国立大学法人神戸大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 神戸大学は、「真摯・自由・協同」の理念を掲げて発展を遂げ、高度に国際性に富む研究教育を実践する総合大学として、更なる飛躍を目指し、学長のリーダーシップの下で策定したミッション・ビジョンステートメント「神戸大学の使命」と「神戸大学ビジョン2015」、「神戸大学ビジョン2015アプローチ」の実現に向けて取組を進めている。
 業務運営については、新たに学長戦略経費を設け、戦略的事業へ機動的に予算配分を行っている。また、子育てと研究両立プランの活用や、経済界の第一線で活躍する卒業生と学長・理事による、ビジネスリーダー懇談会を開催している。
 一方、平成20年度評価で評価委員会が課題として指摘した、新たな評価制度を整備することについては、対象職員を拡大し試行を実施しているものの、新たな評価制度の整備が行われるまでには至っていないことから、計画的な取組を行うことが求められる。
 財務内容については、事務局コスト削減プロジェクト等の継続実施等の取組により、一般管理費比率が2.5%(対前年度比0.5%減)となっている。
 自己点検・評価及び情報提供については、評価データの収集方法や、独自の評価作業マニュアルにより、評価経験がなくても評価作業をイメージできるような工夫・効率化に取り組んでいる。
 教育研究等の質の向上については、先端融合イノベーション研究の推進のため、これまでの自然科学系先端融合研究環の実績を踏まえた神戸大学統合研究拠点をポートアイランド地区に整備することを決定している。この他、若手研究者長期海外派遣制度の導入や、「神戸大学Week2009」の開催による国際シンポジウム、国際学生討論等を実施している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 「神戸大学ビジョン2015」におけるチャレンジ・フェーズ(2010~2012)を迎えるに当たって、政策・実施項目の見直し案を作成している。

○ 競争的資金の間接経費等を財源とした教育研究活性化支援経費による全学的レベルでの重点施策、大学の未来を担う人材への支援に加え、新たに学長戦略経費を設け、戦略的事業への機動的な予算配分を行っている。

○ 学長裁量枠定員を活用し、女性研究者支援を目的とした研究者の公募採用を実施するなど、女性研究者の採用の促進に向け取り組んでいる。また、「子育てと研究両立プラン」を整備・活用し、子育てと研究の両立に取り組んでいる。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事要録を掲載することにより社会に広く公表している。

○ 現状の業務に対する課題及び改善案について、引き続き、広く教職員から意見募集を行うとともに、業務改善の対応策として、自動発行機による証明書の対象拡大、公用車運用業務の廃止等に取り組んでいる。

○ 授業評価アンケートの結果に基づく全学共通教育ベストティーチャー賞の創設を決定しており、今後の効果的な運用が期待される。

○ 経済界の第一線で活躍する卒業生と学長・理事による、ビジネスリーダー懇談会を開催し、ビジネス体験に裏打ちされた提言を得ている。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、新たな評価制度を整備することについては、対象職員を拡大し試行を実施しているものの、平成21年度においても新たな評価制度の整備が行われていないことから、学内での検討や調整等を一層進め、計画的な取組を行うことが求められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載35事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、平成20年度評価において課題として指摘した事項に十分な取組が行われていないこと等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 事務局コスト削減プロジェクト等の継続的な取組により、一般管理費比率が2.5%(対前年度比0.5%減)となっている。

○ 光熱水費削減に向け、「神戸大学電気予報」を毎日ウェブサイト上に掲載し、消費電力の抑制に努めている。また、昼休み消灯キャンペーン等各種の省エネルギーポスターの全学掲示等により意識改革を啓発し、電力量は対前年度比30万5,000kwh減となっている。

○ 神戸大学基金における募金活動を継続実施し、参加者の領域を広げるための施策として、「神戸大学とわたし」創刊号の発刊、基金により修復された出光佐三記念六甲台講堂の披露を兼ねたホームカミングデイの開催等により3億8,257万円の寄附金を得ている。

○ 財務分析を実施し、大学運営に活用するとともに、平成16年度から平成20年度の財務状況について、データの集積及び時系列分析を行い、部局ごとに学内説明を行っている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載16事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の基本的な目標、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 評価データの収集方法や、大学独自の「学内共同利用施設等の組織に係る評価」の評価作業マニュアルにより、評価経験がなくても評価作業をイメージできるよう工夫・効率化に取り組んでいる。

○ 神戸大学情報データベース(KUID)への継続的な取組により、各年度における教員数、外部資金獲得数等の組織データ並びに教員個人の教育・研究・社会貢献活動に係るデータが集積され、平成21年度末で、研究論文3万5,389件、著書4,809件、研究発表2万8,857件、受賞歴521件のデータを集積しており、引き続き有効的な活用が期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備と活用等、2.安全管理、3.環境保全、4.大学支援組織等との連携強化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ これまで実施したスペースマネジメントの調査分析の結果を基に、各学部及び各研究科の人材養成と卓越した研究及び若手教員へのスペースの再配分計画を検討し、改修工事や新営工事に反映させている。

○ 教室、テニスコート、グラウンド及び出光佐三記念六甲台講堂の外部利用案内をウェブサイトに掲載し、施設の有効活用に努めている。

○ 地震等の大規模災害時の対応として、災害時を想定した徒歩帰宅訓練、無線機を使用した毎月の緊急時連絡訓練等に取り組んでいる。

○ 環境保全対策及び省エネルギー対策の取組として、夏季・冬季の空調機運転等の適正化の徹底、工学研究科本館等の屋上に太陽光パネルの設置、省エネルギー推進計画に基づく定期巡視を行っている。

○ 科学研究費補助金の不正使用を未然に防止するため、学内での手続きや基本的なルールをわかりやすく示した取扱説明書を作成し、交付内定者に配布するとともに、研修会を開催し、適正使用の取組やルールの周知に努めている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載44事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 全学共通授業科目の一つとして、近代日本の発展とともに歩んできた神戸大学百年の歴史を、多角的なテーマから捉え直す「神戸大学史」を開講している。

○ 「博士・ポスドクのためのキャリアガイダンス」を開設し、大学院生対象のキャリアガイダンスに取り組んでいる。

○ 20社の民間企業参加の下、留学生のためのグローバルキャリアセミナーを開催するとともに、外国人留学生のための就職ガイドブック「ようこそ!就活」を配布している。

○ これまでの自然科学系先端融合研究環の実績を踏まえ、全学の先端融合研究を推進するため、神戸大学統合研究拠点をポートアイランド地区に整備することを決定している。

○ 競争的外部資金獲得のための研究支援体制を強化するため、申請支援業務を本部職員及び部局職員がアドミニ・アドバイザーとして取り組むほか、革新的な研究を行っている教員と産学連携を推進する客員教員のタイアップ等に取り組んでいる。

○ 「若手研究者長期海外派遣制度」を新たに設け、5部局6名の教員を1年間の期間で派遣している。

○ 産学官連携戦略展開事業「ひょうご神戸産学学官アライアンス」では、産学連携の裾野拡大を図るとともに、単独の大学では行えない大型プロジェクトへの取組を通して、地域イノベーションの創出を目指している。

○ 「神戸大学Week2009」を開催し、世界各国から研究者、教育関係者や欧州委員会関係者、国内からも企業関係者を招へいし、「教育における『グローバル・エクセレンス』の実現」をテーマとした国際シンポジウム等を実施するとともに、国際学生討論を行っている。

○ 物理的に簡素なネットワークの上に、事務系、教育・研究系、外部接続系等、性格の異なる6種類のネットワークを論理的に切り分けて安定稼働させることに成功し、高性能でありながら光配線数の削減、省電力化による低コスト化を実現したキャンパス情報ネットワークシステム(KHAN2009)を本格稼働している。

○ 附属学校については、学部附属から全学の附属学校に移行したことに伴い、附属学校部を設置し、大学と附属学校との教育・研究に関する連携方策について検討を行い、「ものづくり教育」に関して工学部と附属学校との連携授業を実施し、400名以上の児童生徒及び保護者が大学で講義を受けている。

附属病院関係

○ 総合診療部と老年内科を統合して総合内科とし、教育病床の効率的な運営、総合内科を核として臓器別専門医療を補完するなど、総合内科医を育成できる臨床教育体制を構築している。診療では、脳卒中ケアユニット(SCU)を2室6床体制で設置、また、地域連携パスの策定に向けた取組を開始するなど、関連病院とも連携を図りながら診療機能の強化を図っている。
 今後、引き続き、総合診療・全人的医療にも配慮した多様で魅力ある研修プログラムを提供するとともに、高度な医療を提供する大学病院として、広域救急医療のために救命救急センターの検討も視野に入れた、救急医療提供体制の在り方等について、さらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 引き続き、優れた指導医(クリニシャンエデュケーター)を米国・日本国内から7名招へいし、初期研修医及び後期研修医に対する講義を実施、また、初期臨床研修医制度の見直しに対応するために、教育病床(総合病床)を活用したプログラムを作成するなど、教育研修体制の活性化を図っている。

○ 感染症に係る国際共同研究の推進や現地派遣等を実施するなど、国際的に活躍できる医療人の養成に努めている。

(診療面)

○ 診察室の防音対策について、工学研究科の協力を得て音環境調査を実施し、その結果を踏まえて外来診察室等の防音工事を行うなど、患者サービスの向上に努めている。

○ かかりつけ医紹介システムでは、88か所の診療所訪問を行った結果、紹介件数が前年度と比較して約1,000件増加するなど、かかりつけ医との連携が図られている。

(運営面)

○ 関係病院連絡委員会を中心に、関係病院の機能別分化を含め連携の在り方等についての検討や、兵庫県と月1回の定例会を開催して県下の医療状況について意見交換を行うなど、緊密な連携が図られている。

○ 医薬品及び医療材料に係る配置定数の見直し、期限切れ品目リスト(期限切れ切迫品)の作成による期限切れ防止の徹底化及び基準とする値引率を上回る削減(削減額約1億1,000万円)により病院経営改善に取り組んでいる。

○ 診療情報分析支援室を設置し、診断群分類包括評価(DPC)分析、がん登録、診療録管理の3分野に対する体制を整備するとともに、診療情報管理士を増員して、経営分析機能の強化を図っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --