大学共同利用機関法人人間文化研究機構の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 人間文化研究機構(以下「機構」という。)は、人間の文化活動並びに人間と社会及び自然との関係に関する研究分野における我が国の中核的拠点として、「国立歴史民俗博物館」、「国文学研究資料館」、「国立国語研究所」、「国際日本文化研究センター」、「総合地球環境学研究所」及び「国立民族学博物館」の6つの大学共同利用機関(以下「機関」という。)を設置する法人である。
 機構は、人間の文化活動並びに人間と社会及び自然との関係に関する高度な基盤的研究を各機関において実施し、共同利用を推進するとともに、機関の連携・協力を通して人間文化の総合的学術研究の世界的拠点となることを目指した研究活動を行っている。
 業務運営面については、機構本部では、新たに企画課を設置し、評価、広報及び研究支援活動の一層の推進に向けた体制を整備した。
 一方、年度計画には記載されていないが、中期目標期間(平成16~19事業年度)に係る業務実績に関する評価結果で評価委員会が指摘した研究教育職員の勤務評定について、検討にとどまっていることから、機構長のリーダーシップの下、早期実施に向けた取組を行うことが期待される。
 教育研究等の質の向上については、6機関による研究成果を有機的に連携し、高次化するための「連携研究」として、「日本とユーラシアの交流に関する総合的研究」についての研究推進が図られているとともに、その成果等を公開するための「連携展示」、各機関が有する研究資源を共有化し有効活用するための「研究資源共有化事業」等の取組の成果を上げている。
 今後、機構長のリーダーシップの下、機構が一体となった取組や業務運営のさらなる改善・効率化を一層進めることが強く期待される。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 国立国語研究所では、研究実施体制の強化を図るため、4研究系(理論・構造研究系、時空間変異研究系、言語資源研究系及び言語対照研究系)3センター(コーパス開発センター、研究情報資料センター及び日本語教育研究・情報センター)を設置し、研究体制の整備を行った。また、研究支援の体制強化を図るため、管理部に研究推進課を新たに設置した。

○ 総合地球環境学研究所では、全研究プロジェクトの進捗状況や研究計画について、外部の研究者6名を地球研プロジェクトアドバイザーとして招致し、意見・助言を研究プロジェクト発表会や研究プロジェクトの推進に反映させた。

○ 国際日本文化研究センターでは、従来の研究領域(動態研究・構造研究・文化比較・文化関係・文化情報)に基づく研究体制を基本とし、在外の日本研究機関及び日本研究者との連携・交流を強化するため、海外研究交流室にプロジェクト研究員の配置、業務に必要な専門的知識を持つ非常勤職員の増員を行った。また、海外研究交流室事務職員を研究協力課事務室に統合配置して事務機能を円滑化することにより、研究実施体制の強化を図った。

○ 機構本部では、新たに企画課を設置し、機構の企画評価及び研究協力に関することについて全体の調整を行うとともに、研究支援活動及び広報活動の一層の推進を図った。

(指摘事項)

○年度計画には記載されていないが、中期目標期間(平成16~19事業年度)に係る業務実績に関する評価結果で評価委員会が指摘した研究教育職員の勤務評定について、依然検討にとどまっており実施するまでには至っていないことから、機構長のリーダーシップの下、早期実施に向けた取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載19事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 国文学研究資料館では、立川移転に伴い、法人の枠を超え、国立極地研究所及び統計数理研究所(大学共同利用機関法人情報・システム研究機構)と共通する役務提供等について、一括契約を締結し、事務の効率化及び経費の節減を図った。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び情報提供

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 国立国語研究所では、自己点検・評価委員会を定期的に開催し、大学共同利用機関となったことの認識を常に新たにして意識を向上させ、研究・業務両面における運営体制整備、強化に反映させた。

○ 国際日本文化研究センターでは、広報委員会においてウェブサイトの改良について検討するとともに、平成21年度に設置した「日文研アーカイブズタスクフォース」において、国内のみならず海外の利用者にとっても活用しやすいウェブサイトの整備を行うため、ウェブサイトの役割を明確にし、英文ページを含めた内容の充実を図っている。

○ 国立歴史民俗博物館では、広報活動全般について、有識者6名と内部委員からなる広報有識者会議において助言を得るとともに、今後の広報活動の指針を定めた「歴博広報の方針」を策定し、同館の特徴である「こどもサイト」及び所蔵資料の紹介のウェブサイトを分かりやすくするなど、広報事業の展開拡充を図った。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 各機関の改修計画に基づき、学術研究環境及び基幹環境の改善や安全確保、資料保存及びサービス向上のため研究施設等を整備した。(電気設備・空調設備の改修、障がい者への昇降機設備設置、消防設備等)

○ 国立民族学博物館では、図書カウンターと情報サービス課事務室を一体化して新たに確保したスペース(90m2)について、図書室利用者の利便性向上に資するアメニティスペースとして整備した。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載9事項すべて「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

1.研究水準及び研究の成果等、2.研究実施体制等の整備

○ 国文学研究資料館では、平安時代からの日本有数の寺院ネットワークを持つ善通寺派の教学を把握するための基幹資料として、前人未踏の1万点近い資料リストとなる『総本山善通寺聖教・典籍目録稿』を作成した。

○ 総合地球環境学研究所では、研究の戦略的推進、研究基盤の整備と情報の集積管理、研究成果の発信を担う研究推進戦略センターの体制を、助教2名を採用するなどしてさらに強化した。

○ 国立国語研究所では、13件の基幹型共同研究プロジェクトをスタートさせ、国内外の共同研究者と協力して調査研究を開始した。また、中堅・若手の研究者による小規模の共同研究プロジェクトを10件計画し、独創・発展型あるいは萌芽・発掘型の調査研究にも着手した。いずれも研究発表会等を積極的に開催し、一部の発表会については公開とし日本語研究者(日本語教育研究者を含む)約480名の参加を得た。

3.共同利用等の内容・水準、4.共同利用等の実施体制

○ 総合地球環境学研究所では、6カ国9機関と覚書の締結を行い、また、海外諸機関との連携・協力をして活発に共同研究を行った。

○ 国立国語研究所では、日本語コーパスについてはコーパス開発センターにおいて、日本語及び日本語教育に関するデータベースについては研究情報資料センターにおいて、それぞれ一元的に構築を継続し、広く一般の利用に供するため、新たに構築したウェブサイト上に掲載した。

○ 国立歴史民俗博物館では、研究内容に関係の深い外国人研究者との新たな共同研究の開始や、展示に向けたアドバイスを受けるための招へいを行い、国際的な研究連携を進めた。

○ 国立歴史民俗博物館では、従来の外国人研究員とは別に、海外の若手研究者を対象とした短期招へい外国人研究員制度を新規に整備した。

○ 国際日本文化研究センターでは、平成21年度から海外共同研究員を配置し、国外からの研究者を招へいしやすい環境を整え、国際的な共同研究を推進するための体制を整備した。総数30名の海外共同研究員のうち、8名を共同研究実施のため招へいした。

5.大学院への教育協力・人材養成

○ 総合地球環境学研究所では、約100名の大学院生やポストドクターを研究プロジェクトのメンバーとして参画させ、研究面での協力・指導に努めた。また、研究推進戦略センター内に設置した組織を中心にして大学院教育への協力に関する検討を行い、平成22年2月に名古屋大学大学院環境学研究科との間で学位授与審査への参画、フィールドにおける大学院生の臨地教育等を含めた連携大学院協定を締結した。

6.社会との連携、国際交流等

○ 国立歴史民俗博物館では、「歴博フォーラム」について、総合展示第6展示室(現代)に関連して4回、企画展示に関連して2回、干支に関連して1回開催したほか、研究映像に関連して「歴博映像フォーラム」を1回開催した。また、国文学研究資料館、国際日本文化研究センターとの連携展示「百鬼夜行の世界」に伴い、機構公開講演会・シンポジウム「百鬼夜行の世界」を共催するとともに、図録『百鬼夜行の世界』を市販し広く社会に情報発信した。「歴博講演会」を12回、「くらしの植物苑観察会」を12回開催した。小・中学生を対象として、歴史資料に対する理解が深まることを目的に、「歴博探検」を4回、展示場でスケッチ「れきはくをかこうよ」(7月)、歴博を使った「自由研究相談室」(8月)、「体験コーナー」(8月)を開催した。

○ 総合地球環境学研究所では、地球環境に関するメッセージを京都から広く発信するため、環境省、京都府、京都市、京都商工会議所、財団法人国際高等研究所、財団法人国立京都国際会館と共同で「KYOTO地球環境の殿堂」運営協議会を平成21年6月に設置し、平成22年2月に殿堂入りする3名の表彰式を行うとともに京都環境文化学術フォーラムの中で国際シンポジウムを実施した。

○ 国立民族学博物館では、研究・展示、所蔵資料及び施設等を大学教育に広く活用するためのマニュアル『大学のためのみんぱく活用マニュアル』を作成した。

お問合せ先

研究振興局学術機関課

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --