国立大学法人琉球大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 琉球大学は、「地域特性と国際性を併せ持ち、世界水準の教育研究を創造する大学」を目指し、アジア太平洋地域の熱帯・亜熱帯の地理的特性や自然、琉球弧の社会、文化、歴史等の地域特性に根ざした教育・研究活動等の推進に取り組んでいる。
 業務運営については、サンゴ礁島嶼系生物多様性の研究拠点の形成を図るため、全国共同利用施設熱帯生物圏研究センターと学内共同教育研究施設分子生命科学研究センターを統合し、新「熱帯生物圏研究センター」を設置している。また、教員活動の自己改善、社会への説明責任の遂行を図るため、教員業績評価を本格実施している。
 財務内容については、教員シーズ集及び知的財産シーズ集のウェブサイト掲載や東京での新技術説明会開催等産学連携に関する積極的な広報活動を行った結果、共同研究、受託研究及び寄附金による外部資金が増加している。
 一方、年度計画に掲げている紙の節減を図ることについては、複写用紙の購入量が増加していることから、着実な取組が求められる。
 また、平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、年度計画に定める業務で改善された事項をウェブサイトで公表することについては、大学内限定の公開であり、広く世間に発表する意味の公表はなされておらず、引き続き早急な対応が求められる。
 その他業務運営については、中期目標期間における省エネルギー対策に基づく達成度を調査・分析し、次期省エネルギー計画を立案するとともに、附属図書館等への太陽光発電設置等による温室効果ガスの削減を図っている。
 一方、毒物・劇物の管理について、管理責任者が任命されていない部局や受払簿を備えていない部局があるなど、毒物・劇物の管理状況が著しく不十分であることから、今後、毒物・劇物の適正な管理が求められる。
 また、「琉球大学の保有する個人情報の適切な管理のための措置に関する規則」で定められている保有個人情報管理委員会については、未だに設置されていないことから、早急な取組が求められる。
 教育研究等の質の向上については、島嶼防災研究センターを研究拠点として地震防災・沿岸防災・地すべり・数値防災、観光客避難誘導システム等、自然災害予測と防災に関する研究を展開している。また、授業料免除制度を半額免除から全額免除に拡大している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 教員活動の自己改善、社会への説明責任の遂行を図るため、教員業績評価を本格実施している。

○ サンゴ礁島嶼系生物多様性の研究拠点の形成を図るため、全国共同利用施設熱帯生物圏研究センターと学内共同教育研究施設分子生命科学研究センターを統合し、新「熱帯生物圏研究センター」を設置している。

○ 沖縄の地理的、歴史的、文化的特徴に関連した総合的・学際的な研究を推進するため、アジア太平洋島嶼研究センター、移民研究センター、アメリカ研究センター、法文学部附属アジア研究施設を統合し、組織・機能の充実を図り、「国際沖縄研究所」を設置している。

○ 内部監査室は、当該年度の監査計画に基づき、業務活動及び会計処理の状況について、適切な監査を行っている。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、男女共同参画の推進について、具体的な行動計画や推進体制が整備されておらず、環境醸成を図る取組も著しく乏しいことについては、平成21年度に男女共同参画室を設置し、男女共同参画支援に関するアンケートを行うなど、指摘に対する取組が行われているがより一層の取組が期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載21事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 教員シーズ集及び知的財産シーズ集のウェブサイト掲載や東京での新技術説明会開催等産学連携に関する積極的な広報活動を行った結果、共同研究、受託研究及び寄附金による外部資金が10億8,733万円(対前年度比8,080万円増)となっている。

○ 入場料や施設使用料の増収を図るため、ウェブサイトに利用可能教室等や利用予定状況を掲載して利便性を向上させた結果、利用件数は158件(対前年度比18件増)、施設使用料等収入は1,303万円(対前年度比183万円増)となっている。

○ 光熱水料等のデータを学内ウェブサイトに掲載するなどの経費節減に取り組んでいるものの、一般管理費比率は4.8%(対前年度比0.8%増)となっていることから、一般管理費削減に向けたより一層の計画的な取組が期待される。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

○ 「ペーパーレスによる会議の開催に努めるとともに、両面コピーの促進や片面印刷用紙の再利用等を更に徹底することで紙の節減を図る。」(実績報告書33頁・年度計画【40】)については、教授会等の会議においてプロジェクターによる映写方式採用等による紙の節減を図っているものの、複写用紙の購入量が増加していることから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載20事項中19事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学生からの意見等を大学運営等にフィードバックさせるため、「学科別・年次別懇談会」を実施している。

○ 琉球大学の教育研究理念を発信する著書「知の津梁-やわらかい南の学と思想3-」を発刊している。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、年度計画に定める業務で改善された事項をウェブサイトで公表することについては、大学内限定の公開であり、広く世間に発表する意味の公表はなされておらず、引き続き早急な対応が求められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められるが、平成20年度評価結果において課題として指摘した事項に十分な取組が行われていないと認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 琉球大学緑地管理計画に基づき、緑地の草刈り、樹木剪定等を実施し、教育研究の場に相応しい環境維持に努めるとともに、発生材はチップ化等による堆肥利用により再資源化を図っている。

○ 中期目標期間における省エネルギー対策に基づく達成度を調査・分析し、次期省エネルギー計画を立案するとともに、附属図書館等への太陽光発電設置等による温室効果ガスの削減を図っている。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

○ 毒物・劇物の管理について、管理責任者が任命されていない部局や受払簿を備えていない部局があるなど、毒物・劇物の管理状況が著しく不十分であることから、今後、毒物・劇物の適正な管理が求められる。

○ 「琉球大学の保有する個人情報の適切な管理のための措置に関する規則」(平成17年3月15日制定)第7条には、「保有個人情報の管理に係る重要事項の決定、連絡・調整等を行うため、琉球大学保有個人情報管理委員会を置く」と規定しているが、未だに設置されていないことから、早急な取組が求められる。

○ 大学院医学研究科における学位審査要件は、審査体制の確立した専門誌に掲載された論文をもって学位審査を行うこととなっているが、学位論文を含む研究論文にデータ流用があり、論文に不正がないかどうか投稿前にチェックする体制等が不十分であると認められることから、学位論文を投稿前に事前チェックする体制整備等の再発防止に努めることが求められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成のためにはやや遅れている

(理由)年度計画の記載24事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、毒物・劇物の適正な管理が行われていないこと、大学規則により設置することを定めている委員会が設置されていないこと、学位論文審査のチェック体制等が不十分であること等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 外国語科目の新カリキュラムを導入し、「大学英語」(必修)に英語全学統一テストを実施し、客観的な学生の英語能力の測定に基づく成績評価を行い、学生の自己評価及び高年次英語のクラス編成に活用している。

○ 教務シラバスシステムと図書館システムを連動することで、シラバス図書情報の即時入手等が可能となり学生への便宜が図られている。

○ 授業料免除制度を半額免除から全額免除に拡大している。

○ 日本人学生と外国人学生の混住型学寮を新築し、居室の半数を外国人学生に割り当てている。

○ 沖縄地域インターネットエクスチェンジ(OIX)ネットワークを活用し、地域の公私立大学へウェブサイト等を配信している。

○ 島嶼防災研究センターを研究拠点として地震防災・沿岸防災・地すべり・数値防災、観光客避難誘導システム等、自然災害予測と防災に関する研究を展開している。

○ 産学官連携推進機構において、「教員シーズ集」及び「知的財産シーズ集」をウェブサイトに公開し、東京での新技術説明会等の開催などの広報活動を行うとともに、セミナーを開催して知的財産及び産学連携に関する啓発活動を行っている。

全国共同利用関係

○ 熱帯生物圏研究センターでは、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。

附属病院関係

○ 多極連携型専門医・臨床研究医育成事業において、連携機関大学との研修を開始、「シミュレータとシミュレータを用いた教育シンポジウム」を開始するなど、研修プログラムを充実させている。診療では、結核病床14床を4床へ変更し、新たに感染症病床6床を整備、集中治療室(ICU)を2床増床して8床体制に整備するなど、沖縄県の中核拠点病院として、社会的に要請の強い医療の充実に取り組んでいる。
 今後、引き続き、良質な医療人の養成に努めるとともに、病床稼働率の目標を達成するためのさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 周産期医療を担当する産科・新生児専門医の育成を図るための育成プログラムの実施体制を開始している。

○ 離島地域に加え、へき地地域で実習を行い、地域医療に対して関心を向上させるとともに、沖縄県の地域医療対策と密接に関係している法人から地域医療部の客員教授を招へいし、地域医療部の機能強化に努めている。

(診療面)

○ 沖縄県内における結核診療施設として、重症結核及び透析患者に合併した肺結核患者に対する診療提供体制を充実させている。また、エイズ中核拠点病院として様々な難治性感染症の治療や、肝疾患診療連携拠点病院の指定を受けるなど、地域医療機関とも連携を図りながら、先進的治療を提供している。

(運営面)

○ 病棟に医療事務員(クラーク)を配置し、医師の業務負担軽減やオーダー入力チェックを行ったことで診療報酬請求の算定漏れを減少させるとともに、医薬品について、業者との価格交渉を行い、薬品40品目について値引率11%を達成するなど、病院経営改善の推進に取り組んでいる。

○ 沖縄県の防災訓練で、災害派遣医療チーム(DMAT)として参画しており、地域連携を強化している。

○ 沖縄県に対して「沖縄県地域医療再生計画事業」として「クリニカルシミュレーションセンター設立」と「寄付講座」を提案し、採択されている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --