国立大学法人奈良女子大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 奈良女子大学は、「男女共同参画社会をリードする人材の育成」、「教養教育、基礎教育の充実と専門教育の高度化」、「高度な基礎研究と学際研究の追究」、「開かれた大学」の4つの基本理念に基づく様々な取組を行っており、特に女性の社会進出を教育面で支援するとともに、広くアジア諸国と連携・協力した女子教育を積極的に推進している。
 業務運営については、学生も利用可能な託児室の開設、大学院博士課程修了者を教育研究支援員に配置する「生涯にわたる女性研究者共助システムの構築」を、女性研究者支援モデル育成事業終了後も引き続き学内措置により継続するなど、積極的に取り組んでいる。
 一方、年度計画に掲げている外国人教員採用の促進に努めることについては、外国人教員数及び割合が増加するまでには至っていないことから、着実な取組が求められる。財務内容については、創立百周年記念事業の一環として、柔軟かつ戦略的な教育研究支援等を行うことを目的に創設した「奈良女子大学基金」について、平成21年度は新たに附属小学校においても基金を創設し、募金を受け入れている。
 一方、年度計画に掲げている共同研究、受託研究、奨学寄附金等の外部資金の獲得促進を図ることについては、外部資金額及び件数が増加するまでには至っていないことから、着実な取組が求められる。
 教育研究等の質の向上については、「なら学プロジェクト」、「ジェンダー言語文化学プロジェクト」、「子ども学プロジェクト」の学部内3プロジェクトの研究成果を、各プロジェクトに関連した学部共通科目として新たに開講して、研究成果を教育に還元している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.教職員の人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学生も利用可能な託児室の開設、大学院博士課程修了者を教育研究支援員に配置する「生涯にわたる女性研究者共助システムの構築」を、女性研究者支援モデル育成事業終了後も引き続き学内措置により継続しており、積極的に取り組んでいる。

○ 男女共同参画推進会議を開催し、講演会の開催について検討を行い、男女共同参画推進に向けた教職員研修として事業計画を立案し、シンポジウム「科学分野の男女共同参画を一層推進するために」及び「地域力・女性力を活かして男女共同参画推進」の実施により、男女共同参画推進に向けた教職員の意識啓発を図っている。

○ 副学長を室長として教員と事務職員とで構成する各室において、毎月定期的又は必要に応じ会議を開催し、各室が所掌する諸課題や諸事業について、副学長等のリーダーシップの下に、教員と職員とが連携して戦略的な企画・立案を行い、効果的、機動的な組織運営を図っている。

○ 特任教員制度を積極的に活用し、従来の教員定数枠に捉われず、配置ポスト、労働時間など配置部局の実状による柔軟な採用により、特定事業等の実施期間に応じた教育・研究に従事させている。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

○ 「「人事に関する基本方針」に基づき、適正な教員人事を実施するとともに、外国人・女性の教員採用の促進に努める。」(実績報告書12~13頁・年度計画【5-9-10】)については、外国人教員数及び割合が増加するまでには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載28事項中27事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 創立百周年記念事業の一環として、柔軟かつ戦略的な教育研究支援等を行うことを目的に創設した「奈良女子大学基金」について、平成21年度は新たに附属小学校においても基金を創設し、募金を受け入れている。

○ 積極的な管理経費抑制の取組を行った部局課に対し、顕彰する制度を創設し、「管理経費抑制部局課顕彰に関する申し合わせ」を定め、全学的インセンティブの発展に努めており、節約実績が顕著であった文学部(廃棄物品再利用)及び理学部(電子回路修理による機器延命)の表彰を行っている。

○ 紙資源等の節減を学内諸会議及び学内専用ウェブサイトにより周知し、電子化推進、帳票等整理及び紙資源等の利用方法の見直し等を継続して取り組んだ結果、削減を達成している。

○ 教員の外部資金獲得のインセンティブを高めるために、科学研究費補助金審査結果「A」の不採択者を対象にして科学研究費補助金獲得推進費を配分している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

○ 「共同研究、受託研究、奨学寄附金等の外部資金の獲得促進を図るため、「研究紹介集(シーズ集)2009-2010」、産学官連携ガイド等を作成し、学外関係機関に広く配付する。」(実績報告書24頁・年度計画【5-22-10】)については、外部資金額及び件数が増加するまでには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載9事項中8事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められるものの、大学承継知的財産の獲得状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 広報活動の一環として、奈良市が発行する「奈良しみんだより」へ紙面広告を掲載したほか、2009近畿まほろば総体の開催プログラムに協賛広告を掲載し、大学の認知度向上及び大学が創立百周年を迎えたことについて周知を図っている。

○ 記者会見等を通じて、大学情報を迅速・積極的に提供し、大学のウェブサイトの最新情報欄で種々の大学情報を公開したことにより、新聞等のメディアに月平均28.5件取り上げられている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 大学が所有する美術品・収蔵品の保存管理を高めるとともに、過去の資料を今後の教育研究活動に活用させるため、旧ボイラー室を美術品・収蔵品保管場所として改修している。

○ 施設の適切な維持管理と予防改善を行うため、附属図書館防水改修等の工事を実施し、施設の有効活用とキャンパス環境の整備を図っている。

○ 附属学校園において、安全管理体制を整備するとともに、安全教育、防災・防犯訓練の実施や園児・児童・生徒の安全確保に関する取組を、保護者や関係機関等と連携・協力しながら進めている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載14事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 文学部において、「なら学プロジェクト」、「ジェンダー言語文化学プロジェクト」、「子ども学プロジェクト」の学部内3プロジェクトの研究成果を、各プロジェクトに関連した学部共通科目として新たに開講して、研究成果を教育に還元している。

○ 「地域貢献活動を活用した理系女性人材育成」の中心となる学部共通科目「サイエンスオープンラボ」を全学科で推進し、専門知識を発信できる社会のリーダーとなる女性人材の育成に取組んでいる。

○ 2件の大学院教育改革支援プログラムを推進し、女子大学としての個性・特色の明確化を図るための組織的な取組を充実させている。

○ 大学院博士前・後期課程において、有職に加え、女性のライフサイクルに配慮して育児・長期介護も申請理由とする、標準修業年限を超えて弾力的な履修を認める長期履修学生制度を導入している。

○ キャリアプラン科目群、教職科目群、資格関連科目群から構成されるキャリア教育科目のキャリアプラン科目群「キャリアデザイン・ゼミナール」では、学生のニーズに沿った多様な31科目を開講して、キャリア教育を推進している。

○ 学生を主体とした奈良の文化・伝統食材の配信プロジェクトの推進や、奈良らしい商品を地域や企業と創出し、学生の実践的な育成とともに地域や産業の活性化につなげてきたことから、サービス産業生産性協議会が行う「ハイ・サービス日本300選」を受賞している。

○ 女性研究者共助支援事業本部が推進する子育て支援の一環として、学生も利用できる子どもの預かり支援室「ならっこルーム」を設置している。

○ 「古代日本形成の特質解明の研究教育拠点」を継承発展し、東アジアにおける古代奈良を基本的視座とした活動並びに東アジア及び欧米諸文化との比較研究を推進している。

○ 「古代奈良を中心とした歴史的文化遺産のデータ化」「まちづくり支援事業」「紀伊半島の生物資源保全事業」等の8事業を推進して、地域貢献を果たしている。

○ 附属図書館において、会議室・図書館長室を改修し、それぞれ「ラーニング・コモンズ」「グループ学習室」とし、学生が利用できる部屋として整備するとともに、奈良県立図書情報館と相互協力に関する協定を結び、同館で貸し出された図書等を大学で返却できるなどのサービスを拡大し、学生の利便性を向上させている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --