国立大学法人・大学共同利用機関法人の平成23年度に係る業務の実績に関する評価の概要

1.全体評価の概要

1.戦略性が高く意欲的な目標・計画の設定状況

  各国立大学法人及び大学共同利用機関法人(以下、「法人」という。)の質的向上を促す観点から、第2期中期目標期間において、戦略性が高く意欲的な目標・計画を定めて積極的に取り組んでいる状況について、ヒアリングにおける法人からの説明を踏まえて取り上げた(28法人)。
  ※達成状況だけでなく、取組のプロセスや内容を評価するもの。

(1)国立大学法人の個性・特色の一層の発揮(9法人)

○ 弘前大学
 緊急被ばく医療を担う特色ある人材の養成を目指した取組
( 「弘前大学放射線安全機構」の統括の下、全学横断的に被ばく医療の基礎研究、教育、人材育成、医療体制の整備等を推進)

○東北大学
 東日本大震災による被災からの復興・地域再生を先導する研究の推進や復旧・復興支援の取組推進を目指した取組 
(「災害復興新生研究機構」を設置し、東日本大震災からの復興・地域再生への貢献、災害復興に関する総合研究開発拠点の形成等を推進) 

○群馬大学
  重粒子線研究に関する研究教育拠点の形成等を目指した取組
(重粒子線照射施設・装置を有する唯一の国立大学である特色を活かし、重粒子線臨床研究を推進するとともに、この分野をけん引する優れたグローバルリーダーの養成や先進医療を推進) 

○東京芸術大学
  実技を伴う芸術分野の博士課程における学位授与の在り方の明確化を目指した取組
(実技と論文との関係性の一定モデルとして「藝大プログラム」を提案するなど、芸術分野における実技系博士課程の学位に関する審査等の在り方を研究) 

○山梨大学
  科学技術分野の拡大・多様化や産業界等における人材ニーズを踏まえた教育研究組織の改革を進める取組
(地域のニーズを踏まえつつ、大学の特色をより明確化し、地場産業の振興を図るために、食料の持続的な生産と供給を担う実践的な専門職業人を養成する生命環境学部の設置等、教育研究組織の改革を実施)

○大阪大学
  機動的かつ弾力的な業務運営や教育研究組織の編成・見直し等に対し、スピード感をもって大学改革を実行することを目指した取組
(中長期的視野に立ち、大学全体が取り組むべき戦略的課題に柔軟かつ機動的に対応するため、全学的組織として総長を機構長とする「大阪大学未来戦略機構」を設置) 

○神戸大学
  海外の優れた大学・研究機関・研究者グループとの組織的な連携・協力の促進を目指した取組
(大学が重点的に取り組んでいる日本・EU研究のネットワーク構築のための常設・包括的な戦略拠点として「神戸大学EU総合学術センター」の設置、神戸大学ブリュッセルオフィス(ベルギー)を拠点としたEU圏の高等教育機関との連携)

○宮崎大学 
  地域社会問題の解決や人材の提供を通じた地域貢献を目指した取組
(口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザ等の感染症対策等地域の課題に取り組むため、アジア地域における産業動物防疫国際拠点の創成を推進)

○北陸先端科学技術大学院大学
  世界的に認知される水準の研究・教育拠点の確立や他大学にない特色・個性の伸長を目指した取組
(知識基盤社会や安心・安全・豊かな情報社会の構築技術と理論、エネルギー・環境・医療・情報デバイスとマテリアルの研究等に関して、「世界的に最高水準の研究・教育拠点(エクセレント・コア)」構想の実現)

(2)他法人を先導するような取組(6法人)

○北海道大学
  学部選択のミスマッチを解消することなどを目的とする入試制度改革や初年次教育体制の見直しを目指した取組
(あらかじめ学部を定めずに文系や理系の「総合入試枠」で受験し、本人の希望と1年次の成績によって学部に移行できるシステムの構築)

○千葉大学
  主体的な学びを通じて課題探求能力を備えた「考える学生」の育成を目指した取組
(アクティブ・ラーニング・スペース、ティーチング・ハブ、コンテンツ・ラボの3機能を備えたアカデミック・リンクの構築) 

○東京大学
  国際化に対応する教育システムの構築を目指した取組
(入学時期を秋季へと全面移行し、学生・教員の国際的流動性を高めること、入学前等のギャップタームを活用して質の高い多様な体験を学生に積ませることなどの検討)

○新潟大学
  学生の主体的な学習を支援するシステム等の整備・充実を目指した取組
(到達目標明示型の構造化された教育プログラムである「主専攻プログラム」の導入、学習成果を可視化し、学習過程のアセスメントを支援する「新潟大学学士力アセスメントシステム(NBAS)」の構築) 

○兵庫教育大学  
  中央教育審議会答申を踏まえた教員養成の修士レベル化への対応を目指した取組
(新しい教員養成のモデルカリキュラムの開発等の検討)

○九州大学
  学部教育から大学院教育に至る一貫した教育システムの再構築を目指した取組
(「基幹教育院」を設置し、学外公募等による専任教員約60名及び外国人教員約30名の配置や、「学び方を学ぶ」「考え方を学ぶ」ための姿勢と態度を育成する教育モデルづくり) 

(3)大学間の連携による教育研究機能の強化(9法人)

 ○帯広畜産大学
  国際的通用性を備えた獣医師養成のための獣医学教育の充実を図ることを目指した取組
(北海道大学との共同教育課程による国際水準の先進的な質の高い獣医学教育の実施)

○京都教育大学、大阪教育大学、奈良教育大学
  教養教育等大学教育の充実を図ることを目指した取組
(教育・学生支援等において3国立大学による連携協力した教育の質保証)

○京都工芸繊維大学
  共同カリキュラムの開設等、教育研究の充実を図ることを目指した取組
(京都府立医科大学及び京都府立大学との国公立3大学間の包括協定に基づく教養教育の共同化) 

○鳥取大学
  獣医学教育の充実・強化を図ることを目指した取組
(岐阜大学との間において国際水準の獣医学教育の実施体制の構築を目指した新学科の設置)

○山口大学、鹿児島大学
  獣医学教育の改善・充実を図ることを目指した取組
(共同獣医学部による欧米水準の獣医学教育の実施体制を構築)

○鹿屋体育大学
  体育・スポーツ領域の学術をリードしていくための教育研究の強化を目指した取組
(同分野について先導的役割を果たしている筑波大学と鹿屋体育大学とが連携・協力し、より一層の充実と質向上) 

 

(4)大学共同利用機関法人の戦略的・意欲的な取組(4法人) 

○人間文化研究機構
  海外の日本文化研究者コミュニティの拡大を目指した取組
(日本関連在外資料調査研究事業において、海外の研究機関と協定書や覚書を交わして国際共同研究を推進するとともに、国内外の研究者に対する研究資源の提供を実施) 

○自然科学研究機構
  優れた人材の流動化・活性化を目指した取組
(機構全体において年俸制の常勤職員を雇用できる制度を導入するとともに、国立天文台では研究教育職員に対する個人評価を開始) 

○高エネルギー加速器研究機構
  機構の基盤技術を活かした大学の研究基盤の整備に対する専門的な技術支援
(素粒子実験や加速器等の装置製作で培った基盤技術を活かし、東京大学宇宙線研究所の大型低温重力波望遠鏡計画で機器の基本設計や仕様策定などに寄与) 

○情報・システム研究機構
  新たな学問領域としての「システムズ・レジリエンス学」の創成に向けた取組
(機構長のイニシアティブにより、情報とシステムの立場から「防災から減災へ」の転換を実現するための「システムズ・レジリエンス学」の創成を推進) 

 

2.法人の基本的な目標への取組状況


 中期目標の進捗状況全体について評価を行った。 

 89法人(全90法人)は、中期目標の前文に掲げる「法人の基本的な目標」に沿って、計画的に取り組んでいることが認められたが、1法人は、中期目標「学長のリーダーシップによる戦略的経営・機動的運営を推進する」に照らし、十全に取り組んでいるとは認められない状況にあると判断した。   


(主な状況)
● 学長選考に際し、候補者の辞退が2度繰り返され、長期間、新学長の選出ができなかったことなど、法人の自律的運営に重大な問題がある。【東京工業大学】

2.項目別評価の概要


1.業務運営・財務内容等の状況

  「業務運営の改善・効率化」、「財務内容の改善」、「自己点検・評価及び情報提供」、「その他業務運営(施設設備の整備・活用、安全管理、法令遵守)」の4項目について、中期計画の達成に向けた業務の進捗状況等について評価を行った。

 (1)業務運営の改善・効率化

  1.組織運営の改善、2.事務等の効率化・合理化に関する各法人の中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を行った。

 1法人は「特筆すべき進捗状況ある」となり、また、88法人は「順調に進んでいる」又は「おおむね順調に進んでいる」となり、中期計画の達成に向けて順調に進捗しているが、1法人は「重大な改善事項がある」となり、中期計画の達成に向け改善が求められる。



【評定の結果】

 

平成23年度
[全90法人中]  

(平成22年度)
 ([全90法人中])

 「特筆すべき進捗状況にある」

1法人( 1パーセント)

( 2法人( 2パーセント))

 「順調に進んでいる」  

81法人(90パーセント)

(72法人(80パーセント))

 「 おおむね順調に進んでいる」

7法人( 8パーセント)

(16法人(18パーセント))

 「やや遅れている」

0法人( 0パーセント)

( 0法人( 0パーセント))

 「重大な改善事項がある」

1法人( 1パーセント)

( 0法人( 0パーセント))


 (主な状況) ※○は特筆・注目事項、●は指摘・課題事項を示す。以下、同じ。

○ 毎年、部局に配置される教員ポストの1%を原資とし、大学の将来構想に合致した部局ごとの改革計画を募り、優先度の高い改革計画に再配分する「大学改革活性化制度」を開始し、平成23年度は全学的視点から10件に再配分しているなど、教育研究組織改革に永続性をもって取り組むための仕組を構築している。【九州大学】

○ 男女共同参画推進のため、保育室の設置、研究支援者の配置、人材バンクの創設、女性教員採用におけるインセンティブ経費の措置等により、女性教職員比率が向上するなど、取組の成果が現れている。

  • ポジティブ・アクション及び全学調整分人件費ポイントの女性教員採用支援分の活用により、女性教員比 率が13.6%(対前年度比1.6ポイント増)となっているとともに、理事・副学長に女性教員1名を登用している ほか、学童保育の拡充及び病後児保育利用料補助事業の試行を行っている。【広島大学】  等

○ 教員人事に関して、各学府・研究科のそれぞれの分野の特質に応じて一定期間ごとに研究指導資格の再審査を実施することとし、全学的共通指標に基づく審査基準により、平成23年度は、農学府において再審査を実施している。 【東京農工大学】

○ 経営協議会の学外委員からの意見を積極的に取り入れ、法人運営の改善等に活用しているものの、その状況を公表していない法人(38法人)があり、今後、積極的な公表が期待される。

● 一定(90%)の学生収容定員の充足率を満たしていない法人は、平成22年度と比較すると、大学院博士課程では2法人減少し、大学院専門職学位課程では1法人増加している。
   うち、5法人では、平成24年度に一定の充足率を満たすなど、改善が見られている。

  • 大学院博士課程・・・H23年度:3法人(H22年度:5法人)
     ※うち、長期にわたり一定の充足率を満たしていないのは1法人
  • 大学院専門職学位課程・・・H23年度:10法人(H22年度:9法人)
     ※うち、長期にわたり一定の充足率を満たしていないのは4法人

● 年度計画に掲げる取組を十分に実施していない法人(2法人)が見られた。 【旭川医科大学、岩手大学】

● 学長選考に際し、候補者の辞退が2度繰り返され、長期間、新学長の選出ができなかったことなど、法人の自律的運営に重大な問題が見られた。 【東京工業大学】 

(2)財務内容の改善

 1.外部研究資金、寄附金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制に関する各法人の中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を行った。             

 1法人は「特筆すべき進捗状況ある」となり、また、89法人は「順調に進んでいる」となり、中期計画の達成に向けて順調に進捗している。



【評定の結果】    

 

 平成23年度
 [全90法人中]

(平成22年度)
 ([全90法人中])

 「特筆すべき進捗状況にある」

 1法人( 1パーセント)

( 2法人( 2パーセント))

 「順調に進んでいる」

89法人(99パーセント)

(83法人(92パーセント))

 「おおむね順調に進んでいる」

0法人( 0パーセント)

( 5法人( 6パーセント))

 「やや遅れている」

0法人( 0パーセント)

( 0法人( 0パーセント))

 「重大な改善事項がある」  

0法人( 0パーセント)

( 0法人( 0パーセント)) 


(主な状況)
○ 外部資金獲得に向けて意欲的に取組を行った結果、外部資金比率(経常収益に対する外部資金(受託研究収益、受託事業収益、寄附金収益)の比率)が法人化以降最高の20.1%になるなど、取組の効果が顕著に現れている。【電気通信大学】

○ 北大認定商品について、種類を増やすとともに広報活動を積極的に行ったことにより、年間総売上は6億3,600万円(対前年度比約1,000万円増)、商標許諾使用料は前年度からほぼ倍増の約1,200万円となっている。【北海道大学】

○ ウイルス対策ソフトについて、これまでのライセンス一括購入に代え、大学所有のPCに台数無制限でインストールできる新たな契約形態(アカデミックサブスクリプションプログラム)を導入し、従来から実施していた全学ソフトウェア提供サービスを併せて、7億4,000万円の費用対効果が得られている。【九州大学】 

 

(3)自己点検・評価及び情報提供

 1.評価の充実、2.情報公開や情報発信等の推進に関する各法人の中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を行った。 

  90法人すべてが「順調に進んでいる」となり、中期計画の達成に向けて順調に進捗している。



【評定の結果】   

 

平成23年度
 [全90法人中]

(平成22年度)
 ([全90法人中])

 「特筆すべき進捗状況にある」

0法人(  0パーセント)

( 0法人( 0パーセント))

 「順調に進んでいる」

90法人(100パーセント)

(89法人(99パーセント))

 「おおむね順調に進んでいる」

0法人(  0パーセント)

( 1法人( 1パーセント))

 「やや遅れている」

0法人(  0パーセント)

( 0法人( 0パーセント))

 「重大な改善事項がある」

0法人(  0パーセント)

( 0法人( 0パーセント))


 (主な状況)
○ 学校教育法施行規則第172条の2に基づく「教育研究活動等の情報の公表」について、すべての法人においてウェブサイトで公表している。
※ 当該情報がウェブサイト上分散して掲載され、分かりやすく1箇所に集約していない法人が見られたため、さらに活用されるよう、利用者の視点に立った工夫が期待される。

○ 長崎大学の戦略的広報活動の一環として、紹介番組「長崎游学~長崎で学ぶ意義~」を作成し、地上波放送で九州地域に、BS放送で全国に放送し、番組を大学紹介ムービーとしてウェブサイトに掲載するとともに、広報用にDVD化して広く活用したことにより、全国5紙に取り上げられた件数が1.2倍に増加している。【長崎大学】

○ 関門年齢に達する教員89名に対し、過去6年間の貢献度を評価する「関門評価」を実施した結果、「格段に優れている」と評価された教員6名に対しシニア教授称号等のインセンティブを付与し、「要努力」教員2名に対する改善指導を行っている。【岐阜大学】

○ 副学長や各学類が分担して、東北・北関東地域の約130校の高等学校を訪問し、福島県の現状・除染計画・検定料全員免除措置等をアピールするとともに、一般入試の願書受付前に、大学の諸活動を紹介するチラシを東北・北関東地域の高等学校に送付するなどの活動を行った結果、受験生の増加につながっている(志願者数3,543名(平成22年度2,909名))。【福島大学】

○ 全国規模で研究者や職員を学校、各種団体等へ講師として派遣する「KEK キャラバン」については、広報に努めた結果、前年度の24件、延べ約2,000人の実績を大幅に上回る69件、延べ約7,400人に対し実施している。また、講師は地元出身者や卒業生である方が科学をより身近に感じると思われることから、ウェブによる母校等の登録システムを作成し、運用を開始している。【高エネルギー加速器研究機構】 

 

(4)その他業務運営


  1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理、3.法令遵守に関する各法人の中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を行った。   

 78法人は「順調に進んでいる」又は「おおむね順調に進んでいる」となり、中期計画の達成に向けて順調に進捗しているが、12法人は「やや遅れている」となり、中期計画の達成に向け改善が期待される。              



【評定の結果】     

 

平成23年度
 [全90法人中]

(平成22年度)
([全90法人中]) 

 「特筆すべき進捗状況にある」

0法人( 0パーセント)

( 3法人( 3パーセント))

 「順調に進んでいる」

76法人(85パーセント)

(81法人(90パーセント))

 「おおむね順調に進んでいる」

2法人( 2パーセント)

( 6法人( 7パーセント))

 「 やや遅れている」

12法人(13パーセント)

( 0法人( 0パーセント))

 「重大な改善事項がある」

0法人( 0パーセント)

( 0法人( 0パーセント))


(主な状況)
○ 東日本大震災を契機等とした節電対策について、担当理事の下に電力危機対策チームを立ち上げて夏季のピーク電力削減目標を設定、建物・フロアーごとの電力使用量の節電目標値と使用状況をリアルタイムにウェブサイトに表示した電力使用量の「見える化」の実施等、多くの法人で取り組んでいる。

○ 機械、設備ごとに届出、点検、資格等、適用法令を確認し、適正に使用する制度として、SDS(セーフティ・データ・シート)活動を取り入れ、学内説明会による普及促進を図り、各研究室等において適用法令の確認やリスク低減措置を施すなど、自主的かつ継続的な安全衛生活用に取り組んだことにより、事故の発生が減少するなど、効果を上げている。【長岡技術科学大学】

○ 電子カルテを中核とした院内のソフトウェアやデータなどを集中管理するシステム「プライベート・クラウド」を全面導入した結果、ベッドサイドでのリアルタイムな記録が可能となったこと等により、看護師の超過勤務時間に占める記録にかかる時間が減少するなど、環境改善につながっている。【福井大学】

● 会計検査院決算検査報告において、職務上行う教育・研究に対する教員等個人宛の寄附金について、不適切な経理処理を指摘された法人(3法人)が見られた。

● 文部科学省における公的研究費の不適切な経理に関する調査結果等において、過年度を含め、研究費の不適切な経理処理を行っていた法人(12法人)が見られた(下記「研究費の不適切な経理事例に対する評価の取扱いについて」参照)。
  ※ 全ての法人において、引き続き、再発防止の取組が求められる。 

 

2.教育研究等の質の向上の状況

  引き続き、多くの法人において、社会的要請に応え、指導方法の改善・充実、教育活動の個性化・特色化、学生支援体制の整備等の教育改革、各法人の特色に応じた研究活動の活性化や産業界や地域社会等への貢献に取り組んでいる。 

(主な状況)
○ 国際資源学教育研究センターにおいて、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構と資源分野における連携・協力協定を締結し、タンザニア、マラウイ、モザンビークから11名の研修生を受け入れるほか、モンゴル科学技術大学等協定校から大学院生を受け入れ、資源学教育と現場実習を行うなど、国際資源学の教育研究活動を展開している。【秋田大学】

○ 筑波研究学園都市における科学技術の集積を活かし、ライフイノベーション・グリーンイノベーション分野で先導的プロジェクトを推進するため、茨城県、つくば市とともに「つくば国際戦略総合特区」の指定を受け、特区を支援するための中核的組織として設置した「つくばグローバル・イノベーション推進機構」のもと、新事業・新産業の創出や我が国の国際競争力の強化に向けた活動を行っている。【筑波大学】

○ 情報通信技術分野における創造的な実践教育の推進教育を目的とした、「高度ICT試作実験公開工房」を開設し、大学院生及び若手研究者等が自ら高度情報通信技術に基づいたシステムを創造・試作・実験し、成果を広く公開できる環境を提供している。【電気通信大学】

○ 学生が各学年・卒業段階で修得すべき到達目標や確認指標を示した「上越教育大学スタンダード」に準拠させて設定した教科のルーブリックに基づいたカリキュラムの改善を行っている。【上越教育大学】

○ 能登半島を中心に、「地域再生人材大学サミットin能登」「能登キャンパス共同調査研究事業」等、地域社会の課題解決及び活性化並びに地域再生に係る事業を推進している。【金沢大学】

○ 「産学官共同研究センター」を開設し、地域のものづくり技術と医療技術ニーズの融合による健康医療産業の事業を促進する「はままつ次世代光・健康医療産学創出拠点事業」の中核機関として周辺中小企業と共同研究を実施し、医療機器等の開発・事業化を中心に医工連携を推進している。【浜松医科大学】

○ 北京化工大学(中国)との間で海外事務所設置覚書を締結し、大学初の海外拠点となる北京事務所を同大学内に開設するとともに、同大学駐日事務所を大学内に設置している。【名古屋工業大学】

○ iPS細胞研究所(CiRA)については、文部科学省と厚生労働省が協働で実施する「再生医療の実現化ハイウェイプロジェクト」の実施や再生医療用iPS細胞バンク構築に向けた独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との薬事戦略相談における対面助言等を開始するなど取組を推進している。また、iPS細胞技術の基本技術特許については、新たに欧州で1件、米国で2件成立している。【京都大学】

○ 教養教育の充実を図るため、平成22年度に策定した「教養教育改革の骨子」に基づき、教育目標及び到達目標を明確にした科目区分の見直しや履修基準の見直しを行っているほか、建学の精神と理念を象徴する科目群として、多様な観点から平和について考察する「平和科目」を新設している。【広島大学】

○ D-プシコース(希少糖)の実用化について、企業との共同開発が進み、20社以上の県内食品企業がD-プシコースを含むシロップを用いたスウィーツ等の開発・販売を開始しており、今後の需要増加に対応すべく県内にD-プシコースの生産工場を建設することが決まっている。【香川大学】

○ 国が推進する国内医療機器産業の成長・強化政策を踏まえ、大分県及び宮崎県にまたがる東九州地域に立地する医療機器製造企業との産学官連携による「東九州地域医療産業拠点構想(東九州メディカルバレー構想)」を、地方自治体と一体になって推進している。【大分大学、宮崎大学】

○ 国立国語研究所では、世界初の本格的日本語コーパスとして「現代日本語書き言葉均衡コーパス」を、平成23年7月末に本格的に一般公開している。【人間文化研究機構】

○  音楽制作会社から、天皇陛下御即位20年を祝う奉祝曲「太陽の国」の収益の一部について寄附を受領したことを受け、新しい自然科学分野の創成に熱心に取り組み、成果をあげた優秀な若手研究者を表彰することを目的として「自然科学研究機構若手研究者賞」を創設している。【自然科学研究機構】

○ 大強度陽子加速器施設(J-PARC)では、ニュートリノを用いたT2K実験において、ミュー型ニュートリノが電子型ニュートリノに変化する兆候(ニュートリノ振動)を世界に先駆けて検出したことを発表し、Physics World誌の「2011年の物理学における10大成果」の一つに選ばれている。【東京大学、高エネルギー加速器研究機構】

 

研究費の不適切な経理事例に対する評価の取扱いについて

平成24年11月7日
                                                                国立大学法人評価委員会決定

1 平成23年度に係る業務の実績に関する評価において、研究費の不適切な経理が確認された法人については、以下の理由から「その他業務運営に関する重要目標」の項目別評価において、課題事項として指摘し、「中期目標の達成に向けてやや遅れている」とする、従来に比べても一段階厳しい評定を一律行うものとする。

   また、中期目標期間評価においては、その後の取組も踏まえつつ、総合的な評価を行うものとする。
 
(1) 従来から大学・研究機関において、研究費の不適切な経理が度々発覚し、不正使用防止のための取組を求めてきているところ、依然として問題が繰り返されているなど、抜本的な改善がみられないこと。

(2) 文部科学省が平成23年度において実施した調査の結果、相当数の法人において不適切な経理が確認されたこと。

(3) 総務省政策評価・独立行政法人評価委員会による「平成22年度における国立大学法人及び大学共同利用機関法人の業務の実績に関する評価の結果等についての意見」において、各法人における公的研究費の不正使用を防止するための取組について引き続き必要な改善を促すべきである旨、求められていること。

(4) 科学研究費補助事業の補助総額の6割以上を国立大学法人が占めており、この問題が公的競争的研究資金制度の在り方の根幹にも関わるものであること。また、国立大学法人の収入に占める公的競争的資金等の占める割合も年々高まっており、法人運営上大きな位置づけとなっていること。

(5) 不適切な経理が国立大学法人全体として続くことは、国立大学法人の運営や広く大学に対する社会的信頼を失いかねない極めて深刻な課題であることを重く受け止める必要があること。

2 研究費の不適切な経理に対する指摘は、これが判明した段階で行わざるを得ないことや、そのような不適切な事案が法人としてずっと把握されないままにあったことなどを踏まえ、不適切な経理が行われた時期や不正防止への取組如何にかかわらず、課題として指摘するものとする。

3 現時点では、研究費の不適切な経理の有無について明らかになっていない法人で、今後、不適切な経理が明らかになった場合には、同様に平成24年度以降の評価結果に反映するものとする。

4 なお、各法人においては、既に具体的な研究費不正使用防止対策に種々取り組んでおり、優れた取組については、1から3の取扱いとは別に、注目すべき事項に取り上げるなど、適切に評価を行う。
(例えば大阪大学にあっては、従来からの取組に加え、教職員全員からの誓約書の提出の義務化(採用時の誓約書にも明記)や氏名を公表することを基本とした厳しい処分を行う旨の関係規則改正、新幹線等の使用済切符や宿泊先の領収書の提出の義務化等の注目すべき取組が行われている。)

 

【参考】評価の方法、審議経過等について

1.評価制度
  国立大学法人法に基づき、法人の各事業年度における業務の実績について、「国立大学法人及び大学共同利用機関法人の第2期中期目標期間における各年度終了時の評価に係る実施要領(平成22年6月国立大学法人評価委員会決定)」に従い、国立大学法人評価委員会が評価を行う。

2.評価方法
  各法人から提出された実績報告書等を調査・分析するとともに、学長・機構長等からのヒアリング、財務諸表や役職員の給与水準等の分析も踏まえながら評価を行った。

 (1)全体評価

  • 当該事業年度における中期計画の進捗状況全体について、記述式により総合的な評価を行う。
  • なお、戦略性が高く意欲的な目標・計画を定めて、積極的に取り組んでいるものを特記する。

 (2)項目別評価

  • 「業務運営の改善及び効率化」、「財務内容の改善」、「自己点検・評価及び情報提供」、「その他業務運営(施設設備の整備・活用、安全管理、法令遵守)」の4項目については、以下の5種類により進捗状況 を示すとともに、特筆(注目)すべき点や遅れている点、課題となっている点等にコメントを付す。
    また、特筆(注目)すべき点については、取組の成果が認められるものを中心に記述する。
    なお、これらの評定は、基本的には、各法人が設定した中期計画に対応して示されるものであり、各法 人間を相対比較する趣旨ではないことに十分留意する必要がある。

       【評定】
          ・「中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある」
          ・「中期計画の達成に向けて順調に進んでいる」
          ・「中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる」
          ・「中期計画の達成のためにはやや遅れている」
          ・「中期計画の達成のためには重大な改善事項がある」

  •  「教育研究等の質の向上」については、全体的な状況を確認し、注目すべき点にコメントを付す。
  •  「東日本大震災への対応」については、主だった取組を記述する。

3.評価体制
    国立大学法人については、国立大学法人評価委員会(委員長:北山禎介、三井住友銀行取締役会長)の国立大学法人分科会の下に評価チームを設置して、調査・分析を行った。
    評価チームとしては、法人の規模や特性に応じて割り当てた大学を担当する基本チーム、共同利用・共同研究拠点の附置研究所・研究施設及び附属病院の専門チームを設置した。
    また、大学共同利用機関法人については、同委員会の大学共同利用機関法人分科会が調査・分析を行った。
 

4.審議経過

平成24年6月29日まで

各法人から実績報告書等の提出

7月1日~

国立大学法人分科会評価チーム
 大学共同利用機関法人分科会において実績報告書等の調査・分析

7月31日~9月12日

各法人から業務の実績についてヒアリング(国立大学法人)

8月23日~9月6日

各法人から業務の実績についてヒアリング (大学共同利用機関法人)

9月6日~19日

国立大学法人分科会基本チーム会議において評価結果案の検討

10月2日

国立大学法人分科会において評価結果案の審議
  (意見申立の機会:10月3日~16日)

10月4日

大学共同利用機関法人分科会において評価結果案の審議
 (意見申立の機会:10月9日~19日)

11月7日

国立大学法人評価委員会総会において評価結果の審議・決定

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学戦略室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学戦略室)

-- 登録:平成24年11月 --