産学連携による実践型人材育成事業-長期インターンシップ・プログラム開発-(平成17年度採択分)の最終評価について

平成23年10月
産学連携高度人材育成推進委員会

 「産学連携による実践型人材育成事業-長期インターンシップ・プログラム開発-」は、これまでの職業意識の形成等を主な目的とした短期のインターンシップと峻別し、産学の人材育成・活用に関して建設的に協力しあう体制を構築し、社会の抱える諸問題や産業界の取組を理解し、知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材を育成する、新たなコンセプトの長期インターンシップの開発を目的として、平成17年度から開始された事業である。また、本事業は国際社会の多様な変化に対応できる高度人材の育成が大学単独では難しく、社会を教育の場として活用する新たな試みが必要になってきたことにも対応するものである。
 今回、平成21年度までに事業を終了した20件の教育プロジェクトについて、実績報告の内容に基づく書面審査及びヒアリング等による実施状況や成果の確認を行い、各プロジェクトに対する最終評価を実施した。

 最終評価では、所期の計画以上の取組が行われたプロジェクトが2件、ほぼ所期の計画通りの取組が行われたプロジェクトが16件、所期の計画以下の取組であるが、一部で当初計画と同等又はそれ以上の取組が行われたプロジェクトが1件、総じて所期の計画以下の取組であったプロジェクトが1件であった。

  特徴のある取組例としては、

  • 博士後期課程(博士課程)の大学院生に対象を絞った取組。(東京農工大学)
  • 地球環境問題の解決に率先して取り組む高度人材の養成を目指した取組。(京都大学)
  • 産業界が対応を迫られているCSR(企業の社会的責任)を対象とした取組。(立教大学)
  • ベンチャー育成を目指した取組。(横浜国立大学)
  • 産業界からのニーズが高い先端技術領域を取り上げ、世界に通用する専門技術者育成を目指した取組。(東京大学)
  • 地域産業の特徴を踏まえつつ、地方大学が地元の中小企業と連携した取組。(山形大学、信州大学、山梨大学、三重大学、鹿児島大学)

など、産学連携インターンシップの多様な試みがなされた。これらの実施事例は、今後、長期インターンシップ・プログラムを普及展開していく上で、各大学の参考となるものである。

 一方、本事業を通して見えてきた共通的な課題としては、

  • 長期インターンシップのテーマ設定や多様な派遣のパターン、および派遣の時期と、博士課程カリキュラムとの十分な調整が必要となること。
  • 国際的な場で活躍できる高度人材の育成には、産学双方がそれぞれの役割と責任について十分に話し合い、推進を図っていくことが必要であること、また、海外派遣の場合は、教育プログラムに関する双方の理解と相互信頼、充分な準備期間、及び安全管理システムが必須要件であること。
  • インターンシップ・プロジェクトに参加する大学院の専攻が、予算の制約もあって限定され、他専攻への浸透・拡大が思うほど図れず、結果として本プロジェクトの意義を理解し推進する教員は少数にとどまっていること。
  • 本事業の目的を十分理解し、その重要性を深く認識している協力企業がまだ限られており、いまだに優れた人材のスカウトを目的としているところもあるように見受けられたこと。
  • 大学によっては育成すべき人材像が明確でなく、カリキュラムの内容、構成、配列、各々の役割等が不明確なケースが見受けられたこと。
  • 実践型高度人材養成事業を通して、プロジェクト履修生と未履修生の違いが検証され、また、履修したメリットが認められた場合、履修直後だけでなく、それ以後もプラス面が継続しているのかという点についての検証が不足している大学が少なくないこと。

など、いくつかの実施上の課題が明らかになったが、全体として、産学が人材育成・活用に関して建設的に協力しあう体制を構築し、知識基盤社会を多様に支える高度で素養のある人材育成のための新たなコンセプトのインターンシップを開発するという、本事業の所期の目的は確実に達成することができた。それは従来の短期インターンシップでは見られなかった産学双方の真剣な取り組み、社会的責任感、当事者意識の向上、体験学生の進路開拓、各大学のプログラム継続につながる教育予算獲得状況等に見られる。
 産学連携にベースを置く本事業のような人材育成制度では、プロジェクトのリーダーシップを取れる熱心な担当者を得ることができた大学が、その制度を活かすことができたと思われる。また、米国や欧州の一部の国では、企業との共同研究に従事させることで大学院生の実践的研究能力を高めることが広く行われるようになってきたが、そのような試みも本制度の中で一部の大学で行われたことは、今後に向けた動きの一つとして注目する必要があろう。

 今後、各大学においては、産学連携による実践型高度人材育成事業の趣旨を理解され、評価結果を踏まえた効率的・効果的な事業推進や、事業を通じて開発したプログラムの普及・発展に向け取り組んでいくことを期待したい。

平成23年度 産学連携高度人材育成推進委員会 委員

有信 睦弘

国立大学法人東京大学監事

今成 真

元三菱化学株式会社常務執行役員

加藤 敏明

立命館大学共通教育推進機構教授

(委員長)
北澤 宏一

独立行政法人科学技術振興機構顧問

神野 清勝

豊橋技術科学大学副学長

松宮 徹

新日本製鐵株式会社フェロー

村田 朋美

北九州市立大学環境工学研究科名誉教授

山野井 昭雄

元味の素株式会社顧問

若見 昇

広島工業大学情報学部知的情報システム学科教授

計9名

 

総合評価結果

1 総合評価結果

総合評価

件数

S:所期の計画を超えた取組が行われた

 2件

A:所期の計画と同等の取組が行われた

 16件

B:所期の計画以下の取組であるが、一部で当初
計画と同等又はそれ以上の取り組みもみられる

 1件

C:総じて所期の計画以下の取組である

 1件

 20件

2 総合評価内訳

S:所期の計画を超えた取組が行われた

大学名

プロジェクト名

東京農工大学

先端研究開発指向の人材育成共同プログラム

京都大学

大学院地球環境学舎インターンシップ

A:所期の計画と同等の取組が行われた

大学名

プロジェクト名

北海道大学(室蘭工業大学、北見工業大学、筑波大学、奈良先端科学技術大学院大学、公立はこだて未来大学、慶應義塾大学)

実システム開発指向高度人材育成プログラム

東北大学

環境に優しい鉄鋼材料創出教育プログラム

山形大学

産学連携による研究開発人材育成プログラム

筑波大学

大学と企業とで育てる創薬化学高度人材

東京大学

革新的インターンシップモデルの構築と実践

東京工業大学

産学協同による実践的PBL教育プログラム

横浜国立大学

横浜発研究開発ベンチャーインターンシップ

金沢大学

分野混成チーム派遣によるモノづくり教育 -消費者の立場で商品開発に携わる高度人材養成-

山梨大学

「レゾナンス連携」協定に基づく人材育成

信州大学

「創業マインド」の継承による高度人材育成 -The Prefecture is our Campus:地域特性「創業マインド」指向の地元企業との連携による高度人材育成プロジェクト-

名古屋工業大学

「技術の市場化を実現する産学連携教育」-産学共通プラットフォームでの双方向インターンシップ-

三重大学

地球圏バイオ・メディカル創業人材の育成

鹿児島大学

食の安全マネージャー養成プログラム

兵庫県立大学

社会応用情報システム構築に資する人材育成

立教大学

CSRインターンシップ・プログラム

立命館大学

文理連携コーオプ教育(総合大学モデル)

B:所期の計画以下の取組であるが、一部で当初計画と同等又はそれ以上の取り組みもみられる

大学名

プロジェクト名

慶應義塾大学

共同研究型インターンシップ・プログラム

C:総じて所期の計画以下の取組である

大学名

プロジェクト名

名古屋大学(東京大学、信州大学、三重大学)

家畜バイオ分野の国際産学協同人材育成

各大学のプロジェクト別取組概要及び最終評価結果

東京農工大学

京都大学

北海道大学(室蘭工業大学、北見工業大学、筑波大学、奈良先端科学技術大学院大学、公立はこだて未来大学、慶應義塾大学)

東北大学

山形大学

筑波大学

東京大学

東京工業大学

横浜国立大学

金沢大学

山梨大学

信州大学

名古屋工業大学

三重大学

鹿児島大学

兵庫県立大学

立教大学

立命館大学

慶應義塾大学

名古屋大学(東京大学、信州大学、三重大学)

お問合せ先

高等教育局専門教育課

教育振興係

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