国立大学法人熊本大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 熊本大学は、個性ある創造的人材を育成するために、学部から大学院まで一貫した理念の下に総合的な教育を行い、最先端の創造的な学術研究を積極的に推進することとし、また、地方中核都市に立地する総合大学として充実発展し、機能的・戦略的な大学運営により、地域に根ざしつつ、国際的に存在感を示す大学として、教育研究を行っている。
 業務運営については、発生医学の国内外の連携ネットワークを強化した国際研究教育拠点の役割を目指すために発生医学研究センターを発生医学研究所に改組している。また、顧問と学長等の間で大学運営全般について自由に意見交換を行う場として「顧問会議」を設置している。
 自己点検・評価及び情報提供については、設立60周年記念事業の一環として、「大学サイエンスフェスタ『極限を制御せよ~衝撃エネルギー科学と熊大マグネシウムが拓く未来』」を国立科学博物館において9日間にわたり開催し、特色ある先端研究を紹介している。
 その他業務運営については、国際交流会館3棟を整備して収容定員が増加したことにより、これまで渡日後半年での退去や民間アパート借用を余儀なくされていた留学生の入居が可能となり、外国人留学生受入環境が改善されている。
 教育研究等の質の向上については、国際交流について、「国際学長フォーラム(第7回熊本大学フォーラム)」を開催して11か国25大学の学長・副学長と今後の国際高等教育の在り方等多彩なテーマの議論や活発な情報交換を行うとともに、海外大学との交流協定校数を100校まで拡大するなど、学生交流及び学術交流や共同研究の機会拡大に積極的に取り組んでいる。 

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 発生医学の先端的研究推進、恒常的視野に立った人材育成、国内外の連携ネットワークを強化した国際研究教育拠点の役割を目指すために発生医学研究センターを発生医学研究所に改組している。

○ 各部局が抱える諸課題について、学長・役員が出席するヒアリングを実施し、大学執行部と各部局の課題認識を共有するとともに、解決策の検討を行い、円滑な大学運営を図っている。

○ 優秀な人材確保及び研究組織活性化を図るため、研究に貢献した教員への報奨金制度に加え、教育に貢献した教員への報奨金制度を導入している。

○ 就業管理システムの自己開発による導入、給与明細のウェブサイト閲覧化、文書決済の迅速化等業務の効率化・合理化を進めている。

○ 顧問と学長、理事、副学長との間で大学運営全般について自由に意見交換を行う場として「顧問会議」を設置している。

○ 男女共同参画コーディネーターを増員するなど、男女共同参画推進に向けた取組がなされている。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、学内予算のより効率的な配分の在り方を検討することについては、次期中期目標・計画に向けて、法人化後5か年の配分実績の検証及び他大学等の配分方法を検討し、柔軟性を持たせた予算編成や全学的対応経費の確保を行っていることなど、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載18事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 特許を60件出願し、県外企業へのマーケティング活動や新技術説明会等に8回出展した結果、共同研究の契約件数が212件(対前年度比8件増)となっている。

○ 経費の抑制、節減方策に関するアクションプログラムに基づき、一般管理費の抑制に努め、対前年度比1,500万円を削減している。

○ 附属病院では診療科ごとに自主目標を設定するとともに、高い病床稼働率を継続した診療科に対する優先的な病棟クラーク配置や、毎年増加する外来患者に対応するための外来クラークの段階的配置等の取組により、附属病院全体で前年度比7億円の増収となっている。

○ 効率的な資金の活用を図るため、複数の金融機関による見積合わせを実施し、金利の高い金融機関を選定し、9か月の短期資金運用を実施して財務収益を確保し、教育研究経費として活用している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 教員の個人活動評価第1期(平成18年度~平成20年度)終了に伴い、各教員から提出された自己評価書に基づき学部長等が評価を実施し、所見を付して各教員に通知するとともに、個人活動評価報告書として学長に報告している。

○ 総合情報アーカイブデータベースを活用して大学年報及び学校基本調査のデータを学内共通様式に収集するシステムを構築し、効率化を図っている。

○ 設立60周年記念事業の一環として、「大学サイエンスフェスタ『極限を制御せよ~衝撃エネルギー科学と熊大マグネシウムが拓く未来』」を国立科学博物館において9日間にわたり開催し、特色ある先端研究を紹介している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載4事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 建物改修工事において共用スペースの確保・整備を行い、学生自習室、共用セミナー室やリフレッシュルームとして活用し、学生の学習環境及びアメニティ向上を図っている。

○ 国際交流会館3棟(単身48室、ルームシェア型72室)を整備して収容定員が増加したことにより、これまで渡日後半年での退去や民間アパート借用を余儀なくされていた留学生の入居が可能となり、外国人留学生受入環境が改善されている。

○ 講義室の稼働率調査結果を踏まえ、カリキュラムに柔軟に対応できるように、全学教育棟内の小規模講義室間の間仕切りを可動間仕切りとし、これにより多目的利用への対応が可能となり、有効活用が図られている。

○ 耐震性能の低い施設の耐震改修を実施し、耐震化率が84%に達している。

○ 改正されたエネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)の平成22年度施行に向け、黒髪北・南、大江地区の省エネルギー中長期計画を策定している。

○ 研究活動上の不正防止実施マニュアルを作成し、学内教職員への配布、説明会等において周知を図り、研究費の適正な管理・執行に努めている。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、特定毒物を所持していたにもかかわらず、特定毒物研究者の許可を受けていなかったことについては、特定毒物を含めた毒劇物等の保管管理、再発防止策等に関する周知徹底を図るために説明会を実施するなど、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 毎学期実施している「学生による授業改善のためのアンケート調査」に加え、学期間の授業改善を目的として、学期途中での「授業改善のための中間アンケート」をウェブサイトを利用して試行している。

○ 海外語学セミナーをこれまでの4大学に、新規に韓国、台湾の4大学を加え拡充している。

○ 支援が必要な学生を早めに発見するなどの目的で、疲労蓄積度調査を大学院生を含む全学生対象に実施している。

○ 文学部附属永青文庫研究センターを設置し、永青文庫資料について人文社会科学系の基礎的及び学術的研究を推進している。

○ 国際交流について、「国際学長フォーラム(第7回熊本大学フォーラム)」を開催して11か国25大学の学長・副学長と今後の国際高等教育の在り方など多彩なテーマの議論や活発な情報交換を行うとともに、海外大学との交流協定校数を100校まで拡大するなど、学生交流及び学術交流や共同研究の機会拡大に積極的に取り組んでいる。

○ 附属学校教員と教育学部教員が連携して「教育実習ガイドブック」や「教育実習の手引き」の改訂版を作成している。また、附属小学校においては、教育現場の研究や観察等を充実させるため、平成22年度から学部2年次生の観察実習を受け入れることとしている。

○ 附属中学校では、大学で授業を受ける「学びの交流会」を開催し、生徒114名、保護者75 名が参加している。また、大学教員を講師として、3年生を対象に性教育を実施するとともに、学部教員(教育実践総合センター)を招き、保健委員対象にカウンセリングをはじめとする心に関する講話を実施している。

附属病院関係

○ 三大学合同カンファレンスや専門修練医を中心にキャリアデータを収集・分析する教育支援システムの運用を開始するなど、専門医養成に向けた取組を行っている。診療では、安定的な周産期医療を提供するために、新生児集中治療室(NICU)の増床(6床から12床)、母体・胎児集中治療室(MFICU)を6床新設するなど、県内における高度周産期医療提供体制の強化を図っている。
 今後、初期救急診療から高次救急まで、診療科横断的に全人的医療を実践する「救急・総合診療部」の高度かつ安全な医療の提供に向けたさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 血液内科・感染免疫診療部研究グループが開発したエイズ治療薬が、日本国内のエイズ治療のファーストラインとして認可、また、新規の逆転写酵素阻害剤の開発等、先端研究開発・臨床応用の導入を推進している。

(診療面)

○ 「熊本県基幹型認知症疾患医療センター」の指定を受けており、認知症に関して熊本県下全域を統括する病院となり、地域医療機関の指導や認知症の専門医療相談等に対応するなど、「熊本モデル」といわれる全国に先駆けた地域連携システムを構築している。

(運営面)

○ 国立大学病院管理会計システム(HOMAS)を活用した分析により、「DPC検証プログラム」と題して、様々な観点からの分析を診療科とともに実施しており、分析結果を活用して経営改善の推進を図っている。

○ 外部評価では、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価Ver5.0に認定されている。

○ 育児短時間勤務制度及びパート医師制度を設け、女性医師等のワークライフバランスに配慮した新たな勤務制度を設けるなど、就労環境の改善を図っている。

○ 後発医薬品使用推進ワーキンググループを設置して、後発医薬品の比率の向上を目指すとともに、医療材料のベンチマーク価格から、納入業者等との価格交渉に取り組むなど、購入価格の適正化を推進している。

○ フルタイムで勤務する特定有期雇用職員(看護師等)は業務内容が常勤職員と同等であることから、雇用期限を撤廃し常勤職員と同処遇とすることを決定している。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --