国立大学法人浜松医科大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 浜松医科大学は、優れた臨床医と独創力に富む研究者の養成、独創的研究及び新しい医療技術の開発、患者第一主義の診療の実践を大学の基本的目標として掲げ、学長の下に7つの企画室を置いて、大学運営の重要なテーマを分担し、企画立案を行い、学長を支援しつつ大学運営を進めている。
 業務運営については、博士の学位を有し、いずれの研究機関にも属さず、将来発展が期待される優れた研究テーマを持った研究者に、研究の場を与えるため、「浜松医科大学特別奨励研究員制度」を構築している。
 財務内容については、物流委員会で医療材料の見直しを行うとともに、各部署の医療材料供給システムをコ・ストラック方式から補充方式に切り替え、最低限の定数管理としたことにより、医療材料費を削減している。
 その他業務運営については、「ボランティアの受入れ指針及び活動要項」に基づき、地域の公共施設等へのチラシの配布、ポスターの掲示、広報誌への掲載等を継続して実施し、ボランティア募集に関する広報活動の充実に努めるとともに、病院ボランティアと病院長、看護部長等との懇談会を定期的に開催して、ボランティア活動の内容を検証し、病院の業務運営に反映している。
 教育研究等の質の向上については、地域産学官共同研究拠点整備事業により、静岡県、浜松市、浜松商工会議所、浜松地域テクノポリス推進機構、静岡大学及び光産業創成大学院大学と連携し、浜松地域での健康医療産業の創出を目指す「はままつ次世代光・健康医療産業創出拠点事業」として、光・電子技術を使った医療機器を共同開発することとしている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 博士の学位を有し、いずれの研究機関にも属さず、将来発展が期待される優れた研究テーマを持った研究者に、研究の場を与えるため、「浜松医科大学特別奨励研究員制度」を構築している。

○ 中期目標期間における6年間の「事務系職員研修計画」を当該研修の必要性や効果等について、再度検証した上で研修を実施し、研修成果を業務運営に反映させている。

○ 学内保育施設の定員を増員したり、夜間保育を実施したりするなど、仕事と育児等の両立を支援する取組がなされている。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載9事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 物流委員会で医療材料の見直しを行うとともに、各部署の医療材料供給システムをコ・ストラック方式から補充方式に切り替え、最低限の定数管理としたことにより、医療材料費を削減している。

○ 各企画室の実施事業において、実施計画に対する執行率を調査するとともに、上半期の自己収入の増加や節約・節減及び事業の見直しにより予算を捻出し、経費を再配分している。

○ 外部資金比率が5.4%(対前年度比1.0%減)となっていることから、外部資金獲得に向けさらなる取組が期待される。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 大学ウェブサイトをより良いものにするため、教員、技術系職員、事務系職員で構成するワーキンググループにより、構成、項目を再検討するとともに、この結果を各職域からの幅広い意見を基に再構築し、ウェブサイトを更新している。

○ 第1期中期目標期間の最終事業年度計画を着実に実行できるように、整理表を用いて中期計画の取組状況の進捗管理を行うとともに、第2期中期目標期間の整理表においては、各中期計画の達成状況を事後的に検証しやすいように改善している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理、3.その他の目標

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 「ボランティアの受入れ指針及び活動要項」に基づき、地域の公共施設等へのチラシの配布、ポスターの掲示、広報誌への掲載等を継続して実施し、ボランティア募集に関する広報活動の充実に努めるとともに、病院ボランティアと病院長、看護部長等との懇談会を定期的に開催して、ボランティア活動の内容を検証し、病院の業務運営に反映している。

○ 病院再整備により、新病棟(30,392m2)が完成し、手術部、ICU等の先進医療の提供が可能となり、災害拠点病院として、基礎免震構造による災害に強い病院となり、患者アメニティを充実させている。

○ 教育研究環境を整備するため、光技術を医学に応用する研究設備に安定した電源を確保するための増設工事を実施するとともに、安定的エネルギー供給及び安心安全な教育研究環境を確保するため高圧配電設備更新の設計業務を契約している。

○ 施設の有効活用を実施するため、分散している動物・RI(放射線同位元素)共同実験室の再整備のために動物実験施設を増築し、基礎臨床研究棟の地下1階の動物実験施設、2階・8階のRI共同実験室等を集約及び整理している。

○ 新病棟地下1階ピロティ部分の将来増築スペースに薬剤部を自己資金で整備するなど、キャンパスマスタープラン等の実現に向けた取組を実施している。

○ 省エネルギー対策として、基礎臨床研究棟の廊下の照明器具を高効率照明器具(Hf)に更新し、エネルギー使用量について、平成16年度をベースに5年間で10%の削減を目指す目標を設定しており、エネルギー消費量を面積比(原単位)で換算すると約29%の削減を実現している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、特定毒物研究者の許可を受けていなかったことに伴う再発防止に向けた取組については、当該研究室の主任研究者に特定毒物研究者の許可を取得させるとともに、毒物及び劇物の管理方法を徹底するなど、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 医学部学生について、教育の質の保証を厳格に行うため、学年ごとに移行基準を設けるとともに、医学科学生について、卒業試験の成績にGPA制度を導入し、出口管理を強化している。

○ 平成21年度大学教育推進プログラムにより、地域医療を志向する優れた医師の養成を目指すための地域医療教育体制を整備している。

○ 看護学科の学生2名を慶北大学校看護大学に初めて派遣し、韓国の保健医療学習や看護実習を体験するとともに、平成22年度は慶北大学校看護大学の学生を受け入れることとしている。

○ 地域産学官共同研究拠点整備事業により、静岡県、浜松市、浜松商工会議所、浜松地域テクノポリス推進機構、静岡大学及び光産業創成大学院大学と連携し、浜松地域での健康医療産業の創出を目指す「はままつ次世代光・健康医療産業創出拠点事業」として、光・電子技術を使った医療機器を共同開発することとしている。

○ 知的クラスター創生事業「浜松オプトロニクスクラスター」をはじめとして、浜松地域の技術蓄積を活かした医工連携について積極的に取り組んでいる。

○ 子どものこころの発達研究センターなど、光医学を中心とした独創的な教育・研究・診療活動を推進している。

附属病院関係

○ 大学病院の中でも特色のある「開放病床」を有しており、これまでの13床から新病棟移転後は28床に増床するなど、地域との密接な連携体制を構築している。
 また、静岡県厚生部との間で、医師供給体制に関する話し合いの場を設けて、意思の疎通を図るなど、効率的な医療提供のための整備を進めている。
 今後、県内の中核拠点病院として、がん診療等の高度医療の提供に努めるとともに、地域医療機関・関係自治体等とも緊密な連携を図りながら、地域医療への貢献に向けたさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 「大学病院連携型高度医療人養成推進事業」に参画し、2つのプログラムに対して、後期研修医を84名登録するなど優れた専門医の養成に努めている。

(診療面)

○ 院内の地域連携室と協同し、胃がん・大腸がん・肝がん・乳がんの地域連携パスを稼働させており、地域がん診療連携拠点病院としての役割を果たしている。

○ 難病医療拠点病院として、難病医療の実態調査や施設間での情報交換を実施、また、専門医療相談や難病患者会への講師派遣等、難病医療に対する活動を推進している。

○ 救急部に感染者特別診察室を設置、感染対策室と医療安全管理室に事務補佐員を配置するなど、危機管理体制の強化を図っている。

(運営面)

○ カルテの電子化に向けて、診断書や証明書等の「プライムレポート」システムを導入して、医師の労働を軽減するなど、就労環境の整備に取り組んでいる。

○ 県内の4自治体と連携・協力して、災害時外傷初期診療講習会や災害時医療救護訓練に指導者として災害訓練に参加させるなど、災害医療体制の充実を図っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --