように考えているのでしょうか。

 日本の企業はそれぞれ外国へ出て頑張っています。外国の方が来ると,日本というのは「いいですね,豊かですね」と言われる中で,先進国は間違いなくエマージング・カントリーに比べたら成長率も低いが,それは経済の数字から見ればそうだけれども,文化などその他の要素も含めた時ときに,本当に斜陽の一途をたどっているのかなと思います。

 次に,「日本が生き残る唯一の手段は,グローバル化した日本人になることである」と思います。今回のこの会議も一体何を焦点にしているのでしょうか。日本人がグローバル化,要するに外国へ留学しましょうということ,単にそんなことではないと思います。それから,先ほど話があったのですけれども,やはり日本の高等教育がいろんな意味で問題があるということは多分多くの人が認識を持っていると思います。基本的な認識がまずこの考え方であると,答えはあちこちに行ってしまうと思います。具体策についても同様です。

【岸本委員】

 実際現場で採用している立場から言いますと,学生はやはり企業の動きにすごく敏感なことは確かです。

 弊社の例ですと,今から2年くらい前に会社の中での昇格の要件としてTOEICの点数を入れたのですけれども,その後すぐに学生の方に対して,英語が必要ですということを,別に何点必要であるとは言っていないのですけれども,ずっと言い続けています。そうしますと,技術系も事務系も実際,別に何も正式報道はかけていないのですけれども,どんどんTOEICの点数が上がってきまして,例えば事務系ですと,ほぼ半数が900点以上ぐらいです。合格する人は,別にTOEICは見ていないのですけれども,それくらい上がってきている状況です。ですので,何らかの形でやはり留学生とか留学した経験というものを企業が評価するということを打ち出していくということは大変重要でないかと思います。

 ただ,その一方で,採用というのは人気商売でして,できる限り裾野を広げていきたいという気持ちもございます。それをマスト条件にするかどうかということは,企業によりますし,考慮するということはあるのでしょうけれども,企業の側からそういった経験を評価しますということを打ち出すことは効果があるというふうに推測します。

【市村委員】

 日本貿易会の方からお話させていただきます。今,ソニーさんの採用の件について話がありましたけれども,商社のレベルで,先日,人事委員会でTOEICの話をしましたら,平均点で大体800点から850点くらいというのが業界の平均だそうです。もちろん留学した,あるいは帰国子女等で950点とかはおりますけれども,ただ平均ということではそういうことです。

 ただ,言葉というのは1つのコミュニケーションの手段であって,これがイコール,グローバル人材とはつながりませんので,現在,各商社とも入社時に英語ができるという前提で実務研修,あるいは語学研修(第二外国語)を行っています。最近,中国がブームですので,中国語研修が増えていますが,いわゆる三カ国語を話せるというのが常識になりつつあります。

 したがって,言葉ができて,かつ駐在で行った先の国の文化や習慣,あるいは人脈といったものがすべて備わって初めて商売ができます。そうしたことによりグローバル化されたという認識に立つのではないかと思っております。したがって,大学の卒業レベルで言葉が多少できるからといって,グローバル人材が完成したという見方を我々はしていません。あくまでも,その予備軍として一応の素地を揃えたかなというような状況であると我々は認識しています。

 そういう中で,この産学連携でグローバル人材の育成推進のために,我々業界として何ができるかという点をちょっとまとめますと,3つであると思っています。

 1つは留学生のいわゆる金銭的な支援,これを行っていかなくてはいけないだろうと思います。既に発展途上国から日本への留学生支援,これは社会貢献活動の中で,かなりの留学生を各商社が独自の予算で支援しております。これは例えば,私がいたインドネシアではその典型的な国なのですが,毎年,日本人会のメンバーで皆さんが各自お金を出し合って,数十名単位で我々の支援金で日本へ留学しているというのがあります。ただ,これからは日本からの留学生というものに対して,どう支援していくかということは考えていかなくてはいけないだろうと思います。これは今,テーブルに乗った状況ですので,これから相談させてもらいたいと思っています。

 それから,インターンシップの話がございます。私も昨年の4月までですが,インドネシアで支配人をしておりましたが,現にインターンシップの要請がありました。大学のゼミから留学生がいて,それがたまたま私の会社にいたものですから,そのつてで20人ほどインターンシップを受け入れてくれないかという話があって,20人は多いので協力会社を見つけてちょっと割り振りしましたけども,3週間くらい現場でどういう仕事をしているのかということを勉強されていったと思います。こういう活動というものに対して,学生が経験するということは,良いことではないかと私は思っております。

 したがって,これを今後増やしていくということであれば,民間企業,産業界は協力していくということをやはり真剣に考える必要があるのではないかと思っています。もちろん,企業によって受け入れられる企業とできない企業があると思いますが,これは色々と相談していく必要があるかと思います。

 それから,留学生を受け入れる,あるいはこちらから送り出すという体制を整備するという観点においては,先ほど新浪委員からも出ましたように,私どもは先ほど皆さんに資料をお渡ししましたけども,国際社会貢献センターというNPOがございます。これは商社のOBが中心でございますが,メーカーさん,銀行さん等のOBの方も加入して,会員は今2,100名を超えました。この方たちが色々な貢献活動を行っていまして,英語教育,外国人の日本語教育,国際交流支援,あるいは日本に初めて来た学生に対する日本文化などを色々と指導する受け入れ支援を行っております。ボランティアでございますので,フルに活用していただければかなりの貢献ができるのではないかと思っていますので,それも1度ご検討の対象にしていただければと思っております。

【河田座長】

 参考資料7に,そういう委員会があって,そこでは実際に9ページ,あるいは10ページあたりで,日本人の送り出しの支援についてこういうことができるだろうし,どういうことがグローバル的な学生であるのか,人材であるのかというご指摘もございます。

 あるいは,資料5の経団連のサンライズ・レポートにおいても,実際41ページあたりですけれども,採択された13大学とこういうことを行ったらどうかというご提案も出ております。それから,経済同友会から出ているのは,政治家も海外に送ってきちんとした人材を育成した方が良いということもございますし,経済界からもありがたいことに,本当に色々な意見が出ているわけですから,これを何とか大学の側が受け止めて,なかなかガッツがある学生を選ぶことは難しいでしょうけども,こういうことを経験することによって,ガッツのある学生をつくり出すことが大学にとって必要であろうというふうに思っております。

【土居委員】

 今,委員の皆様からのご意見を伺わせていただいて,今まで私が思ってきたことをさらに意を強くした次第です。やや乱暴な言い方かもしれませんが,あえて結論から申し上げると,やはりこういう取組をする上で,一番ここを改革しないといけないということは,大学の人事とカリキュラムが非常に硬直的になっているということです。これが全然国際化してないということだと思います。そこを徹底的に改めないと根本的にこういうグローバル人材を生み出すというようなことが,とりあえずは何とか繕えるかもしれないけれども,長きに渡って効果的に人材を生み出すような大学に生まれ変わることはできないと思います。

 給与は年齢だけで決まっている,ないしは勤続年数と年齢だけで決まっているような状況が日本の大学の人事です。かつては私も学生の頃は,ある意味で日本の大学も牧歌的で良いところがあったとは思うのですが,残念ながら,人事は明らかに年齢が高齢化しています。教授の平均年齢上がっています。もちろん学部によりますけれども,30代の教員はかつての20年前,30年前に比べれば,明らかに人数が少ないです。

 本来は,そういう人たちが大学院を出て学位を取って,研究者としても活きの良い時にすぐに若い学生と,年齢の近い教育者,ないしは研究者とお互いに切磋琢磨して伸びていくという側面があって,それは欧米の国際化に成功している大学では当然のごとくあるわけです。当然ながらカリキュラムについてもそういう柔軟性があるということなのですが,残念ながら,日本の大学ではそれが全然できていません。もちろん,幸いにして優秀な先生がいらっしゃるので,まだノーベル賞級の研究が出せるのでまだ良いのでしょうけども,おそらく多くの大学はこのまま硬直的なやり方をしていては,産業界の方々のニーズにもだんだん応えられなくなってきて,それこそ先ほど新浪委員がおっしゃったように,別に日本人を採らなくても良いのではないかという話になってしまう可能性があります。

 大げさな言い方で言いますと,教師の背中を見て学生が育つということだとすれば,教師が全然国際化されてない組織の中で学ぶということだとすると,残念ながら,学生は教師を見て国際的な人材になろうとは思わないかもしれないということになってしまうという懸念は,私は非常に思っていて,そこをいきなりは壊せないけれども,この2,3年とか5年のタイムスパンで予算措置をなさるということであれば,せめてそういうことに資するような予算配分というものがあると良いのではないかと思います。

 もちろん,今までの取組にもそういうものは幾つもあるのですけれども,残念ながら先ほど申し上げたように,しばらくすると山を越えるのですけれども,今ちょうど2010年前後という刹那は,ちょうど大学の教員も高齢化のある種のピークに達しているところがありまして,先ほど申し上げたように30代の教員というのはなかなか多くないということがありますので,予算をたくさんいただいても最前線のところでどうしても疲弊してしまします。それは単純に人が少ないということによるところがまず1つあります。

 偉い先生はいっぱいいるのだけれども,当然ながらそれぞれの立場があるので,むしろ管理職といいますか,大学の中でこのマネージメントをされるポジションにいらっしゃる先生は多いのですけれども,残念ながら教育の現場で直接,学生と相対峙するところにたくさん人を張りつかせることはなかなか難しいという状態なので,少ない人数でその教育研究をしなくてはいけないというようなところがありますので,そういう意味ではできるだけ無理のない事業の実施が必要になります。カリキュラムないしは,その予算をいただくときに立てる計画として,取組を非常に美しく謳っているものはあるのだけれども,本当に教育の現場,ないしはその実施態勢としてそこまできちんと本当に実施できるだけのマンパワーがそこに用意されているのかどうかということまで見届ける必要があります。大学側は予算が欲しいので当然できますと言いますけれども,本当にそうかということは,むしろ文部科学省にきちんとチェックしていただく必要があって,それがきちんとこなせるというか,ないしはそういうところに若い人を雇うだけのお金を与えていただくとか,ないしはそういうある種のポストを臨時的かもしれない,ないしは恒久的でも良いのですけども,こういう国際化人材を育てるためのプログラムに合わせて,配置できるような仕組みを整えていただくとおそらく,今のボトルネックは短期的には解消できて,そこからスタートして次の展開というものがあるのではないかと思います。

 あと,大上段の話で誠に申しわけないのですが,個別の話になりますが,7ページのところで,大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業の改善ポイントということで,ここに掲げられているところは確かに私も同感なのですが,英語コースの話についてです。英語コースの話は,私が所属している学部でも先駆的に学部で英語コースを置き英語だけで教える科目を複数用意して,それを体系的にプログラムにして,単位認定しているという仕組みをとっています。学部の中でもやはりせめぎ合いがあります。それをもっと学部全体に広げるべきだという推進派もいれば,英語だけですべての話を講義にするということには無理があるという派もいます。

 場合によっては,経済学を英語で教えると,英語を理解するだけで四苦八苦して,経済学の理解が深まらないかもしれないという皮肉すら主張する方もいらっしゃるわけです。それとともに,例えば日本の財政制度とか,日本の金融制度とかを教える時に,英語で教えるということにどれぐらいの意味があるのかとういうようなことがあることからすると,おそらくトップダウン式に,もう英語コースを学科なり学部全体でやってくださいというようなことをやるよりは,風穴をあけて少しずつ広げていくというやり方のほうが,むしろ成功するのではないかと思います。

 もちろん国立大学と私立大学で環境が全然違いますで,国立大学だとそもそも少人数で行っているということだから,学部全体で行うということを最初から手がけるということは可能性としてあるかもしれませんが,特に学部の学生の人数が多い私立大学だと,学生として入学を許可したけれども,英語ができないだけで留年し,卒業できない学生が滞留してしまうということを積極的に推進するということもなかなか難しい内部事情があるとすると,積極的に受講させるということは,当然トライはするべきだとは思いますけれども,いきなりトップダウンでやるというよりは,むしろボトムアップというか,小さく産んで大きく育てるというような進め方のほうが成功するのではないかというような印象を持っています。

【河田座長】

 先生の属しておられるような高名な大学でもそういうことがあるということが少し吐露されたわけですけれども,人事やカリキュラムの閉鎖性というものは,是非次期の中教審で問題として,学長選挙のあり方,トップダウンができるようなやり方,あるいは学部長は選挙ではなくて選考委員会で決めるなど,色々と検討する必要があると思います。

【土居委員】

 今の季節なので1つ申し上げると,入試事務に忙殺される大学教員が多いので,これは改善するべきだと思います。極端に言えば,これは結構切実といえば切実で,大学院の学生にもしわ寄せがあります。

 つまり,特に2月,3月は大学の先生は入試業務に追われてしまい,学生の指導にかける時間が削られてしまいます。授業は全部終わっているにも関わらず,その時間が削られます。大学入試は必要なことですけれども,既に属している学生,大学院生は関係ないわけですね。教員もその業務から解放されれば,教育は引き続きできるという意味では2,3カ月ロスしてしまっているということは,何とかうまく改善できないかと思います。

【新浪委員】

 大学のガバナンスというものは大変大きな問題だと思いますので,議論をしなくてはいけないところだと思いますが,2つありまして,1つめとして寄附制度というものはとても重要ではないかと思います。

 今回,新しい公共を中心に寄附制度が若干変わっていくという中で,企業としていわゆる寄附講座的なものがもっとあれば良いと思います。例えば,市村委員がおっしゃった,このプログラムはすばらしいので,こういうものにもっと企業が寄附をして,税制の優遇があるようなことが起こってくるとすごく良いのではないかと思います。特に,元商社マンとしましては,やはりOBが語ったらすごくみんな興味を持って,学生もこんなことができるのではないかと夢が持てると思います。そういうことがもっと広げられたら,国際化につながっていくのではないか,実業の世界と学生の間をもっと結びつけるのではないかと思います。特に総合商社では大変価値のある講座ができのではないかなと思うわけです。

 2つめは取りまとめの中で,国際化戦略であるとか,国際化は言葉としては非常になじみが良いのですけれども,このレポートの中に幾つかあるように何をもって国際化なのかということがやはり根本的に当然問われると思います。留学することが良いことであるということでは全くなくて,多様性を理解するとか,受容力を持つとかそういうことであると思います。本当に語学に興味を示せば言葉というものは自然に若い頃であればできるようになると思います。だから,留学というとすぐ欧米と思いますけれども,中国でも良いし,色々なところで経験をしてきたことがすごく意味があると思います。だから,国際化は何かということは,いわばコミュニケーションができ,言葉はどのような言葉でも良いのだと思います。英語がいわゆる一番簡単といいますか,世界で一番わかりやすい言語ということで広がっていると思うのですが,やはり多様性の受容力,そして内向きという言葉が本当にそうなのかということがある程度言えるとすると,やはり外のもの,いわゆる違うものを受容して,自分とは違う,しかしそれも良いと思えるような人材が国際化するために一番重要なことだと思います。だから,留学ありきでなくても良いと思います。

 私の会社では,海外青年協力隊経験者をどしどし採るように言っていますが,このようなことでも良いと思います。つまり,あまり留学したことにいわゆるデフィニッションするのではなくて,多様化というものを何か経験をして,それを表現して面接などでアピールしてくださいということです。こういうことが例えばソニーさんでプラス点になるということになると,取り組んでみようということになるかもしれません。どんな経験であっても良いのだと思います。福祉も良いかもしれないですし,ボランティアも良いかもしれません。そういった違ったいわゆるエキストラカリキュラムとして,例えばハーバードビジネススクールに入る時には,それを徹底的に書かされて,面接で表現させられます。そういうことがすごく重要ではないかと思います。違うものとして,一つ以外の何かを受け入れて自分自身が経験してきたことが国際化につながることではないかと思います。言葉もすごく重要ですけれども,そこが今日本に一番足りないところではないかと思います。やはり時代によって国際化の意味は違うと思いますので,今何を求められているかということをきちんと定義する必要があるのではないかと思います。

【谷内委員】

 涌井委員から提起された問題との関係ですけれども,涌井委員さんが色々指摘された点は,確かに少し言い過ぎではないかという感じは持っています。ただポイントは,ここに書いてあるグローバル化した日本人ということなのですけれども,グローバル人材というのはどういうことを意味しているのかということは明らかにしておかないといけないと思うのです。グローバル化した日本人というのは,国籍は日本国籍を持っているけれども,基本的にはコスモポリタンみたいな人であって,ある意味ではどこでも通用するけれども,一種の根なし草みたいになっている人間が増えることが良いということではないと思うのです。やはり,ここでは,日本人として日本の歴史,伝統,文化など,そういったものはきちんと,自分の座標軸の中に持ちつつ,他方グローバル化する状況の中で対応し得る人間ということかと思います。そういう日本人でなければ,自分は英語ができる,世界のことについてはよく知っているということを言っても,おそらくあまり信頼されないだろうと思います。ペーパーの個々の表現については,斜陽国へ転落の道を辿っているというような表現は,あまりドラマチックにしないで,少し役人的に抑えた表現にした方が良いのではないかと思います。それから,このグローバル人材というのは,はっきり言えば立派な日本人であって,他方グローバル化に十分対応し得る能力を持った人間,多分そういう意味だろうと私は思います。そういったことを明らかにされた方ほうが良いのではないかと思います。

【茂里高等教育局視学官】

 ありがとうございます。その点につきましては,きちんと抑えたトーンで書かせていただこうと思います。それから,参考資料7で,若干概要でございますが,これは経済産業省と文部科学省で2010年の4月にまとめた資料がございまして,その6ページをお開きいただければと思います。ここでやはり同じような議論がありまして,「グローバル人材」とは,というものを整理いたしております。

 さらに次の7ページでは,今本当に,どのような要素をもった国際人が必要であるかという部分も含めまして,グローバル人材に共通して求められる能力について,8ページで産学官の共同による人材育成のポイントなどが書かれております。こういったものも参考にさせていただきながら,次回,委員の方々からご指摘いただきました点を踏まえまして,何をもって国際化というのか,何をもってグローバルというのか,どのような日本人を求めているのかという部分を整理させていただければと思っております。

 先ほどいただきました一番大きな問題で,何をもって評価するか,グローバル化したかという成果の部分につきましても,なかなか難しい問題でありますが,引き続き宿題とさせていただいて,検討してまいりたいと思います。

【河田座長】

 今の6ページの多様なバックグラウンドを持つ,あるいは文化的・歴史的なバックグラウンドを持つという話に関連しまして,私は,1980年にイエール大学に中国哲学専門で行きまして,そのときに通商産業省(当時)の方と友達になりまして,その方は図書館で万葉集とか,源氏物語とか,東京大学では習ったことのないものを勉強していると言われまして,なるほどと思いました。

 ちょうど,昨年の10月26日にエズラ・ヴォーゲルさんの80歳のお祝いの会がありまして行かれた方もいらっしゃるかと思います。その時にヴォーゲルさんが向こうで松下村塾のようなものを行っていて,日本から来る学生,大学院生,それからいわゆる役所の方々を集めて,そこで色々なことを語りながら,日本の活力を感じているけれども,それが今は少し落ち気味であるということもおっしゃっていました。

 本日も,様々なご意見が出ましたので,事務局でまとめ案をつくっていただいて,次回の会議では,そのまとめ案をもとにして議論を深めていきたいと思います。経済界から出していただいた様々な意見がレポートとして参考資料にありますので,それをもとにしながら抽象的でなくして,具体的にどういうことができるのかということを考えられればと思いますので,今日の意見をまとめに盛り込みたいということでございます。

 

(3)事務局から,今後の会議予定について,資料3に基づき説明があった。

【河田座長】

 それでは,お忙しい先生方にお集まりいただきまして,我々大学人にとっても参考になる意見が出たと思いますので,ありがたく思っております。是非,次回もよろしくお願い致します。

 本日はありがとうございました。

 

―― 了 ――

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