産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業(平成24年度採択)の最終評価について

「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業委員会」所見

 

平成27年8月

産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業委員会

 

1.事業の目的・背景について

「産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」は、大学・短期大学が地域ごとに協同して、地元の企業、経済団体等の地域の産業界と産学協働のための連携会議を設置して、人材育成に必要な教育改善・体制整備を行うことで、社会的・職業的に自立し、産業界のニーズに対応した人材の育成に向けた取組の充実を図ることを目的として、平成24年度から実施された事業である。

景気回復の予兆はあるものの、依然として厳しい経済状況の下、学生の中には、非常に険しいな就職活動の結果、大学で学んだことと一致しない職業を選び、早期に離職する例も多く見られる。産業界においても、学生のニーズとのミスマッチ等により、自らが望む人材を必ずしも十分に得られず、また、従来ほど人材育成に経費を割けない状況が続いている。このような状況下において、日本再生に向けた人材育成を進めるためには、大学において、産業界のニーズに対応し、学生の社会的・職業的自立を重視した教育カリキュラムの導入等を推進する必要がある。

また、産学連携体制の拡充や各大学における取組の他大学への更なる普及のためには、個々の大学の取組では限界があることから、複数の大学が連携し合い、地域の産業界と一体となって人材育成に取り組む必要がある。

このような背景を踏まえて開始された本事業は、

1 学生の社会的・職業的自立に向けた産学協働の取組を現在実施している大学・短期大学が地域においてグループを構成すること。

2 大学グループに参加する大学等及び産業界等との間で産学協働のための連携会議の設置に向けた基本的な理解が得られていること。

3 大学グループ内の大学間で共通して取り組むテーマを設定し、産業界等と協働して取組を実施する体制を構築すること。

の要件を満たすものとして、10件の取組を採択した。

採択後には、各地域において形成された大学グループと地域の産業界等との間に、産学協働のための「産学連携会議」が設置され、同会議を通じて産業界のニーズを踏まえつつ、大学等と産業界等が協働で取組テーマに基づく授業科目等を開発する等の取組が実施されたところである。

 

2.最終評価について

今回、平成24年度に採択した10件の取組について、平成26年度に補助期間が終了したことに伴い、実地調査等による実施状況や成果の確認及び成果報告書の内容に基づく書面審査を行い、各取組に対する最終評価を実施した。

最終評価では、「S:当初の計画を超えた取組が行われた」と評価されたものが2件、「A:当初の計画と同等の取組が行われた」と評価されたものが5件、「B:当初の計画以下の取組であるが、一部で当初計画と同等又はそれ以上の取組も見られる」と評価されたものが3件であった。なお、「C:総じて当初の計画以下の取組である」と評価されたものは1件もない。

総合評価結果と各大学グループ別の最終評価結果は下記4及び5のとおりである。

 

3.事業全体の評価と今後の課題

全ての地域において、複数の大学が協同し、地域の産業界と連携した「産学連携会議」が設置され、取組テーマ毎に、より細かい単位で大学グループを形成し会議の場を積み重ねる等、3年間を通じ、連携を強化するための努力が各地域で続けられてきたことは、「大学・短期大学が地域ごとに協同して、地元の企業、経済団体等と産学協働のための連携会議を設置して、人材育成に必要な教育改善・体制整備を行うことで、社会的・職業的に自立し、産業界のニーズに対応した人材の育成に向けた取組の充実を図る」という、本事業の目的に沿った取組として評価できる。

加えて、「産学連携会議」を通じて把握した産業界のニーズに対応するものとして、大学等と産業界等が協働し、各大学グループの取組テーマに基づく新たな授業科目が数多く開発され、受講する学生の数も年々増加していることや、体系的なカリキュラムや新たな教育システムの構築及び事例集の作成等、具体的な成果物が数多く見られたことも本事業の成果として評価できる。

一方で、幹事校等、実績のある大学の高い知見が十分にグループ内で共有されない等、実質的な連携体制が構築されず、具体的な成果物が見られない地域や大学が存在する等、地域間、大学間の差も見られた。この点は、地域連携による事業の大きな課題であり、連携する地域の範囲等、より実効性のある連携の在り方について、今後も十分な検討が必要である。

また、取組の具体的な目標設定がなされずに、実施効果に対する評価基準、評価方法及び評価体制の整備が不十分な大学グループが複数見られた点にも改善の余地がある。

各大学・各地域においては、補助期間終了後も、引き続き、産業界のニーズに対応した人材育成のための取組が実施されることを期待する。その際には、上記の課題を踏まえて取組を改善し、より充実させていくことを望みたい。

産業界のニーズに対応した人材育成に必要な教育改善・体制整備については、本事業により一部地域において、一定程度構築されたものと思われるが、これによって、すべての課題が解決されたものではない。大学においては、産業界のニーズを踏まえつつ、学生が社会の中で自分の役割を果たしながら、主体的に自らの個性及び適性に応じた生き方を選択し、これを実現していくことを促す教育(キャリア教育)が重要である。文部科学省においては、本事業によって実施された取組を活用しつつも、キャリア教育を総合的、体系的かつ効果的に推進することについての新たな事業を、具体的に検討されることを強く期待する。

総合評価結果

区分

グループ名

取組名称

最終評価

1

秋田県立大学グループ

産官学連携による地域・社会の未来を拓く人材の育成

B

2

青山学院大学グループ

首都圏に立地する大学における産業界のニーズに対応した教育改善

A

3

新潟大学グループ

産学協働による学生の社会的・職業的自立を促す教育開発

S

4

三重大学グループ

中部圏の地域・産業界との連携を通した教育改革力の強化

S

5

京都産業大学グループ

滋京奈地区を中心とした地域社会の発展を担う人材育成

A

6

大阪府立大学グループ

産官学地域協働による人材育成の環境整備と教育の改善・充実

A

7

島根大学グループ

産業界等との連携による中国・四国地域人材育成事業

A

8

福岡工業大学グループ

地域力を生む自律的職業人育成プロジェクト

A

9

電気通信大学グループ

関東山梨地域大学連携による産業界等のニーズに対応した教育改善

B

10

高知大学グループ

中国・四国産業界の人材ニーズに対応した協働型人材育成事業

B

※評価について、「S:当初の計画を超えた取組が行われた」、「A:当初の計画と同等の取組が行われた」、「B:当初の計画以下の取組であるが、一部で当初の計画と同等又はそれ以上の取組もみられる」、「C:総じて当初の計画以下の取組である」とする。

産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業【テーマA】教育改善・充実体制整備(平成24年度採択) 最終評価結果

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(高等教育局専門教育課教育振興係)

-- 登録:平成27年09月 --