平成25年度「看護系大学教員養成機能強化事業推進委員会」所見

 このたび、看護系大学教員養成機能強化事業推進委員会は、「平成25年度看護系大学教員養成機能強化事業」について、本年8月に申請のあった21件(国立大学9件、公立大学3件、私立大学9件)の中から、最も優れた1件の取組を選定した。1件の選定予定に対し、申請数は21件の多きにのぼり、将来の看護系大学の教育・研究の質向上に向け、各大学が日々取り組んでいる関心の高さがうかがえた。

 我が国の看護学教育は、資質の高い看護職の養成という社会のニーズに対応する形で、3年課程の養成所や短期大学における教育から、4年制学士課程教育への移行が進展している。看護系大学(学部等に看護師国家試験受験資格を取得させ得る課程を設置する大学)は、平成4年の「看護師等の人材確保の促進に関する法律」の施行等を契機とし、平成4年には11校であったものが、平成25年には210校と飛躍的に増加した。このような中、看護系大学には今後も、医療の高度化・複雑化、高齢化の進展、慢性疾患の増加等疾病構造の変化に伴う療養の多様化に対応できる、質の高い看護職の養成が求められる。このような背景を受け、看護系大学においては、教育の質保証の方策の一つとして教員の質的・量的充実が喫緊の課題であり、本事業は、看護系大学の大学院課程に、大学院修了者が獲得する教育能力を向上させるためのプログラム等を組み込むことにより、教員養成機能の強化を図ることによって、教育の質を保証し、我が国の看護学教育の発展に貢献しようとするものである。

 今回申請のあった取組について、全体の理念や構想の概要、本事業に関連するこれまでの取組実績、プログラム実施体制、評価体制、実施計画等について書面審査と合議審査を行った。

 申請された21件の内容は、ほぼすべての大学がこれまでの取組実績を基に、大学院学生の更なる教育力向上を図るものであった。その取組内容は、大学の教育理念、教育資源等により多様であったが、例を挙げると、修了者がグローバルな観点で国際的に研究教育活動ができるよう既存の課程を強化するもの、汎用性の高い評価指標を活用し教育内容を自己点検しながら改善するもの、TA活動について実践的教育方法を用いてより充実させ教育実践力の高い教員を輩出しようとするもの、授業展開に加え実習の場面を活用し実習指導力の向上を狙うものなど多岐にわたっていた。

  合議審査においては、書面審査にて評価の高い取組について集中的に審議を行った。どのような看護系大学教員像を目指すのか、そのためにどのような教育プログラム等を開発し、それを既存の大学院課程にどう組み込んでいくのか、といった観点から見れば、いずれの取組も甲乙つけ難い内容であった。慎重な審議を経て、最終的には、看護学教育の特徴である臨地での教育の質向上に資する内容であり、かつ、看護学教育の新たなモデルとなる組織的取組を選定した。
  選定された聖路加看護大学におかれては、大学に軸足をおく研究教育者と臨床に軸足をおく実践教育者の両者を申請プログラムによって確実に養成し、大学院修了者が各々の立場にて協働して教育に携わる体制を構築することを期待したい。さらに、得られた成果等について、他大学が参照できるよう、積極的に社会に情報発信することも強く期待されるところである。

  また、残念ながら今回事業として選定はされなかったが、すべての申請大学は、自ら「教育力」を定義し、看護学教育の特色でもある臨床との協働に重点をおいた取組を計画していたところも少なくなかった。各大学から申請された計画は、実行されれば、確実に看護系大学教員の質・量の拡充に資するものであることを申し添えておきたい。今後、それぞれの大学において検討された取組やその考え方を、自大学の教育プログラムの中に、可能な限り取り入れていくことが望まれる。
 今後とも、各大学・大学院においては、社会からの高いニーズに応えるべく、質の高い看護系人材育成の機能強化に努めていくことを期待したい。


平成25年9月5日
看護系大学教員養成機能強化事業推進委員会
委員長 川島 啓二

お問合せ先

高等教育局医学教育課

看護教育係  小川、南、林
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-- 登録:平成25年09月 --