国立大学法人静岡大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 静岡大学は、人間性豊かな人材の養成、基礎から応用にわたる研究の推進及び地域との連携交流活動への積極的な参加といった基本目標の達成に向けて、第1期中期目標・中期計画と接続する平成20年度以降の大学の中・長期的なビジョンと戦略として「未来を拓く静岡大学」を策定している。
 業務運営については、学長裁量経費について、「ナノバイオを基盤とした高齢福祉社会を支えるものづくり」、「地球温暖化に伴う海水温上昇が生態系基盤に与える影響」等に配分するとともに、学長特別裁量経費としてナノビジョンサイエンス拠点人材育成支援等に配分するなど、戦略的な資源配分を行っている。
 財務内容については、浜松キャンパス共同利用機器センターを設置し、工学部、電子工学研究所、創造科学技術大学院、イノベーション共同研究センターに属する20数台の大型評価・分析機器装置を集中管理し、さらなる活用と効率的な運用、経費の節減を図り、教職員等の教育・研究を支援する体制を整備している。
 自己点検・評価及び情報提供については、教育・研究の成果を「静大フェスタ~見に来ませんか、60周年を迎えた静大の今を!~」等の開催を通して、広く市民に大学の情報を発信している。
 教育研究等の質の向上については、「大学院教育改革支援プログラム」による、国内外インターンシップ、GP(グッド・プラクティス)講演会・セミナーの開催、ティーチング・アシスタント(TA)研修会の開催等を通じて5つの実践的能力(キャリアデザイン力、国際適応力、研究力、基礎学力、組織運営力)を有する実践的IT人材の育成事業を推進している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 大学間連携について、「静岡県国公私立大学連携による、地域を担う人材育成のための大学院教育プログラムの共同開発」に基づき、静岡県立大学、静岡産業大学と共同で遠隔授業システムを用いた授業を実施し、「共同大学院「地域経営戦略研究科(大学院修士課程)」の設置構想(第1次案)」を策定している。

○ 学長裁量経費について、「ナノバイオを基盤とした高齢福祉社会を支えるものづくり」、「地球温暖化に伴う海水温上昇が生態系基盤に与える影響」等に配分するとともに、学長特別裁量経費としてナノビジョンサイエンス拠点人材育成支援等に配分するなど、戦略的な資源配分を行っている。

○ 女性研究者(教育者)の採用を加速するため、公募の方法によって部局への人件費等の補助に差をつける「女性研究者(教育者)採用加速システム実施要項」及び「女性研究者(教育者)採用加速システム実施に関するガイドライン」をまとめている。

○ 「女性研究者支援モデル育成」により、研究環境の整備や意識改革等、女性教員が研究と出産・育児等を両立し、その能力を十分に発揮しつつ研究活動を行える仕組の導入を進めている。

○ 経営協議会から出された法人運営に関する意見(研究体制の整備や研究員の充実等)について、その取組事例をウェブサイトで公表している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

○ 静岡、浜松両キャンパスが一体となった全学的な取組について、各キャンパスの特徴を活かすことに配慮しつつ、引き続き検討することが期待される。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、ナノビジョン研究推進センターの改組については、平成22年1月1日付けで、ナノビジョン研究推進センターを国際ナノビジョン研究推進センターに改組しており、指摘に対する取組が行われている。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、障害者の採用については、附属特別支援学校の生徒から、附属図書館のパート事務職員として採用しており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載27事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 浜松キャンパス共同利用機器センターを設置し、工学部、電子工学研究所、創造科学技術大学院、イノベーション共同研究センターに属する20数台の大型評価・分析機器装置を集中管理し、さらなる活用と効率的な運用、経費の節減を図り、教職員等の教育・研究を支援する体制を整備している。

○ 財務諸表等の財務に関する運営状況をとりまとめ、附属病院を有しない9総合大学及び全国立大学の財務指標をそれぞれ比較分析することにより、自大学の位置付けを明確にし、「財務リポート2009」として発行・公表している。

○ 光熱水費に大きな割合を占める電気料金節約に取り組み、夏季はキャンパス全体の空調機時間別休止時間帯を設けるとともに、「環境を考える会」メンバーによるデマンド抑制(学生を中心とした携帯電話の電子メールによる空調機等の稼動抑制)を実施している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 教育・研究の成果を「静大フェスタ~見に来ませんか、60周年を迎えた静大の今を!~」の開催、「大学サイエンスフェスタ~「光が拓く未来社会~」」の開催、「富士山展~富士山の過去と現在と未来~」の開催を通して、広く市民に大学の情報を発信している。

○ 組織評価について、評価会議が先進的な大学を調査し、教育、研究、社会貢献、国際連携、業務運営等に係る活動状況や成果等を集約・管理するシステムの構築作業を開始している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 研究・教育情報システムの更新に当たり、全学的な観点から仕様策定を行い、従来のネットワーク機器やサーバ等の更新に加え、クラウドコンピューティングの活用によるサーバのアウトソーシングの推進、シンクライアントの整備等により、情報サービスの向上及び情報管理の一元化を最小限の投資で実現している。

○ 施設マネジメント委員会が策定した基本方針を基に、施設整備・管理運営方針、施設修繕計画等を策定し、中期目標期間中の施設マネジメントの推進体制と合わせて、施設の運用・修繕計画等、施設マネジメント実施についての詳細を定めている。

○ 附属図書館に稀少資料・蔵書保存のための設備を整備している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、安否確認体制の実現については、携帯電話とパソコンから利用可能な「静岡大学安否情報システム」が平成21年5月から本格稼動を開始し、8月に発生した駿河湾地震(最大震度6弱)においては、安否状況の確認に効果を発揮しており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載24事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 情報学研究科(大学院修士課程)及び創造科学技術大学院情報科学専攻(大学院博士課程)において、「大学院教育改革支援プログラム」による、国内外インターンシップ、GP講演会・セミナーの開催、TA研修会の開催等を通じて5つの実践的能力(キャリアデザイン力、国際適応力、研究力、基礎学力、組織運営力)を有する実践的IT人材の育成事業を推進している。

○ 「先導的ITスペシャリスト人材育成推進プログラム」により、名古屋大学や地元企業等と共同して先導的IT技術者の育成及び育成モデルの形成事業を推進している。

○ 「主体性を伸ばす理数特別カリキュラムによる科学者養成プログラム」により、特別演習コースの開設、早期研究室短期体験等のプログラムを実施し、知識と研究能力を持つ学生の養成を開始している。

○ 「原子力発電所と連携した放射線管理実習プログラム」により、原子力における放射線・安全管理の在り方、エネルギー・環境問題解決への原子力の貢献等について自らが行動を起こし、解決策を見い出すことのできる人材の養成を開始している。

○ 東南アジア地域との連携強化に向け、「静岡大学ナショナルインターフェーシングエンジニア育成事業:NIFEEプログラム」に基づき、渡日前入学試験の結果を基に3名の留学生(ベトナム)を受け入れるとともに、海外事務所を増設し、学術・学生交流の推進強化の体制を整備している。

○ 全学教育科目「ベトナムに学ぶ」を開設し、ベトナムの言語・歴史・現状を学んだ学生12名をベトナムに派遣し、ベトナム戦争体験者へのインタビュー、農村訪問、山岳少数民族との交流等を行っている。

○ 人文学部言語文化学科において地元の小売店の新聞広告を立案・企画・作成し、成果及び授業内容をラジオで報告することで、地域活性化へ貢献している。

○ 全学生を対象に「第1回静岡大学学生生活実態調査」を実施し、心身の健康や卒業後の進路に係る事項等について把握することにより、学生支援に係る基礎資料の収集を行っている。

○ 大学の研究成果として、1924年に浜松高等工業高校(現静岡大学)においてテレビジョンの研究を開始し、1935年に全電子方式によるテレビジョン放送を行ったことに関連して、日本のテレビジョン及びその関連産業が世界のリーダーへと成長する基礎を形成したことにより、「電気電子工学会(IEEE)」(本部アメリカ)からマイルストーン賞を受賞している。

○ 「若手研究者の自立的研究環境整備促進」により、テニュア・トラック制に基づき若手教員に競争的環境の中で自立と活躍の機会を与える仕組みの導入を進めている。

○ 情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際認証(ISO27001)の更新審査を完了し、最新の暗号論理を適用したセキュリティの実現等により性能を向上させたネットワーク環境の整備や図書館、共通教育棟等の共通エリア(36箇所)への高セキュリティ無線LANの整備による情報基盤の強化を図っている。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --