国立大学法人京都教育大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 京都教育大学は、教育研究水準の向上を図り、教養高き人としての知識、情操、態度を養うとともに、教育専門職に必要な資質、能力を有する人材の養成を行うことを社会的使命として、「教育研究の活性化」や「実践力のある教員の養成」等に取り組んでいる。
 業務運営については、学生の主体的な研究活動を支援するため、「e-Project@kyokyo」を実施している。また、平成20年度の評価委員会の評価結果を踏まえ、男女共同参画推進に向けた取組について、規程の制定及び委員会の設置を行い、また、基本方針を策定するため教職員に対してアンケートを実施することとしている。
 財務内容については、民間資金を活用して男子学生寄宿寮の耐震工事及び内部改修を行うなど、財務内容の改善に配慮しつつ、効率的・効果的な財源等の活用に努めている。
 自己点検・評価及び情報提供については、自己点検ファイルを通じて、年度計画の進捗状況を把握するとともに、今後の課題をとりまとめ、課題に対する改善計画を策定、実施するPDCAサイクルを確立し、大学運営の改善を図っている。
 一方、年度計画に掲げている大学院における現職教員の3分の1確保への取組について、教育学研究科の現職教員占有率は33.3%であるが、連合教職実践研究科では25%と平成20年度に比べて減少しているため、着実な取組が求められる。
 その他業務運営については、平成20年度の評価委員会の評価結果を踏まえ、学生の集団による不祥事の再発防止に向けた全学的な取組を徹底し、学生を中心とした事件・事故に係る個別マニュアル及び入試に関する個別マニュアルを作成している。
 教育研究等の質の向上については、教育学部において、共通教育科目の教養科目を、これまでの「文化と人間」、「社会と人間」、「自然と人間」の3区分を「社会・文化と人間」、「自然と人間」に再編成するとともに、学生の不祥事への対応を進め、新たに「人間形成」を加えた3区分とする検討を進め、平成22年度から実施することを決定している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学術研究活動推進のため、企画調整室の下に研究活動推進ワーキンググループを設置し、研究支援体制の充実を図っている。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

○ 学生の独創的・創造力豊かな研究活動を奨励することを目的に、「e-Project@kyokyo」を引き続き実施し、4件のプロジェクトについて採択している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、男女共同参画の推進に向けた取組については、男女共同参画推進委員会規程を制定し、同委員会を設置してさらなる推進に向けた検討を行い、また、基本方針を策定するため教職員に対してアンケートを実施することとしており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載22事項中すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善、4.人件費削減の取組

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 民間資金を活用して男子学生寄宿寮の耐震工事及び内部改修を行うなど、財務内容の改善に配慮しつつ、効率的・効果的な財源等の活用に努めている。

○ 経費削減に取り組んでいるものの、一般管理費は2億6,034万円(対前年度比1億379万円増)、一般管理費率は5.0%(対前年度比2.0%増)となっていることから、一般管理費の削減に向けたより一層の計画的な取組が期待される。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 自己点検ファイルを通じて、年度計画の進捗状況を把握するとともに、大学評価室が今後の課題をとりまとめ、法人室会議において、課題に対する改善計画を策定、実施するPDCAサイクルを確立し、大学運営の改善を図っている。また、中期目標・中期計画進捗管理システムの平成22年度からの導入を決定している。

○ 学術情報リポジトリについては、大学紀要のうち許諾確認が取れたものを本公開している。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が指摘した、大学院における現職教員について3分の1確保を目指すことについては、平成20年度に比べ減少しており、着実な取り組みが求められる。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

○ 「引き続き大学院における現職教員については、教育学研究科と連合教職実践研究科との特徴を活かしつつ3分の1確保を目指す。」(実績報告書30頁・年度計画【21-3】)について、教育学研究科は、現職教員占有率33.3%を確保しているが、連合教職実践研究科では、平成20年度評価結果を受けて説明会の開催回数の増加等の取組を行っているものの、現職教員占有率は25%と平成20年度に比べて減少しており、年度計画で目指す3分の1が確保されていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成のためにはやや遅れている

(理由)年度計画の記載8事項中7事項が「年度計画を十分に実施している」と認められるが、平成20年度評価結果において課題として指摘した事項に十分な取組が行われていないこと及びそれに関連した1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 第二次京都教育大学緊急整備五ヵ年計画整備方針に基づく整備計画により、大学施設全体の耐震性能保有率が9割に達し、さらに、施設の老朽改善、耐震化のため、図書館、本部庁舎の概算要求を行うとともに、学生支援業務拡充のため本部庁舎増築を進めている。

○ 中期・年度計画推進プログラムにより、施設マネジメントを推進し、施設有効活用を進めるため共同利用スペースの運用を継続し、競争的スペースを19室約390m2確保し、13室の有償貸与を行っている。

○ CO2排出抑制の取組として、省エネルギー推進のため、エネルギー管理責任者会議において「京都教育大学における温室効果ガス排出抑制等のための実施計画」、「温室効果ガス排出抑制等のためのアクションプログラム」の推進を決議し、温室効果ガス1%削減(対前年度比)を目標として、改修による2号館ボイラーの全廃、灯油からガスへの燃料切替等、省エネルギーに努め、CO2排出量を3.3%削減している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、学生の集団による不祥事の再発防止に向けた全学的な取組の徹底については、各種委員会において検討を行い、報告書を取りまとめ学長に答申したほか、学生を中心として事件・事故に係る個別マニュアル及び入試に関する個別マニュアルを作成しており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 教育学部について、平成20年度共通教育科目等の問題点を取りまとめた報告書を基に、共通教育科目の教養科目を、これまでの「文化と人間」、「社会と人間」、「自然と人間」の3区分を「社会・文化と人間」、「自然と人間」に再編成するとともに、教学支援室において学生の不祥事への対応を進め、新たに「人間形成」を加えた3区分とし、平成22年度から実施することを決定している。

○ グレード・ポイント・アベレージ(GPA)制度を導入するに当たって、平成21年度入学者から5段階評価区分(秀・優・良・可・不可)を採用するとともに、同一科目複数クラスのシラバス・成績基準の統一について引き続き徹底を図っている。

○ 無線LANのアクセスポイント設置をさらに進め、学内のすべての講義室及び研究室の大半において無線LANが利用可能となっている。

○ 日本語・日本文化研修プログラム「体験しよう!京都」を作成し、履修内容の整備を行い、留学生の日本文化に対するさらなる理解が期待される。

○ 特別支援教育について、大学と附属学校が連携して通常学級における障害のある児童生徒等の教育評価・指導方法の開発と検証を行うなど、発達障害への理解の促進及び適切な指導法の開発に向けて、特別支援教育コーディネーターや大学教員・附属学校園教員とで実践的な研修会を試行している。

(教員就職状況)

○ 平成21年3月卒業者(教員養成課程)の就職状況は卒業者数203名に対し、正規採用が67名、臨時的任用が50名で、平成21年教員就職率は57.6%、進学者を除くと65.4%となっている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --