国立大学法人滋賀医科大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 滋賀医科大学は、滋賀県の地域の特徴を考慮しつつ、独自の新しい医学・看護学の教育・研究を推進するとともに、その成果を滋賀の地から国内はもとより世界に発信し、医学・看護学の発展に貢献すること及び高度な医療を提供することによって、人々の福祉の向上に寄与することを目標としている。
 業務運営については、教職員の人事評価を本格実施し、評価結果を昇給及び勤勉手当に反映しており、評価できる。
 また、大学の活性化と学内構成員の意識高揚、スキルアップ及び職員間の情報共有の推進を目的に業務改善ポスター発表会を実施し、外部委員を含む委員が審査を行い、学内相互理解と業務改善、効率化への足掛かりとしている。
 この他、新たに大学を支える人材を育むための宿泊研修を実施し、学長、役員及び多数の教職員が参加し、それぞれの役割を共有するとともに、教職員一丸となり課題に挑戦する土壌を創り出せるよう、講演・グループディスカッション・全体討論等を行っている。
 財務内容については、四半期ごとに教育・研究・診療等についての現状分析及び財務状況についてチェックし、放射線管理総合システムの更新、一般教養棟、講義室の環境整備等、教育・研究・診療等で生じた課題に対して、総額約4億円の追加配分を行い迅速な対策を講じている。
 自己点検・評価及び情報提供については、法人評価結果やSWOT(Strength,Weakness,Opportunity,Threat)分析及び法人化時に策定した長期計画に係る事業の中間評価結果等をインプット資料とし、また学内外の意見を反映して大学の今後10年間の進むべき道を示した長期ビジョン「SUMSプロジェクト(案)」を策定している。
 教育研究等の質の向上については、「地域(里親)による学生支援プログラム」に基づく里親・プチ里親による助言体制を確立し、県外出身者が地域医療を守る目的で県内の医療機関で実習する教育プログラムを実施し、本プログラムの内容が全国紙を含む多くの新聞等に取り上げられるとともに、学生の地域医療への理解が深まっている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 教職員の人事評価を本格実施し、評価結果を21年6月から昇給及び勤勉手当に反映しており、評価できる。

○ 社会の要請に対応するため、生活習慣病センターに年俸制の特任教授を配置するとともに、高度化する患者ケアのために、臨床看護師の質向上を目指した看護臨床教育センターを附属病院に設置し、社会の要請に即した教員の配置を行っている。

○ 大学の活性化と学内構成員の意識高揚、スキルアップ及び職員間の情報共有の推進を目的に業務改善ポスター発表会を実施し、各部署から20点の出展があり、各ポスターの説明、総合討論及び審査委員による業務改善の必要性・目的の明確化、改善に向けた取組のアイデア、効果、課題の把握、組織としての取組・協調性、デザインの5点で点数化し外部委員を含む委員が審査を行い、学内相互理解と業務改善、効率化への足掛かりとしている。

○ 新たに大学を支える人材を育むための宿泊研修を実施し、学長、役員及び教職員計55名が参加し、それぞれの役割を共有するとともに、教職員一丸となり課題に挑戦する土壌を創り出せるよう、講演・グループディスカッション・全体討論等を行っている。

○ 附属病院において最先端医療に対応するために必要な人員と所要見込額及び必要理由の調査分析等を行い、分析結果を基に病院人員計画を策定し、基本的な方向性が了承されている。

○ 任期制教員の占める割合が94%に達しており、平成21年度には74名の任期満了者について再任評価を実施し、教員の流動性を高め大学の活性化を図っている。

○ 経営協議会から出された法人運営に関する意見(大学と病院のセグメントを分離すること等)について、その取組事例をウェブサイトで公表している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、男女共同参画のための具体的な行動計画や推進体制整備に向けた取組については、男女共同参画推進基本計画(マスタープラン)を策定し、推進体制の整備や具体的な行動計画を策定するとともに、目標設定や保育所を増築するなど、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある

(理由)年度計画の記載41事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるほか、教職員の人事評価を本格実施し、評価結果を昇給及び勤勉手当に反映していること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 四半期ごとに教育・研究・診療等についての現状分析及び財務状況についてチェックし、放射線管理総合システムの更新、一般教養棟、講義室の環境整備等、教育・研究・診療等で生じた課題に対して、総額約4億円の追加配分を行い迅速な対策を講じている。

○年度当初に病院運営方針・経営方針に基づく目標値を定めて実現に取り組み、病院収入が対前年度比7億円増となっている。

○ 課別の電子化等の推進ヒアリングを実施し、プロジェクター会議の推進等による会議資料削減、大量コピー時の輪転機使用の推奨、業務IT化によるペーパーレス化の推進等により、各部署で複写機使用枚数削減の取組を実施した結果、目標の対前年度比1%削減を上回る4.1%減を達成している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載32事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 法人評価結果やSWOT分析及び法人化時に策定した長期計画に係る事業の中間評価結果等をインプット資料とし、また学内外の意見を反映して大学の今後10年間の進むべき道を示した長期ビジョン「SUMSプロジェクト(案)」を策定している。

○ 第2期中期目標期間での最重要プロジェクトを「SUMSプロジェクト2010-2015~次世代の人材育成に向って~」として定めウェブサイトで公表するとともに、平成22年度の年度計画策定に当たっては本プロジェクトを反映することを基本方針として作成している。

○ 進捗ナビを活用して、中期計画、年度計画の進捗状況の定期的な管理及び年度計画、実績報告書作成等を実施することにより、評価作業の効率化・合理化及びペーパーレス化に大きく寄与するとともに、システムのノウハウを他機関に情報提供している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理、3.基本的人権等の擁護

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 「教員中心から学生中心の大学へ」の転換を図るキャンパス整備事業として、学生支援のために基礎研究棟・基礎実習棟の便所改修工事、基礎実習棟講義室(講義机を含む)改修及び福利棟屋上の防水改修工事を実施している。

○ 平成18年度から実施している学内ESCO(Energy Service Company)事業(14事業)に加えて新たに4事業を実施し、省エネルギー効果(累計で7,606万円)の検証及び向上を図っている。

○ 学内ネットワーク機器の安定運用のため、ネットワーク機器全体を管理するシステムを導入し、全学の通信状況、障害状況の把握を行えるようにしている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 「地域(里親)による学生支援プログラム」に基づく里親・プチ里親による助言体制を確立し、県外出身者が地域医療を守る目的で県内の医療機関で実習する教育プログラムを実施し、本プログラムの内容が全国紙を含む多くの新聞等に取り上げられるとともに、学生の地域医療への理解が深まっている。

○ 医学科の教養教育においては、「日本語表現法」を必修化し、コミュニケーション能力の向上に努めるとともに、専門教育においては、学生の意見を取り入れ、少人数能動学習を含むカリキュラム全般の改正を行い、授業形態や学習指導法の改善を行っている。

○ 患者訪問実習を正規科目に取り入れた「全人的医療体験学習」(1~2年次)、高い倫理観を養う基礎学及び基礎医学課程(解剖学実習)の教育並びに診療所実習(5年次)を通して、患者側から見た「医療の在り方」や「医の倫理」について学んでいる。

○ 倫理的配慮ができる能力の育成に取り組んでおり、解剖学実習用の献体受入れ、慰霊式、解剖体納骨慰霊法要に学生が参加するとともに、遺族と学生との交流機会を設け、遺族の想いを通じて、死生観について考える機会を与えている。

○ 医師・看護師・保健師の国家試験合格率の到達目標を設定し、特に医師については共用試験CBT(Computer Based Testing)成績下位者への支援等により新卒合格率100%を達成している。

○ 重点領域研究(サルを用いた新型インフルエンザ病態解明、核磁気共鳴MR研究、神経難病研究、生活習慣病医学、地域医療支援研究)のために、それぞれに対応するセンターを設置し、研究の支援と推進を図っている。

○ 動物実験認定制度を全国に先駆けて導入し定着させ、講習等の対象者である教職員、製薬企業等の人材に対して実施するとともに、「動物を用いた感染実験」のライセンス制度を導入している。

○ 経済財政改革の基本方針2009及び滋賀県が策定する「地域医療再生計画」に基づく医師確保の要請を受け、滋賀県から卒業後地域医療従事を前提とした奨学金の貸与による「地域枠」を設定し、入学定員を5名増員するとともに、選抜方法は一般入試(前期日程)としている。

○ 地域中核病院として、医師不足地区への医師派遣、がん診療連携拠点、肝疾患診療連携拠点等で地域貢献している。

○ 国立大学病院として初めて産科オープンシステムを運用し、ハイリスク妊婦の優先的受入システムを構築して小児・周産期の地域医療に貢献している。

○ マルチメディアセンターの協力を得て、コミュニケーションを促すネットワーク(SNS)の運用を継続するとともに、利便性向上のためにウェブサイトを一部修正するなど、円滑な共同利用体制の整備を図っている。

附属病院関係

○ オープンMR装置による手術(IVMR)において、手術時間が3分の1短縮できることを実証、また、「MR画像下次世代手術システムプロジェクト」の構築を目的とした、A-stepプロジェクトを獲得するなど、新しい医療技術を利用した低侵襲治療法の開発を推進している。診療では、新生児集中治療室(NICU)の増床(6床から9床)、継続保育室(GCU)の増床(4床から6床)、助産師外来、院内助産所の開設が完了しており、周産期医療体制の整備を充実させている。
 今後、機能集約型医療体制のメリットを生かしつつ、がん診療体制の強化を図るとともに、東近江地区の医師不足解消に向けて、地域医療再生計画に積極的に参画するなど、さらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 「看護職キャリアシステム構築プラン(スーパーナース育成プラン)」に選定され、看護臨床研修センターを設置、臨床教育看護師(スーパーナース)と新たな新人教育のためのシステム体制の構築を開始している。

○ 治験及び臨床研究の支援体制を整備するためのアクションプランを策定、ワーキンググループを組織して目標達成に努めるなど、治験管理センターの機能を充実させている。(治験等の外部収入1億2,700万円、対前年度2,300万円増)

(診療面)

○ 分娩施設を持たない診療所の医師が利用する産科オープンシステムでは、産科等の登録医の分娩立ち会い率がこれまでの13%から83%と大きく上昇、また、助産師外来・院内助産への取組を開始するなど、社会的に要請の強い周産期医療の診療体制が整備されている。

○ 腫瘍センターに特任教授を招へい、また、滋賀県がん診療高度中核拠点病院として、がん化学療法等の治療を充実させた結果、化学療法件数が前年度比で20%増加しており、高度医療の提供に努めている。

(運営面)

○ 外部評価では、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価Ver5.0に認定されている。

○ 新手術棟を完成させ、看護師・麻酔科医の増員、手術器具の整備、手術管理システムの活用等を実施した結果、手術件数が増加するなど、手術部運営の効率化が図られている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --