国立大学法人九州工業大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 九州工業大学は、世界をリードする高度技術者の養成を基本的な目標とし、教育・研究の高度化を図り、今後も世界に向けての「知と文化の情報発信拠点」であり続けるとともに、「知の源泉」として地域社会の要請に応え、次世代産業の創出・育成に貢献する、個性豊かな工学系大学を目指し教育研究を行っている。
 業務運営については、専門的な社会人教育やインターンシップ、リサイクル事業等に継続的に取り組んだことにより、「大学地域貢献度ランキング」において、国立大学で第1位(国公私立大学中では第4位)の評価を得ている。
 財務内容については、引き続き、学内施設の学外利用について広報活動を行った結果、施設貸出料収入は、182万円(対前年度比72万円(66%)増)となっている。
 一方、年度計画に掲げている、競争的な外部資金の獲得に向けた取組については、科学研究費補助金の申請率が減少しており、また、科学研究費補助金及び外部資金の金額も減少していることから、増加に向けた取組が求められる。
 自己点検・評価及び情報提供については、教育職員評価の評価結果をウェブサイトで公開し、昇給等への反映や部局長による指導を行うことで個々の教育職員のレベルアップを図り、また、組織としての教育研究活動の向上に資するための分析を行っている。
 その他業務運営については、施設関連業務について、すべて電子入札とするとともに、施設に関する維持保全業務を平成22年度から複数年契約化とするなど、効率化を図っている。
 教育研究等の質の向上については、自動車情報ネットワーク開発による地域交通の低炭素社会構築事業の実証研究を実施するなど、地域企業との連携活動を実施している。また、「デジタルエンジニアリングコース」の金型モジュールにおいて、新たに全科目で企業技術者を非常勤講師として招き、産業界のニーズに密着した教育を拡充している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 専門的な社会人教育やインターンシップ、リサイクル事業等に継続的に取り組んだことにより、「大学地域貢献度ランキング」において、国立大学で第1位(国公私立大学中では第4位)の評価を得ている。

○ 九州歯科大学との歯工学連携教育協定に基づき、歯工学分野の大学院教育を実施するため、新たに歯工学連携6科目を開講するなど、他大学との連携強化に努めている。

○ 学内の情報に関連する業務を一元化するため、情報化推進委員会と附属図書館運営委員会を統合し、学術情報委員会を設置するなど、組織のスリム化を図っている。

○ 北九州市との連携により、大学の隣接地に市立認可保育所を開設するとともに、女性職員のための環境作りに取り組み、ベビーシッター育児支援事業を実施している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 引き続き、学内施設の学外利用について広報活動を行った結果、施設貸出料収入は182万円(対前年度比72万円(66%)増)となっている。

○ 学内施設の大型改修や学内省エネルギー活動等の総合的な低炭素施策に取り組んだことにより、「第1回エコ大学ランキング」において、全国第2位の評価を得ており、併せて、平成17年度と比較してCO2排出量の10%削減を達成している。

○ 平成21年度決算において、大学発ベンチャーの有価証券(新株予約権)の価値低下に伴う評価減が発生しており、今後の新株予約権の取得に際しては、評価減の発生が出る可能性を考慮することが期待される。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

○ 「継続して競争的な外部資金の獲得に向けた取り組みに努める。」(実績報告書27頁・年度計画【3-01】)について、科学研究費補助金の計画調書作成マニュアルの作成等の取組を行っているものの、科学研究費補助金の申請率が減少しており、また、科学研究費補助金及び外部資金の金額も減少していることから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載7事項中6事項が「年度計画を十分に実施している」と認められ、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められるが、学外への施設貸出料収入が対前年度比で66%増加していること等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 教育職員評価を実施し、その評価結果をウェブサイト等で公開し、昇給等への反映や部局長による指導を行うことで個々の教育職員のレベルアップを図るとともに、組織としての教育研究活動の向上に資するための分析を行い、その結果を教育研究の改善に活用している。

○ 創立100周年事業として、大学の活動を広く社会に発信するため、記念講演会、新ロゴマークの制定、大学歴史資料室「明専アーカイブ」の整備・公開等を実施している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載3事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 施設関連業務について、すべて電子入札とし、さらに、平成22年度から施設に関する維持保全業務の複数年契約化を決定するなど、効率化に取り組んでいる。

○ 省エネルギーと環境負荷低減のため、マテリアル総合研究棟新営工事において、高効率機器(空調機・照明器具・高圧変圧器)と複層ガラスの採用や建物断熱の強化及び太陽光発電により、省エネルギー建物とするなど、省エネルギー対策を積極的に実施している。

○ 電気使用量に加え、都市ガス・水の使用量を学内ウェブサイトに表示するシステムを構築し、総合的な「エネルギーの見える化」を実現している。

○ 研究費不正防止のためのモニタリング調査の実施に関し、監査室でサンプリング調査を行い、現物調査の他に取引業者に対して、売掛金残高の調査を行っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載22事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 「デジタルエンジニアリングコース」の金型モジュールにおいて、新たに全科目で企業技術者を非常勤講師として招き、産業界のニーズに密着した教育を拡充している。

○ 産業界との連携によるICTアーキテクト育成コース、社会人対象の情報技術セミナーの大学院科目としての単位認定等を実施している。

○ 学生のメンタルヘルス問題に対応するため、常勤カウンセラー1名を含めた学生相談員を30名配置し、学生相談体制を充実させている。

○ 快適通学ワーキンググループを設置し、通学環境を改善するために最寄り駅及びバスセンターまでのスクールバスの導入を検討し、平成22年度導入に向けた試験運転を行っている。

○ 学生志向の選書と図書館サポーターの育成を目指して、学生選書ツアーを実施し、学生から高い評価を受けている。

○ 「自動車情報ネットワーク開発による地域交通の低炭素社会構築」事業において、複数研究室が参画するプロジェクト組織を構築して実証研究を実施し、地域企業との連携活動として高い評価を受けている。

○ 国際的な産学連携を推進するとともに、安全保障輸出管理規程に基づき取扱いを再検討し、安全保障輸出管理体制整備に係る関係規則等の改正に取り組み、さらに、各キャンパスにおいて安全保障輸出管理に係る学内説明会を実施し、理解の徹底を図っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --