国立大学法人佐賀大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 佐賀大学は、これまでに培った文、教、経、理、医、工、農等の諸分野にわたる教育研究を礎にし、豊かな自然溢れる風土や諸国との交流を通して育んできた独自の文化や伝統を背景に、地域と共に未来に向けて発展し続ける大学を目指し教育研究を行っている。
 業務運営については、学長管理定数経費配分額を増額し、任期を定めて雇用する教員5名、任期を定めて雇用する特別研究員を6名配置するなど、大学の戦略的運営の観点から部局等へ教育研究の人材を重点的に配置している。また、「かささぎサポート・ラボ(女性研究者支援室)」を設置し、学童期の子どもを持つ女性教員に研究補助員を派遣するなどの研究活動継続の支援、医学部附属病院と連携した病児保育、介護予防講座の実施に取り組んでいる。
 その他業務運営については、地球環境負荷の低減を図るため、太陽光発電設備設置、既設外灯のLED化及び高効率型照明器具や省エネルギー型空調機器への更新等を実施している。また、発注担当者が遵守すべき事項を定めた「国立大学法人佐賀大学発注者綱紀保持規程」及び「発注者綱紀保持マニュアル」を策定し、研究費不正使用防止に取り組んでいる。
 教育研究等の質の向上については、幅広い教養や総合的判断力、課題探求力、問題解決力などを養うため、学生参加型の共通主題分野「地域と文明」で「佐賀と戦争」や「佐賀マラソン学」等を新規開講している。また、知的財産に関する基本指針に基づき、産学官連携推進機構が中心となり、佐賀県地域産業支援センターと連携し、研究成果情報の発信、医学系シーズ説明会開催、教員派遣や定期的な巡回活動及び近隣県への企業訪問等の取組を推進している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 大学が当面する諸課題等について、意見交換し、情報共有を図り、必要な措置を講ずるため、学長、理事、監事、学長補佐、事務局長で構成する拡大役員懇談会を設置し、大学運営の改善の迅速化に取り組んでいる。

○ 大学が当面する諸課題を迅速かつ公平公正に解決するため、大学の各種方針等の実施や法令遵守等の重要事項について、執行部全体の共通認識を役員会指針として定めている。

○ 学長管理定数経費配分額を1億3,600万円(対前年度比1億200万円増)とし、任期を定めて雇用する教員5名、任期を定めて雇用する特別研究員を6名配置するなど、大学の戦略的運営の観点から部局等へ教育研究の人材を重点的に配置している。

○ 経営協議会学外委員の意見を大学運営に反映できるよう、経営協議会ごとにテーマを定め意見交換する場を設け、学外委員の意見により地元企業と連携して製品化したLED照明をキャンパスの外灯に使用し、環境及び安全に配慮したキャンパスづくりに活用している。

○ 「かささぎサポート・ラボ(女性研究者支援室)」を設置し、キャリア支援部門では学童期の子どもを持つ6名の女性教員に研究補助員を派遣して研究活動継続の支援を行い、育児支援部門では医学部附属病院と連携して病児保育を開始し、介護支援部門では介護予防講座を実施している。

○ 事務情報システムを含む学術情報基盤システム及びキャンパス情報ネットワークシステムの更新を行い、本庄地区と鍋島地区のネットワークが統合され、全学の事務情報の電子化・共有化が促進されるなど、ペーパーレス化を推進している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載34事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 科学研究費補助金を申請してA判定を受けた46名に科学研究費補助金採択を促すために総額2,000万円を配分した結果、平成22年度に14件が採択されている。

○ 研究シーズ育成支援として、11件の応募のうち3件を採択し、400万円の財政支援を行っている。

○ 佐賀大学基金等の運用益の一部を私費外国人留学生11名に支給している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 中期計画及び年度計画の進捗管理、報告書作成等の作業効率化を図るためにウェブサイト上で業務を行うことができる「中期目標・中期計画進捗管理システム」を導入し、実績報告書作成の試行を行うなど、平成22年度からの本格稼働に向けて準備を整えている。

○ 教育研究活動等に係る改善状況について、組織評価を実施し、特に優れた取組(3部局等)に対してインセンティブ経費を配分している。

○ ステークホルダーのニーズに合うように、広報誌「かちがらす」に寄せられた意見や要望を整理して次号に活かしている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 施設マネジメントの実施により確保した共用スペースは、教育研究活動を活性化させるとともに、改修工事に伴う仮移転先として有効に活用され、改修工事のスムーズな進捗及び経費節減が図られている。

○ ユニバーサルデザインに基づき、ユニバーサルトイレや車椅子用スロープを整備している。

○ 文系地区第2期改修計画に基づき、大学院生が共同で使用できる自主学習スペースを設け、情報機器等を整備している。

○ 地球環境負荷の低減を図るため、太陽光発電設備設置、既設外灯のLED化及び高効率型照明器具や省エネルギー型空調機器への更新等を実施している。

○ 定期的に労働安全衛生巡視を実施し、巡視結果及び改善状況を各事業場の安全衛生委員会で報告し、「労働安全衛生巡視報告」としてウェブサイトに公表して危険情報の共有化を図り、安全管理と事故防止に役立てている。

○ 新型インフルエンザ対策委員会を設置し、新型インフルエンザ対策行動指針を作成して学生及び職員に対しての周知及びウェブサイト掲載を行うとともに、流行拡大の兆しが認められたことによる大学祭開催の中止等、迅速な対応措置を行っている。

○ 発注担当者が遵守すべき事項を定めた「国立大学法人佐賀大学発注者綱紀保持規程」及び「発注者綱紀保持マニュアル」を策定し、研究費不正使用防止に取り組んでいる。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、特定毒物を所持していたにもかかわらず、特定毒物研究者の許可を受けていなかったことについては、毒物・劇物の保管庫及び受払簿の点検を実施するとともに、各部局の教授会等において注意喚起と法令遵守の指示を行うなど、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 幅広い教養や総合的判断力、課題探求力、問題解決力等を養うため、学生参加型の共通主題分野「地域と文明」で「佐賀と戦争」や「佐賀マラソン学」等を新規開講している。

○ 書誌情報の利用者への提供機能を強化した「電子図書館システム」、研究業績データベースとの連携を強化した「機関リポジトリシステム」、図書館ポータル等について、「総合情報基盤システム」の機能として仕様策定して整備するとともに、教務ポータルシステムと連携させることにより、学生の視点に立って利便性を高めている。

○ 障がいのある学生の授業科目履修を支援するため、ノートテイカー29名を配置している。

○ 知的財産に関する基本指針に基づき、産学官連携推進機構が中心となり、佐賀県地域産業支援センターと連携し、研究成果情報の発信、医学系シーズ説明会開催、教員派遣や定期的な巡回活動及び近隣県への企業訪問等の取組を推進している。

○ 「佐賀県における産学官包括連携協定」に基づき、「佐賀県歴史データベース構築事業」や「高度化する技術や環境変化に対応する社会人の再教育」等14事業を実施している。

○ ハノイ国家大学外国語大学(ベトナム)とツイニングプログラムの協定を締結し、佐賀大学サテライトを開設している。

全国共同利用関係

○ 海洋エネルギー研究センターでは、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。

附属病院関係

○ 卒後臨床研修センターにおいて、特定非営利活動法人(NPO)卒後臨床研修評価機構による訪問調査の評価結果に基づき、研修目標達成度の評価を徹底して行っている。また、「新卒後臨床研修センター」を建設して、医療人のためのスキル教育施設として教育シミュレータを設置するなど、教育体制の質の向上に取り組んでいる。診療では、「がんセンター」を設立して、運営委員会を整備し、外来化学療法室の拡張を行うなど、がん診療体制の強化を図っている。
 今後、救命救急センターや新たに開設した新生児特定集中治療室(NICU)等、学生・研修医等に対する教育研修体制の充実も図りつつ、佐賀県の地域医療の中核病院としての役割を担うためのさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ これまでの臨床研究の成果を発展させた事例2件について特許を出願している。また、治験を活性化するために、新たに治験施設支援機関(SMO)1社と契約しているほか、「臨床研究・治験推進セミナー」を開催(約700名)するなど、臨床研究の活性化につながる取組を行っている。

(診療面)

○ 横断的な診療体制を実施するために、感染制御部、褥瘡対策チーム、横断的緩和ケアチーム、栄養サポートチーム等による診療を充実させており、他職種の職員がチーム医療に参画している。

○ 救命救急センターに新しいセンター長を迎え、総合診療との役割分担を明確化させ、受入患者数が増加するなど、高度な診療が提供されている。また、医学生・研修生も参加する早朝救急カンファレンスの内容を充実させており、教育体制の向上にも努めている。

○ 「地域ICT利活用モデル構築事業」により、佐賀県診療録地域連携システムを構築し、県内の中核医療機関間で紹介患者の診療情報を時系列で閲覧できる環境を整え、地域医療サービスの質の向上に貢献している。

(運営面)

○ 病床管理委員会で稼働率等の指数を算出し、効率的な病床管理のために病床配分を診療科ごとに固定しないフレキシブルな病床活用を図るなど、病床管理体制の整備を図っている。

○ 外部評価では、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価Ver5.0を受け、認定されている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --