国立大学法人三重大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 三重大学は、教育・研究の実績と伝統を踏まえ「人類福祉の増進」、「自然の中での人類の共生」、「地域社会の発展」に貢献できる「人材の育成と研究の創成」を目指し、学術文化の受発信拠点となることを基本理念としている。
 業務運営については、教員の個人評価を本格実施し、評価結果を勤勉手当及び昇給に反映しており、評価できる。また、育児・介護中の女性教員に対して、女性ポスドクによる研究補助・支援を行うなど、女性教員に対する支援に取り組んでいる。
 自己点検及び情報提供については、広報に関連する諸活動の在り方等を企画立案することを目的とする広報戦略会議を置き、情報発信に向けた体制及び戦略の充実を図っている。
 その他業務運営については、「環境報告書2009」が第13回環境コミュニケーション大賞「環境配慮促進法特定事業者賞」を受賞している。
 教育研究等の質の向上については、入学時にTOEIC Institutional Program(IP)テストを実施して得点に応じたクラス編成を行うとともに、TOEICスコア向上を目指すための英語補習授業を夏季休業期間中に開講し、平成22年度からはTOEIC補習授業を義務化することとしている。また、7か国23大学による「アジア・太平洋大学環境コンソーシアム」を構築し、国際環境教育の推進を図っている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 教員の個人評価を本格実施し、評価結果を平成21年12月の勤勉手当及び平成22年1月の昇給から反映しており、評価できる。

○ 全学的視点からの戦略的施策を実施する上で必要な経費を学長裁量経費として3億9,500万円確保し、「情報基盤・国際交流に関する目的達成のための経費」や「研究に関する目標達成のための経費」等として措置され、電子ジャーナル購入、国際交流推進や若手教員支援等へ活用されている。

○ 研究活動の発展と推進を図ることを目的として研究推進戦略室を設置し、研究設備の有効利用や充実改善を図るために設備のマスタープラン策定などを実施している。

○ 育児・介護中の女性教員に対して、女性ポスドクによる研究補助・支援を行うなど、女性教員に対する支援に取り組んでいる。

○ 教育研究支援体制が整備されている海外や国内の大学で調査を行い、教育研究支援業務やプロジェクトマネージメント等の支援体制に関して比較検討を行っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある

(理由)年度計画の記載31事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるほか、教員の人事評価を実施し、その評価結果を処遇に反映させている取組が行われていること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 大学独自の科学研究費補助金Q&Aを作成してウェブサイトへの掲載等により、採択件数は251件(対前年度比14件増)、採択金額は5億3,200万円(対前年度比4,117万円増)となっている。

○ 宿舎の入居募集資格要件を見直し、入居募集を年6回から年12回に増やすことにより入居率アップを図り、地元消費者を対象に月1回の生産品直接販売会や附属病院の給食用米として販路拡大等の取組を行ったことにより、平成21年度の自己収入は6,520万円(対前年度比2,263万円増)となっている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 広報・危機管理担当副学長及び広報担当学長補佐を新設するとともに、広報に関連する諸活動の在り方等を企画立案することを目的とする広報戦略会議を新設し、情報発信に向けた体制及び戦略の充実を図っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 「環境報告書2009」が第13回環境コミュニケーション大賞「環境配慮促進法特定事業者賞」を受賞している。また、優れた環境経営の取組として日本環境経営大賞の「環境経営パール賞」(環境経営部門の最優秀賞)を受賞している。

○ 全学共通施設利用状況の現地調査を実施し、「みえ“食発・地域イノベーション”創造拠点」の活動の場や、分散している競争的資金獲得や産学共同研究支援事務組織を社会連携研究支援センターに統合している。

○ 全学を挙げて省エネルギーを推進するため学外有識者を交えて省エネルギー計画検討委員会を開催し、「カーボンフリー大学構想」を検討している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 入学時にTOEIC IPテストを実施して得点に応じたクラス編成を行うとともに、TOEICスコア向上を目指すための英語補習授業を夏季休業期間中に開講し、平成22年度からはTOEIC補習授業を義務化することとしている。

○ 国際気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)に国際環境インターンシップとして学生4名を派遣している。

○ ユネスコ・スクール支援大学間ネットワークに参加し、参加大学との連携を図るとともに、「ユネスコ・スクール研修会・シンポジウム in 三重」を開催し、ユネスコ活動の推進に努めている。

○ 日本・モンゴル・中国・韓国・タイ・インドネシア・オーストラリアの7か国23大学による「アジア・太平洋大学環境コンソーシアム」を構築し、国際環境教育の推進を図っている。

○ 学生相談・キャリア支援制度の確立を図るため、キャリア・ピア・サポーター資格教育を開始し、資格取得要件を満たした学生13名を初級資格者として認定している。

○ 知的財産の拡充を図るために、知的財産評価委員会で平成20年度に係る発明届出数等により表彰対象者の選定を審議し、5名に学長表彰を行っている。

○ 3大学国際ジョイントセミナー・シンポジウムを開催するとともに、学生の発表者に対して国際教育科目の英語による論文作成や口頭発表方法について、集中講義による指導を行っている。

○ 「附属学校における学部教員による授業実施WG(ワーキンググループ)」に「学習指導案形式共同開発プロジェクト」を立ち上げ、これまで附属学校の各教科で用いられている学習指導案形式を、その根拠や変遷の経緯、学力観、指導観を踏まえて、教科間の共通理解を図りながら整理するため、附属小学校及び学部の教員が協同して検討を行っている。

○ 教育学部と附属学校園合同の「教育実習実施委員会」を、「教育実習委員会」として改組し、附属校委員についても、より基本的長期的な問題の検討に参加できることとなっている。

附属病院関係

○ 魅力的な臨床研修を遂行するために、県内外で内科・救急部門研修が可能なプログラムや、大学病院救急部での通年の救急研修プログラムの作成、研修医に携帯情報端末(PDA)を配付するなど、特色あるプログラムを提供している。診療では、生体肝移植(8症例)、生体腎移植(2症例)や血管内治療(脳・血管・大血管1,014症例)等、県内の中核病院として、高度医療提供の充実を図っている。
 今後、救命救急センターを開設予定であり、救急医療体制のより一層の向上を目指すとともに、引き続き、7対1看護体制の導入・看護職員の安定的充足に向けたさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 県内外から医師を確保するために、初期研修医説明会に加え、後期研修医説明会も併せて実施、専門医養成セミナーを開催するなど、次世代の人材育成強化に努めている。

○ オーダーメイド医療の推進として遺伝カウンセリング(25件)や遺伝子検査(280件)の実施、家族性乳がん・卵巣がんの遺伝子検査を受託できる体制を構築するなど、先端医療を推進している。

(診療面)

○ 三重県に救命救急センターの設置要望を行うとともに、災害派遣医療チーム(DMAT)や三重県総合防災訓練に参画するなど、救命救急部門の整備・充実を図るための取組を強化している。

○ 外来再編に伴う臓器別の診療体制の実施や、その家族の治療や生活支援を充実するための場所(リボンズハウス)を設置、また、ポルトガル語通訳や医療ソーシャルワーカー(MSW)の待遇改善を図るなど、医療福祉支援センターの機能強化を図っている。

(運営面)

○ 医療事務員(メディカルクラーク)養成のために、病棟クラークの教育を実施し、その習熟チェックのためのペーパーテストや業務評価を実施、また、診療情報管理士が診療報酬明細書(レセプト)の再チェックを実施するなど、事務系職員の専門職化を推進している。

○ 小児科病棟において、こどもの成長・発達等を支援する専門職(チャイルドライフスペシャリスト(CLS))の常勤配置を行うなど、小児患者の支援を強化している。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --