国立大学法人大分大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 大分大学は、人間と社会と自然に関する教育と研究を通じて、豊かな創造性、社会性及び人間性を備えた人材を育成するとともに、地域の発展ひいては国際社会の平和と発展に貢献し、人類福祉の向上と文化の創造に寄与することを基本理念として教育研究を行っている。
 業務運営については、大学と関係の深いステークホルダー(大学院生、保護者、高等学校教諭、自治体関係者、企業関係者)で構成される「大分大学ステークホルダー・ミーティング」を開催し、寄せられた意見について報告書をまとめるとともに、平成22年度計画アクションプランの策定等に活用している。また、学部・学科の枠にとらわれない共同研究の実施体制の整備として、総合科学研究支援センター及び先端医工学研究センターを統合し、全学研究推進機構を設置している。
 財務内容については、外部資金獲得に取り組んだ結果、受託研究、共同研究及び寄附金による外部資金が増加している。
 その他業務運営については、不審者のキャンパス内侵入に対する抑止を図るため、旦野原キャンパス及び王子キャンパス出入口に防犯カメラを設置している。
 教育研究等の質の向上については、全学共通教育科目を全学教育研究課題に対応したコンセプトテーマに基づく10主題に区分して体系的に配置し、各主題で10科目程度、154科目を開講して基礎学力の確保と学習意欲増進に取り組んでいる。また、卒前・卒後を通した地域医療学の教育活動や地域で活動する医師のキャリアパス形成の指導・支援のために「医学部附属地域医療学センター」を開設している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学長裁量定員の新たな活用策について検討し、大分県からの地域医療の指導体制の充実要請に基づき、医学部附属地域医療学センターへ学長裁量定員を配置するなどの取組を行っている。

○ 教員については、特任教員就業規則を改正し、定年退職した教授を特任教授として採用ができるようにしている。

○ 大学と関係の深いステークホルダー(大学院生、保護者、高等学校教諭、自治体関係者、企業関係者)で構成される「大分大学ステークホルダー・ミーティング」を開催し、寄せられた意見について報告書をまとめるとともに、平成22年度計画アクションプランの策定等に活用している。

○ 学部・学科の枠にとらわれない共同研究の実施体制の整備として、総合科学研究支援センター及び先端医工学研究センターを統合し、全学研究推進機構を設置している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載50事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 外部資金獲得に取り組んだ結果、受託研究、共同研究及び寄附金による外部資金は、12億1,210万円(対前年度比2億2,448万円増)となっている。

○ 入試広報活動について、153か所(対前年度比109か所増)の各種合同進学説明会に参加した結果、全体として対前年度比89名増の入学志願者となっている。

○ 財務分析を基に同規模大学と比較分析した結果、外部資金獲得強化を重点施策とし、「教育研究活動活性化経費」を1,000万円確保して各部局の外部資金獲得金額に応じて予算配分するシステムを構築している。

○ ボイラー燃料のガス転換による重油とガスの併用方式等、光熱水費削減に取り組んだ結果、光熱水使用料は6億1,707万円(対前年度比5,264万円減)となっている。

○ 資金運用額の確保を図り、運用益を教育環境の整備充実に活用している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載14事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 「大分大学情報データベース」に付随機能として中期計画・年度計画進捗管理システムを導入し、蓄積されたデータから法人評価に係る報告書の自動作成が可能となるなど効率化を図っている。

○ 平成20年度の活動実績について、データを中心にグラフ等を多用して視覚的に分かりやすくまとめたポケットサイズの「大分大学パフォーマンスレポート」を作成し、学内外に配布するとともに、ウェブサイトに掲載している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 第2期中期目標期間に向けての「施設整備計画・施設マネジメント計画」を策定している。

○ 校舎改修工事において、有効活用スペース推進計画の考え方を踏まえ、レンタル研究室、学生ラウンジ、共用演習室等の共用スペースを拡大し、教員の研究環境や学生の教育環境の改善を図っている。

○ 大学全体で省エネルギーに取り組むため、省エネルギーに関する規程及び実施体制を整備するとともに、光熱水費の削減目標を設定し、使用実績額を学内ウェブサイトに掲載することでエネルギー消費削減に向けた意識の涵養を図っている。

○ 不審者のキャンパス内侵入に対する抑止を図るため、旦野原キャンパス及び王子キャンパス出入口に防犯カメラを設置している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載12事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 全学共通教育科目を全学教育研究課題に対応したコンセプトテーマに基づく10主題に区分して体系的に配置し、各主題で10科目程度、154科目を開講して基礎学力の確保と学習意欲増進に取り組んでいる。

○ ネットワークの利用環境、情報教育機器の整備を図るため、全学で無線LANを利用できる情報教育支援環境を整備するとともにネットワーク機器を更新している。

○ 統合認証基盤を用いて、新規利用登録者から簡易化した電子メール利用を開始したほか、グループ別一斉電子メール配信機能サービスを実施している。

○ 教育・学習支援機能を高めるとともに授業時間外の学習等を支援するため、図書館のスペースを使い、冊子体の図書資料と電子資料を利用した調べ授業学習支援エリア(協調学習コーナー)を設置している。

○ 「身体等に障がいのある学生の支援委員会」を設け、聴覚障害者に学生のノートテイカー(要約筆記者)を付けるなど障害学生の支援を行うとともに、ノートテイカー養成講座を開催している。

○ 卒前・卒後を通した地域医療学の教育活動や地域で活動する医師のキャリアパス形成の指導・支援のために「医学部附属地域医療学センター」を開設している。

○ 「社会連携推進室」を設置して「旦野原リエゾン」と「挾間リエゾン」を組み込み、室長が業務を総括して両キャンパスの産学連携体制を強化している。

○ 医系シーズのさらなる発掘を進めるため、医工連携コーディネータを配置するとともに、コーディネーター連絡会において、コーディネーターの業務連携・連絡体制を明確にし、情報共有体制の強化に取り組んでいる。

○ 大分県教育センター主催の現職教員研修のフォローアップ研修に附属小・中学校が授業提供を行い、実践協議の講師を務めるなど、地域の教育課題の解決に地域の学校と連携して取り組んでいる。また附属小・中学校のそれぞれの教員が10年経験者研修の講師として招へいされ、地域の教員の指導力向上に貢献している。

附属病院関係

○ これまでに構築した「豊の国臨床試験ネットワーク」等を十分に活用して、難治性ウイルス疾患治療薬等の第1相試験を主体とした治験を実施した結果、日本医師会治験促進センター主催の治験取組の部門賞第1位を獲得するなど、成果を収めている。診療では、大分県重症難病患者医療ネットワーク拠点病院に指定されており、特定疾患の難病患者の在宅支援や医療相談等、地域の中核的医療機関として、診療機能の向上を推進している。
 今後、附属病院における病理解剖への活用も視野に入れている「基礎医学画像センター」の有効的な活用等、基礎医学との連携を含めたさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 医学生教育の一環として、学生(医学部医学科1年次生95名)を2名1組のローテーションで病棟・外来にボランティアとして受け入れており、教育体制の充実に取り組んでいる。

○ 先進医療の承認に向けた症例の確保に努めた結果、2件の先進医療の承認を受けるなど、先進医療の推進を図っている。(第1期中期目標期間中の承認件数合計8件)

(診療面)

○ 救急患者の下へ駆けつけて病院到着前から救護を実施できる、緊急車両「ドクターカー」を導入するなど、救急医療体制を整備している。

○ 5大がん地域連携クリティカルパスの作成・導入に向けて、がん種ごとのワーキンググループの設置や講演会の共催により、地域医療機関とのネットワークの構築を図っている。

(運営面)

○ 病院再整備推進委員会を設置し、推進委員会の下に8つの専門部会を設けるなど、附属病院再整備の基本計画策定に向けて検討を開始している。

○ 医師の宿日直手当・特別診療手当の見直しを行うとともに、県の産科医師確保支援事業及び救急医療機関勤務医師確保事業の補助金を受け、分娩手当及び救急勤務医手当を支給できる体制を整備している。

○ 理事(医療・研究担当)の下、病院長、副病院長等で構成する病院経営企画部門会議において、病院の戦略的経営の企画・立案を行っている。

○ 外部評価では、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価Ver.6.0に認定されている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --