国立大学法人宮崎大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 宮崎大学は、市民社会の担い手として、高度で普遍的な教養に支えられ、豊かな人間性を持ち、専門職業人として必要な知識・能力を有する人材の育成、また、実践力のある人材を育成するとともに、大学を地域における研究拠点として、他の研究機関等との連携も強化して研究を推進し、教育・研究の知的資産を広く社会に発信し、地域の生活、文化、産業、医療等の発展に積極的な役割を果たすこと等を目標として教育研究を行っている。
 業務運営については、出産・育児・介護と研究の両立ができるように研究補助者を配置するほか、女性研究者のための助成事業として、研究助成費措置、国際学会派遣、女性研究者奨励賞の授与等に取り組んでいる。また、学長直轄研究組織「Interdisciplinary Research Organization(IR推進機構)」を設置し、5年間の任期を付したIRO特任助教の国際公募を行い、外国人1名を含む10名を採用している。
 一方、大学院専門職学位課程(教職大学院)について、平成21年度において一定の学生収容定員の充足率を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。
 また、経営協議会規程の改正については、経営協議会において審議すべき事項であるが、報告事項として扱われていた事例があることから、適切な審議を行うことが求められる。
 財務内容については、科学研究費補助金獲得者に対するインセンティブ配分を獲得金額の1%から5%に増加させるとともに、2年連続して申請を行わない教員に対する教育研究経費を10%減額している。
 その他業務運営については、放射性物質の厳重管理を徹底するとともに、一斉点検を実施している。また、学生等の安全確保を図る観点から、各学部、学務部の掲示板及び各サークルの部室や学生寄宿舎の各居室に「防災マニュアル(自然災害編)」を備え付け、災害への対応について学生への周知を図っている。
 教育研究等の質の向上については、国際的に活躍できる専門職業人育成を目指し、英語コミュニケーション能力育成のため、英語教育システムを活用し、基本4技能に必要な語彙力及び文法力の到達目標に対する学生のレベルアップを図っている。また、宮崎県の基幹産業である畜産業のさらなる振興のため、宮崎県・JA宮崎経済連との共同研究を開始している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 戦略重点経費を4億5,759万円(対前年度比2億126万円増)とし、教育研究活動の充実とともに、教育研究設備更新等を図っている。

○ 戦略企画本部を設置し、執行部の情報共有を図るとともに、大学として競争的教育研究資金獲得のための戦略的かつ組織的な方針を策定する体制を構築している。

○ 経営協議会学外委員の意見を踏まえ、宮崎県と連携した医師確保対策の一環として、地域に根付く医学生の育成、県内医師の適正配置の研究等を行うため、寄附講座「地域医療学講座」を設置している。

○ 出産・育児・介護と研究の両立ができるように研究補助者を配置するほか、女性研究者のための助成事業として、研究助成費措置、国際学会派遣、女性研究者奨励賞の授与等を行っている。

○ 学長直轄研究組織「Interdisciplinary Research Organization(IR推進機構)」を設置し、5年間の任期を付したIRO特任助教の国際公募を行い、外国人1名を含む10名を採用している。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

○ 大学院専門職学位課程(教職大学院)において、学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。

○ 経営協議会規程の改正については、経営協議会において審議すべき事項であるが、報告事項として扱われていた事例があることから、適切な審議を行うことが求められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成のためにはやや遅れている

(理由)年度計画の記載25事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、大学院専門職学位課程(教職大学院)において学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったこと、経営協議会による適切な審議が行われていないこと等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 科学研究費補助金獲得者に対するインセンティブ配分を獲得金額の1%から5%に増加させるとともに、2年連続して申請を行わない教員に対する教育研究経費を10%減額している。

○ 農学部附属動物病院について、学長管理定員による教員1名の措置、戦略重点経費による医学部からCT装置(コンピュータ断層撮影装置)の移管や設備導入及び診療費の改定等により、診療費が対前年度比1,257万円増となっている。

○ 監事監査結果報告書において、科学研究費補助金で購入した図書で寄贈手続がなされていないとの指摘があるにもかかわらず、寄贈手続を終了していない図書があることから、速やかに手続を行うことが期待される。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 宮崎大学情報データベースシステムを活用して、中期計画・年度計画の進捗状況管理等自己点検・評価の作業の効率化を図るとともに、中期計画・年度計画の自己点検・評価や進捗状況等の報告、根拠資料の提出をウェブサイト上で行い、検証及び業務実績報告書の素案作成が行えるなど、評価作業の効率化を図っている。

○ インフォメーションコーナーを設置し、各部局等における教育研究に関する情報を集約・整理し、情報提供の充実を図っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 平成21年度末で利用期間が終了する共同利用スペースについて、学内公募により全学的な視点で利用者を決定するなど施設の有効活用を図るとともに、若手研究者の研究環境を改善するために研究スペースの確保状況を調査して「若手研究者研究スペース確保方針」を策定している。

○ 省エネルギー事業計画に基づく太陽光発電設備、空調設備改修、冷熱源設備更新等の削減対策や温室効果ガス排出抑制等のための実施計画に基づく省エネルギーパトロール活動、空調期間以外の電源遮断等の取組を行い、エネルギー消費量を対前年度比1.2%削減、CO2排出量を対前年度比3.9%削減している。

○ 放射性物質について、指紋照合システムと監視カメラによる貯蔵室へのアクセスの監視記録の徹底、時間外・休日の出入制限、実験グループ代表者の役割の明確化を行い、厳重管理を徹底するとともに、一斉点検を実施している。

○ 学生等の安全確保を図る観点から、各学部、学務部の掲示板及び各サークルの部室や学生寄宿舎の各居室に「防災マニュアル(自然災害編)」を備え付け、災害への対応について学生への周知を図っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載13事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 国際的に活躍できる専門職業人育成を目指し、英語コミュニケーション能力育成のため、英語教育システムを活用し、基本4技能に必要な語彙力及び文法力の到達目標に対する学生のレベルアップを図っている。

○ 「畜産基地を基盤とした大学間連携による畜産生産に関する実践型統合教育プログラム開発」を私立大学と連携してスタートし、家畜生産現場において、衛生管理から、畜産物の流通、消費までを総合的に見渡せる人材養成のためのカリキュラム作成に取り組んでいる。

○ 学生パソコン必携化への対応として各学部講義棟の無線LAN利用環境を整備するとともに、利用者支援サービス機能の充実とセキュリティ対策強化のため、情報サポート室の設置等を行っている。

○ 専門職学位課程(教職大学院)において、教員免許を保有しない者に対する長期在学制度の適用範囲を拡大し、該当学生に対して長期履修計画書を作成し、指導する体制を整備している。

○ 健康診断結果に基づく若年肥満者への健康指導等を実施するとともに、入学時に実施した心理アンケートに基づき、所見の見られる学生に事後カウンセリングを実施している。

○ 研究戦略に基づき、「太陽光発電研究プロジェクト」、「地球温暖化問題への農学の挑戦」等27件の研究プロジェクトを選定の上、戦略重点経費を配分して特色ある研究の推進を図っている。

○ 産学連携センター機器分析支援部門に「蛍光プロテオミクスシステム」を導入し、プロテオミクス解析を同施設のみで実施することが可能となり、研究の効率化を図っている。

○ 株式会社みやざきTLOと大学特許の技術移転を目的とした「南九州発新技術説明会(東京)」の開催、各種イベント等への特許・研究シーズの出展等を実施し、積極的なPRに努めている。また、株式会社みやざきTLOと技術移転ミーティングを定期的に開催するなど、研究成果の技術移転を推進している。

○ 宮崎県の基幹産業である畜産業のさらなる振興のため、宮崎県・JA宮崎経済連との共同研究を開始している。

○ 高等学校等の学校及び教育組織と連携し、出前講義や体験授業、現職教員の研修等を実施するとともに、高校生と意見交換会を開催している。

○ ブラウィジャヤ大学(インドネシア)に海外オフィスを設置し、教育研究交流体制強化に取り組んでいる。

○ 教育実習について、大学、附属学校相互からの意見集約や改善策の検討等の点検・評価を実施するとともに、教職大学院の教育実習については、大学院生が行う授業すべてを大学教員が参観し、授業実施直後の時間帯で事後指導を実施し、指導効果を上げるようにしている。

附属病院関係

○ 各種シミュレータを整備した「臨床技術トレーニングセンター」を開設し、学生・研修医・看護師等の実技実習教育や卒後臨床研修プログラムに同センターを利用するカリキュラムを取り入れるなど、良質な医療人の養成に取り組んでいる。診療では、肝疾患診療連携拠点病院の指定を受け、院内に肝疾患センターを設置しており、大学病院として県内の肝疾患診療ネットワークの中心的な役割を果たしている。
 今後、「宮崎県地域医療再生計画」に基づき、医学部の地域医療学講座とも十分な連携を図りつつ、高度な医療を提供する救命救急センターの設置等も含めたさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 先進医療2件(エキシマレーザー冠動脈形成術等)の承認及び宮崎県治験促進センター機構等との連携により、新規6件32症例、継続9件44症例の治験を実施するなど、臨床研究の活性化、先進医療の実践に取り組んでいる。

○ 他施設で初期研修を修了した医師が、専門医養成に入る前の受け皿として設置した「自主研修デザインコース」を医師の要望に柔軟に対応できるよう「専門医前研修支援コース」として見直すなど、研修プログラムの充実を図っている。

(診療面)

○ 救急部の機能を強化するため、助教2名を増員して8名体制としており、また、災害医療体制を強化するため、災害派遣医療チーム(DMAT)を2チーム編成するなど、救急・災害医療体制を強化している。

○ がん診療連携拠点病院として、がんセミナー(13回)やがん診療講演会の開催(2回)、また、院内の化学療法治療計画(レジメン)の統一化を図るため、院内共通レジメンを作成するなど、質の高い医療提供体制を推進している。

(運営面)

○ 国立大学病院管理会計システム(HOMAS)と経営分析システムを用いて、症例別の傾向分析と収支改善策を検討し、各診療科との「症例別収支改善検討会」で分析結果をフィードバックし、関連部門に対し経営改善に向けた提案を行うなど、病院運営の改善に向けて積極的に取り組んでいる。

○ 病床配分の見直しによる病床稼働率の向上、集中治療室(ICU)の増床により、約9億4,600万円の増収を得ており、また、診療材料や医薬品等の仕入価格削減対策プロジェクトによって約9,000万円の経費削減を達成している。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --