国立大学法人名古屋工業大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 名古屋工業大学は「工科大学構想」を掲げ、技術イノべーションと産業振興を牽引するにふさわしい高度で充実した教育研究体制を整備し、工科大学の世界拠点として、異分野との融合による新たな科学技術を創成し、「ひとづくり」、「ものづくり」、「未来づくり」の教育研究理念を踏まえ、学長のリーダーシップの下に重点事項を掲げ取り組んでいる。
 業務運営については、国際交流活動の発展、拡大に対応した新たな推進体制を整備するため、国際交流センター企画運営委員会を廃止し、国際交流推進委員会を設置している。
 財務内容については、顧問弁護士や他大学の専門家教員との技術コンサルティングに関する意見交換により得られた、知的財産の取扱い等についてのアドバイスに基づき、技術指導の有料化の検討を進めている。
 その他業務運営については、平成20年度の評価委員会の評価結果を踏まえ、新たに太陽光発電パネル設備5基を増設し、創エネルギーを推進し、照明器具をLEDに更新して、省エネルギーに努めている。
 教育研究等の質の向上については、セラミックス分野において欧州やアジアの大学との国際共同研究を推進するとともに、欧州研究プロジェクト等の研究資金を獲得し、ナノテクノロジー・材料分野、情報通信分野、環境分野、ライフサイエンス分野においても国際共同研究を推進している。また、東海地区の中堅・中小企業の工場長やその候補者等を対象として「工場長養成塾」を実施し、地域の自動車関連企業の協力による実践的な課題解決型のカリキュラムを開講している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 国際交流活動の発展、拡大に対応した新たな推進体制を整備するため、国際交流センター企画運営委員会を廃止し、国際交流推進委員会を設置している。

○ イノベーションの創出や新研究領域の開拓等の取組の活性化に資する若手教員を養成することを目的として、若手研究イノベーター養成センターを設置している。

○ 大学改革の流れに機動的に対応できるようにするため、従来の業務体制(部課制)を見直し、グループ制を導入し、事務職員の再配置を行っている。

○ 技術部についても、部課制からグループ、チーム制に移行し、これにより、柔軟な技術支援体制を確立し、さらに充実させている。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載41事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 研究企画院や産学官連携センターが中心となり、引き続き、競争的資金の公募情報の各教員への通知、学内ウェブサイトへの競争的資金の公募情報の掲載による情報提供を行った結果、約31億4,000万円(対前年度比6億7,000万円増)の実績を上げている。

○ 中部TLOに知的財産マーケティング業務を委託し、特許の活用推進を図り、研究成果を産業界へ技術移転する方法の周知及び意識向上のため、学内に対して「技術移転説明会」を実施している。

○ 顧問弁護士や他大学の専門家教員との技術コンサルティングに関する意見交換により得られた、知的財産の取扱い等についての指摘、TLO等を利用した有料化の方策のアドバイスに基づき、技術指導の有料化について検討を進めている。また、特許収入に加え、ノウハウを提供することにより、ノウハウ料として収入増を図っている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載13事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)社会への説明責任に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 新たに開発した中期目標・中期計画管理システムを用いることにより、情報の共有化と進捗状況の把握・チェックを効率良く行うこととしている。

○ ウェブサイトに、学内の取組を分かりやすく紹介する「名工大ラジオ」を設け、積極的な情報発信に努めている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 施設の新増築や既存施設の大規模改修を行った建物については、共用スペースを確保し、プロジェクト的研究や組織の枠を越えた研究活動等に対応するため、弾力的、流動的に使用できるオープンラボラトリーに充てており、現在のオープンラボラトリーの面積は1,737m2となっている。

○ スペースチャージ(施設利用課金)制度で徴収した使用料(約2,000万円)を財源とし、引き続き、全学の施設を対象に予防的修繕(プリメンテナンス)を実施している。

○ リスクマネジメントセンターに、災害時も24時間体制で機能する設備を有した危機管理対策本部室を設置している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、文部科学省公表の「農薬の使用状況等に関する調査結果」において特定毒物を所持していたことについては、コンピュータシステムを活用した全学的なシステムを運用し、引き続き、厳格な管理を行っており、指摘に対する取組が行われている。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、太陽光発電パネル等の設置については、新たに太陽光発電パネル設備5基を増設し、創エネルギーを推進するとともに、建物内(3棟)及び屋外灯(5基)の照明器具をLEDに更新して、省エネルギーに努めており、指摘に対する取組が行われている。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

○ ポリ塩化ビフェニル(PCB)が入った高圧コンデンサーの紛失については、PCB廃棄物の管理・保管体制について徹底した見直しを行い、再発防止に向けて、適切な管理・保管を行うことが求められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載16事項中すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ シラバス公開システムとOPAC(蔵書検索システム)を連携し、シラバスに掲載されている教科書・参考書の図書館での所在情報を学生が簡単に分かるようにしている。

○ 留学生就職支援促進のための環境整備プロジェクトの企画及び学長裁量経費の措置による留学生への就職指導の充実、日本語教育の補講のコマ数増、就職セミナーの開催、地元企業見学会の実施等、留学生の就職支援を推進している。

○ ダブルディグリー取得のため留学する大学院学生に、大学基金から100万円支給する事業を開始している。

○ 開館時間に制限されないサービスとして、学内LANを通じて、24時間利用できる電子ジャーナルの拡充に努め、また、電子Bookの書誌データをOPACに登録し、利用促進を図っている。

○ セラミックス分野において欧州やアジアの大学との国際共同研究を推進するとともに、欧州研究プロジェクト(FP7)の研究資金や海外企業等からの研究資金を獲得し、ナノテクノロジー・材料分野、情報通信分野、環境分野、ライフサイエンス分野において国際共同研究を推進している。

○ 独立行政法人物質・材料研究機構と締結した教育研究に関する連携協力協定書に基づき、同機構との連合大学院を設置して、セラミックス科学研究教育院の教育研究活動の充実を図っている。

○ 若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラムを開始し、若手教員が海外において一定期間教育研究活動に参加する機会を提供することを支援している。

○ 窒素ガリウムを用いた高効率半導体デバイスの先導的研究を開始し、実用化に結びつけることができれば、自動車用インバーターや発光ダイオード等への応用により画期的な省エネルギーの実現が期待される。

○ テニュア・トラック制に基づき若手教員に競争的環境の中で自立と活躍の機会を与える仕組みの導入を進めている。

○ 事務局内のパソコン端末をすべてシンクライアント専用機に置き換え、セキュリティ面でのさらなる強化を行い、また、円滑な情報共有の促進を目的として、シンクライアント上で利用可能な共有フォルダの運用要領を制定している。

○ 基礎研究から生まれた独創的な研究成果を、基礎研究の段階から民間企業との共同研究やベンチャー起業化の段階へと早期にステップアップさせるため、産学官連携センターにおいて、研究助成事業の実用化研究推進経費を公募形式にて配分し、新産業創出につながる応用研究の推進を図り、共同研究163件、受託研究99件、計262件となっている。

○ 製造現場での問題に自ら気づき、考え、行動できる工場長の育成を目指すことを目的に、東海地区の中堅・中小企業の工場長やその候補者等を対象として「工場長養成塾」を実施しており、地域の自動車関連企業の協力による実践的な課題解決型のカリキュラムを開講している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --