国立大学法人京都工芸繊維大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 京都工芸繊維大学は、中期目標に「ユーザー・オリエンティッドの大学運営の徹底」を掲げ、学生や地域社会等大学知の利用者(ユーザー)を重視し、学長のリーダーシップの下、学内のボトムアップとの調和を図りつつ全学が一体となり精力的に大学運営を進めている。
 業務運営については、「副学長裁量経費」及び「部局長等教育改善計画推進経費」を新設し、各種事業の実施、課題への対応等が迅速化されている。また、大学への貢献意識と豊富な知識・経験を有する事務系再雇用職員を組織化した「KITビューロー」を立ち上げ、入試広報業務等に活用している。
 財務内容については、事業費について、2回のモニタリングを実施し、不用見込額が生じた事業は、他の緊急性のある事業費に充当している。
 自己点検・評価及び情報提供については、中期目標・中期計画の進捗状況管理、年度計画の進捗管理等を可能とする「目標・計画進捗管理システム」を試験運用し、平成22年度から当該システムを用いた進捗管理を実施することとしている。
 その他業務運営には、電気使用量の削減に加え、ガス、灯油及び水の各使用量を3%削減する目標やエネルギー管理標準を公表し、運用している。
 教育研究等の質の向上については、昆虫が有する機能の解明、医療への応用化に係る教育研究及び産業への応用展開等を実施するため、「昆虫バイオメディカル教育研究センター」を常設化している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の育成・確保の強化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 副学長の裁量権の強化を図り、教育研究等を戦略的に推進するための「副学長裁量経費」を新設し、各副学長に1,000万円、計3,000万円の予算配分を行い、教育研究の戦略的推進や教育研究改善事業の実施等、迅速な対応が可能となっている。

○ 「部局長等教育改善計画推進経費」を新設し、各部局長等に計1,000万円の予算配分を行い、各部局長等の判断による教育研究改善事業の実施等、部局内の課題への迅速な対応が可能となっている。

○ 高度な専門知識及び豊富な経験を必要とする業務に従事する人材を確保するため、特任専門職制度により、産学官連携マネージャー、産学官連携コーディネーター、産学連携マネジメントフェロー、知的財産アドバイザー、チーフ・リサーチャーを雇用している。

○ 若手女性教員に対する教育研究活動支援として、教育研究経費「男女共同参画推進経費」の配分等を行っている。

○ 大学への貢献意識と豊富な知識・経験を有する事務系再雇用職員を組織化した「KITビューロー」を立ち上げ、入試広報業務等に活用している。

○ 大学関係者(ユーザー)から大学に寄せられた意見や助言について、意見等と大学の対応状況を取りまとめた「教育・学習環境の改善への意見、要望、提言等とそれらへの対応2009年度」を刊行し、役職員等の幹部職員に配布し、ユーザーニーズの共有に努めるとともに、学生にも公表している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、経営協議会の審議事項の適正化については、適切に審議が行われており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載30事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.財務基盤の強化、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 教育研究に係る基盤的経費や事業費等について、計画書及び報告書の提出を義務づけ、特に事業費については、例年1回のモニタリングを2回実施し、計画の見直し等の助言を行った結果、不用見込額が生じた事業は年度途中に回収し、他の緊急性のある事業費に充当している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載13事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.自己点検・評価、2.情報の提供等

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 中期目標・中期計画の進捗状況管理、年度計画の進捗管理等を可能とする「目標・計画進捗管理システム」を試験運用し、平成22年度から当該システムを用いた進捗管理を実施することとしている。

○ ウェブサイトについて、ユーザビリティの向上を図ったほか、イベント情報及びトピックス情報の更新頻度を高めるなど、有効な情報発信に努めた結果、民間調査会社が行った「全国大学ユーザビリティ調査2009/2010」において、全国国公私立大学165校中15位、近畿地区国立大学12校中1位となっている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理、3.環境問題への取組、4.他大学との連携協力の強化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 効果的な施設維持保全を図るため維持保全計画をまとめ、施設点検パトロールを実施し、老朽化改善・学習環境改善のための施設整備を行っている。

○ 電気使用量の削減に加え、ガス、灯油及び水の各使用量を3%(毎年度1%、対平成18年度比)削減する目標を設定し、また、エネルギー管理標準についても、ウェブサイトを通じて公表し、運用している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 学生の23%を占める女性学生固有の相談にも対応できるよう女性のキャリアアドバイザーを配置し、さらに、就職担当教員の経験を持つ元教授をアドバイザーに加え、6名体制により多様化する学生の就職相談、キャリア形成相談に応じる体制を整えている。

○ 附属図書館にKIT検定コーナーを設置し、検定内容に関連する参考書・問題集等を準備し、学生の自学自習環境の整備を行っている。

○ 昆虫が有する機能の解明、ヒト医療への応用化に係る教育研究、学術・情報技術の蓄積と産業への応用展開及び実践的教育・研究プロジェクトを実施するため、「昆虫バイオメディカル研究センター」を「昆虫バイオメディカル教育研究センター」として常設化し、専任教員を配置している。

○ 特色ある人間教養科目の「京都ブランド創生」を、京都商工会議所の協力(派遣・広報活動)を得て、地元産業界及び市民向けに公開している。

○ 産学連携活動をさらに推進するため、産学連携のワンストップ窓口機能を持たせた創造連携センター等からなる産学官連携推進本部を設置し、企業訪問等による包括的産学連携への新規参加企業の拡大、広域TLOとの包括契約に基づくライセンス活動の推進等を積極的に行っている。

○ 知的財産評価審査部会において、大学のシーズ及び保有特許より重点研究テーマを選定し、知的財産を戦略的に確保するため、選定したテーマについて、外部資金の獲得、ライセンス活動の推進、パテントマップを通じた積極的な権利確保を実施している。

○ 京都ノートルダム女子大学と、相互の大学力の強化・向上を目的とした包括協定を締結し、学生、教職員及び研究者の交流促進や相互の教育及び研究内容の充実・発展並びに地域貢献に資する共同事業の推進を計画し、その一環として、施設及びグラウンドの相互利用に関する覚書を締結している。

○ グローバルエンジニア育成のための海外インターンシッププログラム推進事業により、大学院学生24名及び教員15名を海外インターンシップに派遣している。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --